人生舐めてるちょいエロ系女性配信者が自分の意志でザーメンジョッキを一気飲みするまで。 作:鬼金目なむか
リサさんは正座すると、真っ直ぐおっさん達を見据える。
姿勢良すぎて、華奢なのに妙な迫力があった。
「気にいらないわね。確かに、借金を払えないことに関してはこの子──アンナさんに非があるのかもしれない。だけど、人の弱みにつけこんで自らの欲望を満たそうとすることを『筋が通ってる』だなんて……傲慢すぎない?」
「乱暴な言い方になって申し訳ないんだがな……あんたには関係ないだろ。正義感振りかざしたいなら他所でやってくれ」
おっさんのきっぱりとしたディスに、リサさんは、ふ──と口角を上げる。ほんのちょっと、相手にわかるように嘲りを乗せて。
「正義感、ね。そんなものわたしには無いわ。この子を助けるつもりも無い」
……ん? えっ??
いや、助けてくれないの? それ言っちゃうんだ。え、マジで? なにも助かってない? ずっと詰んでたのアタシ??
「……じゃあなんで邪魔したんだい?」
と、おっさん。ほんとそれよ。
「最初に言ったでしょ? ザーメンを人に飲ませるんならまずは自分を整えなさい──って。こっち側じゃない素人さんにザー飲させるんだったら、飲みやすいような『調整』をしてあげるのがマナーよ」
え? え? やっぱアタシがおっさんの精液飲むって未来は変わらない感じ? マナーって何? そのマナー知らない。
「そんなマナー知らねえよ」
おっさんも知らないのかよ。同調しちゃったよ、嫌だぁぁ。
「それにだな」おっさんが続ける。「俺達にだってこだわりがあるんだよ。自分を整える? 健康管理したらザーメンが飲みやすくなるってのかい?」
「そうよ。わたしなら的確に指導できるわ」
おっさんは「はっ!」と鼻で笑う。
「そんな指導いらねえよ。いいかい? 俺達はな……俺達みたいな不摂生でなんの健康管理もしてないだらしないおっさんのザーメンだからこそアンナちゃんみたいな可愛くて若くて世の中甘くみてる女の子にたらふく飲ませたいんだよ。ドブカスみたいなザーメンだからこそ飲ませたいんだ」
ゴミだ……こいつら。ゴミすぎて、おぞましすぎて、吐き気を催す。
他のゴミ共も「そうだそうだ」と勢いづいてて、マジで絶望する。
「健康なザーメン? そんなもんじゃダメなんだ!」
「そう! 俺達は好き放題飲み食いして、酒もたばこもやめねぇし、運動なんか一切しねぇ!」
「俺達の腹の底からひねりだした、だらしなくて怠惰な『おっさんの生き様』が詰まったザーメンじゃないと意味がない!」
「アンナちゃんは、ただ可愛くておっぱい大きいだけじゃなくって男受けするためにいっぱい努力してるの知ってるよ! 肌とか体型なんて俺達みたいに適当に生活してたらすぐ崩れるもんな!」
「だからこそ、『努力してないおっさんのザーメン』と『努力してるエッチな身体した美少女』っていう最高のマリアージュが生まれるんだよな!」
熱く語ってんじゃねぇよ。要はこいつら、アタシのことを汚し甲斐のある便器としか思ってないってことじゃんか。クソが。理解できない。同じ人間じゃない。
アタシはすがるように横で正座するリサさんを見る。
リサさんはおっさんの言葉を訊いて、思案するように目を細めてた。
──そして、艶めく唇を開くと、
「……わかるわ」
と言った。
「ッわかるのかよ!!」
アタシ、思わず叫んでた。おっさん達もリサさんもちょっと驚いてた。
「え、何!? 何なんっすか!? さっきから訊いてましたけど、全っ然理解できないんですけど! 結局アタシどうなるんですか!?!?」
注目を集めた手前、歯止めが効かなくなって、アタシの中でなんかが爆ぜた。
「この汚ったないおっさん達の精液飲まされんの!? 飲まなくていいの!? いや、飲むの死ぬほど嫌ですけどっ、てか死んでも飲みたくないくらいですけど、飲むしかないならそれはそれで絶望するんで! 心殺すんで! 出来る気ゼロですけどやるしかないんでしょ!? 借金払えないもん!! っでもなんか、今わかんない! 詰んでるの詰んでないの!? 絶望するしかないならそう言ってくれ!! もう頭ン中ぐっっちゃぐちゃ!!」
なんか感情が溢れて、こないだ見た駅員にキレる外国人みたいに手をぶんぶん動かしながら叫んでた。
おっさん達、汚いとか言われてるのにイラっとするどころか、ほわ……て感じで微笑んでた。死ね!!!!
