「はぁ…はぁ…はぁ…!」
ハーニャは走っていた。聳え立つ樹木が空を覆い、影を落とす森林の中である。遊歩などない。枯葉と枯れ木がぐっしょりと腐った地面に脚を取られつつも、泥濘む靴を必死に払い上げ進んでいた。歳にしては幼げな体型の彼女には、幾何も重い道のりである。
「いっ!」
蔓に足を引っかけた。顔から地面に倒れ込み、浅いブラウンの大きなおさげが泥でベトベトになる。打ち所が悪く、鼻血が垂れた。しかし気にしている場合ではない。翡翠の瞳をぱっちり開き、呼吸を整える。すぐに立ち上がり、これまた泥で汚れた袖口で鼻血を拭うと、泥塗れのシスターは濡れた修道服の裾を掴んで駆けた。
――――
ことは半刻前である。
とある任務への道中、リーリアはデカい乳に劣らぬ物々しい態度で、この鬱蒼としたジャングルに足を踏み入れることを提案した。物憂げなのに態度がデカい。おっぱいもデカい。腰まで伸びた銀の髪と、淫靡さに満ちた肉付きが圧をもたらしているのだろうか。乳に似合わず華奢な指先をまっすぐと森へ向けている。
ハーニャは訝しげた。また始まったか。リーリアの我が儘にも慣れたものではあるが、今一度言う。もう少しで町に着くからといって、寄り道するのはいかがなものでしょうか。いつも通り淑やかにリーリアを諭すと、彼女は言った。
「魔物がいる」
そりゃ魔物はいる。彼らは幾ら祓っても数が減らない。増殖の早さに浄化の姉妹の数が追いついていないのだ。だからといって手をかけなければ、さらに数を増してしまう。過酷な未来が待っているしかないとしても、家でただ縮こまることはできないのである。
だからこそ、私たち浄化の姉妹は慎重でなければならない。ミイラ取りがミイラになってはいけないのだ。多くの魔物は女性の胎を利用して増殖する。私たちは女である。リーリアは強いかもしれないけど、万が一があり得るのだ。ハーニャは首を振った。
リーリアは目を伏せた。長い付き合いのハーニャは何となく、表情でリーリアが何を考えているのか分かる。しょんぼりしているのだ。リーリアは口数が少なく顔に出にくいから勘違いされがちだが、普通の人と変わらない喜怒哀楽を見せる。浄化の姉妹の戦乙女だとしても、人並みの感情を持ち合わせているのだ。
「はぁ…ちょっとだけですよ」
ハーニャはやれやれといった態度を声色に含ませる。魔物を祓うことを、まるでお菓子の一個を分け与えるかのように許可するのも変な話である。だが彼女にとってはそうなのだ。リーリアは顔を上げる。顔色には出さないが、喜んでいるようだった。
「先っぽだけですからね。ちょっと入ったら、出ますからね」
ハーニャは先行するリーリアの背中に語りかける。リーリアは木に手をつきながら少し進んでは後ろを振り向き、ハーニャを気にかけた。荒事に慣れたリーリアと違い、ハーニャは戦えない。彼女の領分は状態治癒である。本来は、こういった戦禍に足を踏み入れるものではない。
リーリアは少しウキウキしていた。大好きなハーニャと戦場に足を運んだのだ、まるで旅行気分である。リーリアにとっての遠征は、観光地に向かうようなものだった。新たな景色が見れる。新たな魔物との出会いがある。その気持ちを、普段町に籠もりっぱなしのハーニャと分かち合いたかったのだ。
ハーニャはリーリアのそんな気持ちはいざ知らず、訝しげんだ。それも当たり前である。ハーニャの追走は命懸けであった。リーリアがひょいひょいと横たわる倒木を飛び越えるならば、ハーニャは「よっこいしょ」と見た目に沿わないやや太めな声を込めて木を乗り越えるのであった。
リーリアは常識の欠けているところがある。致命的に空気が読めないというわけではない。戦場に身を置く者に相応しい価値観ということである。例えば彼女は乳をまろびだしていても気にしない。そんな格好をしていると下卑な男に襲われてしまいますよ、と言っても丸出しで歩き、実際に襲われて帰ってくる。「不妊の加護」があるとはいえ、女である体をもっと大事にしてほしい。
