人生舐めてるちょいエロ系女性配信者が自分の意志でザーメンジョッキを一気飲みするまで。 作:鬼金目なむか
「っうううう……ふぅっ、ふぅっ……」
(やだ!! 絶対にいやだぁぁああぁぁ!!)
もう泣きじゃくりながら口に近づける。手が震えて、ジョッキの縁からこぼれる寸前の精液がぷるぷる揺れる。
まだ一滴も飲んでないのに吐きそうだった。おっさん達はずっと楽しそうだった。アタシが嫌がってるのが嬉しくて仕方ないんだ。
(なんでアタシがこんなことしなきゃいけないんだよ! 自業自得だけどさ……だからって納得できねぇよ!)
ザーメンジョッキはまさに目と鼻の先だった。涙といっしょに出てくる鼻水すすったら強制的に掃きだめ臭が鼻のなか犯してきた。嗚咽を飲み込んで、液体の飲み方を思い出しながらジョッキの縁に唇をつける、その寸前で、
──ずばんっ!
と背後で勢いよく襖が開いた。
びっくりして手が止まる。急制動にジョッキの精液がぶるんっと揺れた。
「貸して」
アタシの真後ろから女の人の声。その声は静かだったのに、ザーメンジョッキの臭さも、おっさん共の粘つくような視線の不快さも、ぜんぶ吹っ飛んだ気がした。
「は? ぅえ?」
アタシがふり向くとすんごい美女が立ってた。
(え、誰? 背たかっ。顎細いし鼻きれー……髪つやつや、光ってる……ボブかわい……室内なのにサングラス? 女優?)
闖入者に混乱しつつも見惚れる。情報多い。おっさん達も同じなのか絶句してた。
「──あっ」
なんてアタシがフリーズしてる間に
そして、
ぢゅるっ──
と啜り音をたてるとそのままジョッキを傾け、んぐっんぐっんぐっと喉を鳴らしてすごい勢いでどろどろの精液を飲み始めた。
「えっ? え? ちょ、ぃや、え?」
混乱が重なってわけわかんなくなる。
ぷるんとした唇に黄色みがかったくっさい精液がどんどん流れ込んでいく。細くて白い首の喉仏が、こくこくと動く。
ジョッキの角度がどんどん上がり、中身が彼女の身体の中に入っていく。
(いやビールじゃねぇんだぞ!? 口の横、陰毛引っかかってるじゃん! なになに何なの? どうなってんの、てか誰? 隣の個室の人? ってかなんでこんなもん飲めるんだよ意外と美味いのか!?!?)
美女がジョッキを口から離すと、唇の周りについた精液をぺろっと舐め取った。
「んくっ……ふぅ♡」
その仕草があまりにも色っぽかった。
(な……なんだこのひと……)
アタシはぽかんと口を開けてた。おっさん達も同じだった。
「ッ……失礼」
ザーメンジョッキを飲み干したVOGUE美女は、表情ひとつ変えず呟くと口元に手を当てた。
そして、
──げぇえ゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙ぇッ!!!
と盛大にげっぷした。
もうね、どんだけ混乱させたらいいんだこいつは。
女優かってくらいの激美女がウシガエルみたいな音響せて、夢か? 夢なんか? って本気で思った。
視界の隅にさっきまでこの人がいた隣室がみえて、黒い目隠しとボールギャグ? みたいの着けてちんちん丸出しの男が並んでた。やな夢すぎる。
「……これあなた達のザーメン?」
ハンカチで口元をぬぐってから、美女がおっさん達を責めるように一瞥する。
「そ、そうだよ。俺たちで一生懸命集めたザーメンだよ」
「そう……」
短い返答だったけど、サングラスの奥の目がギラリと鈍く光ったような気がした。
「はぁぁ……こんなコンディションで女の子に飲ませようとしてたなんて正気? 崩れやすいのに粘度が高くて口の中が一瞬で詰まった下水管。香りも最低。トップは強烈なアンモニア、ミドルは乳酸腐敗、ラストは油膜感でべっったり。……要するにヘドロよ。ザーメンは内臓由来の抽出液。テロワールはあなた達の身体そのもの。飲ませたいならまず生活すべて見直しなさい」
一気にこき下ろされて、おっさん達が唖然としてる。
「いや……っていうかあんた誰だよ!」
気圧されてたおっさんのひとりが唾を飛ばす。アタシも気になる。
VOGUE美女はサングラス越しでもわかる冷ややかな視線を返した。長い指にひっかけた空っぽのジョッキが不機嫌そうに揺れてる。
「今わたしが誰かなんてどうでもいいでしょ? ……はぁ、でも気になって話が入ってこないみたいだから答えてあげる。わたしは通りすがりの食ザー動画配信者、
「……」
「……………」
「……………………」