「ねぇ、リサさん……。アタシ、どうなるんですか? どうしたらいいんですか?」
「…………」
リサさんは唇に指を当てたあと、ふ──と微笑んだ。アタシの沸騰した気持ちを受け止めるみたいに。
「アンナさん、混乱させてしまってごめんなさいね」
それから居住まいを正してアタシに向き直る。
「わたしのしたいことは一貫してるわ。別にわたしはあなたを助けない。借金を肩代わりなんてしないし、このおじさま方の劣情から逃がしてあげる手伝いもしない。今のこの状況があなたが招いたことなら、責任をとるのもあなたよ。わたしはただ、乱暴でこだわりの無いザー飲をみると黙ってられないってだけ」
包みこまれるような落ち着いた声が耳にはいると妙にゾクッとする。突き放すようなこと言われてるのに、そのまま納得しちゃいそうになる。
でもこの後リサさんが言ったことには引っかかった。
「それに……不健康なザーメンって──それはそれで味わい深いけど──興奮しないのよね」
「はあ……興奮しないですか」
アタシの招いた状況の責任をとるのはアタシ、っていうのはわかるけど、興奮するとかしないとかはどうでもいい。
するとリサさんは、そんなアタシの思考を読んだように目を細めた。
「──興奮するかどうかは大切よ。おじさま方も聞いてくださいね」
ちら、と目だけでおっさん共を見る。
「不健康な汚いザーメンを、アンナさんみたいなかわいらしい素人の女性に飲ませるのは、確かに界隈の王道よ。ロマンがあるわ。だけど、それは『作品』でこそ成り立つ話。ほんとにやるとね、飲まされた女の子にはただただ不快でおぞましいだけの、いつまでも臭いの消えない腐った生ゴミみたいな記憶が刻み込まれるのよ」
その通りだと思う。でも綺麗なザーメンでもいっしょだと思うけど。
リサさんの言葉におっさん達は、
「ぬぅ……」
と唸ってた。なんか響いてる?
それがいいんだよ! とか言うのかと思った。実は鼻くそ程度の良心は持ってる?
リサさんが続ける。
「そういう腐った生ゴミが心や記憶に溜まってくるとね、女の子はかわいくなくなるの。いえ、かわいくいられなくなる、というほうが近いかしらね。心が冷たく凍り付いて、手足が冷たくなって、毒みたいに心も体も蝕まれていくの。おじさま方もこういう『楽しみ』を繰り返してるなら、ぼろぼろになっていく女の子をみたことあるんじゃないの?」
問われたおっさん達が顔を見合わせる。
「確かに、なんか、俺達のザーメン飲んだ子たちどんどんやつれたり、髪ぼさぼさになったりするよなぁ」
「あれ萎えるんだよなー」
あー、だめだ。理解はしてるっぽいけど、同情心とかはないんだね。
いやだからそれって汚いザーメンだからなの? 綺麗なザーメンならそうならないの? 綺麗なザーメンって何? は?
