勝ちヒロインにとって最高に都合のいい男子 作:愛甲ハマチ
「アスパラガスと玉葱入りレバニラ炒めに、アボカドと
「「おお~!」」
どどんっと出てきた豪勢な朝雲さんの手料理の数々。
女の子の手料理というだけで価値があるのに、そこに確かな実力まであるなんて余りにも完璧過ぎた。
「すごいよ千早ちゃん!本当にお料理が上手なんだね!」
「うふふっ、そう言って貰えて何よりです。たんと食べてくださいねっ」
朝雲さんにこの食材達を買ってきて欲しいと、あらかじめ伝えられていたけど、ここまで食べ応えのありそうな料理の数々を見ていると、口の中で唾液が勝手に分泌されているのが分かる。
昼に脂っこいものを多く食べてしまったけど、ホルモン鍋から香るニンニクやほうれん草と、輪切りの唐辛子を見てると何故かお腹が空いてくるから不思議だ。
俺からするともうかなりの腕前に見える……だけど、一言言っておきたい。
「でも、朝雲さん。七月のこの時期に鍋って挑戦的過ぎない?」
ジメジメと蒸し暑いこの時期に鍋料理を選択するとは思わなかった。
姫宮さんも鍋をキッチンから出したところでビックリしてたし。
「確かに外は蒸し暑いですが、温水さんのお部屋はエアコンの冷房で涼しくなっています。夏の暑さから無縁だからこそ鍋料理ですよ!それに夏場はこのような料理を敬遠しがちなので、栄養が偏りがちなんです。つまり、夏場だからこそ栄養満点の料理を食べるべきです!」
「な、なるほど……」
そう言われると確かにそんな気がしてくる。
でも、それなら何でカロリーだけは高くて栄養は全く無いだろう
「温水さん。余ったら明日食べて下さいね」
「うん、ありがとう朝雲さん」
確かに三人で分けてもホルモン鍋は余るかもしれないから、明日食べるのはいいかもしれない。
八奈見じゃないから朝から食べるのはできないけど昼食にはいいな。
そう言えば、うどんも買ってくるように言っていたのは明日を想定していたからなのだろうか。
もしそうなら本当に隙がない人だ……いや、だからまだ捕まっていないのか……。
テレビで朝雲千早の名前が載らないことを、一人の友人として祈るばかりである。
そんな俺達のやり取りを見ていた姫宮さんは、どこか真剣な顔をして凝視してくる。
な、何なんだ?一体……。
「……ねえ、二人とも。もしかして、付き合ってたりする?」
「……えっ!?」
姫宮の視線から並々ならぬ感情が伝わってくる。
姫宮さんは昔から恋愛事に結び付ける癖があるから今回もそうなんだろう。
……でも、何で俺と朝雲さんが付き合ってるかどうかで、こんなガチな反応なんだ?
「(でも、何て言うべきなんだろうか。朝雲さんとは付き合ってはいないのは間違いない。それこそ俺とは肉体関係のみの関係で、実際に朝雲さんの彼氏だったのは綾野だったわけだしな。それこそ俺と朝雲さんの関係を知らない姫宮さんなら、わざわざ聞くまでもなく違うと思うはずなんだけど……)」
姫宮さんの問いに対して、『違う』と一言そういうべきなのに……罪悪感が湧いてくる。
確かに朝雲さんとは肉体関係で繋がっている関係でしかないけど、ここで断言してしまうと朝雲さんが迷惑みたいな捉え方をされないだろうか?
「(それこそ八奈見を襲わずにいられるのは、他でもない朝雲さんの助けがあってこそだ。姫宮さんからすれば、俺達の関係性は到底許し難い関係だというのは分かっている。それこそ袴田が姫宮さんにした浮気と何も変わらない関係なんだし。『俺の性欲の強さやチンポの長さの不便さを分かってくれ!』なんて言っても、姫宮さんは理解はしてくれないよな……)」
そんな俺の迷いを分かってくれたのか、朝雲さんが俺の代わりに答えてくれた。
「いえ、私達は付き合っていませんよ華恋さん。温水さんは素敵な男性なのは間違いありませんが、光希さんと温水さんは友人同士です。仮に私が温水さんに告白をしたとしても、温水さんはお互いの将来のために光希さんと一旦別れることにした私とは、その様な関係性になりたいと思わないでしょう。
それこそ華恋さんも温水さんの立場になってみると、今の私の推察と同じ様なことを思うのでは?」
「むっ……確かにそうだね。草介以外の誰かと恋愛するってなっても、杏菜と想い合っている温水君を好きになることは私も無いかな」
「ちょっと待って姫宮さん!?俺と八奈見さんが想い合ってるとか何っ!?そんな事実は無いから!」
どうにも昔から姫宮さんは俺と八奈見が、付き合ったり別れたりを繰り返しているのだと思い込んでいる節がある。
どう見ればそんなことになるのか分からないが、姫宮さんの中ではそれは通説のようなものとなってしまっているらしい。
どれだけ説明しても首を傾げてしまう姫宮さんに付き合っていると、いつの間にこの部屋に来たときの姫宮さんの沈痛な顔付きが、大分解れていることに気付く。
……これ、俺というよりかは朝雲さんのマイペースな言動と、姫宮さん自身の勘違いで元気になっていないか?
