※この作品はR-18です。

原初の悪魔は、名もなきキミに惹かれてしまった件   作:luluart

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長編になるかもしれませんが、よろしくお願いします。
pixivでも書いているのでよかったら。


第1話:原初の悪魔、静かなる野望

その日、魔界の空は不気味なまでに静かだった。

地を這う瘴気も、断末魔のような咆哮も、すべてが沈黙している。

 

まるで何かが始まることを、恐れているかのように。

 

玉座に座るのは、原初の悪魔・ウルティマ。

淡い紫の髪を揺らしながら、飽きたように頬杖をつき、退屈そうに吐息を漏らしていた。

 

「――ヒマ、だよねぇ。ねぇ、退屈しない?」

 

玉座の下にひれ伏していた下位の悪魔たちは、息を呑んで答えを待つしかない。

ウルティマの問いに、返答など許されていないことを彼らは知っていた。

 

「なーんか、ここ(魔界)の生意気な奴らをなぶり殺しにするのも飽きたんだよねー。

……いいことおもいついちゃった♡」

 

ウルティマは立ち上がると、手にしていたワイングラスを放り投げた。

割れる寸前、空中で消えるそれは、彼女の気まぐれを象徴するようだった。

 

「だから、やってみようと思うんだ。人間の国、“内側”から――壊すの」

 

瞳に映るのは、興味本位か、それとも新たな遊戯への期待か。

原初の悪魔は、ただの「破壊」では満たされなくなっていた。

 

「まずは、可愛い女の子になってー。泣き虫で、か弱くて、誰にでも笑いかける……

そんな“理想の普通”を演じてみよっと。」

 

ウルティマは微笑む。

それは誰が見ても“無垢”と錯覚するような、完璧な少女の顔だった。

 

「ねぇ、楽しくなりそうだと思わない? ボク、ちょっとだけ本気出すから――」

 

こうして、“少女”ウルティマは人間の国へと降り立った。

 

まだ、その地で出会うことになる“彼”の存在など知らぬままに。

 

----scene2----

灰色の空と違い、人間の国はやけに空が青かった。

遠くで鐘が鳴る。子どもたちの笑い声。石畳を転がる果物。

どれもが、ウルティマにとって“非日常”だった。

 

「ふーん。これが人間の“平和”ってやつ?」

 

通りの片隅、教会の近くにある小さな噴水の縁に、彼女は腰掛けていた。

肩までの黒髪に見えるよう魔法で染められた髪。

落ち着いた色合いのワンピース、控えめなレース。

誰がどう見ても“田舎町の普通の少女”そのもの。

 

だが、その瞳に映るのは、この世界のすべてを見透かす悪魔の視線だった。

 

「ねぇ、“この国”ってさ。誰が一番偉いの?」

 

問いかけた相手は、通りすがりの花売りの老婆。

屈託のない少女の笑顔に、老婆も笑って答えた。

 

「一番偉いのは王様だよ。でも、あんたみたいな子が知ってどうすんのさ」

 

「ううん。ただの興味なの。ありがとう、おばあちゃん♡」

 

ウルティマはぺこりと頭を下げて、にっこり笑う。

その笑顔に、誰もが油断する。

まさか、この子が国そのものを飲み込もうとしている悪魔だとは、誰も思いもしない。

 

その後、彼女は村の外れにある空き家に「親戚の紹介で越してきた」という設定で住み着いた。

日中は街の教会や商店の手伝いをして、夜は静かに書き物をして過ごす。

近所の大人たちは言う。「あの子はいい子だねえ」「ひとりでがんばって、えらいねえ」と。

 

「ちょろい、ちょろい……ほんと、愚かな生き物だよね」

 

誰もいない部屋、冷えた空気の中で、ウルティマは楽しそうに微笑む。

魔界から派遣された配下たちと連絡を取り、情報を集め、腐敗した貴族に取り入り、

じわじわと“この国”を内側から喰らい始めていた。

 

けれど――

まだこの時は知らなかった。

 

ただの人間の“あの男の子”と出会うことで、自分の中に“予想外”が生まれていくことを。

 

 




読んでいただきありがとうございます。
これからゆっくり更新していきます。
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