※この作品はR-18です。

Battletech:Tales of Jade Falcon Remnants   作:Sykyu

93 / 281
Ep.10_05

Washout

Esteros System,Alkahera

Jade Falcon

6 August 3151

 

『ヤダヤダヤダぁ!』

 アリマは通信機から聴こえるトヤーの悲鳴に耳を塞ぎたくなった。

 通信機のチャンネルを切ってしまえば、聞こえなくなるが、彼女はそうしなかった。

 アリマの意思に反して、通信は向こうから切れる。

 アレフの救援要請の直後に、KitFoxの映像が届いた。

 機体の全体の惨状の割に左胴がきれいに残っている。

 もう、どうにもならない。それだけは、わかった。

 

 ドルジ暗殺計画、核保持疑惑、アンネの排除......

 ドルジの部隊は、いくつもの謀略に晒されていた。

 ローリング・ストーンズの狙いを調べると、彼らの狙いは核発射の阻止だった。

 ArrowⅣ発射器が狙われている。

 ゾリグと共にその結論に達したアリマはそれを利用することにした。

 

 KitFox、Fleaには囮を引き受けてもらう。

 司令所の破壊には、アリマとバヤル、それにドルジが向かう。

 それが、アリマとゾリグの作戦だった。

 ドルジが珍しく、作戦の内容に難色を示した。

 彼の説得はアンネの力を借りた。

 

 プリヤンカにはこの作戦を伝えていない。

 このことは伝えないで欲しい。とアンネからドルジを説得する際に交換条件を出された。

 彼女の意図はわからない。でも、アリマはそれを承知した。

 

 ゾリグが囮集団の先頭を引き受けることになった。彼はまだ健在だ。

 全部隊へ下達された集結の指示に逆らって、1両で敵の白いメックに向かっている。

 

『砂嵐だ。予定より早い。マズいぞ。』

 通信機からゾリグの声が割り込んだ。

 基地の天気予報は快晴だった。まちまちの砂嵐予報は当てにならない。

 だから、ゾリグとアリマは古来の方法に頼った。

 数十年分の気象記録と現地調査、衛星画像の解析を一晩でやった。

 

 操縦桿を前に倒した。

 目的の司令所は1つ、目の前の2棟の背の高い建物のいずれかだ。

 迫る砂嵐に覆われてしまえば、識別はできなくなる。

 短いやり取りだけで、アリマとバヤルは分担してそれぞれの目標を決めた。

 

 背後からのTimberWolfの長距離ミサイルの援護を信じて、機体の速度をどんどん上げる。

 迫る砂嵐よりも早く、走査器のセンサーを建物に向けなければならない。

 

 焦るアリマの機体のすぐ横をTimberWolfの放ったミサイルが追い抜いていった。

 連続して命中弾を受けた紫色のGunslingerがバランスを崩して倒れる。

 既視感を覚える光景にアリマの口元が緩んだ。

 地面に倒れたGunslingerのほとんど真上を飛び越して、機体をホバリングさせる。

 

 残り時間を考えれば、破壊に時間を費やせるのは1棟分。

 上空で待機しているドルマ―とツェレンの航空攻撃とドルジのTimberWolfの一斉攻撃で終わらせる予定だった。

 敵飛行小隊の追撃から逃げる時間を考えても、チャンスはただ一度きり。

 目的の建物に接近して走査器のスイッチを入れる。

 

 しかし、無情かな。識別が終わる前に機体も建物も横から砂嵐に呑まれた。

 目の前の建物が目的の司令所かどうかの判別は付かない。

 バヤルも間に合わなかった。

 ただ壊すだけでは意味がない。証左が必要だった。

 

──何か手はないか?

 

 焦るアリマの耳元にドルジの声が聞こえる。

 

 撤退命令だった。

 振り返ってみればTimberWolfとFleaは既に後退を開始している。

 

「プリヤンカ、輸送ヘリを回して!KitFoxのところに!」

 機体を後退させながら、後方にいるはずの彼女に向けて通信機越しに叫ぶ。

 もし、運が良ければArrowⅣの発射機だけでも回収できるはずだ。

 

 負けるも諦めるのも嫌だったが、これが今のアリマにできる精一杯だった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。