画廊の白い壁に並ぶ絵画は、どれも前衛的すぎて意味不明だ。ぐちゃぐちゃな色と形、記号化された人と物――こんなものが100万円で売れるなんて、俺にはさっぱり理解できない。
「最近の芸術、わけわかんねえよな。」
同僚の言葉が頭をよぎる。まあ、大半の人間がそう思うだろう。だけど、世の中にはこんな絵に大金を払う金持ちがいる。いや、正確には「芸術」じゃなく「投資」に金を出してるだけだ。誰とも知れない画家の絵を美術館に飾り、価値を吊り上げて売る――俺たち画商はその仕組みで飯を食ってる。
儲かるっちゃ儲かるが、胸を張れる仕事とは言えない。
「山口(やまぐち)さん、次はジョンソンの絵をご覧になりたいそうです。」
柔らかな声が画廊の静寂を破った。振り返ると、御子ひとみ(みこ ひとみ)が微笑んでいた。メガネの奥で輝く瞳、お団子に結った髪が軽く揺れる。細身の体にフィットしたスーツは、彼女の華奢なシルエットを際立たせ、胸元の緩やかな膨らみがさりげない存在感を放つ。
「了解。御子さん、例の坊さん、なんでも買うな。どんだけ金持ってんだよ。」
俺は書類を手に、軽く笑った。
「ええ、かなり儲かっていらっしゃるそうです。」
御子さんが照れたように笑い、メモをめくる。
「とにかく、大きくて立派な絵をお持ちしましょう。」
「了解です。坊さんとは仲良くしておきたいですからね。」
俺は頷き、彼女の後ろに続く。
御子さんは俺と同期だが、明るい笑顔と滑らかなトークで顧客の心を掴むのが抜群に上手い。うちのエースと言っても過言じゃない。対する俺、山口静人(やまぐち しずと)は、無表情で愛想がない。絵画商なんて仕事、俺には向いてないんだ。
でも、御子さんが上でも、俺は全然構わない。女に抜かれるのが恥ずかしいなんて、古臭い考えは持ち合わせてない。彼女は優秀なんだから、こういう仕事は任せるのが一番だ。
今日も俺は御子さんのフォローに回った。彼女が顧客と笑顔で話す横で、俺は絵の説明を補足したり、書類を整理したり。地味な役回りだが、不満はない。
その日の成果は、驚くべきものだった。なんと3枚、総額300万円の絵が売れた。さすが御子さんだ。
画廊の閉店後、俺は売れた絵の梱包を進めていた。蛍光灯の白い光が、壁に残る絵を冷たく照らす。そこへ、御子さんが軽い足取りで近づいてきた。お団子ヘアが動きに合わせて揺れ、メガネの縁が照明を反射する。
「山口さん、お疲れさまでした。今日はお手伝いくださって、ありがとうございます。」
彼女が柔らかく微笑み、丁寧に頭を下げた。
「いや、こちらこそ。3枚も売るなんて、さすがですよ、御子さん。」
俺は梱包の手を止め、淡々と答えた。
「いいえ、山口さんがフォローしてくださったおかげです。私なんて、まだまだです。」
御子さんが照れたように笑い、メガネを軽く押し上げる。
その謙虚な態度は、彼女の魅力のひとつだ。明るい笑顔と裏腹に、決して驕らない。こういう奴が出世するんだろうな、と俺は思う。彼女なら、画廊の未来を背負えるかもしれない。
梱包を再開していると、ふと一枚の絵が目に留まった。抽象的な画風で描かれた女性の肖像。歪んだ線と鮮やかな色が、奇妙な調和を生んでいる。なぜか、その絵に心を奪われた。
女の曲線は、どこか御子さんの華奢な姿を思わせた。いや、違う。彼女の笑顔やメガネの奥の瞳とは別物だ。それでも、俺はこの絵から目を離せなかった。
