※この作品はR-18です。

旅人*原神ヒロイン   作:クラリオ1

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八重神子

それは、日々の激務と鍛錬、そして慣れない社交(闇鍋など)の疲れが溜まっていた日のことだったのかもしれない。あるいは、立て続けに物語を紡ぎ出したことによる、精神的な昂揚と疲労が、奇妙な夢を見させたのかもしれない。旅人は、天領奉行の兵舎にある、自身の質素な寝台の上で、浅い眠りに落ちていた。意識は微睡み、現実と夢の境界が曖昧になっていく。

 

ふと、彼は重みを感じて目を覚ました。いや、目を開けようとしたが、金縛りにあったかのように身体が動かない。そして、何よりも信じられないことに、自身の胸の上に、誰かが跨っている感覚があった。寝ぼけているのか? しかし、その重みと、ふわりと鼻腔をくすぐる、甘く、どこか神聖さすら感じさせる芳香は、あまりにも現実味を帯びていた。

 

(…なんだ…? いったい……)

 

混乱する彼の視界に、ゆっくりとその姿が映し出される。月明かりが障子越しに差し込む薄暗い部屋の中、彼の身体の上に、しなやかな肢体で馬乗りになっているのは、豪奢な巫女装束を僅かに着崩し、妖艶な笑みを浮かべた、八重神子その人だった。珊瑚色の髪が彼の顔にかかり、吐息がかかるほどの距離で、あの怜悧な紫水晶の瞳が、捕食者のように爛々と輝きながら、彼を見下ろしている。

 

「……やあ、旅人。良い夜じゃな? …いや、おぬしにとっては、そうでもないかや?」

 

囁くような、しかし有無を言わせぬ響きを持つ声。それは紛れもなく八重神子の声だ。しかし、普段の彼女とは明らかに違う、濃密な色香と、そして明確な「圧」が込められていた。

 

「や、八重様……!? な、なぜここに……!? い、一体何を……!?」

旅人は、ようやく絞り出した声で狼狽える。身体は依然として動かせず、彼女の体重と、その圧倒的な存在感に完全に押さえつけられている。

 

神子は、くすくすと喉の奥で笑った。その笑い声すら、彼の背筋をぞくりとさせるような響きを持っている。

「おやおや、随分と驚いた様子じゃのう? まるで、寝込みを襲われた純情な若者のようじゃわい」

彼女は、しなやかな指先で、旅人の顔をそっとなぞる。その冷たく滑らかな感触に、旅人の身体がびくりと震えた。

 

「だがのぅ、旅人。妾が今宵、こうして『お忍び』で、おぬしの寝所まで足を運んだのには、ちぃとばかし理由があってのぅ」

彼女の瞳が、妖しく細められる。

「先日、おぬしが妾に隠れて、あの九条の小娘に原稿を先に見せたそうじゃな? ……それは、どういうことか、説明してもらおうかのぅ?」

 

その言葉に、旅人は心臓が凍りつくのを感じた。なぜ、それを…!? 確かに、裟羅様には読ませたが、それは誰にも……!

 

「妾の目は、節穴ではないぞ? それに、おぬし、忘れたわけではあるまいな? 続編は『真っ先に妾に献上する』というのが、あの『トイチの利子』に関する、我らの『契約』じゃったはずじゃが?」

神子の声は、甘く響きながらも、有無を言わせぬ威圧感を帯びていた。まるで、蜘蛛の巣にかかった獲物をいたぶるかのように、彼女は言葉で旅人を追い詰めていく。

 

「そ、それは……その……弁解を……」

旅人は必死に言葉を探そうとするが、思考がまとまらない。彼女の言うことは、確かに事実だ。そして、その「契約違反」に対して、彼女が何をしようとしているのか…その想像が、彼を恐怖させた。

 

「ふふ、弁解など無用じゃ。契約は契約。違反には、相応の『罰』が必要じゃろう?」

神子は、ゆっくりと顔を近づけ、旅人の耳元で囁いた。その吐息は甘い香りを放ち、彼の理性を蕩かしにかかる。

「もっとも……おぬしが、これから妾の言うことを、よぉく聞いて、良い子にするというのならば、その罰も、少しは『甘く』してやらんこともないがのぅ?」

 

