Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Mining district Cabin
Esteros System,Alkahera
Jade Falcon
24 July 3151
最近、プリヤンカとアリマの距離が急激に近づいた。
彼女の軍閥への帰属意識の消失からだろうか。以前まで感じていた壁のようなものが無くなった。
こうして休憩している時、プリヤンカはアリマを姉のように扱う。
無防備に、お互いが振り向けば、唇が触れ合いそうな距離まで寄ってくる彼女の横顔を、アリマは拒むことが出来なかった。
「ドルジと夜を過ごすのは最初はビビってたけど、案外普通で安心したわ。」
アリマはふっと笑って、そう漏らした。
もっとお互いの体力の限界まで、抱き合う覚悟をしていた。
プリヤンカには杞憂の原因が自分だという自覚はなさそうに見える。
「私は普通が良くわからないですが、本当はもっとママみたいに彼と向き合いたいです。」
アリマとドルジとの関係に発展したのはごく最近の話。
長らくプリヤンカとドルジの関係に指を咥えていたが、ようやく追いついた。
今日のアリマはお茶よりもお酒が欲しかった。
アリマはカップを置くと不満そうなプリヤンカに少しだけ笑ってみせた。
「ツェレンみたいにねぇ…」
──羨ましいこと。
アリマはチラッとプリヤンカの胸の部分を確かめた。
休憩中の彼女の制服の胸元は、第二ボタンまで外れていて、白いシャツの生地が覗いている。
そこから透けて見える黒い下着と褐色の肌の柔らかさはアリマも知っていた。
「ドルジはいつも後ろから入って来るんです。」
プリヤンカには逃げ癖がある。
ドルジが彼女の胸に差し伸べた手を避けて背を向けているのだろう。
彼からしてみれば、彼女の身体を背から弄るのは必然だ。
プリヤンカの不満は彼のせいではない。
「最近は逆さにされたり、膝の上とか、窓とか壁に押し付けられたり、もうベッドの上じゃないことの方が多くて。」
──ちょっと待って。
プリヤンカの口から洩れた情報を処理しきれずに、アリマは思考を解いた。
混乱で制止のチャンスを逃す。
この娘が漏らしてるのは不満ではない。惚気だ。
「彼が腕をこう引っ張ってくれるのが好きなのに…」
プリヤンカが腕を背に回して浮かして見せる。
少し無理のある姿勢なのだろう、表情に苦痛が頬に朱が混じる。
「すごく深く、強く求められてる感じがして、つい……。」
それでも彼女は嬉しそうに語る。
アリマはその姿に戦慄した。
彼女の不満はアリマにとっては羨望だ。
「あなた……ついこの間が初めてだったのよね?」
「はい、そうですけど……何か?」
わずかに開いたままの深いオリーブ色の唇が強烈な色気を放つ。
「体力、厳しくない?」
「はい。でも……愛してますから、彼の全てを受け止めようと思っています。」
頬を染めたプリヤンカは誇らしげだった。
幸福と自信に満ちた彼女の笑顔にアリマは言葉を失う。
プリヤンカの姿がツェレンと重なる。
ツェレンのことは最近ようやく、理解ができるようになった。
彼女はただ肉欲に耽ってるだけの愛人ではない。
あの晩、エステロスに向かう降下船の士官室で、最初にツェレンが彼と身体を重ねた晩に、ツェレンはドルジの意志の全てを察したのだ。
そして、彼女は彼の副官として彼と部隊の責任と役割を分け合うことをその時に選んだ。
身も心も全てを彼に捧げることを選んだのだ。
彼と彼女の仲はそれ以来誰にも引き裂けなくなった。
あの薄い壁一枚がアリマとツェレンの差だった。
今のプリヤンカは『母』の献身も見習おうとしている。
全身全霊をドルジに捧げる覚悟はツェレン譲りだ。
アリマの目から見たツェレンの継承者の姿は眩しい。
とてもではないが、追いつける気がしなかった。