勝ちヒロインにとって最高に都合のいい男子 作:愛甲ハマチ
千早ちゃんの口から出たその余りにも突飛な言葉に、今までの虚しさや絶望しかなかった心に疑念が生まれる。
「な、にを……言って……」
「私としてはお二人が円満に恋人になって頂けると助かるのですが、華恋さんの親友である八奈見さんのこともありますし、このように温水さんの絶倫さとの釣り合いを考えると、華恋さんには厳しいものがあるでしょうーー純然たる事実として華恋さんは温水さんを満足させられませんでしたしね」
「っ……」
「私としても友人の華恋さんが腹上死で死んでしまうことも、温水さんがそれで殺人の咎を背負ってしまうことも防ぎたいのです。誰も幸せにならない結末など私も見たくはありませんから」
どこか沈痛な表情をしながら千早ちゃんはそう告げた。
……全てが事実。
言い訳なんて微塵も思い付かない……。
「ですから、"シェア"ということですよ。温水さんを私と華恋さんで共有して温水さんに抱かれる女になるんです。私としては光希さんと温水さんを比べてしまうと、どれだけ熱烈に求められたとしても
「うっ……」
その誠実さは私にはなかったものだ……
「ーー華恋さんは温水さんを本気で好きになってしまったんですよね?」
ビクリッと身体が反応する。
それは今まさに、自分の胸の中で大きく占めていた感情だった。
「人を好きになってしまう感情は、本人がどう考えていても無くせるものではありません。私は仕方の無いことだと思います」
私は温水君が恋しくて愛おしくて堪らない。
杏菜のずっと好きだった人であることも知っているのに、この熱が消えてくれない。
「ですが、肉体的に華恋さんは温水さんに付いていけません。性の不一致は別れる理由として充分なもの」
……私では温水君を満足させられない。
これは……本当に、本当に認めたくないけど、どうしようもない事実。
私では相応しくない。
「だからこそ、私とご一緒に温水さんに抱かれる女性になりましょう?私達の身体で温水さんの性欲を発散して差し上げるのです」
「そ、そんな……一人の男性に複数の女性が交際をするなんて……」
そんな不埒な関係なんて倫理的に間違っている。
全員が納得をしているなら相手を裏切る浮気よりもマシかもしれないけど、それでも周囲に向けて大々的に言える関係性ではない。
「でも、そうしないと、温水さんのお相手は私だけがすることになりますよ?」
「ーーそれはダメ……ッ!」
思わず、強く言う。
その拒絶は私の中で温水君が、どれほど大きくなっているかの証明だった。
「なら、私が提案した通りの方法しかないと思いませんか?その方法が全員が幸せになる方法なのですから」
スッと千早ちゃんが今までよりも強く視線を合わせてくる。
「それに、ご理解できているとは思いますが……この提案には華恋さんが必要不可欠ではありません。全ては華恋さん次第です。華恋さんがそのような歪んだ関係性が嫌だというのなら話はそこまでですーーですが、ここで手を引けば温水さんに抱いて貰うことは、この先一度もありませんよ?」
「何でそんな……」
その断言する言葉に私はたじろぐ。
「だってそうでしょう?
「そ、それ……は…………」
温水君なら気絶したのにも
そんな温水君が私が告白をしてきたとして受け入れてくれるだろうか?