彼女の指が、旅人の頬へと伸びる。そして、まるで宝物に触れるかのように、優しく、しかしどこか所有欲を示すように、彼の肌を撫でた。その予想外の感触に、旅人の身体が再び大きく跳ねる。羞恥と恐怖と、そして…なぜか、抗いがたい微かな疼きのようなものが、彼の腹の底から湧き上がってきた。

 

「や、やめて……ください……」

かろうじて、抵抗の言葉を口にする。だが、その声は弱々しく、震えていた。身体は全く動かせず、なすがままだ。

 

「おや? 嫌かえ? だがのぅ、これは『罰』なのじゃぞ? それに……おぬしを、あの小娘なんぞに横取りされるのは、妾としても面白くない」

神子の瞳が、独占欲の色にギラリと光る。

「だから、ここで、はっきりと分からせてやらねばなるまい? おぬしが、一体『誰のもの』なのかをな……これは、罰であり、同時に『躾』じゃ。そして…そうさな、この莫大な『利子』の、ほんの僅かな、前払いといったところかや?」

 

彼女は、旅人の抵抗など意にも介さず、ゆっくりとその身体を彼に密着させていく。巫女装束の滑らかな生地越しに、彼女のしなやかで柔らかな肢体の感触が、嫌というほどリアルに伝わってくる。そして、彼女の指は、彼の頬から首筋へ、さらに鎖骨へと、ゆっくりと、しかし確実に、彼の身体の弱い部分を探るように這っていく。

 

「ひっ……ぁ……」

旅人の口からは、もはや意味のある言葉にならない、吐息のような声しか漏れなくなった。神子の指が触れるたびに、痺れるような、甘い毒が全身に広がっていくような感覚。それは、恐怖や羞恥とは明らかに異なる、抗いがたい快感の兆しだった。

 

(だめだ……こんな……こんなのは……)

 

理性では抵抗しようとする。しかし、身体は正直だった。神子の妖艶な雰囲気、甘い香り、肌に触れる指先の感触、そして馬乗りによる密着した体勢…その全てが、彼の感覚を鋭敏にし、これまで知らなかった扉を開かせようとしていた。彼は、完全に神子の術中に、いや、彼女自身の虜になってしまっていたのだ。なすがままにされるしかない無力感が、逆に倒錯的な興奮を呼び起こす。

 

「……ふふ、随分と素直になったではないか、旅人……良い子じゃ、良い子じゃ……」

神子は、彼の変化を見て取り、満足げに囁いた。彼女の指は、さらに大胆に、彼の服の内側へと探りを入れていく…

 

そこで、旅人の意識は、強烈な快感の奔流の中に、完全に飲み込まれていった。もはや抵抗する意思はなく、ただ、与えられる感覚に身を委ね、溺れていく。暗闇の中で、甘い香りと、熱い吐息と、そして自身の荒い呼吸だけが、現実味を帯びていた。それは、罰なのか、快楽なのか、もはや判別もつかないまま、彼はただ、深い深い快感の底へと、沈んでいくしかなかった……

 

夢は、そこで途切れた。あるいは、最も核心的な部分は、彼の意識が都合よく忘却したのかもしれない。いずれにせよ、旅人は、全身にびっしょりと汗をかき、心臓を早鐘のように打たせながら、寝台の上で目を覚ますことになるのだろう。夢の中の出来事とはいえ、あの八重神子による「お仕置き」の感覚は、彼の身体と心に、強烈な残滓となって残り続けるに違いなかった。そして、次に彼女と顔を合わせた時、彼は果たして平静を保つことができるのだろうか…? 彼の受難は、夢の中にまで及んでしまったようだった。

 

思考を放棄し、ただ押し寄せる快感の波に身を委ねていた旅人の意識が、不意に覚醒した。しかし、それは現実への帰還ではなかった。目の前に広がる光景、肌に感じる感触、そして鼻腔を満たす甘い香り…それは紛れもなく、先ほどまで見ていた夢の続きだった。悪夢というべきか、あるいは甘美な罠というべきか、彼は再び、あの八重神子に支配された空間へと引き戻されていたのだ。

 

依然として、彼は寝台の上に仰向けにされ、身体の自由は奪われたままだ。そして、彼の胸の上には、先ほどと寸分違わぬ姿の八重神子が、妖艶な笑みを浮かべて跨っている。着崩された巫女装束からは、滑らかな白い肌が惜しげもなく覗き、月明かりを受けて艶かしく輝いていた。彼女の珊瑚色の髪が、再び彼の顔にかかり、紫水晶の瞳は、満足げに細められて、蕩けかかった彼の表情を捉えている。