「山口さん? どうかしましたか?」
御子さんが首をかしげ、俺の視線を追った。お団子ヘアが軽く揺れ、彼女の声が静かな画廊に響く。
「いや、なんでもない。この絵、なんか気になるなってだけ。」
俺は小さく笑い、絵を手に取った。
画廊の静寂を、御子ひとみの柔らかな声がそっと破った。
「どうかされましたか、山口さん? 何か気になる絵でも?」
彼女が首をかしげ、メガネの奥で瞳を輝かせる。お団子に結った髪が軽く揺れ、華奢な体がスーツに包まれている。胸元の膨らみが、細身のシルエットにさりげない存在感を添えていた。
「いや、この絵がちょっと気になって。」
俺は手に持った抽象画を差し出し、苦笑した。歪んだ線と鮮やかな色で描かれた女性の肖像。意味不明なのに、なぜか心を掴まれる。
「ああ、この絵ですね。」
御子さんが絵に目をやり、軽く微笑んだ。
「この画家さん、技術は素晴らしいんですけど、ちょっと抽象的すぎて。気味が悪いって敬遠する方も多いんです。」
「確かに、わかりにくいよな。でも、俺はこの絵、なんか好きだ。」
俺は絵を眺めながら、素直に呟いた。
「山口さん、画家を目指してましたよね?」
御子さんが興味深そうに尋ね、メガネを軽く押し上げた。
「はっ、そんな大したもんじゃないよ。ガキの頃、絵を描いてたけど、下手くそだった。それで美術関係の仕事に流れただけ。」
俺は自嘲気味に笑い、首を振った。
「でも、その経験は無駄じゃないですよ。」
御子さんが柔らかく微笑み、励ますように言った。
「だって、そのおかげで今、こうやって活躍なさってるんですから。」
「活躍ねえ。御子さんこそ、この仕事どうやって始めたんだ?」
俺は話題を振り返し、彼女の笑顔を見つめた。
「私ですか? 実は、元々営業がしたくて。絵画には全然興味なかったんです。」
彼女が照れたように笑い、お団子ヘアを軽く触った。
「入社してから一から勉強して、今はもう、この仕事が大好きになりました。」
「すごいな、御子さん。俺なんか営業は苦手で、いつも苦労してるよ。」
俺は淡々と答え、絵を棚に戻した。
「私も最初はそうでした。でも、山口さんなら絶対大丈夫ですよ。」
御子さんが明るく笑い、自信をくれる。
その笑顔に、俺は少し救われた気がした。でも、心のどこかで、彼女の優秀さに圧倒されている自分もいた。
その夜、コンビニで買った安いビールを手に、俺はアパートに帰った。古びた一室、狭いけど風呂とトイレがあるだけマシか。テレビをつけると、ニュースが流れていた。
「政府与党は、少子化対策として全国新育児支援協会を設立しました。この協会は、従来の恋愛や結婚観を見直し、出産を促す新たな取り組みを推進。シングルマザーの増加を掲げ、住居提供や金銭的支援、育児施設の整備で出産環境を整えます。これにより、出生率の向上が期待されています。」
ビールを煽りながら、俺はニュースをぼんやり眺めた。シングルマザー、、どんな未来を選ぶんだろう。
「嘘だろ。」
俺は小さく呟いた。御子のことを気にしてないなんて、ありえない。
俺は二流の美大で絵画を学んだ。だが、そこで見たのは、俺より才能ある奴らが画家になれず潰れていく現実だった。夢を諦め、画商になった俺は、最初こそ絵の知識で活躍できると思った。でも、現実は甘くなかった。
ズブの素人だった御子ひとみに、俺はどんどん引き離されている。彼女の笑顔、トーク、謙虚さ――俺にはないものばかりだ。
