※この作品はR-18です。

勝ちヒロインにとって最高に都合のいい男子   作:愛甲ハマチ

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 正気なのに狂っていて、思考回路が冴え渡っているのに脳が溶けている。

 そんな美少女の形をしたヤバい奴の独白です。


12.くわだて上手の朝雲さん

「ふふっ、上手く事が運んでくれました」

 

 吹き抜ける夜風を全身に浴びながら、朝雲千早は今回の出来映えに達成感を抱いていた。

 計画が上手くいったことで彼女の口は軽くなっていた。

 いや、どちらかと言えば誰にも聞かれてはいけない計略を、誰かに自慢をしたかったのかもしれない。

 

「滋養強壮の精力を増強させる料理をたくさん二人に食べて貰い、最後には私自ら試して選び抜いた、媚薬のミックスドリンクを飲んで頂いたので、二人の性欲は過去に感じたものがないほどに高まっていることでしょう」

 

 温水から借りた自転車で深夜の町を駆け抜けながら、千早は楽しそうに笑みを広げる。

 温水達に盛った謹製のブレンド媚薬ジュースと手料理の数々は、それほど自信のあるものだった。

 

「異なる商品の味が混ざり合ったにも拘わらずおいしいままだったのは、媚薬を作るそれぞれのメーカーが全てチョコ味を販売していたからですね。昔はチョコが媚薬だったことを考えれば、プラシーボ効果も望めるチョコ味は業界のベーシックなのかもしれません」

 

 和風を取り入れた商品を売り出す場合、緑茶や抹茶の要素を取り入れた商品が、必ずどこのメーカーでもあることと同じだろうか。

 その業界の裏側を推測しながら考えるのはかなり楽しい。

 しかし、今はそれよりも楽しいことばかりだ。

 

「華恋さんがあのレパートリーで気付かなかったのは、袴田さんの浮気に落ち込んでしまい、そこまで意識が回らなかったことと、単純にあのような料理を作ったことがなかったからでしょうね。高校生の作る手料理で、精力を増加させる滋養強壮目的の料理を作ることなんてまずないでしょうし、昔と比べて今では簡単に精力剤が手に入る時代ですから」

 

 男が自分の彼女に『滋養強壮に効果的な精力料理を作ってくれ』なんて言うわけもなく、手料理で彼氏にホルモン鍋を作ってくる女はいろいろな意味でアレだ。

 

 ……ちなみに、朝雲千早と月之木古都は何でもないような顔で、それを手料理として振る舞ってくる女達である。

 

「温水さんが気付かなかったのは、人並み以上の性欲を通常から持ち合わせていたことで、物足りなさを感じたことがなかったからでしょうね」

 

 あるいは、その絶倫さを疎ましく思っていたからか。

 常軌を逸した男性器と睾丸、精力を持つ温水は、一般人な男子よりも自分が異常であると認識していたため、その手の知識を避けていたのかもしれない。

 

「でも、そのお陰で恙無(つつがな)く二人を謀ることができました」

 

 もしものときは、華恋を利用して温水の情に訴えてでも、精力増強料理を無理やり食べさせようと画策していた千早だが、幸運にも不必要になった。

 

 

「幾ら華恋さんが八奈見さんの親友だという、強い自覚があったとしても、温水さんの弱りきった心を温めて包み込んでくれる、全身を解(ほぐ)す温泉のような包容力の前では、華恋さんでも寄りかからずに居るのは難しいですよね?