 

「おや……随分と気持ちよさそうな顔をしておったのに、目が覚めてしもうたかえ? 残念じゃのう…もう少しで、もっと『良いところ』じゃったのに」

神子の声は、先ほどよりもさらに甘く、ねっとりとした響きを帯びていた。それは、獲物を弄ぶことを心から楽しんでいる者の声だ。

 

「は…っ…ぁ……や、やえ……さま……」

旅人の口からは、掠れた声しか出てこない。夢の続きだと理解し、先ほどの強烈な感覚がフラッシュバックして、彼の身体は再び硬直した。羞恥と、抗いがたい興奮と、そしてこの状況から逃れられないという絶望感が、彼の心を支配する。

 

「ふふ、そんな怯えた声を出さなくともよい。先程も言うたであろう? これは『罰』であり、『躾』であり……そして、おぬしへの『ご褒美』でもあるのじゃぞ?」

神子は、クスクスと笑いながら、そのしなやかな指先で、再び旅人の身体を探索し始めた。今度は、先ほどよりも大胆に、そして的確に、彼の最も敏感な場所を探り当てようとするかのように。

 

彼女の指が、彼の服の合わせ目から滑り込み、素肌に触れる。ひんやりとした指先の感触と、その後に訪れる燃えるような熱。そのコントラストが、彼の感覚をさらに鋭敏にしていく。指は、彼の胸の上をゆっくりと滑り、鳩尾(みぞおち)をくすぐり、そしてさらに下腹部へと…躊躇なく、しかし焦らすように、ゆっくりと降りていく。

 

「ひぅっ……! あ……だ、め……!」

旅人は、思わず喘ぎ声を漏らした。身体が勝手に反応してしまう。快感と拒絶感がせめぎ合い、彼の思考は完全に麻痺状態だ。彼女の指が近づくにつれて、身体の芯が熱を帯び、疼き始めるのを止められない。

 

「『だめ』、か? 本当にそう思うておるのかえ?」

神子は、彼の反応を楽しみながら、耳元で囁く。

「おぬしの身体は、随分と『正直』なようじゃがのぅ? 口では嫌がっておっても、この熱っぽさ、この震え……本当は、もっと妾に触れて欲しいのじゃろう?」

 

彼女の言葉は、彼の羞恥心を煽り立てると同時に、心の奥底に隠していた、認めたくない欲求を暴き出す。そうだ、本当は…怖いけれど、恥ずかしいけれど、もっと…この感覚に溺れてしまいたいのかもしれない。神に等しい存在である彼女に、完全に支配され、翻弄されることへの、倒錯的な喜びを感じてしまっているのかもしれない。

 

神子の指が、ついに彼の最も敏感な場所に辿り着いた。薄い生地越しに、彼女の指がゆっくりと、しかし確実に、その熱を持った核心を探り当て、優しく、それでいて挑発的に刺激し始める。

 

「…んんっ…! あ…ぁっ……!!」

旅人の身体が、弓なりにしなった。脳髄を直接焼かれるような、強烈な快感が全身を貫く。もはや、抵抗する意思も、言葉も失われ、ただ漏れ出す喘ぎ声だけが、静かな部屋に響いた。

 

神子は、彼のその反応に満足げな笑みを浮かべると、さらに刺激を強めていく。時には優しく撫で上げ、時には強く圧迫し、時には指先で円を描くように弄ぶ。その巧みな指使いは、旅人を快感の頂点へと、容赦なく導いていく。

 

(あ…あ…もう、だめだ……こわれる……!)

