※この作品はR-18です。

Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants   作:Sykyu

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Ep.08_07

Mining district Medical Facilities

Esteros System,Alkahera

Jade Falcon

20 July 3151

 

 夜になっても、しばらくは日中の暑さが残る。

 エステロスの夏は、地域によっては陽が落ちた後も気温がなかなか下がらない。

 鉱山基地もそんな場所だった。

 この医療ブロックだけは年中空調が効いている。

 

 ドルジのケガの初期の処置は終わり、麻酔で眠りに落ちた彼は個室に移送された。

 ベッドの傍らにひとり残ったプリヤンカは、丸椅子に腰かけたまま、薄暗い照明の下で彼の寝顔を見つめていた。

 医官と相談して彼には睡眠薬を投薬した。

 そうでもしないと、彼はここに留まらないから。

 

 制服の襟元を緩めた彼女の姿は、いつもの若い眼鏡の少尉ではなかった。

 結われた黒髪が肩の上にかかり、深い褐色の肌が灯りに照らされて柔らかく揺れる。

 ノンフレームの眼鏡はその表情を覆い隠すことなく、彼女の目元の知的な寂しさを映し出していた。

 凛とした眉と、彫りの深い顔立ちが、静かな哀しみの色に染まっている。

 

 思い返せば、ここに来た最初の数日はひどいものだった。

 連絡員の肩書きを振りかざして、アリマと衝突し、バヤルに振り回された。ツェレンに困り顔をさせて、ドルマーに怒られた。

 夜のドルジに近づこうとして、部屋の中から漏れる迫力と神秘に負けて脚が竦んだ。

 

 気がつけば、寝不足で夢遊病者のようになっていた。アリマにバカにされて、トヤーに顔に落書きされて、ゾリグには寝ろ。って言われた。

 ツェレンが夜通し看病してくれていた。アンネが薬を口移しで与えてくれた。

 

──こんなはずじゃなかった。

 そう思うのに、胸の奥が穏やかだった。

 

 いつの頃からか、自分の言葉が、任務のためではなく、誰かのために出るようになった。

 

 もう、戻れない。

 

 この席をくれた彼が今、目の前にいる。

「好きにしろ。」

 着任したあの日、自由を与えてくれたのが、彼の一言だった。

 

 2度の出撃を経て、彼はまた傷だらけで戻ってきた。

 彼は寝顔さえ表情がないことに今更気がつく。でも、どこか穏やかだった。

 いつもならば、この場所はツェレンの席だ。

 だけど、今は違う。今は、プリヤンカがこの人のそばにいる。

 

 そっと彼に手を伸ばした。

 包帯に覆われた胸を、確かめるように指がなぞる。

 彼の体温が、生きていることを教えてくれる。

 

「……ありがとう」

 声に出したのは、自分でも驚くほど自然だった。

 誰かに聞かれる心配もなかった。

 彼の呼吸に合わせて、胸の奥のものが少しずつ溶けていく。

 

 この感謝が、彼の生還への感謝なのか、

 それとももっと個人的な事柄についての感謝なのか、

 プリヤンカ自身にも整理がついていなかった。

 

 プリヤンカは目を伏せた。

 なぜか、泣きそうだった。

 生きている。それが、ただ嬉しかった。

 

 彼女は何も言わず、椅子から立ち上がった。

 シーツをそっと直し、汗ばんだ額を軽くぬぐう。

 消灯の時間は過ぎていた。灯りを落として、そのままベッドの縁に腰を下ろす。

 指先で一度だけ、彼の髪をすく。

 

「……大丈夫。朝まで、そばにいるから」

 彼の手を両手で包んで、自分の頬に当てた。

 

 彼の指が微かに動く。

 それが夢の反応であっても、構わなかった。

 

 プリヤンカは、そっと椅子から立ち上がった。

 静かに軍服のボタンに指をかけ、一つずつ外していく。

 乾いた銀の音が、病室の空気を細く震わせるたび、褐色の肌が月光にさらされていった。

 

 深く焼けたその肌には、無駄な贅肉は一切ない。

 けれど、肩の丸みや背中の柔らかい起伏は女の輪郭だった。

 

 シャツを脱ぎ、軍靴を外す。

 下着に指をかけ、ためらいをひとつ飲み込んでから、腰を滑らせるように脱ぎ捨てた。

 硬い椅子の上に、軍人としての殻が山をなした。

 

 結わえた黒髪が肩にかかる。

 彼の傍らにひざまずき、包帯の隙間から覗く肌に、そっと唇を寄せる。

 彼の鼓動を確かめながら、肌の温度を追った。

 

 指先で彼の腹部をなぞり、太腿をかすめる。

 肌に走る傷のひとつひとつに、目を伏せては静かに息を吐いた。

 ある瞬間、自分の手の中に、確かな熱があるのに気づく。

 まだ眠っているはずの彼の肉体が、彼女の存在に応えるように、静かに、しかし力強く反応していた。

 

 プリヤンカは、一度目を伏せた。

 

 深く息を吸い、身をかがめる。

 唇が触れ、舌が添い、口が彼を包み込んでゆく。

 喉の奥まで、何も拒まずに受け入れる。

 彼の鼓動を、その形を、その匂いまでも。

 

 眼鏡がかすかに曇る。息が乱れる。

 それでも、彼女は口を離さなかった。

 静かな音を立てて、彼を口で奉じ続ける。

 

 褐色の肌が汗を帯び、熱を帯びた肩と背に艶が増す。

 触れていないはずの胸が、彼の温度に反応して膨らみ、先端は張り詰めていた。

 

 彼が吐き出した熱を受け入れて、嚥下して、それを全身に染み渡らせる。

 

 一度、彼の昂ぶりが静まった。

 

 だが、プリヤンカは手を休めない。

 再び、口に含んで、舌を使って繊細に奉仕する。

 荒れる彼自身を豊かな胸の膨らみで柔らかく包み込んだ。

 彼の形は既にプリヤンカの全身に刻まれている。

 ドルジの目は閉じたままだ。だが、まるで眠りながらも彼女の存在を感じているようだった。

 その幻想にプリヤンカは悦んだ。

 

 朝が近づく頃、ようやく彼の熱が収まりきった。

 彼女は最後の白濁をゆっくりと受け止め、口を離す。

 唇の端に残ったそれを指でぬぐい、無意識に舌で舐め取った。

 

 そして、静かに彼の胸元に頬を寄せる。

 ぬくもりと共に伝わる、ゆるやかな呼吸。

 

 彼の手を、自分の胸のふくらみの上に置いた。

 もう、言葉はいらなかった。

 

 彼に愛を捧げるだけでは足らない。

 

──自分の全てを彼に捧げよう。

 

 この飢えにも似た感情をなんと呼べばいいのか。

 プリヤンカにはわからなかった。

 

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