※この作品はR-18です。

Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants   作:Sykyu

66 / 281
Ep.07_02

Mining district

Esteros System,Alkahera

Jade Falcon

25 June 3151

 

 指先の震えが治まらない。

 気を張っていないと、身体まで震えるほどにドルジの視線が怖かった。

 化粧でも褐色の肌が青みを帯びているのを隠せないでいる。

 それでも、プリヤンカは連絡員の役割を放り出すわけにはいかなかった。

 

 ドルジには会いたくない。

 だから、現場のパイロットたちの情報交換会に飛び入りで混じることにした。

 部隊の状況の把握のため、と自分に言い訳をする。

 

 議題は鉱山基地と軍閥の現状を確認だ。

 並ぶパイロット達の名前はツェレン、ゾリグ、アリマの3人。

 ブリーフィングルームに並ぶ顔の半分以上が女性というのがプリヤンカの安心材料だった。

 更に彼らがこの基地に到着してまだ数日しか経っていない。

 情報量でプリヤンカが遅れを取るはずがなかった。

 

 しかし、アリマが軍閥を取り巻く政治状況を語り始めると途端に再び不安が灯る。

 

 エステロスでは、行政官ルヒ・パンジャが主導する軍閥が権威と利権を維持しようとしている。

 その陰でかつての貴族たちが権力回復を狙っていた。

 最近、貴族達は彼らに不足している軍事力を補うために外部から傭兵を雇い始めている。

 アリンダム少佐がドルジの力を求めたのはこの元貴族たちが雇った傭兵に対抗するためだ。

 ドルジ達が巻き込まれているのは軍閥と旧貴族の、この星の資源獲得戦争になる。

 正直なところ、ルヒ軍閥には貴族達の蜂起を抑えられるような軍事力はなかった。

 

 アリンダム少佐から口止めされている情報が、アリマの口からさらっと出る。

 プリヤンカは笑顔を保ったまま、背中に冷たいものを流す。

 

 ドルジがルヒ軍閥に協力した理由は、行政官の意図はどうあれ、彼女が氏族側の支配を支持し続けているからだ。

 もし、彼女が氏族の支配を否定してただ保身に走っていれば、軍閥は彼の協力が得られなかっただろう。

 それどころか、今頃ドルジ達が他の軍閥の尖兵としてプリヤンカに矛先を向けている可能性がすらあった。

 ツェレンがアリマの情報を補足するのを聞いてプリヤンカはぞっとする。

 

 続けて、ゾリグが基地周辺の地形情報を拡げる。

 偵察機を飛ばして得た航空写真付きだ。

 

 谷と崖が入り組む複雑な地形は、大軍を展開するには狭すぎる。

 だが、少数精鋭のメック部隊にとっては正に好都合だった。

 彼は気象観測データが示す突発的な砂嵐の問題まで指摘する。

 分厚い砂のカーテンは視界を奪い、通信を断ち、航空支援を困難にした。

 基地では「砂嵐の時は余程の腕利きでなければ、飛行禁止」という制約がルールとなっている。

 彼らはそのルールを知っていたが、守る気はなさそうだった。

 

 鉱山基地内はドルジ達が訪れる前から軍閥の部隊が駐留している。

 彼らとの棲み分けについての協議は既にツェレンが済ましていた。

 

 ドルジの部隊は基地の土地と人員の一部を間借りするが、基地の部隊からは完全に独立して行動をする。

 基地とドルジの部隊の情報交換は全てツェレンを介して行うことになっていた。

 

 情報交換会に連絡役のプリヤンカの出番は無かった。

 情報が出切った後に意見を求められても、「十分に調べていると思います。」と引きつった表情で答えるのが精一杯だった。

 

 夜、その日の報告書をまとめながらプリヤンカはため息をつく。

 

──私は、ここで何をしているのだろう。

 

 手元でいじっているメモは会の最中にツェレンが手書きで書いたものだ。

 情報交換会が終わると彼女がメモを破いて捨てようとしたので、慌てて止めて預かった。

 焼却処分するという名目をよくぞ咄嗟に思いついた。とプリヤンカは自分を誉めた。

 そうでもしないと、あまりに惨めだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。