 

彼の意識は、快楽の奔流に完全に飲み込まれていた。羞恥も、恐怖も、もはや快感の前では意味をなさない。ただ、この圧倒的な感覚に、身も心も支配されたい。そんな破滅的な願望だけが、彼の心を占めていた。

 

神子の指の動きが、さらに速度と激しさを増していく。彼の喘ぎ声も、それに合わせて甲高く、切迫したものへと変わっていく。頂点は、もうすぐそこだ。身体は限界まで熱くなり、全身が小刻みに痙攣している。

 

「さあ、旅人……もっと、声を上げてみよ……妾の名前を、呼んでみよ……」

神子は、彼の耳元で、甘く、しかし命令するように囁いた。それは、彼の理性を完全に打ち砕く、最後の楔だった。

 

「や……え……さま……ぁ………あ゛……!!!」

 

旅人は、絶頂の瞬間に、か細く、しかし確かに、彼女の名前を呼んだ。そして、熱い奔流が、彼の身体から解き放たれた。

 

長い、長い痙攣の後、旅人の身体から力が抜け、ぐったりとした。意識は朦朧とし、ただ荒い呼吸だけを繰り返している。全身は汗でぐっしょりと濡れ、心地よい疲労感と、そして燃え尽きたかのような虚脱感が、彼を包んでいた。

 

神子は、そんな彼の姿を、満足げに、そして愛おしむように見下ろしていた。彼女は、旅人の汗ばんだ額に、そっと口づけを落とした。

「…ふふ、随分と可愛らしい声を出すではないか。よくできました、旅人。これで、おぬしはもう、完全に『妾のもの』じゃ」

彼女は、勝利宣言のように囁くと、ゆっくりと彼の身体から身を起こした。

 

そして、何事もなかったかのように、僅かに乱れた巫女装束を整え、部屋の隅へと視線を送った。

「さて……満足したかえ? そろそろ、お開きにしようかのぅ?」

 

その視線の先には、一体の旅人の分身体が、いつからそこにいたのか、静かに佇んでいた。夢の中とはいえ、彼の潜在意識が、この一部始終を「記録」していたのかもしれない。

 

そして、その言葉を最後に、旅人の意識は、再び深い眠りの底へと沈んでいった。今度こそ、朝まで目覚めることはないだろう。しかし、彼の心と身体には、あの甘く、激しく、そして支配的な八重神子との「夜」の記憶が、決して消えることのない刻印のように、深く、深く、焼き付けられてしまったのだった。

 

翌朝、彼がどんな表情で目を覚ますのか、そして、これから八重神子とどう向き合っていくのか…彼の受難(あるいは、新たな悦楽?)は、始まったばかりなのかもしれない。

 

何度目かの微睡みから覚醒した時、旅人はもはや驚きも狼狽えも感じていなかった。ある種の諦念、あるいは慣れ、いや、むしろ待ち望んでいたかのような感覚すらあったかもしれない。目の前に広がるのは、やはりあの薄暗い自室。身体は相変わらず寝台に縫い付けられたように動かず、そして胸の上には、妖艶さを増した八重神子が、悪魔的な笑みを浮かべて跨っていた。

 

だが、今度の彼女の様子は、これまでとは明らかに異なっていた。僅かに着崩してはいるものの、巫女装束は依然として身につけていた前回までとは違い、今宵の彼女は、その豪奢な装束を完全に脱ぎ捨て、月明かりに照らされた滑らかな肢体を、惜しげもなく彼の眼前に晒していたのだ。豊かに波打つ珊瑚色の髪が、彼女の白い肌を飾り、しなやかでありながらも、女性らしい丸みを帯びた曲線が、暗闇の中で官能的な影を描き出している。その姿は、神の眷属というよりも、全てを蕩かし、虜にする、夜の女神そのものだった。

 

そして、彼女の手には、見慣れない小さな漆塗りの小箱があった。その箱からは、むせ返るような、甘く、そしてどこか心を惑わすような、濃厚な香油の匂いが漂っている。

 

「……さて、旅人や」

神子の声は、蜂蜜のように甘く、しかし有無を言わせぬ響きを持っていた。

「これまでの『お仕置き』は、ほんの前菜に過ぎぬ。おぬしが犯した『契約違反』の罪は、それほどまでに重いのじゃぞ? ……今宵こそが、『本番』じゃ。おぬしの魂の芯まで、妾の色に染め上げてやるからのぅ」

 

彼女はそう言うと、小箱から粘度の高い、琥珀色の香油を指先に掬い取った。その香油は、特殊な薬草や花々から抽出されたものだろうか、ただ甘いだけでなく、嗅ぐ者の理性を鈍らせ、身体の感受性を極限まで高めるような、不思議な効能を持っているようだった。

 