ハーニャはリーリアの年下ながら、修道院での振る舞いはお姉さんのようだった。ハーニャは生まれて間もなく修道院に引き取られたが、リーリアは物心がついてから修道院にやってきた。口数の少なさは過ごしてきた環境の変化の影響もある。ハーニャはマザーを見て育ったが、リーリアはハーニャを見て育ったのだ。リーリアにとってハーニャは育ての母のような姉であり、ハーニャにとってリーリアは手のかかる子どものような妹である。だからハーニャは、無茶なことばかりするリーリアが心配だった。はしゃいで駆けていってしまいそうな娘を見守るような気持ちで、リーリアに着いていった。
リーリアはハーニャには変なところがあると思っていた。一見まともそうな振る舞いと性格なのだが、治癒のこととなると話が通じないことがある。
昔、リーリアが口を犯され、胃に魔物の種が入り込んだことがあった。通常その場合は、ポーション型の退魔薬を飲み込むか、胃の位置に長時間手を当て徐々に魔を祓うのだ。
ところがハーニャの取った行動は、キスである。それもドギツいディープなヤツである。リーリアは滅多なことで顔色を変えないが、いつもお淑やかで品のある愛すべき家族が、魔物相当の貪りで腔内を吸い尽くすという豹変ぶりに心底驚いた。あのリーリアがビビってしまったのである。
リーリアはハーニャにタップした。今日日酒場で腕相撲する筋骨隆々な荒男の間でしか見れない文化である。リーリアは何度もハーニャの肩を叩いた。ハーニャは止まらない。舌をナメクジのようにふるって腔内を這い回る。リーリアはついに魔力を使ったがしかし、人には効き目の薄い浄化の力、浄化の姉妹にはまったく歯が立たなかった。リーリアははじめて、人前で瀕死になるぐらい追い込まれたのであった。
果たしてそこまでやる必要はあっただろうか。いや、ない。リーリアは他のシスター達の治療法を見るに、確信していた。
その一件があってから、リーリアはハーニャを、戦えない村人のように扱うことをやめた。
それが仇となった。振り返るとハーニャがいない。リーリアは青ざめた。ハーニャが着いて来られないほど先を進んでいない。だとすれば、何か良からぬことがあったのだ。急いで来た道を引き返す。
すると、大きな木に空いた虚に挟まっているハーニャを見つけた。すっぽり、そこそこ深い落とし穴に落ちている。リーリアは安堵した。ハーニャは言う。
「胸がつっかえて出れないので引っ張ってもらえますか?」
リーリアは一瞬訝しげた。ナニがつっかえるのだろうか。むしろつっかえないからこそ、虚に挟まってしまったのではないか。もちろんリーリアはそんなことを思っても口にしない。リーリアはハーニャのことが大好きである。からかって遊ぶ気概もない。
リーリアは木に寝そべるようにして、虚に手を伸ばした。しかしハーニャまでは届かない。ナニがつっかえるのだ。ぐい、ぐいと手を伸ばすが、指先が触れそうで空を切る。今ほど自分の贅肉を恨んだことはリーリアにはなかった。それを見るハーニャは、何だか癪に障る気がしたが、助けてもらう立場である手前、何も言わなかった。ハーニャもまた、リーリアが好きであった。
手ではどうしようもなかったため、杖を持って先端を伸ばすことにした。ハーニャは杖を握り締めた。とはいえ、外での任務は門外漢のシスターである。自重を支えられるほどの握力を有してなかった。「すみません。胸がつっかえるんですよね」と言った。まだ言うか。リーリアは諦めて別の方法を考えた。少し無茶だが、木を破壊すれば「つっかかりなく!」自力で登って来られるかもしれない。リーリアはハーニャに気をつけてと言った。身動きできないハーニャは何を気をつければいいのかと思った。
ザクッザクっと木を手前側に剥がすように掘ると、一気に崩れた。リーリアは驚いた。
触手である。触手が、ハーニャの股に入り込んでいた。
ハーニャはリーリアの顔を見て、何を驚いているのかと思ったが、目線の方を見やると、自分の下半身が触手に犯されていることに気づき青ざめた。感覚がない。しまった感覚遮断毒か!
