※この作品はR-18です。

歪んだTS転生者の汚話(旧題:純愛に挟まりたいTSふたなり転生者の汚話)   作:アスタロット

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五十鈴茉莉花と小さな旅

 

予期せぬ同行者ができた電車旅。

本来ならば新幹線でひとっ飛びだが、学生である五十鈴さんの懐事情を鑑みてコース変更。

私たちはターミナル駅まで電車で向かい、特急へと乗り換えた。

車窓から望む景色は、高層ビル群から住宅街へ、住宅街から家が点在する田園風景へと流れていく。

 

「っぷはぁ…もはやオレンジジュースだな、この缶酎ハイは」

 

「もう、後藤さん…昼間から堂々とし過ぎだよー」

 

当然ながら五十鈴さんから、やんわりと未成年飲酒をたしなめられた。

 

「コソコソとするから逆に目立つ。堂々と飲めば、意外とバレないものさ。そうだ、五十鈴さんも一口どうだい?私の飲みかけでよければ、だけど」

 

「えっ…」

 

「共犯といこうじゃないか、ほら」

 

「う、うん…」

 

五十鈴さんが、おそるおそると缶に口を付ける。

 

「あっ、おいしい…」

 

「だろう?それは五十鈴さんにあげよう」

 

彼女はコクコクと、調子よくオレンジサワー飲みはじめた。

その後に、初めてのアルコールによる利尿作用で、目を白黒させながら車内にあるトイレへそそくさと向かった。

微笑ましい光景だった。

 

“まえさきー、まえさきー、終点です。ご乗車、ありがとうございました”

 

電車を乗り継いで到着した地方都市。

ようやく我が故郷までやって来た。

 

駅を出ると積雪は無かったものの、乾燥した北風が肌に突き刺さった。

 

「くしゅんっ…うぅ、寒いね」

 

「ふむ…ほら、これで寒くないだろう?多少オーバーサイズなのは容赦願うよ」

 

私は身につけていたコートを、彼女に掛けた。

 

「えっ、あっ、えっと…いいの?後藤さんは寒くないの?」

 

「マフラーがあれば、意外と何とかなるものさ」

 

「あ、ありがとう」

 

私は焦る気持ちを抑えながら、幹線道路沿いにある目的地へ、五十鈴さんを連れて路線バスで向かった。

 

いくつかのバス停を過ぎること、数十分。

 

そこには見慣れた町があった。

実家があった。

 

家の横には、懐かしい親の車が停まっている。

今すぐにでも、行きたかった。

 

そんな願いを我慢して、私は五十鈴さんを向かいの牛丼チェーン店へ連れて行った。

遅めの昼食である。

 

「ここが目的地なの?冬原にもあるお店だけど」

 

「ここなんだ。ここが良いんだ」

 

店の窓越しに、家に出入りする家族が見えた。

会って、話したい。

だけど見知らぬ女が家族を自称して訪ねてくれば、きっと迷惑するに違いない。

傍から見ることができれば、良い。

それだけで嬉しかった。

 

私は注文した牛丼を口に運ぶと同時に、ボロボロと涙を流してしまった。

 

「ああ、美味しい。美味しいなぁ」

 

「後藤さん…」

 

そんな私に対して、五十鈴さんは何も聞かなかった。

 

その後は、二人でフラフラと周辺を散策。

地元でそこそこ有名な喫茶店で、ケーキとコーヒーを楽しんだり。

五十鈴さんの防寒着がないから、近所のファッションセンターで服を購入しプレゼントした。

間に合わせの安物なのに、やたらと喜ばれた。

五十鈴さんは、意外と素朴な女性なのかもしれない。

 

日は既に傾いて、空は茜色。

その後私達は、予約してあるホテルに向かった。

 

 

ホテルのカウンター。

私はホテルの受付と、すこしばかりトラブルになっていた。

私の横では、五十鈴さんがニコニコしている。

 

「追加で取った部屋が使えなくなったぁ!?」

 

「はい、申し訳ございません。現在も水回りのトラブルが継続して発生しており、業者の方も修復できておりません」

 

五十鈴さんがニコニコしている。

 

「ほ、他の部屋は!?キャンセルとか」

 

「申し訳ございません。ご好評につき、本日は満室となっておりまして。トラブルのある部屋を、お客様にお通しするわけにも参りませんので…」

 

五十鈴さんがニコニコしている。

 

「ですので、お連れ様とは同じ部屋でお泊りいただくよう、お願い申し上げます。勿論、追加の料金は頂きませんので。朝食券もお二人分サービス致しますので」

 

五十鈴さんがニコニコしている。

 

「そ、そこを何とか」

 

「ご期待に添えず申し訳ございません。ですが、キングサイズのベッドが置いてあるお部屋で御座いますので。ご安心してご利用いただければ幸いです」

 

「後藤さん、良いじゃない!私、後藤さんと同じベッドが良いなぁ」

 

五十鈴さんがニコニコして、私を説得する。

五十鈴さんは受付の味方か!

 

「そうは言ってもだねぇ、五十鈴くん。ぼかぁね、部屋に入ったら飲むよ?酒飲みのイビキはねぇ、そりゃもう煩いもんだよ。それに、私の取った部屋は禁煙室じゃあないんだ。今日のぼかぁ、吸うよ?アパートじゃあ匂いが付くし、普段は吸えないからねぇ。タバコは臭いよぉ。ぼかぁね、酒飲みのタバコ吸いで、ギャンブル中毒のクズ野郎なんだ。それでも真面目な五十鈴くんは、良いって言うのかい?」

 

「うん!!ギャンブルやってたのは知らなかったけど。そんなに私と別の部屋が良いの?私の事、嫌いになっちゃった?」

 

「いやいや、そりゃあ卑怯な質問だよ五十鈴くん。嫌いな訳ないじゃあないか」

 

「なら、良いよね!受付のお姉さん、私はオッケーですよ」

 

五十鈴さんニコニコしてるなぁ。

受付のお姉さんもニコニコしてるなぁ。

 

「お連れ様はよろしいみたいですね」

 

「うっ…わ、分かりました…」

 

私は折れて、五十鈴さんと部屋を同じくすることにした。

 

何だか五十鈴さんのボディタッチも増えてきた。

移動中も腕を組まれたりとか。

まるで百合カップルじゃないか。

 

これ以上の接触は避けなければ。

いずれは彼女にも手を出すが、まだ早い。

 

私がふたなりである事を、彼女にバレる訳にはいかないのだ。

 

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