「や、やめ……」

旅人は、かろうじて抵抗の言葉を発しようとしたが、神子がその香油を彼の唇に軽く塗りつけた瞬間、彼の言葉は吐息と共に霧散した。唇から伝わる、甘く痺れるような感覚。そして、鼻腔から吸い込む濃厚な香りが、彼の思考を蕩かし、身体の隅々まで熱を行き渡らせていく。もはや、まともな思考は不可能だった。

 

神子は、満足げに微笑むと、香油をたっぷりと指に取り、彼の身体に塗り広げ始めた。まずは、彼の顔を彼女は、まるで慈しむかのように、指先で優しく撫でながら、香油を丁寧に塗り込んでいく。その行為は、罰というよりも、むしろ癒しに近い感覚を旅人にもたらした。だが、それはこれから始まる、より深い快楽への序章に過ぎなかった。

 

香油は、彼の首筋、鎖骨、そして胸元へと塗り広げられていく。神子の手のひらが、滑るように彼の肌の上を動き回り、香油を浸透させていく。香油の効果だろうか、彼女の手が触れた場所は、異常なほどに敏感になり、微かな摩擦ですら、電流のような快感が走る。

 

「ん…っ……あ……」

旅人の口からは、抑えきれない喘ぎ声が漏れ始める。それは、苦痛ではなく、明らかに快感からくる声だった。

 

神子の手は、さらに下へと進む。彼の引き締まった腹筋をなぞり、そして、遂に、彼の昂ぶる核心へと到達した。彼女は、香油をその部分にもたっぷりと塗りつけ、まるで神聖な儀式でも行うかのように、両手で優しく、しかし大胆に扱き始めた。

 

「ひぅ……! あぁっ……!! さ、触ら…なぃ…で……!」

旅人は、羞恥と快感の洪水の中で、必死に懇願する。だが、彼の身体は正直だ。神子の手の中で、彼の分身は更なる熱を帯び、硬度を増していく。香油の効果で、滑りは極めて滑らかであり、同時に、皮膚の感覚は極限まで研ぎ澄まされている。彼女の手の動き一つ一つが、彼の意識を白濁させるほどの強烈な快感となって襲いかかる。

 

「ふふ、口ではそう言うても、身体は正直じゃのう? こんなにも熱く、硬くなって……妾の手を求めておるではないか」

神子は、彼の耳元で、吐息混じりに囁く。そして、彼女は、さらに旅人を追い詰める行動に出た。

 

彼女は、ゆっくりと腰を浮かし、自身の柔らかな中心部を、彼の昂りに、そっと重ね合わせたのだ。熱く、湿った、柔らかな感触。薄い布一枚すら隔てていない、直接的な結合。その生々しい感覚に、旅人の思考は完全に停止した。

 

「ん……あ……ぁ……」

 

神子は、恍惚とした表情を浮かべ、ゆっくりと腰を前後左右に動かし始めた。彼女自身の潤いと、旅人に塗られた香油が混ざり合い、滑りを良くしながら、二人の最も敏感な部分が、互いを深く感じ合う。擦れ合い、圧迫され、吸い付くような感覚。それは、これまでの指先による刺激とは比較にならない、根源的で、抗いがたい快楽だった。

 

「……どうじゃ、旅人……? 妾との繋がりは……気持ち、よいか…?」

神子は、自身もまた快感に喘ぎながら、問いかける。

 

「き…もち……い……です……もっと……」

もはや、旅人に理性を保つ力は残っていなかった。彼は、本能のままに、更なる快楽を求める言葉を口走っていた。

 

「……良い子じゃ」

神子は、彼の答えに満足し、腰の動きをさらに激しく、そして深くしていく。部屋には、二人の荒い息遣いと、肌が擦れ合う生々しい水音、そして漏れ出す甘い喘ぎ声だけが響き渡る。旅人の意識は、何度も快感の頂点へと押し上げられ、その度に、脳が蕩けるような感覚に襲われる。彼は、自分が誰で、どこにいるのかさえ忘れ、ただ目の前の女神が与える、無限とも思える快楽の海の中を漂っていた。

 

神子の身体もまた、熱く火照り、細かく震えている。彼女自身もまた、この行為に深く没入し、純粋な快楽を味わっているようだった。普段の冷静沈着な仮面は剥がれ落ち、そこには、一人の雌としての、情熱的な姿があった。

 