 そんなただの友達から、弱った自分を見せることができる男性に変わった温水さんに、華恋さんが恩義を感じるのは当たり前のことーーなら、あとは下り坂を転がり落ちていくだけです」

 

 

 姫宮華恋は千(・)早(・)の(・)望(・)む(・)未(・)来(・)予(・)想(・)図(・)に必須の人物だ。

 必ずこちら側に引き込まなくてはならない。

 だからこそ、その攻略には綿密な計画を建てた。

 

「今回、障害となるのは温水さんと華恋さんが持つ、友情を重んじる義理堅さと強い倫理観です」

 

 温水も華恋も根が善人のため、仮に自分に対する不利益が生まれたとしても、最後には罪の意識から八奈見に今回の不義理を告白してしまう可能性がある。

 それを防ぐためにも、千早はそんな二人には都合のいい言い訳を用意した。

 

「『温水さんのため』、『華恋さんのため』。だから、相手のために墓まで相手との秘密を持っていく。相手を思い合う素晴らしい気持ちです。その優しさが二人を縛る鎖になり、その鎖にいつの間にか愛着が湧き、それが依存する理由になってくれれば、もう自力で振り解くことはできなくなりますから」

 

 そして既にその下準備も全て終えたあとだ。

 

「『友人にして恩人となった温水さんの、長年の悩みを解消できるかもしれない』。『盛られた媚薬と性感マッサージによる発情する身体』。『傷心からの人肌恋しさ』。『巨根の彼氏よりも、さらに大きな陰茎に対する好奇心』。『処女である八奈見さんには間違いなく解決できない事』。

 そしてそこに、『私の言葉による後押し』という言い訳も加われば、華恋さんでも性欲で湯だった頭と身体に理性で逆らうことは不可能でしょう。『温水さんのためには仕方のないことだった』ーーそうですよね華恋さん?」

 

 肝心なのは自分ではなく、相手のためを思っての行動なのだと誤(・)認(・)してもらうこと。

 善良な心の持ち主だからこそ『恩人に恩を返せる絶好の機会』を、逃すことなど無いと千早は確信する。

 

「温水さんは振られたばかりの女性が、どれだけ不安定なのかその経験の数々から骨身に染みて理解しています。私の言葉もあって温水さんは華恋さんの要求に、強く断ることができなくなっています」

 

 面倒臭がりだが心優しい彼のことだ。いつも通りチョロく流されてくれるだろうと千早は考える。

 

「そして私との性行為の際には、光希さんに対して罪悪感を抱いていた温水さんですが、今回の袴田さんは彼氏として目に余るものがあります。私は光希さんと良好な関係を築けていたので、温水さんの罪悪感も一入(ひとしお)だったかもしれませんが、姫宮さんと袴田さんは別れる一歩手前なほどに険悪な関係。

 私を抱いていたときよりも、かなりハードルは低くなってしまうのは仕方のないことです。ふふっ、袴田さんに裏切られて傷付いてしまった可哀想な華恋さんが、心の安寧のために袴田さんと交際を解消する前に行った不貞を、自らの罪悪感を理由にして、八奈見さんや皆さんに告げ口をする温水さんではありませんよね?」

 

 そんな強固な意思が温水にあるなら、周りからチョロいなどと言われてはいない。

 面倒事を避ける危機感さえ鈍らせれば、あとはこっちのもの。

 

「徹底的なまでの精力増強料理の数々に、私が組み合わせた謹製の媚薬ミックスジュースで発情しきった温水さんの肉欲は、もう理性だけではどうしようもありません。目の前に居る発情していて抱き甲斐のある雌の誘惑から、逃れることは不可能です」

 

 さらに千早はこの二年間の間で、男と女が交わることの快感を骨の髄まで温水に教えてきた。

 奥手な温水を獣に変えてきた千早は、彼の理性は耐えきれないと結論を下す。

 

「女性の中がどれだけ気持ちよく心地いいのか、何回も何回も何回も何回も、隅々まで丁寧に教えて差し上げましたからね♪その記憶が友達である八奈見さんの親友だという認識を、容易く塗り潰してくれることでしょう」

 

 思い浮かべていた悪辣な策略を、周囲に誰一人として居ない静閑な夜の町で、気分良く口ずさみながら楽しそうにペダルを漕いで夜の町を進む。

 

