※この作品はR-18です。

勝ちヒロインにとって最高に都合のいい男子   作:愛甲ハマチ

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原作を買ったぞー!…………6、7巻だけ。
めちゃくちゃ面白かったけど、はてさて12345巻はどんな話だったのやら。
あとなんか、本棚には無かったけど8巻も出ているらしい。


4.勝ちヒロイン達の女子会【上】

 ガタンゴトン……ッ、と一定間隔で耳に届く小気味良い音を聞きながら、高速で通りすぎていく外の光景を見る。

 逸(はや)る気持ちを抑えて手元のスマホに視線を移すが、液晶に映る時間は何も変わらない。

 

「人身事故で遅延とはついていませんね……」

 

 不幸な事故とはいえそれで人を待たせてしまっている以上は、罪悪感を抱いてしまうのは仕方のないことだろう。

 倫理観を無視することに躊躇が無くても、彼女とてそのような感性は捨て去っていない……だから、余計に怖いのだが。

 

 片道四十分ほど時間を掛けて目的地に着くと、白色のワンピースを揺らしながら駆け足で電車を降りて、急いで改札口を通過する。

 駆け足程度で遅れを取り戻せはしないが、それで割り切れる人間は間違いなく社会不適合者だ。

 ……ちなみに、千早は社会不適合者ではない。法治国家不適合者である。

 

 人垣を掻き分けるように急いで駅の西口に向かうと、そこには待ち合わせをしていた二人の美女が既に到着していた。

 

「やっほー、朝雲ちゃん。こんにちは~」

 

「あっ、千早ちゃん!こんにちはっ!」

 

「こんにちは。月之木さん、華恋さん」

 

 スレンダーで庇護欲を抱かせる女の子らしい身体をしている千早に対して、二人はセクシーで女性らしい肉感的な身体をしている。

 それこそ、グラビアアイドルとしても充分絵になるだろうスタイルだ。

 特に姫宮華恋の胸は驚異のJカップという噂が流れていたこともあり、今も周囲の男が姫宮の、水色の縦セーターの姿に鼻の下を伸ばしていた。

 夏場だからかノースリーブスの縦セーターは胸が強調されるだけではなく、白い地肌の肩や脇が覗いているため男性には目の毒だろう。

 

 もし、恋人が巨乳好きであるならば千早も嫉妬の一つや二つはしていたかもしれないが、綾野はそんなことはないし……温水もスレンダータイプの女性の魅力をしっかり伝えているので、彼女が体型面で嫉妬をすることはこの先もないだろう。

 

 ーー何より、千早は自分が温水の猛りを真正面から受け止められる、数少ない女であることを自覚しているため、見た目に対する劣等感は微塵もない。

 それこそ仮にこの二人が温水の女となっても、自分の性技が決して劣ることが絶対に無いと確信しているのだから。

 

「ごめんなさいっ。集合時間に遅れてしまいました……」

 

「いいって、いいって!人身事故じゃあどうしようもないんだから。気にしない気にしない!」

 

「そうだよ。それにちゃんとその連絡もしてくれたしねっ。全然問題ないよ」

 

 女三人が集まればやることは一つ。眼鏡を光らせた月之木は不敵な笑みを浮かべてここに宣言をした。

 

「それじゃあ、楽しい女子会と行くわよ!」

 

 

 

 【♀️&♀️&♀️】

 

 

 

「「「乾ぱーいっ!!」」」

 

 三人の美女が一堂に会して、グラスとジョッキを重ねカチンッ!と小気味良い音を鳴らす。

 二人はまだ二十歳未満のため飲酒はしないが、今年で二十歳となった最年長は当然のようにアルコールを注文した。

 そして帰りは彼氏に送って貰う算段なのだろう。

 

「プハーッ、くぅ~染みるわー。一度知ったら止められないわこの味!」

 

「あははっ、私達は飲めませんけど美味しそうに飲む月之木が見れるだけでも楽しいです!」

 

「はい、こういう場は楽しく食べてこそですからね」

 

「あぁん、もう~!同じ部活に所属してた訳じゃないのに、私のわがままに付き合ってくれる可愛い後輩達に恵まれ過ぎでしょ私っ!」

 

「わっ!もう、月之木さんっ!あははっ!」

 

 そのままハグをしたりしてじゃれつき合うと、改めて参加してくれた二人の顔を見ながら古都はしみじみと話し出す。 

 

「いやー、まさかツワブキ高校を卒業して大学生になって、飲み会で集まるのがこの面子になるとはねぇ」

 

「ですねぇ。私も杏菜や温水くんとは大学生になっても関係が続いているとは思ってましたけど、まさかお二人とテスト終わりに集まるとは思ってませんでしたっ」

 