「あー、世の中、上手くいかねえな。」
ビールを一気に飲み干し、俺はソファに沈んだ。
画家としても、画商としても、俺は劣等感に苛まれていた。子供の頃から必死に絵を勉強したのに、今は素人に負けてる。情けないけど、これが現実だ。
「こんな夜の酒は、不味いな。」
安ビールの苦味が舌に残る。酔いが回り、俺はソファで意識を失った。
ピンポーン。
インターホンの音に、ウトウトしていた俺は目を覚ました。ドアを開けると、山井琴葉が立っていた。カジュアルなシャツにデニム、肩に掛けたバッグが軽く揺れる。
「どうしたんだ、こんな時間に?」
俺は酔い覚ましに目をこすり、彼女を見た。
「友達と飲んでたんだけど、みんな終電逃してさ。カラオケ行くにもタクシー乗るにも金かかるし。」
琴葉が肩をすくめ、ニヤッと笑った。
「で、静人の家が近いから、泊めてよ。」
「はあ、好きにしろ。俺は寝る。」
俺は手を振ってソファに戻った。
「ありがとー! 愛してるよ、静人!」
琴葉が軽快に笑い、靴を脱いで部屋に上がった。彼女はバッグを放り投げ、シャツを脱ぎ捨て、下着姿で浴室へ向かった。
アパートの洗面所で冷たい水をかぶり、俺は顔を拭った。冷蔵庫から取り出したビールの缶が、手の中でキンと冷える。酔いは醒めたが、胸のモヤモヤ――画商としての劣等感、御子ひとみの眩しい笑顔――は消えやしない。
「ふぅ、さっぱりした! ビールちょうだい!」
山井琴葉の明るい声が、静かな部屋を切り裂いた。彼女はバスタオルを巻いて浴室から出てきて、ソファにドカッと腰を下ろした。オレンジの短髪が濡れて首筋に張り付き、鮮やかな色が薄暗い部屋で妙に目立つ。バスタオルが体のラインをなぞり、大きい胸が柔らかく強調されている。琴葉の笑顔は、疲れた俺の目を眩ませるほど活き活きしていた。
「へい、どうぞ。」
俺はビールを手渡し、彼女の隣に腰を沈めた。缶のプルタブがシュッと鳴り、琴葉が一気に飲み干す。
「んー、生き返る!」
琴葉がニヤッと笑い、オレンジの髪を指でかき上げた。短い髪が動きに合わせて揺れ、彼女の気楽な空気が部屋を満たす。
「で、静人、なんかあった? 顔、めっちゃ疲れてるよ。」
彼女がビールを傾け、横目で俺を見た。
「別に。仕事でちょっと、な。」
俺は淡々と答え、ビールを一口。御子ひとみのメガネの奥の瞳、画廊の抽象画、俺の無様な過去が頭をよぎる。
「ふーん。まあ、深く聞かないけどさ。元気出しなよ。」
琴葉が肩をすくめ、軽く俺の肩を叩いた。
その何気ない仕草に、俺の胸の重さが少しだけ溶けた。琴葉はいつもこうだ。どんなモヤモヤも、彼女の笑顔と軽い一言で吹き飛ばしてくれる。
古びたアパートの窓から、街の灯りがぼんやり見える。テレビのニュースが、協会のシングルマザー支援を繰り返し流している。
「なあ、琴葉。」
俺はビールを置き、彼女のオレンジの髪を見つめた。
「ん? なに?」
琴葉が振り返り、大きい胸がバスタオル越しに軽く揺れた。彼女の目は、いつものように悪戯っぽく輝いている。
「いや、なんでもない。ありがとな、来てくれて。」
俺は小さく笑い、缶を手に取った。
「へいへい、愛してるよ、静人!」
琴葉がウィンクし、ビールを高く掲げた。
その声が、静かな夜に軽やかに響いた。琴葉の存在は、俺のつまらない気分を、ほんの少し、確かに軽くしてくれた。
琴葉が下着姿で俺のベッドに飛び込み、シーツの上でゴロリと転がった。白い肌が薄暗い部屋の照明に映え、いたずらっぽい笑みが俺を誘う。