「あんまりにも呼吸があってるから、てっきりそうなのかと思っちゃった。いやぁ、ごめんね二人とも。ちょっと過敏になってるみたい」
「あははは……」
俺は八奈見さんと付き合ってはないけど、朝雲さんは綾野と最近まで付き合っていた中で、今の今まで肉体関係があったから正直言って後ろめたい罪悪感がある。
それを的確に見抜いてくる辺り、女の勘というのは馬鹿にならない。
すると、唐突にポケットに入っているスマートフォンが突然震える。見てみると通知が来ていた。
「(あれ?朝雲さんからだ……)」
そしてその文面を見て唐突に思い出した。
ああ、そうだ。あれのことを忘れてた。
「あー、そうだ。朝雲さん。冷蔵庫に入れておいた
「はいっ、分かりました」
「えっ!?ぬ、温水君、本当にいいの……?今まで楽しく食べちゃってたけど、一度にこんな量の食材を使っちゃって……流石に材料費を払わないといけないよ」
「気にしないで姫宮さん。今日は姫宮さんのための集まりみたいなものでしょ。それに朝雲さんが言った通り食べきれないものは明日に回せばいいんだし、食費をめちゃくちゃ浪費するってわけでもないから」
実は作ってくれるから朝雲さんに食費はいいって言ってるのに、朝雲さんはいつも食費を三割ほど払ってくれている。
最初は折半すると言っていた朝雲さんの主張を、なんとか折れさせたのは精神安定状良い判断だったと思う。
最後に夏らしい食べ物である西瓜を三人で食べると、良い感じにお腹が満たされた。
やっぱり西瓜は夏に食べてこそだなと思う。
美味しかったし作ってくれること自体に感謝が尽きないけど、それでも夏場の暑い時期に、『鍋は季節的にどうなんだ?』感はあったから。
「最後にこちらをどうぞ」
「うん?千早ちゃん、これって何かな?」
「あれ?そんなの買ってあったっけ?」
朝雲さんが最後に出してきた飲み物に、姫宮さんと俺の頭に疑問が浮かぶ。
「私オススメの滋養強壮のエナジードリンクです。試しに買ってみたのですが今は飲み易い飲み物が多いらしくて、これもチョコレート味なんですよ?今の時期だと夏バテなどにも効くので是非飲んでみて下さい」
「へー、チョコレートの味とかあるんだ。それなら、飲み易そうだね」
「今だとデザート感覚でそういうのを飲む時代になったんだね」
朝雲さんがこういったものを買うのは、イメージとちょっと合わなかったけど、頭のいい人ほどサプリメントとかに嵌まりやすいのかもしれない。
チョコレート味のドリンクは案外飲みやすく、俺も姫宮さんも簡単に飲み干した。
「「「ごちそうさまでした」」」
三人で仲良く手を合わせて食べ終わり、洗い物ぐらい家主である俺が洗おうとすれば、食器以外のものは既に洗われていた。
料理をしながら洗い物をするという、料理上手の人特有の高等技術を簡単にしてしまう朝雲さんは、もう充分料理上手なのでは?と思いつつ、食べた食器を朝雲さんと二人で食器を洗浄する。
「(……そう言えば、焼塩との勝負で過ごした練習合宿のとき、
あれは高校一年生から二年に上がるとき言われた、焼塩からの無茶振りによるイベントだった。
今では習慣となっている毎朝のランニングも、当時は十六秒台という足の遅さもあり、元陸上部の生徒会長の助けがなければどうしようもなかった。
天愛星さんも付き添いで来てくれたけど、料理まで作ってくれたのだから感謝しかない。
作ってくれた味噌汁は……まあ、そんなに美味しくなかったけど、男が夢見る女の子の手料理だ。
それだけで力になるのは学会でも言われてる。
え?八奈見の料理?流石に賞味期限を過ぎたものを食べさせてくる奴の料理を、女子の手料理扱いしたくない。
妹以外の手料理で味も俺好みのものなんて感動ものだ。
朝雲さんの手料理は、今まで食べてきた女子の手料理ランキング堂々の一位(佳樹以外)である。
「(あれ?そう言えば家族以外で貰った、初めてのバレンタインのチョコも朝雲さんだし、童貞を卒業したのも朝雲さんだったことを考えると、友達の彼女だったという過去が無ければまるでラノベのメインヒロインみたいじゃないか?……いや、その過去でメインヒロインは無理か。あと倫理観も犯罪者よりだし)」
【♀️&♀️&♂️】
ーーそれから、一時間後くらいだろうか。何か変な空気が俺の部屋に流れ始める。
「あっ、んぅ……そこ……だめ……っ」
「ふふふっ、ここがいいんですね?」
「ーーああんっ♥️……千早ちゃん、だめぇ……っ」
……なんか、そういうことをしているようにしか聞こえない。
これが無料でいいのだろうか?
