数日後、御子さんに呼び出され、俺は喫茶店に向かった。
店に入ると、御子さんと、洗練されたスーツ姿の女性がすでに席に着いていた。彼女は俺を見つけると、優雅に立ち上がり、柔らかな笑みを浮かべた。
「お疲れさま、山口さん。わざわざ来てくれてありがとう。」
「いえ、こちらこそ……えっと……。」
「改めて、自己紹介を。私は『全国新育児支援協会』の理事長、会馬と申します。今後のことを話したくて、お時間をいただいたの。」
彼女の声は落ち着いた低音で、柔らかさと威厳を併せ持っていた。三十代後半か、四十代前半だろうか。巻き髪のショートヘアが首元で軽やかに揺れ、グラマラスな曲線を際立たせるテーラードスーツが、彼女の存在感を際立たせていた。整った顔立ちには知性が宿り、どこか人を惹きつけるオーラがあった。場の空気を自然と支配するような、堂々とした佇まいだった。
「山口さん、実は――少し、重要な相談があって。」
「は、はぁ……。」
俺は思わず息を呑み、彼女の次の言葉を待った。
俺は自然と背筋を伸ばした。
「単刀直入に言うわね。あなたの精子を、協会に提供してもらえないかしら。」
「……えっ? すみません、今、なんと……?」
俺の頭が追いつく前に、会馬さんは視線を逸らさず、真剣な声で続けた。
「私たちの協会では、育児支援の一環として、子どもを望む女性たちへのサポートを行っているの。ただ……男性側の協力者が、圧倒的に足りていないのよ。」
「……でも、なんで俺なんですか?」
「それはね――御子さんから、あなたのことを聞いて。あなたは信頼できる。下心なく、真摯に相手のために動ける。そういう人が必要なの。」
「……いや、それは……でも、俺なんかで、本当にいいんですか?」
「いいえ。あなたじゃなきゃ、ダメなのよ。」
会馬さんは一切の迷いなくそう言った。
「他の男性にも打診はしてきたわ。でもね、みんな“協力はする”と言いつつ、その多くが……目的を勘違いしている。
でも、あなたは違う。御子さんのことも、誠実に受け止めてくれたそうじゃない。」
「……。」
返す言葉が見つからなかった。
「もちろん、これはボランティアではないわ。あなたの生活をサポートするだけの報酬は用意しているし、健康診断や契約も、すべて正式な手続きを踏む。」
「……。」
「山口さん、今の生活が大変なことも、御子さんから聞いている。手取りが15万ほどで、家計はいつもギリギリなんでしょう?」
俺は図星を突かれて、思わず息を呑んだ。
「でもね、私たちが支援するのは『子どもを望む女性』だけじゃないの。協力してくれるあなたのような人にも、しっかり対価は払いたい。」
「……わかりました。やってみます。」
俺は思わず、そう言っていた。
「ありがとう。では、いくつか約束事を説明させてね。」
会馬さんは手元のタブレットを開き、淡々と説明を始めた。
「まず、性行為は必ず双方の同意のもとで行うこと。無理強いは当然ながら禁止。
次に、あなたには定期的に健康診断を受けてもらうわ。特に性感染症のチェックは厳重にね。
プライバシーは守られるけど、恋愛関係や結婚を前提とする行動は会としては推奨しない。
あくまでこれは“出産支援”のための契約。親権は放棄してもらう代わりに、養育費などの責任は一切ないわ。」
「すみません、一つだけ……。その、プライベートでのやり取りも禁止されるんでしょうか?」
「原則としてはそうね。これはビジネス。感情が入りすぎると、かえってお互いが辛くなるものよ。」
「……それなら、やっぱり……できません。」
「理由を聞いてもいいかしら?」
「無責任な気がするんです。俺は御子さんのこと、ただの“相手”じゃないと思ってます。……彼女の力になりたいって、心から思ってるんです。
ただの取引相手として扱うのは、どうしても納得できない。」
「……なるほど。」
会馬さんは目を細めて、小さく息をついた。
「やっぱり、あなたは他の男性とは違うわね。……ふふ、正直、感心したわ。」
会馬さんは静かに微笑みながら言った。どこか優しさを含んだ口調だった。