リーリアは急いで触手の核を潰すと、ハーニャの膣から触手を引き抜いた。大量の精液が勢いよく噴射した。あまりの量に二人は絶句した。ハーニャは自分が状態異常にかかることを想定してなかった。感覚がないため、どれほど自分が精液に混じって卵を植え付けられたか分からない。ひとまずハーニャは、己の子宮に手を当て浄化を開始した。
「ごめんなさい」
リーリアは伏し目がちにそう言った。「ホントですよ」とハーニャは言った。優しい口調での悪態である。ハーニャは別に怒ってはいなかった。これに懲りて、リーリアが少しでも反省してくれることを期待しての台詞であった。リーリアは本当に申し訳なさそうにして、体育座りで待っていた。リーリアは治療ができないから、ただ待つしかなかった。居心地は悪いが、自分で撒いた種である。素直に反省したのだった。
心の隙があったのだろう、リーリアは気づかず、ハーニャが先に気づいた。しかし、ハーニャではそれに対応できなかった。
虫である。人の半身ほどある虫の塊が数体。
黒のでっぷりとした胴体が三つ連なり、一つの先端から鋭利なトゲが露出している。羽があるから、羽音がすればリーリアも気づけただろう。しかしそれは降ってきた。ぼとりぼとりと二人の周りに降ってきて、一つがリーリアの頭に衝突した。
リーリアは一瞬、気が飛んだ。しかし、痛みで目を覚ました。膣の痛みである。いやその奥、子宮がこじ開けられる痛みである。リーリアは呻きをあげた。
ハーニャは恐怖に震え、立ち上がることができずに後退った。魔物がリーリアを犯している。実際に魔物の交尾を目の当たりにすることがなかったハーニャには意味が分からなかった。なぜこんな醜悪な存在が、リーリアに覆い被さって膣を嬲っているのか。なぜこんな人と似るところが一つもない化け物が、女を雌として認識するかのように蠢いているのか。ハーニャは冒涜的な光景に失禁した。上半身のみが後退り、足は広げて身動きが取れなかった。
虫の魔物は何を考えているのか分からない。悲鳴に寄せられてか、尿の匂いを忌避してかは不明だが、リーリアの方に群がった。リーリアは声を振り絞った。「助けを、呼んできて」。ハーニャはハッとし震えながら頷くと、来た道の方へ走っていった。街道に出れば、すぐ町に着く。騎士がいるはず。お願いリーリア、持ちこたえて!
