才能の卵を孵化して最強って母性の発露は聞いてない 作:鴨鶴嘴
ある日のこと。
海でたくさん遊んで宿へと戻る車内で、いつかみたドラマのワンシーンの真似をして浜辺で拾ったキレイな貝殻に耳を欹てていると波の音が聞こえてくるように、俺は暗闇の中で波音を感じていた。
この暗闇の中は温く穏やかで、とても居心地がいいけれど、意識が芽生えてから浮上を始めたイメージは、俺を暗闇の外へと誘っていた。
「……ここは……?」
浮上して凪の湖に揺蕩うように、目覚めた俺は裏返った自分の呻き声の調子に違和感を覚えつつ、目の前の知らないはずの天井に既視感があることを不思議に思っていた。
……どうも頭の働きが鈍いようで、ぼんやりと時間が流れていた。
このままではいけない!と決意を持ってベッドの微睡みの誘惑を振り払って上体を起こそうとして──軽やかに上昇した体は半回転して、俺は部屋の全体を天井から俯瞰していた。
「わっ……え?」
そこには、ベッドの上で寝息を立てているシャロンさんの姿があった。
「……ママ……ママ?」
あれ……どうしてママなんて……ダメだ……体から離れていると、思考が。
「……ん……あら?起きてしまったのですね。まだ、私の中に戻ってしばらく休んでくださいませ」
ボサボサな髪で寝惚けているシャロンさんが、天井に漂う俺に両手を広げると、月程度の重力を思い出したように俺の体はシャロンさんの腕の中へと収まって、甘い香りのする柔らかい胴体に抱き着く小さな俺は波音のようなシャロンさんの心音に安らぎを覚えて──再びシャロンさんの中へと沈んでいった。
「テオ君は、私が守ってみせます」
白銀に輝く指のタトゥーに頬擦りをして、おやすみのキスをしたリップ音を最後に、部屋に静寂が戻ったのだった。
◆
国立セレスティア女学院では、初夏の時期になると普段は全寮制で生活をしている生徒達が帰省をするか寮に残って過ごす十日間の休み期間があり、その日が三日後に迫っていた。
けれど、アイシャと一緒に近くの森で遊ぶのが楽しみだと素直に喜べないでいるのは、聖書の内容と教会について問い質した冒険者ギルド側の返答が、王命をチラつかせた『教会に従ってほしい』の一点張りだったからだ。
誰でもいいから、助けてほしい。
待機部屋という名の檻の中で、解決策が浮かばなくて孤独感に押し潰されそうになっているとき、俺の手の甲にあった金色のタトゥーの一つから精霊が誕生した。
……精霊の卵が孵ることで新たに得た才能を自覚する瞬間は祝福のようなもので、いつだって誕生には喜びが伴っていた。
けれど、『自分の記憶を相手と共有する』才能を持った白い烏が、協力者になって欲しいと強く願っていたシャロンさんの元へと壁を透過して飛び立ったとき、俺は全力で走って烏の背中を追いかけていた。
そして、廊下の角を曲がった先では、本や紙の束が床に散らばっていて、腰が抜けて座り込んだ様子のシャロンさんの後ろ姿を見つけたとき、俺は下唇を噛んだ。
「シャロンさん」
「……ぁ……ついさっきまで、優しくしてくれた人がいたのに、空が鋭く緑色に光って、街が燃えて、巨大な穴の中に……あれは、石?……精霊って、神様が人の姿を──」
取り乱して早口で涙を流すシャロンさんの唇に、俺は人差し指を押しつけた。
「それ以上はいけないよ」
猫箱は、一度開いてしまえば、そこには猫の死体があるだけなのだから。
「どうしましたか、急に慌てて走り出して」
「やぁ。悲鳴が聞こえたら、シャロンさんが躓いたみたいでさ」
後から遅れて駆けつけたアイシャに片手を上げていつもの調子で簡単な挨拶をして、俺はシャロンさんの落とした紙の束を拾い集めて手渡しした。
「少し、汚れちゃいましたね」
◆
仕事を終えて帰宅すると、遮光カーテンを閉め忘れた部屋には夕日が差していて、伸びた黒い影とオレンジ色に照る床の寂しさが金曜日の俺を外へと追い出した。
夏だというのに、コンビニのホットドリンクコーナーの前で立ち止まっていると、女性の店員に「大丈夫?顔色悪いけど」と声を掛けられて、ハッとした。
