※この作品はR-18です。

Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants   作:Sykyu

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Ep.08_08

Mining district

Esteros System,Alkahera

Jade Falcon

22 July 3151

 

 男、オーケ三十八歳。このたび無職と相成りまして候。

 二十余年、機械整備に身を捧げ、腕には多少の覚えあり。

 

──どなたか拾ってちょんまげ。

 

 なんて冗談も、今は喉から出てこなかった。

 出身惑星から百光年以上も離れた辺境の惑星で、あてなどあろうはずもない。

 顔の利く職人仲間も、声をかけられる古い顧客もいない。

 犯罪の香りがする仕事はいっぱいあったが、まだそういう仕事に手を染める覚悟はできなかった。

 久々に、フリーの現実が骨の芯までしみた。

 

 右の手のひらをじっと見つめる。

 整備用グローブの跡が、手首にくっきりと残っている。

 

──働けど、働けど。

 

 ふと、導かれるように、この鉱山基地へ足が向いていた。

 理屈ではなかった。ご縁、というやつだ。

 入り口で「ドルジちゃん」と口にしたら、警備兵に身構えられた。

 だが、続けて「ツェレンさん」「アンネさん」と添えると、警備の目がわずかに緩んだ。

 どうやら、本当に関係者らしい、と認識されたようだ。

 

 駐留棟が近づいてくる。知った顔がひとつ、視界に入った。

 軽く声をかけただけなのに、アリマに鋭い目で睨まれた。

「こんなところで何してるのよ」

 ピリッとした口調だった。

 だが、こちらも黙っているわけにはいかない。

「空港のベイでどっかの誰かが銃撃戦なんかするもんだからさ。俺、失職したんだわ。」

 努めて軽い口調を保ってみた。が、アリマの眉が一瞬ピクリと動いた。

「宇宙港で……銃撃戦?」

 すぐ隣で話を聞いていた眼鏡の女士官が目を見開いた。

「警察の取り調べで船が足止めされてさ。契約が切れて、そのまま契約終了。

 まだ船は戻らなくて、整備契約も流れて──気づいたら、こう」

 その場にぺたんと座り込み、バンバンと床を叩く。

 都合よくメカニックの求人があるはずもない。頼れる先も、心当たりも、ない。

「だから、拾ってくれって、ドルジに頼みに来た。」

 できるだけ胸を張ってみる。

 せめてもの虚勢だった。

 

 隣にいた眼鏡の女士官が、何かを言いかけて口をつぐむ。

 アリマが目だけで彼女と視線を交わす。

 二人のあいだに、何か言葉にならないものが流れた気がした。

 

 ドルジに会う前に門前払いされるかもしれない。

 ふと、オーケはそんな予感に襲われて、無意識に右手首の草の紐を指でなぞった。

 アンネに結んでもらったおまじないだ。

 

──草の色はご縁を意味する赤。

 

 その時、背後から足音が響いた。

「……班長?」

 振り返ると、知った顔がそこにいた。

「お前……どうしてここに?」

「気がついたら、なんか……足が勝手に」

 

 それから、まるで何かの合図のように次々とひとり、またひとりと、かつての仲間たちが鉱山基地に集まってきた。

 歩いてきたやつ、車両を調達したやつ、集団で来たやつ。

 誰も彼も、草の紐を腕に巻いていた。

 オーケは、もう一度自分の右手首の草の紐を眺めた。

 

 今回も、また効いたらしい。

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