「あなた達がザーメンを飲ませたいのはかわいい女の子でしょう」
「おう、そうだ」
「なら、女の子の魔法を解いて二度と戻らなくしてしまうようなザーメンを飲ませちゃダメよ」
「むむ、一理……あるな。俺達のザーメンを飲むかわいい女の子は、飲んだあともかわいい女の子のまま、泣きながら俺達を汚らわしいものを見る目でみてほしいもんな」
おっさん達がリサさんに論破されようとしている。なんなのこのクソディベート。
どっちが勝ってもたぶんアタシは精液飲まされるんだよね。どう思ったらいいのよこれ。
「でもなぁ、俺達は早くアンナちゃんにザーメンジョッキ飲ませてぇんだよ。せっかく作ったジョッキはリサさんが飲んじまったしよぉ。それについてはどう落とし前つけてくれるってんだよ」
そうなるよね。わけわかんないながらもアタシも文脈はわかってきてる。
ザーメンジョッキを用意するのは大変。でもアタシに飲ませるためにおっさん共はがんばって用意した(おぇ)。でもリサさんがそれを飲んじゃっておっさん共の楽しみを台無しにした。
そして、もしアタシが飲んでたらおっさん共が肩代わりしてくれることになってた借金は宙に浮いたまま……
「落とし前なら──わたしがあなた達を指導してあげる、というのはどう? 健康なザーメンが出せるようにね」
「いや……がんばるなんて嫌だぜ。それに、次アンナちゃんにザーメン飲んでもらうまでいつまでかかるんだよ」
「たしかに時間はかかるわ。指導の効果がザーメンに現れるまで早くても3ヶ月」
おっさん達が「3ヶ月だと!?」「はっ、ありえん」「話にならんな」とか口々に落胆を口にする。
でも、リサさんは、
にぃ──
と艶やかなリップを弧の字に引き結んで妖しく笑んだ。とっておきの切り札を出す直前に、先に感情が漏れ出しちゃったって感じだった。
そしてリサさんが唇を開く。
「……もし健康になったら、射精量が増えるわ」
「……ッ!!」
おっさん共がどよめく。え、そんなに? それ切り札? てか増えるって、え?
「個人差はあるけど、約2倍になるケースもあるわ」
「2倍!?」
通販系のショート動画かよ。価値がわかんないんだけど。知らないソシャゲのガチャの話きいてるみたいな気分になってきた。
「大量のザーメンをかわいい女の子に飲ませること。それがあなた達の生き甲斐なのよね」
「……ああ、そうだぜ」
生き甲斐なのかよ。趣味とかじゃなくて。まじでゴミ中のゴミだな……
「同じこと繰り返して、現状で満足してるの? もっと叶えたい夢があるんじゃない?」
「叶えたい夢……? 俺達の、夢…………」
場違いな「夢」ってワードが、リサさんの声に乗っておっさん共に染みこんでってる。
あるおっさんは落とした何かを探すみたいにうつむき、あるおっさんは空に飛んでいった大事なものを見つけるみたいに視線を宙に向けていた。
「……あっ、あるぜ! 俺達の、夢! ほら、半年前シルビアちゃんにザーメンジョッキ飲ませたあと皆で動画みながら打ち上げしただろ? そのときに言ってたことあるじゃねえか!」
「あー、シルビアちゃんな。めっちゃ泣いてて良かったなあ。でも夢の話なんかしたっけ? …………あっ! もしかして!!」
「だよな! あれだ!! なっ!?」
最低な回想をしてるおっさん達の中で、落としたピースが見つかったらしくて、声が揃った。
「「「ザーメン“メガ”ジョッキだ!!!!」」」
は?????????????????????????????????????????????????????????????
「ふふっ」
大事な忘れ物を見つけたみたいに喜ぶおっさん共をみて、リサさんが目を細めて笑った。その顔は「いい夢もってるじゃない」と言いたげだった。
いや。
は????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????