Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants 作:Sykyu
Washout
Esteros System,Alkahera
Jade Falcon
6 August 3151
2両の車両を追うように、脚の速いFleaとKitFoxが戦場に駆け込む。
先頭を行くの装輪偵察車をを駆っているのは、いつもなら空にいるゾリグだった。
砂煙を立てながら、地形に沿って2機の軽量メックを誘導する。
通信機と電子機器を満載しているとは言え、大砲を積んだ2脚歩行のメックと比べれば遥かに軽量な車両は砂の上を滑るように走っていた。
後に続く2機のメックはゾリグの指示に従って、少ない起伏や盾に出来そうな希少な地形に隠れながら前進を重ねている。
アレフは上空を警戒するように見上げた。
彼らはかつて味方のミサイルキャリアーをローリング・ストーンズのLongtomの砲撃で一瞬にして潰されている。
目視してからの回避では遅いかもしれない。それでも、何もしないよりはマシだと信じるしかなかった。
少しでも弾着地点から離れることができれば、生存率はその分高くなる。
その考えが正解だったことはすぐに証明された。
最初は空に浮かぶ小さな黒点だった。
しかし、すぐにそれは戦闘機の編隊だとわかる大きさになる。
気圏戦闘機コルセア、6機がまっすぐアレフ達に向かって来ていた。
「トヤー、上空に戦闘機がいる。警戒して。」
『え?どこどこ?』
方角を言い忘れたことに気がついて言い直そうとした。
しかし、それよりも先に太いレーザーの束がKitFoxだけに襲いかかる。
トヤーが咄嗟に機体の左胴を岸壁に向けた。
機体の両腕で光線の雨からArrowⅣの発射器を庇って護ろうとしている。
だが、容赦なく降り注ぐ無数の光条に四方六方から灼かれたKitFoxの腕や脚はあっさりと捥げて落ちた。
『ヤダヤダヤダぁ』
通信機の向こうから聴こえたトヤーの悲鳴と泣き声は一瞬で途絶えた。
次の瞬間、Fleaの背後から巨大な衝撃が走る。
機体表面の視覚センサーが一瞬だけ全てダウンするほどの閃光が機体の外を吹き荒れた。
それでも、敵の戦闘機小隊の反復攻撃は止む様子がない。
「KitFoxに攻撃が集中している。救援を!」
そう、アレフが通信機に叫べたのは、翡翠色だったトヤーの機体が焼け爛れた赤と黒に染まった後だった。
今回の爆発した弾頭のサイズは前回の比ではない。
機体の右胴の装甲が内側から捲れ上がって、中の損壊した機構が剥き出しになっている。
ArrowⅣの弾薬庫が誘爆した跡、目を背けたくなるような惨状に既視感を覚えた。
残った装甲の色合いは、かつてトヤーが乗っていたJennerIICと酷似している。
機体中央の核融合炉の唸りは止まり、冷却剤が滝のように漏れ出していた。
機体の外からの熱と弾薬の誘爆で焼き尽くされた廃墟。
上半身の重量を支えきれなくなった両脚が激しい音を立てて折れる。
鉄屑となった機体が大地に落ちて最期の悲鳴をあげた。
Fleaの聴覚センサーが何かが潰れ、ひしゃげるような金属音を拾い続ける。
KitFoxの完全沈黙をアレフが報告すると、通信機の向こうから合流の指示だけが返ってきた。
アレフは一度だけ、KitFoxを振り返る。
機体の一部が放つ、翡翠の輝きに目を奪われた。
KitFoxの左肩から飛び出た発射筒。
トヤーが必死に庇ったそこだけが本来の機体色を保っていた。