人生舐めてるちょいエロ系女性配信者が自分の意志でザーメンジョッキを一気飲みするまで。 作:鬼金目なむか
4ヶ月が経って──
あのときの、摩堕落屋の地下での悪い夢みたいな邂逅は、リサさんがおっさん達の「指導」をするってことになって解散した。
アタシにもっと大量のザーメンを──ザーメンメガジョッキを飲ませるっていう、地獄の目標を掲げ一致団結したリサさんとおっさん達。
でもその4ヶ月の間、アタシの借金の利子の分だけおっさん達が払ってくれることになった。
何も解決してないけど、地獄が先延ばしにされて、ちょっと安心もしていた。
余命4ヶ月って感じで生きた心地しなかったけど、とりあえずしばらくは平穏だって思ったら気が抜けた。
だからって、アタシも何もしないで4ヶ月過ごしてたわけじゃないけどさ。
◆
そして、今に至り──
アタシはまた、あの妖しい個室居酒屋の地下でおっさん共に囲まれてた。
横には相変わらずの美人オーラ出しまくりのリサさん。そして目の前の卓の上には、
──“メガ”ジョッキがあった。
(マジで出てきやがった……馬鹿かよ。いや、っていうかがんばりすぎだろが。努力の方向まちがいすぎてるだろ……)
その1リットル近く入りそうなジョッキはキンキンに冷えてないし、全人類の渇きの救世主たる生ビールが注がれているわけでもない。
目の前に置かれたそれを見て、喉が鳴るどころか吐き気を催してる時点で、お察しの通り。
その巨大なジョッキには、
──キショイおっさん共の数百発分の精液が満載に詰め込まれていた。
表面は仄かに艶めいていて、練乳みたいな混じりけの無い白。光を鈍く反射しながら、別室の喧噪や振動に、どろりとした半固形物がぷるぷる震えてこぼれそうになるギリギリを維持してる。
そして、臭っさい! もわ、と鼻に突き刺さる獣臭がめっちゃ主張してくる。こいつらの絞り汁だってことを。
無理すぎる。生体兵器じゃねえかこんなもん!
「久しぶりね。アンナさん。元気そうでよかったわ」
再会したリサさんがふわりと笑う。今日はサングラスはしてなかった。長い睫に縁取られた宝石みたいな黒い瞳に、一瞬で引き込まれる。
ぷるんとした唇をみて、4ヶ月前この口でザーメンジョッキ一気飲みしてたことを思い出そうとするけど、現実感がなさ過ぎた。
「はぁ、元気っていうか、生きた心地しなかったですけど……」
それと、アタシはおっさん達を見てちょっとびっくりしてた。
数ヶ月前とは比べ物にならないほど引き締まった体つきだった。
ドロヌーバみたいだった顔もなんか精悍になってるし、土色だった肌もチークしたのかってくらい血色が良い。腹は以前のようにたるんでいない。
かつての「金だけはあるけどだらけた生活してる汚いおっさん」から「健康的でポジティブなオーラを持ったおっさん」へと進化してた。
(マジでがんばったんだな。アタシにメガジョッキ飲ませるために…………引くわ)
マジで引く。それしか感想でない。
たった4ヶ月でここまで普通変わんないだろ。ガチじゃん。何にガチになってんだよ。
「アンナちゃん、今日もかわいいねぇ! またその小動物みたいなキャルンってした顔みられて嬉しいよ」
「うんうん、それにやっぱり良い身体してるよね。その顔でおっぱい大きいもんね」
「髪型もオシャレだねぇ。メンダコみたいで今っぽいね! 男受け成功してるよ! おじさん達大好きだよそういうの」
うん、クズだな。中身は変わってないわ。こいつらセクハラって概念ないのか。いや、っていうかセクハラを生き甲斐にしてんだよね、こいつら。
「しかしよぉ、ついにここまで来たな……」
座卓に鎮座する白濁した特級呪物に、おっさん達の視線が集まる。
「本当に……感謝してるよ、リサさん……!」
彼は傍らで正座するリサさんに向き直る。
「俺、昔から不労所得で金だけはあったんだ。でも、妻も娘も俺のことを邪魔者扱いしててな……。けど、あんたの指導でトレーニングして、久々に妻と夜の営みをしたぜ」
なんか報告し始めた。いや知らんし。何の時間これ?
「ふふ、それはよかったじゃない」
リサさんは嬉しそうに微笑む。
「もちろん、メガジョッキ用のザーメンも採取済みさ」
「うわあ……」
心からの嫌悪感でつい声が漏れた。
「俺もな……」別のおっさんが続く。「健康になったら、仕事にやる気が出ちまってな。今までは毎日適当にサボってたのに、気づけば常務に昇進だよ。いやー、人生何があるかわからんもんだ」
「素晴らしいわね」
「もちろん、ジョッキ用の精液も採取済みさ」
いや、知らんって。
「俺は娘に『パパ最近かっこよくなったね』って言われたぜ! まあ、ザーメンのために頑張ったとは言えねぇけどな!」
知らん知らん!
「もちろん、メガジョッキ用の精液も採取済みさ」
うるせぇよ。
「お前ら、そこまでして飲ませたいのかよ……」
アタシは眩暈を覚えて額を押さえた。
「アンナさん──」
リサさんが凜と正座をしたままアタシの名前を呼ぶ。リサさんの声って、クールで淡々としてるようなのに、つい耳を傾けてしまう。
「これを見てどう思う?」
すらりと長い指をメガジョッキに向けてアタシを見る。
「どうって…………馬鹿かよ、って思いましたけど」
「ふふ、素敵な感想ね。その通りよ。メガジョッキ一杯のザーメン。これはまさに馬鹿の産物よ」
「はぁ……」
アタシは何とも言えないけど、おっさん達はリサさんの言葉を受けてニヤリと笑う。なんだよ、ムカつくな。
「ここにあるのは4ヶ月前のザーメンジョッキとはまるで別物。このおじさま達はね、この4ヶ月の間、わたしが指示した『ザー質改善メソッド』を毎日こなしたの」
「そうだぜ。それまでまともな運動してなかった俺らが、半パン履いて毎日1時間ウォーキングしたんだぜ」
「それによ、ザーメンの質が変わるってリサさんに言われて、パイナップルとかのフルーツも毎日食べたな」
「あと、タバコもやめた! 最初は手が震えるほど口寂しくなったけどよ、アンナちゃんがメガジョッキ飲む姿想像したら耐えれたぜ!」
「……………………」
馬鹿だ。マジで馬鹿ばっかりだ。やってること自体はむしろ見習いたいまであるのに、モチベと目的が終わってるんだよ。健康習慣の話きいてるだけなのにゲロ吐きそうだよ。