――――
街に泥だらけの女が入ってきた。尿混じり、精液混じりで酷い匂いだった。衛兵が驚いたように問いかけると、女は答えた。
「浄化の姉妹、ハーニャです、魔物から、助けてください」
民を救うべき側の私達が助けを乞うなんて、何て愚かなことなのだろう。ハーニャは涙を堪えてそう言った。幸いなことに街の住民は教会に友好的だった。今回の任務は重役の護衛だったため、街が被害の渦中にあるというわけではなかった。
ハーニャはこの一件でまた、教会からのリーリアの扱いが悪くなってしまうことだろうと思った。これ以上失態を犯せば、殉教を覚悟するような過酷な使命が渡されるかもしれない。しかし、今は目の前の問題を解決せねば。4,5人の騎士に掛け合い、すぐに森林へ引き返した。
「ひぃぅぅ!?」
ハーニャは呻きをあげた。騎士がどうしたと振り返る。触手だ、まだ触手の卵を浄化しきっていなかった。だがそれどころではない。ハーニャは胎内の蠢きに堪え言った。
「何でも…ありません、んっ、は、はやく…ぅっ!リーリアの元へぇ…」
騎士は妙に色っぽく体をくねらせ吐息を放つ娘に唾を呑み込んだ。待っていた方が良いのでは?と聞くと、「私がすぐに治療しないと手遅れになるかもしれません」ときかなかった。
道中一人の男に倒れ込む。
「すみません…んっ、はぁー、すぅー、い、いきましょう…」
耳元で艶混じりに囁かれる。鎧越しに感じる若い華奢な女のカラダに、疼くものがあった。シスターは不妊の加護があるから、事情によっては好きに抱かせてくれるという。浄化の力で性病のおそれもない。もし無事に帰れたら、一晩お相手してもらおうか。股間に血が溜まり色事に頭が染まりつつも、この森林が危険地帯であることを理解している騎士は、なれたように木々を踏み渡っていった。
――――
リーリアは悲鳴なのか嬌声なのか区別がつかない声を発していた。子宮口は開ききっていた。虫は針の先から、何度目かの卵を子宮に挿入する。それは繭のように子宮壁に取りつき、蠢いた。先に流し込まれた卵は一部孵化し、虫が這い出した。その幼虫は、後から入ってきた卵を食い破っている。中途半端に育った卵が破れ、液を漏らす。虫は虫を食べた。蠱毒である。リーリアは子宮の中で何かが起きているのを実感し、わけも分からず声をあげた。とうに孵化を抑止する魔力は失われていたのである。
リーリアに群がった成虫は、リーリアに取りつき融合をはじめていた。この虫は蠱毒を行いながら群生という生態を持つ。強い虫のみが成虫となり、成虫どうしが結託し、一つの大きな虫の姿となる。リーリアは依り代となりかけていた。母胎のある虫はより増殖する。母胎を得たからこその、融合であった。リーリアは膣から胎の内に気持ち悪い異質な蠢きを感じ、手足は境界がはっきりせずブヨブヨと気持ち悪く同質化していくのを感じていた。
騎士達がリーリアを発見したときには、四肢の根元まで複数の虫と一体化して、淡麗な顔や豊満な胸が溶けた面膜に覆われている様だった。また仰向けのリーリアの女性器は露出し、棒状に伸びた黒いゼリー状の先に針が存する芋虫みたいなそれを出し入れされているところである。一人の騎士はグロテスクな情景に、あろうことか退廃的な美と煽情を抱いたのを自覚した。魅力的な女体を持つ銀髪の乙女が、絵画のように冒涜的な化け物の中に標本されている。その女の表情は、アメジストの瞳を細く濁らせ、恋に堕ちた王子に求愛を受ける生娘のように紅潮していた。
一人の騎士が瓶を投げつけた。「すまないなお嬢さん、少し痛いだろうが我慢してくれ」と、持ち合わせた退魔用のポーションをありったけぶっ掛けたのだった。リーリアは嬌声の混じらない悲鳴を上げる。虫は分裂をはじめた。それでも手足の虫は剥がれ切らない。切り離された虫は騎士に剣を突き立てられ、饐えた体液を噴射した。彼らの手では魔物にトドメは刺せない。しかし、動きを封じることはできる。一旦体勢を立て直せればいい。そこから先は姉妹の仕事である。