時間も忘れ、二人は互いを貪るように求め合った。何度目かの絶頂が訪れた後、旅人の意識は、ついに限界を超え、快感の余韻の中で、再び深い闇へと落ちていった。最後に彼が感じたのは、汗ばんだ彼の胸に顔をうずめ、「……おぬしは、もう……どこにも行かせぬ……」と、独占欲に満ちた声で囁く、八重神子の熱い吐息だった。

 

次に彼が本当の朝を迎えた時、身体には夢の中での出来事とは思えないほどの倦怠感と、そして下腹部に微かな疼きが残っていることだろう。そして、彼の心には、八重神子という存在に対する、恐怖でもなく、尊敬でもなく、もっと別の、抗いがたい引力のような、複雑で強い感情が、深く刻み込まれているに違いなかった。あの「本番」の記憶は、彼の失われた過去以上に、彼の未来を縛り付ける、甘美な呪いとなるのかもしれない。

 

深い快感の海から、旅人の意識はゆっくりと浮上し始めた。しかし、それは覚醒ではなく、夢の中での、新たな局面への移行だった。先程までの激しい交わりによる心地よい疲労感と、八重神子の重みをまだ感じている。しかし、彼の身体に起こっていたある変化が、新たな驚愕と、そして未知なる感覚の扉を開こうとしていた。

 

それは、先程の絶頂の後、通常であれば訪れるはずの鎮静化が、彼の身体には訪れなかったことだ。それどころか、八重神子によって極限まで引き出された彼の昂りは、鎮まるどころか、まるで別の生命を得たかのように、さらに力強く、熱く、そして…明らかに常軌を逸した大きさへと変貌を遂げていることに、彼は気づいたのだ。

 

(な…なんだ…これは……!? さっきよりも…もっと…!?)

 

彼の意識が急速に覚醒し、混乱と当惑が襲う。それは、先程までの快楽とは質の異なる、自身の身体に起こっている異常事態への、本能的な驚きだった。通常の人間の限界を遥かに超えたその大きさは、もはや武器と呼んでも差し支えないほどの威容を誇っている。

 

そして、その異常な変化に、彼の身体に跨ったまま微睡んでいた八重神子も、すぐに気づいた。彼女はゆっくりと顔を上げ、自身の内側で力強く脈打つ、旅人の「それ」の驚くべき変化を、その身で直接感じ取っていた。彼女の紫水晶の瞳が、驚きと、そしてそれを上回る強い好奇心と、悪戯っぽい愉悦の色に見開かれた。

 

「おやおや……これはまた……驚いたのぅ、旅人や」

神子の声には、感嘆と、面白くてたまらないといった響きが混じっていた。

「おぬし、自己治癒力が常人の五倍以上というのは聞いておったが……まさか、そのような『生命力』までもが、五倍以上とは……これは、まこと……規格外、じゃな?」

 

彼女は、悪戯っぽく笑いながら、自身の内で存在感を増し続ける、その驚異的な「大きさ」を確かめるように、ゆっくりと腰を動かした。その動きだけで、旅人の身体に再び電流のような快感が走る。

 

「な……! これは……俺の身体が……おかしい……!」

旅人は狼狽え、自身の異常な状態に恐怖すら感じ始めていた。これは、夢の中だから起こっていることなのか? それとも、彼の持つ特異な体質の一部なのか?

 

「おかしい、とな? 妾には、実に頼もしく、素晴らしいものに見えるがのぅ?」

神子は、彼の不安など意にも介さず、むしろその状況を楽しんでいるようだ。

「考えてもみよ。治癒力が五倍ならば、その根源たる『生命力』そのものが五倍以上あったとしても、何ら不思議はないではないか。回復が早いだけでなく、その『力』も、その『持続力』も、そして……ふふ、その『大きさ』も、常人を遥かに凌駕する。実に、実に素晴らしい『素質』じゃ」

 

彼女は、まるで希少な宝物でも鑑定するかのように、彼の「それ」を評価する。そして、彼女の探求心は、さらなる領域へと向かった。

「さて…大きさが五倍以上ならば、当然、その先に待つ『放出』もまた、五倍以上なのであろうな? それは一体、どれほどのものなのか……妾、実に興味が湧いてきたわい」

 

「なっ……!? や、やめてください! もう、これ以上は……!」

旅人は、神子の言葉に顔面蒼白になった。ただでさえ、先程の絶頂で意識が飛びかけたのだ。もし、この異常な状態で、再び限界を迎えたら、一体どうなってしまうのか。想像するだけで恐ろしい。

