Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Mining district
Esteros System,Alkahera
Jade Falcon
27 June 3151
晩にドルジの部屋に立っているのに、いつもの声が聞こえない。
プリヤンカはそれを、寂しいと感じた。
ただ、中に誰も居ないわけではない。
入ったところを見たわけではないが、独特の気配はアンネのものだった。
ドルジの部屋の扉の前はその周りよりもひんやりとした心地よさを感じる。
静謐な空気の中に言葉はない。音もない。
壁越しにすら、部屋の気配が異界のものへと書き変わっているのが分かった。
プリヤンカは寒気に震えながら、膝をついて祈った。
彼女の吐く息が白くなっていくような錯覚すら覚えた。
その夜、プリヤンカの前で扉が開くことは無かった。
いつ、どうやって去ったのかはわからない。
だが、日が昇るころにはいつの間にかアンネの気配は消えていた。
知らないうちに自分が眠ってしまったのだと思い、プリヤンカは自身を恥じる。
陽光が登り始めているのに胸のあたりで妙に寒さを感じた。
ツェレンの熱に満ちた声が耳に欲しくて、脳が渇きを訴えはじめる。
プリヤンカは彼女の姿を求めて歩き始めた。
それ以来、ツェレンと顔を合わせると自然と視線は彼女の身体へ滑った。
意識すればするほど顔と眼の動きを止められず、プリヤンカは自らの頬と胸に熱を感じた。
──この身体が、毎晩……あの部屋で……。
無意識のうちに色々な想像をしてしまった自分に、プリヤンカは思わず赤面する。
だが、連日の睡眠不足で、彼女にはそれを打ち消すだけの余力はもう残っていない。
夜、胸の高鳴りを抑えもせずにいつもの場所を訪れる。
プリヤンカは鼓膜を打つツェレンの声に誘われて、ふと目の前の扉を押した。
予想していた抵抗がないことに胸が更に高鳴る。
どうして、もっと早く試さなかったのかと自分を呪う。
部屋の奥から聞こえる歌声のような吐息に導かれて、プリヤンカは扉の奥に歩みを進めた。
室内は照明が落ちているにも関わらず、どこか静かな光に包まれている。
熱もないのに、視界だけが妙に明るかった。
部屋を満たす音の主は、奥の寝台の上にいた。
ツェレンが一糸纏わぬ姿でドルジの上に跨っている。
甘い熱気の中で、彼女の肢体は波打ち、幾度となく歓喜の頂に達していた。
「っ……んっ……もっと……来て……ドルジ……」
目の前の肢体の揺らぎ、息遣いのひとつひとつが、プリヤンカには鮮烈だった。
苦悶と快楽、そして求愛のすべてが混じったその声に、理性の支えを失った彼女は、その場に崩れ落ちてただ座り込むしかない。
欲しかった熱と音を全身に浴びて、プリヤンカは笑みをこぼす。
この瞬間が永遠に続けばいいのに、と祈る。
その日を境にプリヤンカは扉の外に留まることを止めた。
視線と心の奥に焼きついたものからは、もう逃げられなかった。