そのときだった。
「あああぁぁぁぁぁぁあああああ!!」
ハーニャは甲高い声をあげ、触手を出産した。騎士は声に驚いて振り返った。一匹、二匹、三匹四匹五匹…夥しい量の触手である。あまりの光景に騎士は情けない悲鳴を上げた。地獄である。カオスである。前に虫と融合した女、後ろに触手を産む女。どうすべきかと一人の騎士が狼狽えていると、ハーニャが歯を食いしばる顔で、か細く言った。
「先に…リーリアを…」
その声を聞いた騎士は、リーリアに駆け寄り、虫塊から力いっぱいカラダを引き剥がした。融合しかけていたリーリアの手足の折れる音がした。リーリアは再び悲鳴を上げた。これ以上は我々ではどうしようもできない。もう一人のシスターに振り返る。触手が再び膣や口に侵入しかけていた。別の騎士が触手を思いっきり引き抜く。ハーニャは嬌声をあげた。騎士はのたうつ触手や虫に杭を打ち込み、二人の姉妹を連れて森の外まで離脱した。
――――
幸い死者の一人もなく帰還できた。二人を抱えた騎士は、子宮から化け物が産み落とされないかと恐ろしげであったが、魔物が息をすることはなかった。街中まで半融合したリーリアを入れるわけにもいかず、農場のもう使わなくなった豚小屋に姉妹を寝かせた。
「皆様、お助けいただき本当にありがとうございます。」
ハーニャはそう言うと、身動きができるようになるなりリーリアを見た。手足が魔物になっている。ハーニャは涙が出てきた。自分のせいである。リーリアのカラダに泣きついて、キスをした。周囲の騎士は「おぉ…そういう仲か…」と察したように顔を見合わせた。先に述べた通りこれはハーニャの治療のクセである。
すると、魔物のブヨブヨがじゅくじゅくと溶けていった。次第に現れた肌は爛れていたが、これも徐々に治っていった。あぁ、神よ。奇跡を見ているようだった。リーリアが目を覚ます。
「助けてくれて、ありがとうございます。」
周囲を見渡した彼女の一声は、感謝だった。よくできた娘である。騎士達はこの姉妹を助けられて、心底誇らしかった。
リーリアはハーニャを見つめた。するとハーニャは気づいたように言った。
「あれ、ここが…腫れてる…」
目覚めたリーリアの股から、陰茎のようなものが生えていた。驚く、ここにいる騎士の誰よりも立派なモノである。体の内側に虫が入り込み、あろうことか陰核に取りついたのだった。リーリアは嫌な予感がした。
「リーリア、早く浄化しなくてはなりませんね」
リーリアは首を振った。ハーニャは治療できると思ったとき、決まってリーリアの名を呼ぶ。それも嫌だった。それよりも、動かない手足を何とかしてほしいと思った。
「あら、これは…先程の虫だけでなく、別の魔物の卵も溜め込んでるではないですか」
ハーニャはリーリアの下腹部を摩りながら言った。リーリアは声を振り絞る。
「いや…いい…」
またリーリアの悪癖が出たのかとハーニャは呆れた。この子は胎が複数の魔物に犯されていても、魔力で抑えられるからと治療を拒むのだ。ハーニャにはそれが理解できなかった。
ハーニャのせいだよ…!と言いたい気持ちを抑え、「先に騎士の皆さんを…」と口にした。ボロボロの自分より、我々の体調を慮るのかと、騎士は感銘を受けた。「さすがにお嬢さんよりもピンピンしている、騎士の誇りにかけて先に譲るよ」と一人が言った。リーリアは助けてもらった立場で恐縮ながら、その善意が恨めしかった。
「いや本当に…いいって…」
「ダメですよリーリア、ダメです」
「いや、やめて…」
「ダメ」
瀕死の際に近い二人はそんな問答を繰り返していた。騎士達は、陰茎を生やされ魔物の卵を体内に抱えているよりも嫌な治療とは何なのか気になってきた。ハーニャが普通の治療行為だと言うので、見てもいいかと聞くと、ハーニャは頷き、リーリアは首を振った。