 

「何を遠慮することがあろうか? せっかくの『逸材』じゃ。その真価を、存分に確かめねば、もったいないではないか」

神子は、悪戯っぽい笑みを浮かべると、再び腰を激しく動かし始めた。今度は、先程までの焦らすような動きではなく、明確な目的――旅人の「限界」とその先にある「五倍以上の放出」を確かめる――を持って、彼を容赦なく快感の頂点へと追い詰めていく。

 

彼女の動きは、神の眷属としての超常的な体力と技術によって、人間には到底真似のできない、苛烈さと精密さを伴っていた。彼の最も敏感な場所を的確に刺激し続け、決して逃れられない快楽の檻へと閉じ込める。

 

「あ…あああっ……!! ま、待って……! も、無理だ……!!」

旅人の悲鳴にも似た喘ぎ声が、部屋に響き渡る。彼の身体は、もはや限界を遥かに超え、快楽と苦痛の境界線上で激しく痙攣している。その昂りは、最早人間のものではない、まるで荒ぶる神話の獣のような、凄まじい熱量と圧力を孕んでいた。

 

そして、ついに、その瞬間が訪れた。

 

「……い……く……!!!」

 

旅人の絶叫と共に、彼の身体から、信じられないほどの量の、熱く、そして濃厚な「生命の奔流」が、まさに五倍以上という言葉が霞むほどの勢いで、八重神子の内へと注ぎ込まれた。それは、まるでダムが決壊したかのような、圧倒的な量と勢いだった。

 

「…んんぅっ……!!!」

 

流石の八重神子も、その常識外れの「放出」には、驚きと、そして強烈な快感に目を見開き、甘い声を漏らした。彼女の身体が、その奔流を余すことなく受け止め、びくびくと大きく痙攣する。それは、彼女にとっても未知の、そして強烈な経験だったに違いない。

 

放出は、一度では終わらなかった。まるで尽きることのない泉のように、旅人の身体からは、第二波、第三波と、立て続けに熱い奔流が溢れ出し、八重神子の内を繰り返し満たしていく。その度に、神子の身体は快感に打ち震え、旅人の意識は遠のいていく。

 

どれほどの時間が経ったのだろうか。ようやく、その凄まじい放出が収まった時、旅人は完全に意識を失い、ぐったりと弛緩していた。彼の顔には、疲労困憊の色と共に、ある種の安堵のようなものも浮かんでいたかもしれない。

 

一方、八重神子は、旅人の上に跨ったまま、荒い息をついていた。彼女の頬は紅潮し、瞳は潤み、恍惚とした表情を浮かべている。彼女の身体の内側には、旅人から注がれた、規格外の「生命力」が、まだ熱を持って満ち満ちている感覚があった。

 

(……これが……生命力五倍以上の……男……なるほど……これは……実に……『扱いがいのある』……逸材、じゃな……)

 

彼女は、ぐったりとしている旅人の頬を、愛おしげに撫でた。その瞳には、先程までの悪戯心とは違う、もっと深く、そして粘着質な、完全なる「所有欲」の色が浮かんでいた。この規格外の力を、その全てを、自分だけのものにしたい。他の誰にも渡したくない。そんな強い思いが、彼女の胸を満たしていた。

 

(ふふ……これほどの『力』と『量』……これを、毎夜……いや、もっと……たっぷりと、味わい尽くしてやらねば……おぬしの魂ごと、この妾が、完膚なきまでに、支配してやるからのぅ……)

 

八重神子は、邪悪で、そして甘美な微笑みを浮かべると、意識を失った旅人の唇に、深い、深い口づけを落とした。それは、彼の全てを奪い、自分の色に染め上げるという、彼女の揺るぎない決意の証のようだった。

 

夢は、そこでゆっくりと闇に溶けていく。旅人が次に現実で目を覚ました時、彼はこの夢の詳細を覚えているだろうか? そして、もし覚えていたとしたら、彼の八重神子に対する感情は、そして二人の関係性は、一体どのように変貌してしまうのだろうか? 確かなのは、この夢が、彼の運命に、忘れがたい、そして極めて厄介な(あるいは、甘美な)影響を与え続けるであろうということだけだった。彼の魂は、知らぬ間に、妖狐の神の眷属に、深く、深く、囚われてしまったのかもしれない。

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