本当にそれ以上説明しなさそうだったのを察したおっさんが口火を切る。
「……しょ、食ザーってことはあれかい? 飯にザーメンぶっかけてそれを食べたりする罰当たりなアレか?」
なにその最低なプレイ……ってか罰当たりってお前らが言うのかよ。
「そうよ。罰当たりなのは否定しないわ。残したことはないけれどね」
「……まあそれはいい。じゃあよ、アンタも見栄えするくらいの量のザーメン集める大変さは知ってるよな?」
「ええ、もちろんよ。このコ達にはいつも感謝を伝えているわ」
このコ、と言うときに、ちらと後ろを示した。隣室の目隠し全裸男性たち。いつまでああしてるんだろ。なんか勃ってきてるやつもいるけど、放ったらかされて興奮してんのか? キモ……
「じゃあ……アンタ──リサさんもわかるだろ? さっきアンタが飲んだザーメンは、ここにいるアンナちゃんに飲んでもらうために俺達全員で丹精込めて集めたもんだ」
熱く語るおっさんの言葉にアタシは、ぶるっと震えた。こいつらがアタシのこと思い浮かべながらちんこシコってるとこ想像してしまった。おぞましすぎるだろが……
「ん……それはそうね。成人男性の1回の平均射精量で考えると、だいたい約150発分必要ってことになる。途方も無いわね」
「わかってんじゃねぇか。……ならよ、俺達がどれだけ今日を楽しみにしてたかわかんだろ? かわいくておっぱい大きくて世の中舐めてるアンナちゃんが泣いて嫌がりながらザーメンジョッキ飲むこの日をよぉ!」
なんでそんな最低なことはっきり言い切れるんだよこいつは……。反吐が出るってこのことかって思った。今こみあがってきてるこれが反吐か。
真剣なおっさん達の表情をみて、VOGUE美女──リサって人は射るようだった鋭い視線を柔らかくすると、座敷に膝をついた。
そしてそれがマナーだというようにサングラスを外す。
「……ッ」
アタシはリサさんの素顔をみて息を飲んだ。
左右対称の切れ長の目元。さりげないアッシュブラウンのアイラインに彩られた瞳は、まるで黒いダイヤモンドって感じで見てると吸い込まれてしまいそうだった。
リサさんはその目に誠意を込めて、おっさん達をまっすぐ見据え、床に揃えた指をつく。
「……わたしとしたことが性急だったわ。ザー飲や食ザーを理解するものとして、礼儀を失した行為をしたこと、心より謝罪します」
そのまま頭を下げるリサさん。まるめた背中に悲壮感はなく、むしろかっこいいまである。ぶっちゃけ何について謝ってるのか理解できないけど、妙に聞き惚れてしまった。
「…………」
おっさん達は謝罪を受けて、むぅ、とか、うむむ、とか唸ってる。
と──
「だけど……!」
リサさんが、がばっと顔を上げた。
「“こっち側ではない女の子に対して飲用に適さない不健康ザーメンを飲ませる”という道理にかなわない行為を隣で察してしまった以上、食ザー配信者のひとりとして看過することはできませんでした」
漆黒の瞳に射貫かれて、おっさん達は気圧されてる感じになるけど、こいつらも言い返す。
「道理にかなわないからいいんじゃないか!」
「嫌がるアンナちゃんに飲ませるのがいいの!」
わかってたけど最低だな。
そんな野次を飛ばすおっさんを先ほどまで議論してたおっさんが手で制する。
「リサさん、道理で言うとだな……アンナちゃんにはそもそも借金がある。俺達の『欲』をアンナちゃんが叶えてくれることを条件にその借金を俺達が肩代わりする。そういう約束が既にあるんだよ。どうだい? 筋は通ってるだろ?」
その通りなんだよね。おっさん共の要求は最低最悪だけど、道理はおっさん達にある……と思う。じゃなきゃ、アタシも泣きながらザーメンジョッキ飲もうとしてない。
でも、もう助けられちゃってる。リサさんがザーメンジョッキを横取りして一気飲みしたの見て、心底ほっとしちゃったんだよね。アタシぜんっぜん覚悟できてなかった。ほんとのほんとに、嫌で嫌で嫌で嫌で仕方ないんだってわかっちゃった。
知らないおっさん達の娯楽のために、こいつらの身体から出た汚物を飲むなんて、絶対できないってわかっちゃった。
もしもう一杯ザーメンジョッキが出てきたって、今度は手に取ることすら出来ないと思う。
おっさん共はリサさんを論破しようとしている。アタシの運命は今、リサさんの背中にかかってる状態だった。
ずっと話についていけてないままだけど、アタシは敵か味方かもわからないリサさんに、
(がんばって! 助けて……!)
って祈ってた。