Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Ep.07_01
Mining district
Esteros System,Alkahera
Jade Falcon
24 June 3151
「連絡士官、プリヤンカ特務少尉であります。よろしくお願い致します。」
鉱山基地のエントランスで声を張り上げる。
褐色の肌が珍しいのか、土色の士官服の女性が珍しいのか。敬礼が珍しいのかもしれない。
好奇の視線を集めたタイミングで、彼女は眼鏡の位置を直してみせる。
JadeFalcon氏族の戦士、ドルジの率いる混成部隊と雇用主たるルヒ軍閥の間を繋ぐ役割を担うのが彼女の役割だ。
通常の傭兵への指示役であれば、相手にナメられるな。と指示をされる。
しかし、この件についてアリンダム少佐はこう厳命した。
「絶対に失礼の無いように。」
不思議と、雇用側であるはずの軍閥の方が彼に怯えているように感じられる。
彼女を迎えた女パイロットの先導で基地内の老朽化した施設の前に張られたテントに案内された。
この部隊の長の名は10年近く前の記録に記されていた。
ダムや都市を破壊して回り、星系に打撃を与えた蛮行を行った敵として記憶されている。
彼の前に立った瞬間、プリヤンカは着任の挨拶も忘れてその威圧感に圧倒された。
好意も好奇もなく、ただ獲物を選別するかのようなドルジの眼差しに凍り付く。
実物は書面上の記号とはまるで別物だった。
もし、この眼光に少しでも殺意が含まれていれば、プリヤンカはこの場で失神したかもしれない。
ドルジはそんなプリヤンカに「基地内では好きにしろ」とだけ告げ、それ以上なにかを語ることがなかった。
言わねばならなかったことを何も言えないまま、ドルジ達の訓練を見物する。
ほとんど廃墟となっているとは言え、施設の外からでは中の状況はほとんど窺えない。
それでも、壁を破って宙を舞うバトルアーマーの姿を見るたびに、何かとんでもない異物を前にしているような感覚に襲われた。
レーザーが壁を焼いて、実弾が発砲される音を耳にして、パッドが手元から零れ落ちる。
軍閥の常識がここでは通用しないと悟った。
目の前の現実に抗うようにメガネの位置を直す。
距離は十分に離れているはずなのに、時々何かの破片がプリヤンカ達のいるトレンチにまで飛んでくる。
そんなはずはないのに、どこからかあの猛禽に睨まれているように感じた。
一日が終わるとプリヤンカは割り当てられた士官室に案内された。
士官室の壁にかかった鏡に映る顔が怯えで固まっている。
なんとかその日の日報を震える手で書き上げたが、声は夜が明けるまで出なかった。
画面の割れたパッドの上に零れ落ちる涙がどうしても止まらなかった。