「……ありがとうございます。」
俺は気圧されつつも、素直に頭を下げた。
「特例として、友人関係はそのままで構わないわ。ただし、あくまで彼女たちの気持ちを最優先にすること。それだけは忘れないで。」
「はい。もちろんです。」
俺の声にも自然と真剣さがにじんだ。
「それなら、よかった。」
会馬さんは軽く頷き、姿勢を少しだけ正した。
「それと……報酬の話だけどね。月に3万円、支給させてもらうわ。これはあなたの時間と協力に対する正式な謝礼よ。」
「えっ……そんなに?」
思わず目を丸くしてしまった。
「ええ。当然でしょ? あなたがしてくれることは、誰にでもできることじゃない。きちんと価値を示すのが筋よ。」
「……ありがとうございます。」
思わず背筋が伸びる。
「それとね、もし妊娠という結果が出たら――出産祝いとして、10万円を支給するわ。」
「……本当に、いいんですか?」
俺は戸惑いながらも、どこか救われた気持ちになった。
「もちろん。あなたにはそれだけの責任感と信頼があるもの。私たちとしても、きちんと応えなきゃね。」
「……はい。それでは、よろしくお願いします。」
俺は深く頭を下げた。
その後、俺は御子さんと帰りながら話した。
「本当にありがとうございます。これで私も安心して出産できます。」
「俺が他の女性とも子作りしても平気なんですか?」
俺は疑問に思って聞いた。
「はい、実は紹介したら良い病院を紹介してもらえると、会馬さんに言われたんです。」
御子さんは少し照れたように答えた。
「それに、私には気持ちもあります。実は私の両親は仲があまり良くなくて、毎日喧嘩ばかりしていました。その時、私はまだ子供で、どうして母が父と離婚しないのか理解できませんでした。でも、大人になって、母から話を聞いた時に、母は一人では私を育てられないと思ったと話してくれました。だから、私はこの会や制度がもっと多くの女性にとって必要な世の中になってほしいと願っています。」
御子さんは真剣な眼差しで答えた。
確かに、夫婦という形に縛られることで、むしろ不幸に陥れられる場合もある。
それならシングルマザーとしての形を推進すればいいと思うが、それは現実問題として厳しいのだろう。
だから、御子さんは会の活動に積極的に参加しているのだろう。
「なるほど、御子さんの思いはわかりました。でも、シングルマザーを増やすことと支援することは別問題では?」
俺は反論した。
「女性の体は常に劣化します。健康で安全に出産できる期間も限られています。だからこそ、私はなるべく早く支援していきたいんです。」
確かに、妊娠や出産は女性がいつでもできるわけじゃない。すぐに支援しなければ、産みたい時に産めない可能性もある。
「なるほど、わかりました。俺もできる限り協力します。」
そして、次の週に俺は会馬さんと会った。
「これから山口くんは毎月、選定した女性の方と子作りしてもらうわ。ただし、人間ですので相性が悪い方や、お身体に問題がある方は対象外となるの。また、精子提供は原則として1ヶ月間のみとしてね。」
「わかりました。それで、今月の女性はどんな方なんですか?」
「今月は私よ。」
「え? 会馬さん、ですか?」
「うん、私は理事長だけどまだ子供がいないの。だから山口さんの健康状態などを身をもって体験したいの。」
「はぁ、そうなんですか……。」
俺は困惑した。
「早速だけど、子作りを始めましょう。」
「少し、話してからじゃダメでしょうか? いきなり子作りと言われても、心の整理がつかないというか。」
「わかったわ。何が聞きたいの? なんでも答えるわ。」
「会馬さんはなんで会の創設者になったんですか?」
俺は疑問に思って聞いた。
「いいえ、単なる形だけよ。この会、女性政治家や女性社長、有名女優なども多いの。女性たちがより良い環境で子供を産めるようにと思って作られたの。私はその中で一番適任だったから理事長になったの。」
「一番適任? なぜですか?」
カフェのテラス席で、会馬さんがコーヒーカップを手に、少し照れたように笑った。