女友達の美女二人が乳繰り合う様子を壁となって見続ける。
「(まあ、ただのマッサージなんだけど……でも、俺のベッドに姫宮さんが寝転んでいるのは、そこはかとなく背徳感がある)」
それは朝雲さんでも変わらなかったことだけど、朝雲さんは八奈見さんの親友だ。
友達の親友の美女というのは、……それだけで何故かモヤモヤする要素な気がする。
「疲れた光希さんを癒すために覚えたんですーーふふっ」
「っ……」
うつ伏せで寝転がる姫宮さんの背中に、馬乗りになりながらマッサージしている朝雲さんは、姫宮さんが周囲を見えないことを利用して、意味ありげにチラリと俺に向かって流し目をした。
……おそらく、あれが意味していることは、綾野のためにマッサージを覚えたというわけではないということ。
朝雲さんはきっと俺のために覚えてくれたのだろう。
「(高校のときにランニングをしていることを言ったら、私がマッサージしますって言ってたし、これは勘違いじゃないんだろうな)」
自分の友人同士のカップルが別れたことを、残念に思わなければいけないのに、俺はどちらかと言うと綾野に今までほどの罪悪感を抱かなくなることに安心している。
……自分がどうしようもない奴だと改めて思った。
「(それにしても……随分
太股の内側を両足でモジモジとさせたり、クネクネと身動ぎする姿はとても普通のマッサージとは思えない。
でも、性感帯は触ってないし……気のせい、か……?
「この程度でいいでしょう」
「んっ……ふぅーっ、ふぅーっ、……あ、ありがとね。千早ちゃん」
「いえいえ、身体が楽になったのならよかったです」
最初は肩凝りが酷いという姫宮さんのために、朝雲さんがマッサージをするってはなしだったんだよな……あんな爆乳を持っているならそれは肩も凝ることだろう。
朝雲さんが肩を揉むと肩凝りが大分解れたと大喜びの姫宮さんは、そのまま背中や腰も朝雲さんがマッサージすることになった。
そんな健全な光景を見ていたのに、気付いたら俺のベッドの上で姫宮さんが朝雲さんの手によって悶えている光景を見ることに。
予想だにしない展開過ぎて、置いてかれた気分だ。
「(まあ、俺は俺で姫宮さんの悶える姿とか刺激的過ぎてあの部分が反応しちゃったんだけどさ)」
今までのように姫宮さんが袴田とイチャイチャしてる関係なら、罪悪感に襲われていたのだろうけど、今は半分別れているような関係性のため罪悪感は減っている。
比較対象が鈍感だけど気の良い綾野だったから、そう思ってしまうんだと思う。
「(なんというか、案外俺って単純なんだな……)」
下を見れば節操無く限界までバキバキになっているチンポにため息が出てくる。
うつ伏せで顔を隠すように顔を枕に埋めている姫宮さんには、バレていないだろうけど、朝雲さんはその視線から必死に隠す、俺の男性器がどうなってるのか完全に悟られている。
姫宮さんには見られたく無いから、できる限りそっとしておいて欲しいけど、朝雲さんはそんな俺の気持ちを知ってか知らずか気軽に話し掛けてきた。
「あっ、そうです!温水さん、華恋さんにも相談なされては如何ですか?」
「え?相談?なんのこと?」
脈絡もなく言われた言葉にまるで心当たりがない。最近、何か悩みを朝雲さんに言ったっけ?
俺が最近の記憶を探っていると、朝雲さんは笑ってその内容を口にする。
「温水さんの男性器が大きすぎる、ということです」
「ーーえぇッ!?」
◆備考◆
【朝雲千早の手料理レシピの栄養素】
・亜鉛ーーレバー、鰯、牡蠣、チーズ、豚肉
・ビタミンAーーチーズ、卵
・ビタミンB群ーー豚肉、卵、鰯、アボカド、ニンニク、ほうれん草
・ビタミンCーーニンニク、ほうれん草
・ビタミンEーーアーモンド、アボカド、ほうれん草
・DHA・EPAーー鰯
・アリシンーーニンニク、玉葱
・カプサイシンーー唐辛子
・シトルリンーー西瓜