「お腹の調子が悪くて……」なんて適当な嘘で誤魔化しつつ、はちみつレモンのドリンクをレジへと持っていくと、「お腹、お大事にねー?」と笑顔で手を振ってくれたのがとても嬉しくて、その女性はどこかで家庭を持つ五十代の主婦に見えたけれど、頭の中では初恋をしたときのように妄想でその人にする告白の言葉を考えては遊び、腹の底を温めて舌に残る甘いレモンの風味によって、いつの間にか心が上向いていた。
もしも俺が別な人生を送るなら、接客業であの人のように誰かに優しく出来るようになりたいな、なんて漠然と考えていた。
だから、燃え盛るクレーターの中で鉄隕石の欠片を拾い、俺という存在が物質の内側に宿る悪魔のような『未知の何か』と混ざってしまったことで、体が『未知の何か』が本来在るべき亜空に沈んでいくとき、もしも異世界にも人の営みがあったのなら、『あのときの女性のような男になること』を自分の生きる目標にしたのだが、『未知の何か』はそれを、俺の『最初の願い』として聞き入れたのだった。
・・・・・。
人の歴史の中では神秘のように秘匿され、聖書にその名残がわずかに残る程度ですが、かつてはそのシステムを『勇者機関』と呼んでいました。
……秘匿されていると言っても、長命な種族達と魔大陸の者達は、その限りではありませんが。
それよりも、面白いことになりましたね。
記憶を共有することで、個人を精霊として複製してしまうなんて……もはや偶像の範疇を越えていると言っても過言ではありません。
さて、私はこれからどうしましょう?……なんて、今はこうして、信者達の目を通して見守ることしか出来ないのです。
はぁ……。
『テオ君のお餅みたいな頬っぺた、ふにふにの腕……かわいい♡』
……私もふにふにしたい。
◆
塵一つ漂わない澄んだ空気の早朝の礼拝堂に、俺と教師達が女神様の像の前で事前の約束通りに集まっていた。
女学院が休み期間になって、既に手の甲にタトゥーのある生徒達は昨日の内に帰省するか、帰る予定の無い生徒達は寮の自室にいて、礼拝堂や中庭の周りに来ることはないとシャロンさんから聞いている。
中庭では、あらゆる武器を器用に使いこなすアイシャが木刀で素振りをしている頃だろうか。
「あなたに女神様の祝福があらんことを」
チュッ、チュッ、チュッ……。
「我々と同じく、祝福された皆さんが新たにこの流れの中に加わることを喜ばしく思います。ですから、洗礼をもって歓迎致します」
シャロンさんが祈るように両手を胸の前で握ると、他の先生達の手の甲に浮かんだ金色のタトゥーが輝き出す。
シャロンさんから、一瞬死んだ目をしていた男の子の精霊が飛び出して、先生達の手の甲で疼くタトゥーを撫でていった。
……シャロンさんが精霊で得た才能は、金色のタトゥーを持つ者達とシャロンさんが霊的に繋がってネットワークを構築する才能だと聞いていたが、大人達が頭を抱えて泣き出して「ああぁ!?どうかっ、お許しくださいっ!?」と俺の足に縋りついてくるのを見て、どんな毒電波を受信したらこうなるんだよ、とドン引きした。
「……よく分からないけと、許してあげてほしい」
「さすが、テオドール様ですね。お優しい……そう思いますよね?」
真っ赤な顔はあらゆる体液がドロドロと溢れてそこに大人の尊厳はなく、「ありがとうございます」と繰り返すロボットのようになってしまった姿をみて、やりすぎだとシャロンさんを睨むと悪戯がバレた子供のように肩をすくめていた。
……でも、シャロンさんが積極的に協力者になってくれたおかげで『地上に神が人の姿を借りてお現れになられたとき、それを夫として多くの精霊や子を成すことは、最上の奉仕である』なんて聖書にある、俺の倫理的にアウトな行為を教会や冒険者ギルドから望まれて圧力が掛かろうが無視が出来るようになったので、女学院にいる残り一年と少しの間を乗り切る希望がようやく見えてきた。
「……本当にそう上手くいくのかな?」
子供にしては落ち着いているシャロンさんの精霊がボソッと呟いて俺の手の甲に残る金色のタトゥーに触れた瞬間、パッ、と頭の中が白んで困惑し、記憶の前後が抜け落ちたような気がした。
「あれ……今俺ってなんかした?」
「教師達への祝福が終わったところです。テオドール様も、今日はお疲れ様でした」
「ああ……そうだった。お疲れ様」