「えっと、まあ、プライベートはあまり話したくないんだけど、しょうがないわね。」
彼女は髪をかき上げ、穏やかに続けた。
「私は医者なの。産科医よ。だから、医学的な観点でアドバイスや相談に乗れるし、子作りのサポートもしてる。で、あれよあれよと、こうなったわけ。」
俺はカップを置いて、興味深く尋ねた。
「なるほど。ところで、会馬さんが子供を産もうと思ったきっかけは?」
会馬さんの目が一瞬遠くを見つめ、悲しげな影がよぎった。
「そうね……親しい友人が、子供を産めない身体で悩んでたの。」
彼女は小さく息をつき、言葉を紡いだ。
「その子、子供が大好きで、いつも『自分の子が欲しい』って話してた。でも、病気でその夢を叶えられなかった。」
俺は静かに頷き、彼女の話に耳を傾けた。
「だから、私が代わりに、って言うのは変だけど、彼女の夢だった子供を産んであげたいと思ったの。」
会馬さんはふっと笑顔を取り戻し、軽く肩をすくめた。
「まあ、でも、正直に言うと、自分が産みたいってのが一番の理由かな。」
その率直さに、俺は小さく笑った。
「それまで、パートナーはいなかったんですか?」
「いたわよ。」
会馬さんはカップをテーブルに置き、軽く目を細めた。
「でも、父親になれるような人はいなくて、結局別れちゃった。」
「会馬さんが思う『父親』って、どんな人ですか?」
俺は身を乗り出し、静かに尋ねた。
彼女は少し考え、落ち着いた声で答えた。
「そうね……子供にとって規範となる存在かしら。」
「規範?」
俺は首をかしげ、続きを促した。
「そう。子供にとって一番身近な大人が親でしょ?」
会馬さんは真剣な目で俺を見た。
「だから、親は子供の手本になるような行動をしなきゃいけないと思うの。」
彼女の言葉に、俺は深く頷いた。
「でも、それは理想論よね。」
会馬さんは自嘲気味に笑い、髪を指で梳いた。
「私が高望みしすぎてるのもわかってる。でも、子供のためにも、立派な父親を妥協せず選びたいの。」
「でも、パートナーは見つからなかった?」
俺は慎重に尋ねた。
「うん、難しいわ。」
彼女は軽くため息をつき、冗談めかして付け加えた。
「だって、男の人って若い子が好きでしょ? だから、なかなか見つからないのよ。山口くんもそう思う?」
俺は会馬さんの顔を見た。彫りの深い美貌、整った目鼻立ち、引き締まったウエストと豊かな胸。彼女の魅力は、年齢を超越していた。
「いや、俺は……会馬さんのこと、すごく魅力的な女性だと思います。」
俺は思ったままを口にした。
「ふふ、ありがとう。お世辞でも嬉しいわ。」
会馬さんは柔らかく微笑み、カップを手に取った。
「いえ、本心です。」
俺は真剣な目で彼女を見つめ、言葉を重ねた。
「まあ、お上手ね!」
彼女は笑い声を上げ、軽く俺の肩を叩いた。
ふと、会馬さんがいたずらっぽく目を細めた。
「ねえ、テストはどう? 私、合格かしら?」
俺は一瞬言葉に詰まり、彼女の真意を探った。
「ええ……俺、会馬さんに好意を持ってます。会馬さんは、俺なんかと子作りしても嫌じゃないですか?」
彼女は静かに微笑み、穏やかな声で答えた。
「嫌じゃないわ。御子さんから話聞いて、良い人だなって思ってたの。今、こうやって話してみて、山口くんなら大丈夫だって確信した。」
俺は深く息を吸い、決意を固めた。
「わかりました。会馬さんのお手伝い、俺にさせてください。」
「うん、お願いね、山口くん。」
会馬さんは温かい笑顔で頷き、俺の手を軽く握った。
その夜、俺たちはホテルの部屋へと向かった。
部屋に入ると、会馬さんは「先にシャワー浴びてくるね」と言い、バスルームへ消えた。
俺はベッドの端に腰掛け、静かな部屋で待った。窓の外には街の灯りが瞬き、緊張と期待が胸に混ざる。
やがて、バスルームのドアが開き、会馬さんがバスタオルを巻いた姿で現れた。濡れた髪が肩に落ち、肌がほのかに火照っている。
「山口くん、お待たせ。」
彼女は柔らかく微笑み、ゆっくりと俺に近づいてきた。
「いえ……。」