ハーニャは常識がズレているところがあった。その誰が見てもおかしいと思う治療法を、微塵も恥ずかしい行為だとは感じていなかった。マザーはそんなハーニャを見て、放置した。言うことを聞かないリーリアへの腹いせだった。
――――
「これは治療行為ですよ、リーリア」
場所を検問所を抜けてすぐの空き家に移すと、ハーニャはベッドに寝かされたリーリアの前にうずくまり、陰茎にキスをした。リーリアには意味が分からなかった。これまで男のモノを咥えさせられたことは多々ある。しかしリーリアは一度も、自分からそれを舐めようなどと思わなかった。ハーニャは両手でリーリアのモノを優しく包み、ときに摩りながら、愛おしそうに舌を這わせている。リーリアは痺れる快感に口を抑えて静かに喘いだ。
我々は一体何を見ているのだろうと騎士達は思った。しかしその行為のあまりの冒涜さに目が離せなかった。ハーニャは触手に使われてから下着も直さず、騎士達に女陰を晒し尻をフリフリしながら、リーリアの陰茎を舐めていた。騎士達の陰茎も揃って勃っていた。
「はぁー…ぁむ。じゅぽっ、じゅぽっ、じゅぽっ、じゅるっ、じゅるるるる、じゅぽっ、じゅるっ、はぁれぇろ、はぁむ、じゅるっ、じゅぽっ、じゅぽっ」
ハーニャは止まらなかった。こうなるとリーリアはただ喘ぎに堪えるしかなかった。騎士の一人が堪らず身を乗り出そうとしたが、別の騎士が制した。この場に出くわした男なら誰しもが堪え難い情景だった。しかし彼らは誇り高き騎士である。パンパンに血走った陰茎の痛みを強く感じながら、二人の情事を見守った。
アホみたいな治療行為であったが、確かにリーリアの陰茎は徐々に萎んでいった。一人は、下の口でも治療できるのかなと馬鹿なことを言いかけたが、二人の時間を邪魔するわけにはいかないとぐっと堪えた。次第に小さくなった陰茎は、普通の陰核と言って違わない大きさまでになった。しかし、ハーニャは止まらなかった。
「ほら、リーリア、まだここが腫れてますよ」
それは私のお豆さんである。リーリアはイヤと言えない自分の被虐心に悶えた。微かな抵抗として、またもやタップをする。それに気づいたかのようにハーニャは陰唇から口を離すが、舌舐めずりして、再びしゃぶりついた。今日日下卑な男がナイフを磨くときにしかやらない仕草である。「ずるるるるるる」と水音が響いた。リーリアは意識が飛びそうになった。魔物でも吸い尽くさなかった魔力を持っていかれそうになったからである。
治療行為が終わる頃には、近隣の男達が集まっていた。リーリアの嬌声が夜の住民を誘ったのである。リーリアは子宮も含めてすっかり綺麗になったが、疼きがじんじんと残っていた。ダメ、ハーニャお願い。もっとほしい。ずっと子宮を叩いて苛め抜いてほしい。膣はぐしょぐしょに濡れていた。部屋は雌の匂いで充満していた。
ハーニャはというと、治療が済んだことに満足していた。そうである、この娘はこの行為になんら淫靡さを感じていないのである。だからこそ、リーリアが気絶するくらいまで追い詰めることができてしまう。ハーニャのカラダは女を知らないのだった。
ふとハーニャは思い出した。教会に今日の一件を話さねばならない。これほどの証人がいるのだ、言い逃れはできないだろう。きっと罰を受けてしまう。ハーニャはそれを考え、泣きそうになっていた。すると一人の騎士が言った。
「その…なんだ。我々は今日の一件を見なかったことにする。だが正直言うと、我慢の限界なんだ。”一晩”でどうだろう?」
ハーニャとリーリアは顔を見合わせた。断る理由はなかった。街の住民は姉妹に群がった。それから夜が明けるまで、二人の嬌声が止むことはなかった。
ある者は言った。
「その日一日にして、この世の地獄と天国を見た」