「ふふふっ、小鞠さんや八奈見さん……そして温水さん達が繋いでくれた縁ですね」

 

 集まったメンバーは月之木古都、姫宮華恋、朝雲千早の三名だ。

 入学してから三ヶ月が経ち、前期試験を乗り越えた三人の美女は久し振りに集まることにしたのだ。

 一見、関係性が無さそうな三人であるが他の友人達には無い共通点がある。

 それこそ彼氏が居るリア充彼女達の集まりであることだ。

 

 ーーつまり、彼女達は勝ちヒロイン三人衆である。

 

 それこそ、負けヒロイン相手ではできない惚気や、彼氏に対する不満を気兼ねなく言い合える関係性がそこにはあった。

 

 そんな彼女達は大学での近況報告などしながら、注文した料理など摘まみつつ話し合った。

 勉強や出される課題の多さの愚痴や、大学だけではなくバイト先での新しい人間関係について等々……険悪な雰囲気になることは一度もない。

 

 温水と交わるとき以外は礼儀正しい成績優秀者と振る舞う朝雲千早は勿論、エロゲのメインヒロインのようなムーブを自然と行う姫宮華恋に、空気を悪くするような残念な部分はない。

 懸念事項である月之木古都だが悪女の部分を出す意味も当然なく、温水達の前で見せていた姉御肌の部分を遺憾なく発揮し、スムーズなコミュニケーションに貢献していたぐらいだ。

 三十分程度、和やかな会話が弾む中で古都が二人に切り出した。

 

「そう言えば、最近、二人はどうなの~?何か彼氏と進展とかあった?」

 

 ビールを呷りながら尋ねれば、千早が笑みを浮かべながらさらりと言った。

 

 

 

「その件なのですが、実は一月前に光希さんとは交際を終えて恋人関係を解消致しました」

 

「ーーブフッ!?ゲホッ!ゴホッ!ゲホッ!……う、嘘……?マ゛、マジなのそれ……?……ゴホッ!」

 

 

 

 気管にビールが入り盛大に噎(む)せる。

 涙目になりながら聞き返せば軽く頷いて肯定してくるのだから、古都からすれば違和感が募るばかりだ。

 

「ふぅー……いや、なんと言うか意外ね。朝雲ちゃんは捕まえた男は絶対に逃がさないイメージがどこかにあったんだけど、そんな軽く流せる感じで別れちゃったんだ」

 

「大学生になってからは資格の勉強などをそれぞれしていて、以前ほど恋人らしいこともしてなかったんです。義務感でデートなどをするよりも、光希さんと私が取りたい資格の勉強や身に付けたいものに時間を割く方が、お互いのためになるのではないかと思いましたから。

 少なくとも大学一年生の間は恋人は止めて、それぞれのしたいことに注力すべきなのではないかと話し合いました」

 

「要するに彼氏彼女のしなくちゃいけない行動に縛られたくないから、今だけは距離を取ってお互いに余裕ができたらまたお付き合いしましょうってこと?うーん、……分からなくはないけど、私には無理だなぁ。慎太郎と別れるなんて絶対にしないわね」

 

「私も光希さんも不器用ですからね。一つのことしか見えなくなっちゃうんです。お互いに話し合い納得して決めたことですから、禍根は一切残ってはいませんよ」

 

 今日、こうして集まる一月前に綾野と話し合い、今すべきことと恋人としての時間の捻出する労力が、噛み合っていないこと相談し合い、この結論に落ち着いた。

 最初は別れ話をするつもりはなかったのだが、そ(・)う(・)い(・)う(・)結(・)論(・)に(・)思(・)い(・)が(・)げ(・)ず(・)な(・)っ(・)て(・)し(・)ま(・)っ(・)た(・)の(・)だ(・)か(・)ら(・)し(・)ょ(・)う(・)が(・)な(・)い(・)。

 

「(私もしたいことに時間を取りたいですから、本当にお互い様なんですよ月之木先輩)

 

 ソフトドリンクで喉を潤しながら笑みを広げる。

 

「(ふふっ、これで時間の確保は以前よりも簡単になり、今までのように人目を必要以上に注意しなくても良くなりました。ですから、温水さんに今まで以上近付いても問題は…………いえ、別れたばかりの光希さんや、温水さんの隣に居たい八奈見さんのことをことを考えれば時期尚早ですね……少し浮き足だってしまったようです)」

 

 朝雲千早は天才である。

 それは学力優秀というだけではなく、彼女の人並み外れた判断力や冷静さ、そしてケアレスミスを絶対にしない注意深さなどを含めてのものであり、もしそれが無ければ、今頃彼女は牢屋の中に居た筈だ。

 

