歪んだTS転生者の汚話(旧題:純愛に挟まりたいTSふたなり転生者の汚話) 作:アスタロット
予期せぬ同行者ができた電車旅。
本来ならば新幹線でひとっ飛びだが、学生である五十鈴さんの懐事情を鑑みてコース変更。
私たちはターミナル駅まで電車で向かい、特急へと乗り換えた。
車窓から望む景色は、高層ビル群から住宅街へ、住宅街から家が点在する田園風景へと流れていく。
「っぷはぁ…もはやオレンジジュースだな、この缶酎ハイは」
「もう、後藤さん…昼間から堂々とし過ぎだよー」
当然ながら五十鈴さんから、やんわりと未成年飲酒をたしなめられた。
「コソコソとするから逆に目立つ。堂々と飲めば、意外とバレないものさ。そうだ、五十鈴さんも一口どうだい?私の飲みかけでよければ、だけど」
「えっ…」
「共犯といこうじゃないか、ほら」
「う、うん…」
五十鈴さんが、おそるおそると缶に口を付ける。
「あっ、おいしい…」
「だろう?それは五十鈴さんにあげよう」
彼女はコクコクと、調子よくオレンジサワー飲みはじめた。
その後に、初めてのアルコールによる利尿作用で、目を白黒させながら車内にあるトイレへそそくさと向かった。
微笑ましい光景だった。
“まえさきー、まえさきー、終点です。ご乗車、ありがとうございました”
電車を乗り継いで到着した地方都市。
ようやく我が故郷までやって来た。
駅を出ると積雪は無かったものの、乾燥した北風が肌に突き刺さった。
「くしゅんっ…うぅ、寒いね」
「ふむ…ほら、これで寒くないだろう?多少オーバーサイズなのは容赦願うよ」
私は身につけていたコートを、彼女に掛けた。
「えっ、あっ、えっと…いいの?後藤さんは寒くないの?」
「マフラーがあれば、意外と何とかなるものさ」
「あ、ありがとう」
私は焦る気持ちを抑えながら、幹線道路沿いにある目的地へ、五十鈴さんを連れて路線バスで向かった。
いくつかのバス停を過ぎること、数十分。
そこには見慣れた町があった。
実家があった。
家の横には、懐かしい親の車が停まっている。
今すぐにでも、行きたかった。
そんな願いを我慢して、私は五十鈴さんを向かいの牛丼チェーン店へ連れて行った。
遅めの昼食である。
「ここが目的地なの?冬原にもあるお店だけど」
「ここなんだ。ここが良いんだ」
店の窓越しに、家に出入りする家族が見えた。
会って、話したい。
だけど見知らぬ女が家族を自称して訪ねてくれば、きっと迷惑するに違いない。
傍から見ることができれば、良い。
それだけで嬉しかった。
私は注文した牛丼を口に運ぶと同時に、ボロボロと涙を流してしまった。
「ああ、美味しい。美味しいなぁ」
「後藤さん…」
そんな私に対して、五十鈴さんは何も聞かなかった。
その後は、二人でフラフラと周辺を散策。
地元でそこそこ有名な喫茶店で、ケーキとコーヒーを楽しんだり。
五十鈴さんの防寒着がないから、近所のファッションセンターで服を購入しプレゼントした。
間に合わせの安物なのに、やたらと喜ばれた。
五十鈴さんは、意外と素朴な女性なのかもしれない。
日は既に傾いて、空は茜色。
その後私達は、予約してあるホテルに向かった。
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ホテルのカウンター。
私はホテルの受付と、すこしばかりトラブルになっていた。
私の横では、五十鈴さんがニコニコしている。
「追加で取った部屋が使えなくなったぁ!?」
「はい、申し訳ございません。現在も水回りのトラブルが継続して発生しており、業者の方も修復できておりません」
五十鈴さんがニコニコしている。
「ほ、他の部屋は!?キャンセルとか」
「申し訳ございません。ご好評につき、本日は満室となっておりまして。トラブルのある部屋を、お客様にお通しするわけにも参りませんので…」
五十鈴さんがニコニコしている。
「ですので、お連れ様とは同じ部屋でお泊りいただくよう、お願い申し上げます。勿論、追加の料金は頂きませんので。朝食券もお二人分サービス致しますので」
五十鈴さんがニコニコしている。
「そ、そこを何とか」
「ご期待に添えず申し訳ございません。ですが、キングサイズのベッドが置いてあるお部屋で御座いますので。ご安心してご利用いただければ幸いです」
「後藤さん、良いじゃない!私、後藤さんと同じベッドが良いなぁ」
五十鈴さんがニコニコして、私を説得する。
五十鈴さんは受付の味方か!
「そうは言ってもだねぇ、五十鈴くん。ぼかぁね、部屋に入ったら飲むよ?酒飲みのイビキはねぇ、そりゃもう煩いもんだよ。それに、私の取った部屋は禁煙室じゃあないんだ。今日のぼかぁ、吸うよ?アパートじゃあ匂いが付くし、普段は吸えないからねぇ。タバコは臭いよぉ。ぼかぁね、酒飲みのタバコ吸いで、ギャンブル中毒のクズ野郎なんだ。それでも真面目な五十鈴くんは、良いって言うのかい?」
「うん!!ギャンブルやってたのは知らなかったけど。そんなに私と別の部屋が良いの?私の事、嫌いになっちゃった?」
「いやいや、そりゃあ卑怯な質問だよ五十鈴くん。嫌いな訳ないじゃあないか」
「なら、良いよね!受付のお姉さん、私はオッケーですよ」
五十鈴さんニコニコしてるなぁ。
受付のお姉さんもニコニコしてるなぁ。
「お連れ様はよろしいみたいですね」
「うっ…わ、分かりました…」
私は折れて、五十鈴さんと部屋を同じくすることにした。
何だか五十鈴さんのボディタッチも増えてきた。
移動中も腕を組まれたりとか。
まるで百合カップルじゃないか。
これ以上の接触は避けなければ。
いずれは彼女にも手を出すが、まだ早い。
私がふたなりである事を、彼女にバレる訳にはいかないのだ。