俺は特に気にも留めず、冷蔵庫から取り出したビールの缶を開け、一口飲んだ。苦味が喉を滑り、疲れた身体が一瞬ほっとする。
だが、琴葉はベッドの上で寝転がっていたかと思うと、突然むくりと起き上がり、俺に抱きついてきた。
「んっ!」
彼女の唇が不意に重なり、熱いキスが始まった。
「ん……んん……。」
琴葉の舌が滑り込み、俺の口内で柔らかく絡み合う。驚いたが、彼女の甘い吐息と温もりに抗えず、そのままキスを受け入れた。唾液が混ざり合い、唇が離れると、細い唾液の糸が伸び、プツンと切れた。
「どうしたんだ、琴葉?」
俺は息を乱し、彼女の輝く瞳を見返した。
「別に? ただ、静人とキスしたくなっただけ。嫌だった?」
琴葉は悪戯っぽく笑い、俺の胸に指を這わせた。
「いや、嫌じゃないけど……。」
俺は動揺を隠せず、言葉を濁した。恋人とはいえ、こんな積極的な琴葉は初めてだった。
「ねえ、しよ?」
琴葉は囁くように誘い、俺のズボンに手をかけ、するりと下ろした。そして、すでに硬くなり始めたものをそっと口に含んだ。
「ん……!」
琴葉の舌が巧みに動き、温かい感触に身体が即座に反応する。
「んふ、大きくなったね。じゃあ、そろそろ本番かな。」
琴葉は満足げに微笑み、下着を脱いで全裸になると、ベッドに横たわった。白い肌がシーツに映え、豊かな胸が柔らかく揺れる。
俺は彼女の誘いに逆らえず、琴葉に覆いかぶさり、深くキスを交わした。舌を絡ませ合いながら、柔らかい乳房を揉み、乳首を軽く摘むと、彼女の身体がビクッと反応した。
「あっ……♡」
首筋に舌を這わせ、愛撫を続けると、琴葉の息遣いが荒くなる。俺は彼女の下着の中に手を滑らせ、秘部に触れた。そこはすでに熱く濡れていた。
「んん……気持ちいい……。」
琴葉が甘い声を漏らし、俺は指をそっと膣内に滑らせ、敏感な部分を刺激した。彼女の声がさらに高くなり、身体が小さく震える。
そろそろかと判断し、俺はズボンを脱ぎ、コンドームを装着した。琴葉の足を軽く上げ、ゆっくりと挿入する。奥まで入ると、熱い締め付けが俺を包み込んだ。
射精の衝動を抑え、腰をゆっくり動かし始めた。最初は慎重に、徐々にリズムを速めていく。
「あぁ! すごいっ……♡」
琴葉の喘ぎ声が部屋に響き、肉体がぶつかる音がリズミカルに鳴る。彼女の胸が揺れるたび、俺はそれを掴み、乳首に舌を這わせた。膣の締め付けがさらに強まり、快感が全身を駆け巡る。
「んっ! イクっ! イッちゃうぅ……!」
琴葉の身体が震え、絶頂を迎えた。同時に、俺も限界に達し、コンドーム内に大量の精液を放出した。
「はぁ……はぁ……。」
俺は息を整え、琴葉の汗ばんだ額に手を当てた。琴葉はぐったりとシーツに沈み、満足げな笑みを浮かべていた。
古びたアパートの夜は、琴葉の温もりに包まれて静かに終わった。彼女のオレンジの短髪が俺の肩に触れ、柔らかな胸が寄り添う感触が心地よかった。親密なひと時の後、俺たちはキスを交わし、寄り添って眠りについた。
翌朝、目覚めると、キッチンから香ばしい匂いが漂ってきた。ソファから身を起こすと、山井琴葉がコンロの前に立っている。朝の光が彼女のオレンジの短髪を照らし、鮮やかな色がキラキラと輝く。カジュアルなTシャツが体のラインをなぞり、大きい胸がさりげなく強調されていた。
「おはよう、静人。」
