Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Mining district
Esteros System,Alkahera
Jade Falcon
6 August 3151
『TimberWolfが出るぞ。』
Flea、KitFoxの2機に続いて、TimberWolfが静かにハンガーから身を離す。
格納庫の隅々まで、警告音とランプの光が響き渡った。
重たい金属音と共に彼が格納庫の外に出ていく。
庫内を見下ろす作業用通路から、3人の女が様々な胸中でそれを見下ろしている。
提案したのは確かに彼女だった。
でも、こうして胸を引き裂かれそうな気持ちで彼を見送るのも同じプリヤンカだ。
自信を持って攻勢の提案をした。
しかし、日が進むにつれて、それは崩れた。
前提も計画も当初に彼女が考えた内容ではなかった。
風に揺れる漆黒の衣がプリヤンカの視界に入った。
困窮した娘に母は助言をしなかった。
神域の扉は開いてくれたが、神託を請うた彼女に、アンネは静かに首を振った。
幻視も占術すらも与えなかった。
沈黙の意味を、プリヤンカは理解している。
彼女の異能は困った時の打ち出の小槌ではない。
アンネには神秘術者としても、母としても心苦しい決断をさせてしまったのかもしれない。
ドルジの愛人としても。
あの日、プリヤンカと唇を重ねたアリマはゾリグと共に情報収集に出てしまい、昨晩まで戻らなかった。
戻ってきた彼女と言葉を交わせたのは、わずかな時間でしかない。
いよいよ窮したプリヤンカがドルジに提案した作戦は随分と強引なものになった。
敵の攻撃は今回もTimberWolfが引き受ける。
車両とFleaで攻撃ポイントを探り、ArrowⅣで叩く。
敵の指揮所を破壊して撤退する。
天気は快晴。現地の視界も良好。身を隠せる環境はない。
策ではなく、ただの力押しだった。
プリヤンカの中の女は却下を望んでいた。
視線の先でTimberWolfが遠ざかる。
重傷3ヶ月。そう診断された彼を、プリヤンカは1ヶ月も経たないうちに戦場に戻す。
部隊員の生命を預かる彼女に「人でなし」と罵られたとしたら、プリヤンカは頷くしかない。
隣で立ち尽くすシタの表情をこっそりと伺う。
胸の前で組んだ彼女の手が震えていた。
それでも医官はプリヤンカと目が合うと、声は出さずに「大丈夫よ」と口だけを動かした。
アリマは今回も戦闘ヘリで出撃した。ツェレンも格納庫で出撃の時を待ってる。
でも、この作戦でのプリヤンカの出番は終わりだ。
彼女にできることはもうない。
待つしかない。見送ることしかできなかった。