※この作品はR-18です。

Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants   作:Sykyu

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Ep.08_04

Mining district

Esteros System,Alkahera

Jade Falcon

20 July 3151

 

 崖を越えた瞬間、視界が一気に開けた。

 砂嵐の中、煙の向こうに、二つの影がいる。

 JagermechとRifleman。

 

 機体が飛び出したのは彼らの目の前だった。

 それにも関わらず、アリマの戦闘ヘリはレーダー照射を受けていない。

 どちらも彼女に気づかなかった。あるいは、すでに他の標的に集中している。

 

 アリマは素早く機体を2機の側面に移動させた。

 ビーコンを先頭のJagermechに向けて発射する。

 戦場の後方にいるKitFoxと、ミサイルランチャーが誘導信号を待っているはずだった。

 機体の制御に精いっぱいで反応が遅れる。

 コンソールに目を走らせるが、命中を示すランプの反応はない。

 アリマのビーコンは外れていた。

 

 隣で低く回転音を響かせていたバヤルの発射したビーコンは信号の発信を始めている。

 この砂嵐の中、回転翼機を飛ばした上での正確な投射。

 無線の向こうは砂嵐のせいで何も聞こえず、いつもの無駄口が流れてこない。

 

──ミサイル、撃たせない方が仕事するんじゃないかしら。

 

 命中度外視でミサイルを乱射するいつもの彼の姿を思い浮かべて、アリマは首を振る。

 

 戦場の前面に機体を進めたアレフが索敵情報を発信し始めた。

 アリマの目前のHUDの情報がみるみる更新されていく。

 

 数秒後、砂のスクリーンの向こうで火球が閃光を放った。

 Arrow IVの第一射が胴を直撃し、Riflemanは倒れかける。

 相手の指揮官機の姿勢が崩れ、下半身が軋みながら砂地に食い込んだ。

 

 次の照準をつけようとして、アリマは風の中に混じる別の異音に気がつく。

 TimberWolfが、ドルジが予定以上に前に出ていた。

 遮蔽物もなく、敵の真正面に深緑色の威容をさらけ出している。

 敵の全ての射線があの機体に集中していた。

 

 彼らしいと言えば彼らしい配置だった。

 あの機体が前にいることで、装甲の薄いFLEAやアリマたちが敵の照準に晒される可能性が減る。

 それでも、アリマは彼に目立つ行動を控えてほしかった。

 

──「ドルジ暗殺計画」。

 

 ふと、脳裏に単語が浮かぶ。

 この星に来たばかりの時に、現地の傭兵から聞いた話だ。

 計画は複数の傭兵部隊に打診されていた。大金が動いて彼を仕留めようとしている人間がいた。

 話を聞いたときは与太話だと思っていた。

 だが、今は……。

 

 Jagermechの機関砲が唸りを上げる。砲身が回転して、TimberWolfの頭部を連打した。

 火花が散る。装甲は耐えていた。

 でも、万が一は——いつだって起こりうる。

 一発でもコクピットの中に通ったら、全てが終わる。

 その想像だけで、喉の奥がひりついた。

 

 だが、TimberWolfが彼女の願いを聞き入れることはない。

 それどころかそのまま地形を滑り下り、勢いのまま突進してRiflemanとJagermechの間へ突っ込んでいく。

 

 間髪入れず、Arrow IVの第2射が再びRiflemanの胴部を直撃する。

 胸部の装甲が吹き飛び、むき出しになった内部機構が火花を吹く。

 追い打ちをかけるように、空から光弾が降った。

 砂嵐を突き破って、現れたドルマー達のレーザーが敵機の胴体を貫く。

 Riflemanが膝を折り、重力に従うように崩れ落ちた。

 センサーが熱源の急速な低下を示す。

 中枢が黙りこくり、巨人が一人静かな彫像になった。

 

──首狩兎が大将首を取った。

 

 戦場の航空優勢は相手のものだった。

 空の味方はドルマ―達4機だったが、相手は倍以上の数が飛んでいる。

 爆撃機にその護衛機と構成は単純な2種類だったが、その数がやっかいだった。

 その合間を縫って、砂嵐に紛れてゾリグが、ドルマ―達が飛んでいる。

 敵の爆撃機は止めなくていい。それがドルジの指示だ。

 彼らはそれを忠実に守り、味方の航空攻撃は、敵メックに集中している。

 その代わり、敵の航空攻撃はTimberWolfに集中していた。

 

 爆撃の煙と爆炎を突き破ってTimberWolfは戦場を突進し続けている。

 Jagermechの脇をかすめて通過すると、連装ミサイルの煙条を次の獲物、Dervishに向けた。

 アリマも彼の背中を追って操縦桿を倒す。

 

 戦場を跳ねるように逃げ回っていたDervishの後ろには、Fleaが貼りついていた。アレフだ。

 器用に機体を躱しながら、至近距離で圧をかけ続けている。

 

──この子も、勇敢すぎるのよね。

 

 ちょっと前まで工業用重機のパイロットだった子が、ここまでやるなんて。

 飼い主に似たにしても、世の中には限度というものがある。

 アリマはDervishの進路を読んで、その側面へと機体を滑らせた。

 自分の存在で気を引ければ、それでいい。

 少しでもアレフから敵の意識を逸らせれば、彼の生存率が上がる。

 

 だが、敵はもう逃げ腰だった。

 指揮官機を失った傭兵部隊は、明らかに壊走の兆しを見せている。

 

 ドルジがそれを許さない。

 長距離ミサイルの群れが砂のカーテンを裂き、いくつものレーザー光がDervishの背を焼いた。

 宙に浮いた機体が跳ねるように暴れると、砂煙を吹き上げながら斜めに傾いてそのまま落ちる。

 水平器を喪失して、最早立ち上がれる様子はない。

 

 計器に目を走らせる。アリマの機体には異常がなかった。

 次はKit Foxを助けないと。

 そう思って機体を旋回させる。

 

 ドルジが、TimberWolfの全ての火器を撃ち放っている。

 砂嵐の向こうに真っ白な閃光。

 

 アリマが彼のそばにたどり着いたとき、Jagermechは左胴部から爆煙を上げていた。

 足元がぐらつき、姿勢を失う。そして、砂の中に沈む。

 ブリキ缶のお化けは再建が不可能なまでに破壊されていた。

 

──勝った。

 

 一息つきかけた、そのとき。

 通信機が鳴る。バヤルの声だった。

『救助ヘリを回してくれ、パイロット負傷だ。ドルジ重傷。』

 TimberWolfの頭上でホバリングするヘリからの通信。

 目を凝らせば、確かに機体の頭部装甲は灼け、コクピットブロックが露わになっていた。

 砂嵐の中、TimberWolfはまるで彫像のように立ち尽くしている。

 

 コクピットの中の彼の姿はアリマからは見えなかった。

 でも、傷だらけの緑の巨躯は、間違いなく彼女たちのドルジの姿だった。

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