Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Mining district Medical Facilities
Esteros System,Alkahera
Jade Falcon
22 July 3151
医療ブロックの廊下は静かで、鉱山の音が遠くからかすかに聞こえるだけだった。
アリマはプリヤンカとオーケを伴って、その廊下を歩いていた。
オーケの足取りは落ち着きがない。
緊張というより、ある種の居心地の悪さが滲んでいた。
「落ち着かないなら、わざわざ来なくて良かったんじゃ...」
アリマが言うと、オーケは肩をすくめる。
「いや、礼節ってやつさ。」
こういう時だけ、やけにマジメなのがこの男らしい。
病室の扉は開いていた。
ベッドの上には、包帯だらけのドルジが横たわっている。
彼は入院一ヶ月じゃ済まないくらいの大怪我だった。
火傷と骨折と……あとなんだったかしら?
どうやらちょうど回診中だったようだ。
病床の横では、担当医のシタが身を乗り出して彼の脈を取っていた。
前向きに屈んだ姿勢のせいか、彼女が開いた第一ボタンの隙間から、褐色の肌をちらつかせながらドルジに体を密着させているように見える。
その脇には、付き添うように副官のツェレンが椅子を引いていた。
そして、見覚えのある体格と声。
「……艦長?」
後ろからオーケが驚きの声を上げる。
「おや、お前さんもこっちに来たか」
いつもの調子で、オスキャル艦長は笑っていた。
軽く振った彼の腕にも整備員たちと同じような草の紐が結ばれている。
「船がまだ警察に押さえられてるからな。ちょうど、“空港襲って奪還しよう”って話をしてたとこだ」
そう言って艦長が豪快に笑った。
本人は冗談のつもりらしいが、それを聞いたプリヤンカの顔が見る見る青ざめていく。
アリマはオスキャルを睨みつけた。
空港の封鎖を突破して、降下船に乗り込んで、そのまま星系脱出。
そんな作戦を立案するの、私イヤよ?
ドルジが本気でテロリストになると言うのなら、地獄までだって付いて行くけども。
プリヤンカの反応に満足した艦長の視線が、ドルジの包帯へと向く。
「それにしても、こりゃまあ……ずいぶんグルグル巻きだな」
そして、ふと思いついたように、にやりと笑う。
「そうなると......夜の方は、さすがにお休みかい?」
「えっ……」
艦長の声に室内の女性3人が一斉に反応して、室内の空気が変わる。
声を出したツェレンが慌てて顔を背けた。
プリヤンカは両手を口に当てて、顔を真っ赤にしたまま凍りついたように固まっている。
シタが何も言わず、白衣の下に着たシャツの開いていた第一ボタンを指先で留め直していた。
彼女達の様子を見て、艦長はぽつりと呟く。
「……増えてるじゃねぇか」
その呆れと驚きの入り混じった声に、アリマは溜息をつきたくなるのをこらえた。
──どうして、私じゃないの?