ツンなOL上司の彼女とイチャラブ温泉旅行する官能小説 作:sakamotsu
「涼子さん、温泉楽しみだな」
と彼が明るく言うが、声には緊張が滲む。
涼子は窓の外を見ながら、「キミ、ちゃんと予約確認した?」とクールに返す。
釣り目気味の目元が鋭く光り、厚めの下唇が微かに締まる。
彼は「もちろん! 大丈夫ですよ」と笑う。
涼子は「ふうん」と返すが、若干不安も感じている。
というのも、主に職場の彼についてだが、彼が主体となって物事を進めようとすると、進め方が少し杜撰になる所がある。
自分が主導していることが、すなわち責任を負っている、という事がまだ自覚できていない。
もちろん、理屈では分かっている。
ただ、実感が伴っていないのだと、彼女は考えている。
車窓に写る厳しい表情の自分に気づいて、はっとする。
せっかくの温泉旅行なのに、なぜ仕事のことを考えてしまっているのか。
――というか、なぜだか分からないけど、彼への当たりが強くない? と涼子は自問する。
確かに今日の彼は少し浮足立っていて、その感じが、彼が仕事でミスするときと似ている。
だから苛立っているのかも、と彼女は納得しかけた。
でもそれっていつものことじゃない? と、改めて考える。
涼子はいつも先回りして彼のミスをフォローしてきた。
もちろんそれだけだと、単に甘やかしてるだけになるから、きちんと指導もする。
彼はその指導を不器用ながらもきちんと咀嚼して、自分のモノにしようとコツコツ努力する面がある。
彼が起因する仕事のトラブルがあって、彼を連日深夜までフォローした事があった。
あれ以来、彼は、特に涼子の指導については、他の先輩の指導よりも真摯に受け止めていることに気づいて、彼を意識するようになったし、彼の告白を受けたのだった。
……と、それはともかく、仮に彼がミスしたとしても、いつもどおりフォローできるはずだ。
だというのに、イライラが涼子の中でくすぶっていて、その原因が分からない。
もちろん不安にはなる。
でも今回は仕事じゃないし、しょせん二人の気ままな旅行だから、おおごとになるとも思えない。
その時、ダッシュボードのスマホが振動する。
彼は運転中なので、涼子は「見てもいい?」と断ってスマホの画面を見ると、どうやら宿泊先の旅館からのようだ。
そのことを告げて、彼の代わりに通話する。
「はい、もしもし、はい、こちらこそお世話になります」
旅館の予約担当を名乗る女性の声に涼子は応対する。
予約担当の話しぶりの丁寧さと、無駄のない伝え方に涼子は、旅館のレベルの高さを想像する。
電話の要件は、涼子たちの宿泊予約の前日確認ということらしい。
「え、明日?」
思わず声に出てしまう。
涼子と予約担当は、何度かやりとりする。
どうにも、涼子たちの「今日から一泊二日の予約」と、旅館側の「明日から一泊二日の予約」で食い違っているのは間違いないらしい。
確認のため一度折り返す、と断って涼子は通話を切り、彼に宿泊予約したときのメールの場所を聞いて、内容を見る。
「明日からだ……」
3回メールの到着日を見直して、彼に顔を向ける。
さすがに彼も青ざめている風に見える。
職場でたまに見かけるヤツだ、と気づいて涼子は嫌な気分になる。
涼子の目元が鋭くなる。
彼女はため息をつき「私が対応する」と、旅館に連絡しなおす。
彼女は旅館のスタッフに謝罪し、理由を説明して、交渉の末、当日の「露天風呂付デラックスルーム(和タイプ)」を確保。
露天風呂付きの部屋で、当然割高だ。
すでに二人は出かけてしまっているから、こちらの休暇日を動かすことはできないし、業務上休みを延長することもできない。
予約の完全キャンセルは旅館側に迷惑をかけることになるし、宿代が割高になるが宿泊日を変更することで、これを落としどころにする。
苦渋の決断であった。
通話を切り、涼子は彼を睨む。
「キミは、いつもこう。仕事でも、旅行でも、私がフォローする」
と言葉に棘が宿る。
彼は運転しながら「ごめん」とつぶやく。
涼子はさらに苛立ちを募らせる。
移動中で、あまつさえ彼は運転しているのだから仕方ないと理屈で分っているのに、運転のついでに謝られている感じが彼女の気持ちを煽った。
「でも……、素早い建て直しが、さすが涼子さんって感じです」
彼は探るように静かな口調で言う。
涼子にも彼が場を取り繕おうとしているのは分かる。
宿泊先はなんとかなったので、これ以上とやかく言うのは空気を悪くするだけだというのも分かっている。
彼はちらりと涼子を見て、努めておだやかに言う。
「それに、今日の服、すごく似合ってます。セクシーなところがすごくいい」
涼子はうつむいた姿勢で「今そんな話してる場合じゃないでしょ!」と声を荒げた。
いきなりキレた涼子に彼はオドオドしているのが気配で分る。
涼子自身も、自分に驚いていた。
そしてすぐに激昂の理由に気づいて、彼女は顔を上げることもできず、唇を噛んだ。