「温水さんですから確実に一歩引きますよ。温水さんの新しいトラウマになってしまうかもしれません」
それが無いとは言えない。
それほどに、私が温水君に抱かれていた映像は強烈だった。
強姦と言われてしまえば納得してしまうほど、一切の容赦の無い苛烈なもの。
それを見て温水君がどう思うかなんて分かりきっていた。
さらに、続けて追い討ちを掛けるように千早ちゃんは告げる。
「既に冷静さを取り戻した温水さんには先程の動画は見せてあります。それこそ、一夜に二人も抱いてしまったことを自慢気に語れる人ではありませんから、その理由はしっかりと説明させて頂きました。でも、文句は受け付けませんよ。私と光希さんとの関係性を知っている温水さんには、私の行為の理由をちゃんとご理解して貰わなくてはなりませんからね」
「それはっ!………………そう、だね……」
千早ちゃんの言い分に何もおかしなところはない。
もし、人助けでなければ千早ちゃんは光希君という存在が居る状況で、他の男性と寝たことになってしまう。
その釈明をするのは千早ちゃんの正統な権利だ……それを隠そうとする私の方が間違っている。
「温水さんとの性行為は衝撃的でした。あんなに力強く快感で身体が弾けてしまいそうになる体験はしたことがありません。だから、分かるんですよ、華恋さん」
千早ちゃんはまるで蛇をイメージさせる笑みを広げて、私に囁き掛ける。
「華恋さんは……温水さんとの性行為にハマってしまったんですよね?袴田さんとの性行為を塗り替えられてしまうくらいに」
「っ!」
「私も同じですよ。光希さんとの今までの性行為よりも今回の性行為の方がずっと強烈でした。女として生まれてきて良かったと感じてしまいましたから」
その言葉に深く共感する。
女から雌にされた感覚。
理性を散り散りにされ、本能を剥き出しにされた獣のようなSEX。
あの情熱的で雄々しいSEXの後では、草介とのSEXが子供騙しのように思えてくる。
あれだけ胸を高鳴らせて、あれだけ大好きだったのに……今ではこんなにも味気ない。
「華恋さんは人よりも性欲が強いのでは?それこそ、私も噂程度ですが、袴田さんと高校生時代に何度も何度も身体を重ねていたという話を聞いたことがあります。しかも、『袴田さんの方が華恋さんに付いてこれなかった』なんて話も聞いたことがあります」
「だ、誰に……!?」
そんな噂があったのは初めて聞いたけど、確かに私から誘った回数の方が多い。
「おや?露骨に言っていたという話を聞いたことがありますが?まあ、それはいいでしょう。要するに、華恋さんの性欲旺盛さは並みの男性では付いてこれないということですよ」
千早ちゃんは言い聞かせるように、滔々と告げる。
「華恋さんは忘れられますか?そんな華恋さんを満足させてくれる男性のことを。どれだけ自らのあり余る性欲をぶつけたとしても、先に萎えてしまうどころか逆に自分を組み伏せて抱き潰し、女の幸せを存分に享受させてくれる温水さんの身体……本当に忘れることができますか?」
あの力強さは草介にはなかった。
今まで届いたことの無い場所を突かれる強い快感なんて初めてだった。
普段は草食系なのに私の身体を見て、肉食系みたいにギラギラさせて見てくる瞳もこれっきり?
あれがもう二度と味わえない?
「あ……ああ……ッ!嫌……そんなの……っ!」
焼き付いて離れない。
あの快楽も熱も視線も力強さも、何もかも覚えている。
忘れることなんてできはしない。
「なら、もうこれしか方法なんて無いじゃないですか。大丈夫。私が居ればどれだけ温水さんにそのまま抱き潰されそうになっても、途中から代わることができますからーー存分に気兼ね無く温水さんと肌を重ねることができますよ?」
「温水君に抱き潰される……」
「ええ、そうです。何度も何度も何度も何度も何度も何度も……これからずぅ~っと、温水さんに抱かれるんです」
「ゴクッ……」
喉が鳴る。
あの快感を思い出して身体が疼くが、反するように喉が渇く。
身体が足りないものを求めているかのようだった。
「それに時間が経てば華恋さんも、温水さんの絶倫さに適応できるようになるかもしれません。私も有する性技やコツを懇切丁寧に教えて差し上げますね?」
千早ちゃんが上から覆い被さり、そのまま私の身体と混ざり合うように。
あるいは、獲物に巻き付く蛇が逃がさないために、絡み付きながら拘束するかのように。
私はさらに彼女の甘く誘うかのような声音から逃げられなくなった。
「チャンスは今回の一度きりですよ?二度目はありません」
彼女の腕がベッドと私の身体の隙間に入り、背中と腰に巻き付く。
そこから、指先で優しくなぞるかのような微弱な刺激が身体を走った。
あくまでも、多少身動ぎする程度。
彼女の声は明瞭に聞こえる。
「淫靡で情熱的な獣の交尾のようなあのSEX……存分に堪能して味わって貪り尽くしたいとは思いませんか?あの最高の男性に女として愛され続けたいとは思いませんか?あの声で愛されるように名前を囁かれたくはありませんか?……今なら、それができますよ?」
その誘惑に堪えられない。
渇く。
乾く。
私の全てが求めている。
一度、最高級のものを知ってしまうと、それを忘れることなんてできない。
もう一度……いや、何度でもあの快感を……っ!