服が少し乱れていたり、ぐったりと伏している教師達のことが少しだけ気になったが、大丈夫だと言っていたので、彼女達も大人なのだからそれ以上は何も言わないことにした。
そして、ふわふわとした足取りで礼拝堂を出ると、すっかり高い位置の太陽が中庭の校舎に囲われた隙間の青空に輝いていたのだった。
・・・・・。
「いや、さすがにおかしいだろこれはっ!」
「あっ、暗示をかけたのにバレてしまいました♡」
回れ右をしてシャロンさんに追及すると、シャロンさんを含めた教師達が一斉に裾をたくし上げて、大量に濃厚な精液を中出しされてトロリと白濁としたいろんな体液が混ざった汁を垂らすおまんこが並んでいた。
「すみません、テオドール様。無責任なことはしたくないお気持ちはよく分かるつもりですが、生徒達全員にタトゥーを刻むことと、教師達がテオドール様の子を孕む努力をすることは最低条件なんです。私達はテオドール様の子を孕む健康な母体として国から選ばれたことが本分で、教師としての仕事はあくまでおまけなんです」
「……なんだよそれ」
「シャロンさんの言うことは全て正しいです。私達はテオドール様こそが、この時代の神の寵児、邪悪な魔王にも世界を救う勇者様にもなりうるお方だとシャロンさんを通じて確信しています」
「私達の国では、テオドール様の子を孕むことは、国からの恩恵を得られる大きなステータスになるんですよ。ですから、罪悪感を覚えることはありません。むしろ、素晴らしい社会奉仕なんです」
黒髪を結い上げた夜会巻きに四角い眼鏡を付
けて、理知的な雰囲気のリズさん。
癖のある茶髪が大きくて垂れた犬耳のようで、人懐っこい雰囲気のミシェルさん。
そんな二人が陰毛の生え揃ったおまんこから俺の精液を垂らしているのを見せつけながら、この行為の正当性を訴えかけてくる。
「テオドール様、どうか私達の本心を受け取ってください」
言いながら、シャロンさんがたくし上げていた服をさらに持ち上げて、美しい裸体が露になると、頭の中にいろんな声が響いてきた。
──あぁムラムラする……早くその太っとい指で私のまんこホジッてよ♡
──テオドール様は意識を失っていただけで、これは用意していた偽の精液ですよ~♡
──あっ!バラすのが早いですよ、もうっ……テオドールさまの寝姿をみて自慰行為をしていただけですので、テオドール様の子を孕みたい淫乱愛液泡立ち処女おまんこだと気づかれてしまいました♡
──痛いぐらい乳首摘まんでベロチューしながら中出ししてっ♡
──先生達ずるいですっ!卒業したら成人扱いになりますから、卒業式の日は予定空けておいてほしいですっ。
──私、家に帰って話したら、パパから孕んできなさいって言われました。なので、今度待機部屋に行きますね。
──こんなことはいけないと教わってきたのに……みんなズルいです!私だって……。
・・・・・。
「テオドール様、洗礼の対象には、テオドール様の意識も含まれているんです。手の甲に現れている金色のタトゥーが消えたとき、私達のこの裸な心の繋がりも消えてしまいます。ですが、どうかその前に私達の本心からの願いを、テオドール様の人類を救う使命を受け入れてほしいのです」
どうやら俺は、本心からの願いというものに弱いらしい。
……そうして俺は、この宗教を受け入れた。
ばるんばるん!と腰を振る度にリズさんのおっぱいが円を描いて揺れて、眼鏡を外すして横に置き、涙目で舌を出す口を躱して乳首を摘んで引っ張り、リズさんの膣がキュンキュンと締め付けてくるタイミングで、精を吐き出す。
ビュルルルルルルッ!!
「キス、ほしかったのに……」
中出しをした後のチンポをリズさんの口に近づけると、咥え込んでピカピカに磨いてくれたので、頭を撫でた。
「それはまた今度ね」
ぬっぷ、ぬっぷ、ぬっぷ……プシャァーーッ。
「あーーまた大きい波きちゃう゛っ♡いぐいぐぅ!!あひぃぃあっ♡」
リズさんが献身的なお掃除フェラをしている間、ずっとねちっこく手マンをしていたミシェルさんが三度目の絶頂を迎えて余韻に浸っている中、両足を引っ張って潮の水溜まりから引き寄せて、蛙の交尾のように背後から覆い被さるように挿入したのだった。
次で最終回にします。