※この作品はR-18です。

歪んだTS転生者の汚話(旧題:純愛に挟まりたいTSふたなり転生者の汚話)   作:アスタロット

3 / 25
教室での邂逅

 

私が祖父に脅され無理矢理に進学されられた冬原学園は、中高一貫高校である。

 

その生徒の多くは、冬原学園附属中学校からの内部進学者。

所謂、エスカレーター組というやつだ。

 

だから私のように学外から来た者は、内部生と対比して外部生と言われる

周囲の扱いは、転入と殆ど変わりない。

 

しかも、この冬原学園は内部進学者が受ける試験と比べると、学外からの受験は合格がなかなかに難しい。

学外出身者にとって敷居が高い事に加えて、周囲は既に顔見知りの友人グループが殆ど。

人数としてはゼロではないが、私のような外部生はごく少数派だろう。

 

故に、外部生は周囲に馴染みづらく、総じて疎外感を感じやすい。

勿論、ベストコミュニケーションによる挽回もあるけど、学生にそんな能力は期待してはいけない。

 

まぁ普通の少年少女ならば、そんな学生生活に不安を募らせるものだが…

私の年齢は前世を含めて、五十路に迫る。

その上に、前世は営業職だった私にとって、クラスメイトと親交を深める事など、何ら問題ではない。

 

 

しっかしなぁ…

 

 

「新入生を代表して御挨拶申し上げます。暖かい風に包まれ、春が芽吹くこの良き日にー」

 

そんな私は、外部生にも関わらず入学式で新入生代表挨拶をやらされていた。

 

祖父に色々と脅された手前、お受験を頑張り過ぎたらしい。

かなり良いスコアが出たようだ。

 

いや、そこはコネクションでひっそりと裏口入学だろうに。

お陰でこんな羽目に。

いくら何でも、外部生に代表挨拶をやらせるか…

 

お陰様で、私が登壇した際に若干ざわめきが起こったではないか。

 

うんうん、分かるよ、新入生たちのその目。

目は口ほどに物を言う。

 

”誰だこの女”

 

私でもそう思う。

それでも構わずスピーチを続けた。

 

「ー私たちは失敗を恐れず、あらゆる事に挑戦します。最後に、先達に恥じぬ成長を誓い、入学の挨拶と致します。新入生代表、後藤密」

 

面倒な代表スピーチは、恙無く終わった。

原稿を読みながら話すのも癪なので、内容は即興にした。

確認するのは左腕のレディデイトジャストだけ。

冗長なスピーチは嫌われる。

時間管理は大事。

 

原稿も無しにスピーチする私を見て、一部の教師は驚愕の目で私を見ている。

 

まぁいいさ。

 

内部生や職員に、私の顔と名前を知ってもらう良い機会だ。

多少、目立つのも悪くない。

 

それに今まで”外”では自分を偽って生きてきたんだ。

 

これで私も晴れて、高校生になった。

やっと年齢が能力に追いついくる頃だ。

もはや勉学や運動を励んだところで、身の丈にあった結果しか残らんだろう。

 

でもそれで良いんだ。

さすがに神童やら才子などと、呼ばれる事もあるまいし。

諺より、タイミングが少し早いかもしれないけど。

私より才能溢れる人間は、この学園に沢山いるだろうから。

 

 

 

 

入学式を終えたら、そのまま教室へ向かった。

ホームルームと自己紹介タイムだ。

しかし、私以外の同級生同士はほとんどが顔見知り。

実質、私のためのようなものだろう。

 

「後藤密です、どうぞよろしく」

 

席から立ち上がった私は、口角だけを僅かに上げ、努めて柔和な微笑を顔面に貼り付けている。

所謂、アルカイックスマイルというやつだ。

 

「皆さん知っての通りですが、後藤さんは外部からの進学生です。分からない事も多いと思うので、親切にしてあげて下さい」

 

私の場合は趣味など言わず、極めて簡素な紹介で済ませた。

入学式でスピーチもしているし。

 

私の番が終わった後も、次々とクラスメイトが自己紹介をしていく。

 

そういえば、童貞はまだ食った事が無いなぁ。

値踏みするには、丁度良いか。

 

あ、チャラ男はダメだ。

アイツらはすぐ自慢して拡散したがる。

馬鹿なら殊更だ。

男は、出来れば口が硬そうな、陰寄りの人間がいいなぁ。

 

なお肝心のクラスメイト達は…

 

趣味や特技を強調するもの。

親の職業を自慢するもの。

夢を語るもの。

好みの異性を言うもの。

おどけて私にアプローチするもの。

どもってまともに名前を言えないもの。

 

と、種々様々である。

皆、若々しくて羨ましい。

学生生活を思い出して、つい泣きそうになってしまった。

 

ちなみに席順は順不同だった。

前世の高校では、席の並びは五十音順。

おかげで前世はクラスメイトの名前を覚えやすかったなぁ、と勝手に感慨深くなる。

 

「では、次」

 

「はい、五十鈴茉莉花です。趣味はお菓子作りで、部活はテニス部を継続する予定です。よろしくお願いします」

 

気が付いたら、自己紹介の番が回って来たのか、隣の女子が立っていた。

 

その彼女はストレートな黒髪を、後ろで結えている。

口調は丁寧で、真面目そうな物腰。

親に厳しく育てられたのだろう。

箱入り娘の潔癖感を隠しきれていない。

また、彼女の特筆すべき点は、容姿に優れている事だ。

この世界では男女問わず、皆平均的に器量が良い。

その中でも特に、彼女の容姿は整っている。

まさに高嶺の花と言ったところか。

 

正直、私の好みだ。

 

しかし、違和感が拭えない。

どこかで聞いたことがある名前なのだ。

 

まだ手を出してはいけない。

そんな気がした。

 

ひとまず仲を深めて、しばらくは様子見か。

 

それまでは手頃な相手でも見つけて遊ぶとしよう。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。