「仕上げですね」
スルリと私から離れた千早ちゃんは私の両手首にある布を外し、私の拘束を解いた。
「ならば、契約を結びましょう。私と華恋さんで」
千早ちゃんはそう言うと、積まれたコンドームの中から一番上のモノを手に取り出し、開き口を縛っていた結び目を
「これは温水さんが最後に私へ
回数にして十八回目。
勿論、最初よりかは少なくなっている。
でも、その量は多分だけど平均くらい。
「書面で契約をしても意味がありません。これは明確に倫理観から逸脱した関係性なのですから。私達はモラルや社会通念を無視した私達独自の理屈で、お互いが最大限幸せになれる形を目指します。だから、……私達の始まりは歪んで狂っている方が正しいんです♡」
千早ちゃんは片手でスマホをタップする。
「っと、……あと二十分後辺りで温水さんが帰ってくることでしょう。さて、決めてくださいーー温水さんがいつでも好きに抱ける女の子になるかどうかのご決断を」
これを受け入れてしまえば引き返せない。
今ならまだ間に合う。
こんな歪んだSEXの事しか考えられなくなるような関係性は間違っている。
正攻法で恋愛をして一対一で付き合うのが正解。
例え、性の不一致で付いていけなくても仕方がないこと。
諦めて次の人を探していつか幸せになる。
それが正しい恋愛。
理路整然とした正しい考え。
人として、女の子として正しい思考回路。
どう考えても拒絶するのが正しい。
「んえぇー……♡」
でも、私は口を開いていた。
「ふふっ、とても可愛らしいですよ、華恋さん」
千早ちゃんはコンドームを逆さまにして、重力に引かれて精液溜まりが入り口に向かって落ちてくる。
どろぉ……♡と、十八回目にも
男性として……ううん、雄としての優秀さの証明だった。
私はそのゆっくりと落ちてくる精液を見て、思わず舌を出してしまう迎え舌をしてしまう。
凄く品性に欠ける下品な行為。
でも、それがきっと今の私には相応しい。
そして、ドロリとした質量のある熱い粘液が舌を侵した。
「んぁ……♥️ れろっ、じゅるる♥️ もぐっもごっ♥️」
ゆっくりと味わうようにテイスティングを行う。
口の中に充満し鼻から突き抜ける生臭い精臭も、今の私には甘露に思えた。
「さて、これで華恋さんは温水さんの物です。ふふっ、お仲間である私とも仲良くしましょうね?ーーちゅるっ♥️」
「んむっ!?……ぢゅる♥️ じゅぞっ♥️ ぐぷっ♥️ ぢゅるるる♥️」
千早ちゃんが私の唇に自分の唇を重ねると、そのまま舌を入れてくる。
「(温水君の精液を舌で掻き出して自分で飲み込もうとしてるんだ)」
私達は両手を指を絡めて隙間なく握り合う。
愛し合う恋人のようではあったけど、蜜に群がる蝶の様だったように思う。
初めて交わす女の子とのキスは、柔らかくて
私はここで明確に道を誤った。
でも、これは断言できる……歪んで狂って間違えたこの道は一人じゃない。
私の道を指し示してくる同じ仲間が居る。
「ちゅぱっ♥️ ……ふふっ、温水さんが戻ってきたらすぐに犯して貰いましょうね?そのために、私が華恋さんの身体を丁寧に丁寧に
「あ、あん♥️ んあっ♥️ んん~~っ♥️」
的確に性感を刺激をされて散々鳴かされ、帰ってきた温水君に抱かれて雌イキをし、千早ちゃんと一緒に乱交も行った。
肉欲の赴くまま身体を重ねて、絶頂を繰り返して、気絶して。
また目が覚めると目の前の雄に身体を差し出すため、卑猥に媚びて彼の情欲を煽ると同時に自らの被虐心を刺激する。
誰にも邪魔をされることのない閉じられた淫猥の宴。
私は女の子の幸せを噛み締めて味わい尽くした。
残るのは彼の熱と多幸感……そして、更に彼を求める心と身体。
「(もう……どうなっちゃってもいいや)」
私はもう抜け出せない。
この快楽の沼に自分から沈むことを選んだのだから。