「(ですが、光希さんは温水さんのことをかなり高く評価されています。それこそ、光希さんが資格を取るための勉強をしている間に仲を深めたとしたら、ある種の納得はして貰えるんじゃないでしょうか)」

 

 『綾野って俺になら朝雲さんを取られても仕方がないって言うんだよなぁ……綾野の中の俺ってどんな人間なんだろうってたまに思うよ』と、千早は温水本人から聞かされているため、もし露見しても綾野は大人しく身を引く可能性がある。

 

「(仕方ありませんよね光希さん。構ってくれない光希さんが悪いんですよ?)」

 

 そうは言うが、千早は綾野が男子として魅力的な要素ばかりであることは分かっている。

 温水よりも顔が良くて、温水よりも背が高くて、温水よりも真面目な男の子が綾野光希という男だ。

 

 ……ただ温水の方が想いを汲んでくれて、なんだかんだ言いながらも、最後には自分のことよりも他人を優先することができる男であったというだけ。

 

「(そして女性を虜にしてしまう強力無比な男性器が温水さんにはあった、だけです♥️)」

 

 だが、朝雲の中で綾野に感じていた恋心と比べて、温水に向ける熱量は圧倒的に低い自覚があった。

 だからこそ、綾野と焼塩のときとは違って温水の恋人となるために、八奈見だとか小鞠に対して牽制や裏工作をすることは一切ない。

 客観的に見て温水に向ける想いの熱量で、八奈見達の足下にも及ばないのだと理解してしまったから。

 

「(温水さんに向ける感情は友達以上恋人未満の枠を出ません。どれだけ身体を重ねようとも私の中でそれ以上には大きくなりませんでした。だから、温水さんとの関係性を端的に言うと『バレてはいけない秘密を共有するだけのお友達』)」

 

 キスもする。性器の挿入もする。裸で抱き締め合うこともする。ーーそれでも、光希に感じていた強い執着は生まれなかった。

 

 友情というには熱く。恋というには冷めすぎていた。

 

「(私は本当の意味で温水さんを愛することはできない。でも、だからといって温水さんとの逢瀬を失くなってもいいと思えるほど、物分かりの良いイイコにもなれません)」

 

 千早は理解をしている。自分は正真正銘、悪い子なのだと。

 だからこそ、全てを解決できる方法をその類い希なる頭脳を用いて算出する。

 

「(最後には温水さんに抱かれ続けられる毎日を送れれば、その形がどんなものでも私は構いません。温水さんを愛する役目は私以外に譲りましょう。私が愛人になっても構わないと考えているあ(・)の(・)方(・)に)」

 

 それこそが、最高の未来予想図。

 でも、今の朝雲には最高以外に目を向ける余裕がある。

 

「(もちろん、その可能性が最も高いことこそ温水さんの妻となることですが、八奈見さんや小鞠さん、焼塩さんが温水さんの伴侶となっても、不倫相手となり隠れて関係を持ち続ければいい話です)」

 

 社会的に許されることではない。

 だが、温水は流されて法律を破ることがあることを千早は知っている。

 

「(温水さんは白玉さんのウェディング騒動に協力しました。あれは幾つか法を犯したものでしたが、それでも温水さんは最後まで白玉さんの作戦に協力していたことを考えると、流されやすい性格なのは間違いありません。

 とはいえ、以前の温水さんなら結婚した方の事を思い、そのような関係性になることは拒絶していたでしょうが、三年を掛けて堕落して貰いましたから、嘗(かつ)ての理性的な判断は難しいでしょう)」

 

 千早が温水との性行為を忘れられないように、温水も千早との性行為を忘れられる訳がない。

 その絶対的な確信が、この先も途切れることのないと断言できる絆を育んでいるーー例え、それがどれだけ許されざるものだとしても。

 

「ふふふっ……人間の三大欲求にはどんな賢人も逆らえません。それこそ、胃袋はまだ捕まえてませんが、性欲は私が誰よりも早く、そして誰よりも長く私色に染め上げていますので、八奈見さん達のペースではもう追い越すことはできませんよ?さて、その事実に一体いつ気付くのでしょうか?ふふふふふふふふっ……」




 なんでだろう……こんな悪どい事を原作の登場キャラに言わせたら、キャラ崩壊に繋がりそうなのにまるでそんな気がしない。

◆説明◆
 馬剃ティアラがタグにあるのは彼女をヒロインにした話を書くつもりだからです。
 ですがお分かりの通り、彼女は負けるために生まれてきただろう負けヒロイン。当然、彼女はこの小説で選出される勝ちヒロイン枠にはなりえません。
 それでも作者は書きたいので書きます。本編では無理なので本編を終わらせた番外編ですね。

◆インフォメーション◆
 今月は今話で投稿おしまい。来月に五話を投稿します
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