「さて、温水さんのお部屋に戻るのはどのタイミングが最適でしょうか?スマートバグでお二人の情事を盗聴して判断するべきかと思いますが、私も色々と準備がしたいところですね」

 

 今が夜の11時のため、普通ならば今から3時間前後もあれば情事は終わると推測するのが普通だろう。

 しかし、相手はあの温水だ。朝までコースとなるのは間違いない。

 しかもそんな彼に媚薬と滋養強壮の食べ物まで食べさせたことを考えれば、さらに長くなることだろう。

 元から精力が多い温水のことだ。

 朝を跨いでどれくらい持つのか分からない。

 最低でも6時間は持つ筈だ。

 

「女殺しの男性器を持つ温水さんの相手を、最低でも6時間超えの超時間耐久……普通に姫宮さんが死んでしまいますね。やはり始まって2~3時間以内で交代をしましょうか」

 

 深夜の2時頃に合鍵で温水の部屋に入れば、ちょうどいいタイミングになる筈だと頭の中で計算する。

 袴田との行為がおままごとのように可愛く思えるような、温水との濃密な3時間を姫宮にはすごして貰おう。

 

「(ーーまあ、1時間も掛からずに骨抜きにされてしまう可能性が高いでしょうけど)」

 

 深夜近くでも目がパッチリの千早は眠気に襲われることなく、悠々と夜の町を進んでいく。

 

「二日前から体内時計を変えておいて正解でしたね。私でも温水さんの相手を徹夜ですれば倒れてしまいます。八奈見さんの盗聴機で二人の状況を先に知れたのは幸運でした…………ふむ、ちゃんと八奈見さんもご自宅に居るようです」

 

 千早が一番に警戒している八奈見の介入は今回はない。

 もちろん、逐次確認は行い彼女の存在に注意する必要性はあるが。

 

「(私は隠密行動と突発的な事態へ対処するアドリブが少し苦手のようですから、八奈見さんの居場所をリアルタイムで把握し続けて、アクシデントを極力失くす必要があります。それこそ、もしもの場合に備えて温水さんのお部屋でするときは、ベランダに靴を置くことを徹底するくらいです。

 ええ、袴田さんとはもしものときの事前準備と警戒心が違うんです。分かってるリスクに対処しないのは、ただの怠慢でしかありませんから)」

 

 温水を千早が構築する退廃的で淫らな生活から、唯一掬い上げる可能性を持つ彼女には、温水と肉体関係を持ったときから念入りに警戒している。

 温水との行為の最中でも時折、位置情報を確認しているほどだ。

 

 だが、今回ばかりは誰であろうと邪魔はさせない。

 今日で温水に楔(くさび)を打ち込むのだから。

 

 

「温水さんも華恋さんも、どうぞ存分にお楽しみ下さいね。ふふっ、明日の朝から私の可愛いペットになって貰いますので♪」

 

 

 そこまで言い終わると、千早は15分ほどで自分の住んでいるマンションに到着する。

 それなりに遠いが温水の家に行こうと思えば、簡単に訪れることが可能な距離。

 光希の同棲をしないかという提案を丁寧に退けて、温水との逢瀬のための立地を選んだ賃貸がここだった。

 八奈見が住んでいる場所ももちろん調査済みであり、予期せぬハプニングは起こらず、この場所なら八奈見に勘繰られることもないそんな理想的な場所がここだった。

 何の気兼ねもなく、温水と存分に交われる二人の愛の巣に他ならない。

 

「八奈見さん、温水さんの心にあなたが入る隙間を一つ一つ埋めて差し上げますね?気付いたときにはその揺るぎないポジションから、綺麗に追い出して差し上げます。ふふふふふふふっ」




 からかい上手の高木さんとは、キャラデザが似ていますが100倍ヤバい女が朝雲さんですからね。西片は綾野と朝雲さんの関係を知って、高木さんの素晴らしさに感謝をすべき(迫真)
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