琴葉が振り返り、ニヤッと笑った。フライパンから焼き鮭の香りが立ち上る。
「おはよう。何、朝からやってんだ?」
俺は目をこすり、寝ぼけた声で尋ねた。
「朝ご飯。泊めてもらったんだから、これくらいしないとね。」
彼女がウィンクし、味噌汁をかき混ぜる。短い髪が動きに合わせて揺れ、彼女の気楽な空気が部屋を満たした。
「そうか、悪いな。じゃ、シャワー浴びて着替えてくる。」
俺は立ち上がり、浴室へ向かった。
「うん、その間に仕上げとくよ!」
琴葉の軽快な声が背中に響く。
シャワーの温水で目を覚まし、適当なシャツに着替えて食卓に戻ると、朝食が並んでいた。ご飯、味噌汁、焼き鮭――シンプルだが、香りが食欲をそそる。
「いただきます!」
琴葉が手を合わせて、楽しそうに食べ始めた。
俺も箸を取り、鮭をかじる。味噌汁の出汁がじんわり効いて、鮭の塩気が絶妙だ。あっという間に平らげ、満足げに息をついた。
「美味かった。サンキュ、琴葉。」
俺は空の茶碗を置き、彼女を見た。
「どういたしまして!」
琴葉が笑い、皿を流しに運ぶ。
二人で後片付けをしながら、琴葉がふと話しかけてきた。
「最近、仕事どう? 画廊、楽しそうじゃん。」
彼女がスポンジを手に、軽い調子で尋ねた。
「全然。面白くもなんともないよ。」
俺は淡々と答え、皿を拭いた。
「嫌いな絵まで売らなきゃいけない。それが結構キツいんだ。」
「ふーん、そうなんだ。」
琴葉が首をかしげ、オレンジの髪が朝の光に揺れる。
「でも、絵に囲まれて仕事できるなんて、ちょっと羨ましいけどね。」
「最初は俺もそう思ってた。でもな、現実は違う。」
俺は苦笑し、御子ひとみの眩しい笑顔を思い出した。彼女のトークに引き離される自分が、胸に重くのしかかる。
「そっちは? イラストレーター、楽しいだろ?」
俺は話題を振り返し、彼女の横顔を見た。
「全然。」
琴葉が肩をすくめ、ため息をついた。
「メインのキャラとか描きたいけど、そういうのは先輩や上司が持ってくの。新人なんてアシスタント扱い。背景ばっか描かされて、うんざりだよ。」
「そうか……大変なんだな。」
俺は小さく頷き、彼女の不満に共感した。
その後も、たわいもない話を続けた。テレビの雑音、街の喧騒、朝の光――すべてが、琴葉のオレンジの髪と笑顔に彩られる。やがて、彼女はバッグを手に立ち上がった。
「じゃ、そろそろ帰るね。またね、静人。」
琴葉がウィンクし、軽やかにドアへ向かった。
「ああ、またな。」
俺は見送り、彼女の背中が消えるまで眺めた。
琴葉との出会いは、美大の現代美術の講座だった。あの頃、彼女の絵は教室でひときわ輝いていた。鮮やかな色使い、自由な線。俺は思わず声をかけた。
「琴葉、絵、めっちゃ上手いな。」
「え、そう? ありがとー!」
彼女が振り向いた瞬間、オレンジの短髪が揺れ、笑顔が弾けた。その笑顔が、俺の胸に焼きついて離れなかった。
琴葉は明るくて、友達も多かった。講座の後、仲間と飯を食ったり、街をぶらついたり。何度かのグループデートを経て、二人で過ごす時間が増えた。自然と付き合い始め、俺が画商に、彼女がイラストレーターになる頃には、互いの夢を応援し合う関係だった。
彼女の才能なら、すぐ活躍できると思った。だけど、現実は厳しかった。「好きな絵が描けない。背景ばっか」と愚痴っていた。
俺もまた、嫌いな絵を売る画商の仕事にうんざりしている。夢は遠く、現実は冷たいものである。