俺は緊張していた。
「どうしたの? 緊張してるの?」
会馬さんが聞いてきた。
「はい……まあ、さすがに数回しか会ったことのない女性と子作りするのは緊張します。」
俺は正直に言った。
「ふふ、可愛いわね、山口くんは。でも大丈夫よ。リラックスしてね。」
会馬さんが柔らかく笑い、俺の手を引いてベッドに腰を下ろした。ホテルの部屋は静かで、窓の外の街の灯りがカーテン越しにほのかに揺れる。
「じゃあ、始めましょう。」
彼女は囁くように言い、俺の頬にそっと手を添えてキスを仕掛けてきた。
会馬さんの唇は柔らかく、舌が滑り込むと甘い熱が口内に広がった。俺は彼女の首に手を回し、激しく舌を絡ませた。吐息が混ざり合い、唇が離れる瞬間、細い唾液の糸が光って落ちた。
「はぁ……ん……。」
会馬さんが色っぽい吐息を漏らし、火照った頬で俺を見つめた。
彼女のバスタオルがわずかにずれ、豊満な胸がこぼれそうに揺れる。白い肌が照明に映え、誘うような曲線が目を奪った。
「ねえ……触ってみて。」
会馬さんが甘く微笑み、俺の手を自分の胸に導いた。
俺は言われるまま、柔らかく弾力のある胸をそっと包んだ。指先に伝わる温もりに心臓が速まる。乳首はすでに硬く、軽く摘むと彼女の身体が小さく震えた。
「あっ……そこ、ダメ……。」
会馬さんが甘い声で喘ぎ、恥じらうように目を伏せた。
俺は乳首に唇を寄せ、舌で転がしたり軽く吸ったりした。彼女の吐息が熱を帯び、身体が俺の動きに合わせて揺れる。もう片方の手で反対側の胸を愛撫しながら、ゆっくりと下腹部へと滑らせた。
ショーツ越しに秘部に触れると、すでに熱く濡れていた。
「んん……そこ、恥ずかしいよ……。」
会馬さんが照れたように囁いたが、俺は構わず愛撫を続けた。指を滑らせ、敏感な部分を優しく刺激すると、彼女の声が高くなり、身体がビクッと反応した。
「はぁ……もう、大丈夫よ……挿れてもいい……。」
会馬さんが息を乱し、潤んだ目で俺を見上げた。
俺はズボンを脱ぎ、硬く勃起した自身をそっと彼女に合わせた。ゆっくりと挿入すると、熱く濡れた膣内が俺を強く締め付けた。
「ああ……入ってくる……。」
会馬さんが甘く吐息を漏らし、俺の肩に手を置いた。
俺は慎重に腰を動かし始めた。彼女の温もりと締め付けに、快感が全身を駆け巡る。会馬さんの豊かな胸がリズムに合わせて揺れ、俺はそれを両手で包み、柔らかな感触を味わった。
「あんっ……気持ちいい……。」
彼女の声が部屋に響き、肌が密着するたびに熱い感触が伝わる。
俺は徐々に速度を上げ、深く突き入れる。会馬さんの身体が仰け反り、膣奥を刺激されるたびに甘い喘ぎが漏れた。
「ああ! ダメ……イクっ……!」
会馬さんの身体が震え、強い締め付けとともに絶頂を迎えた。
その瞬間、俺も限界に達し、熱い衝動を彼女の中に解き放った。子作りの決意が、大量の精液となって注ぎ込まれた。
「はぁ……はぁ……。」
二人とも息を乱し、汗ばんだ身体を寄せ合った。会馬さんは俺の胸に顔を埋め、静かに微笑んだ。
俺たちは息を荒らげていた。
会馬さんは起き上がると、俺に抱きついてきた。そしてキスをしてきた。俺はそれに応じた。
舌を絡ませ合う濃厚なキスだった。やがて口を離すと、唾液が糸を引いた。
それから俺たちはシャワーを浴びた後、ベッドで横になった。
「一つ聞きますが、俺が父親に向いていると思いますか?」
「そうね、会わずに話してみて感じたのは、山口くんはとても誠実で良い人だと思うわ。でも、私の相手としては残念だけど、父親の基準には達していないわね。」
「そうですか……」俺は残念に思った。
「じゃあ、明日も子作りお願いね。」
「……わかりました。」
俺たちはその後、駅で別れた。あたりはすっかり夕方になっていた。
時間を計算すると、5時間ほど会馬さんと子作りしていたことになる。
「随分と熱中していたんだな。」俺は驚いた。
家路につき、俺はアパートのソファに沈み込んだ。手には冷えたビールの缶。部屋の明かりは薄暗く、窓の外の街の喧騒が遠く聞こえる。酒をちびちび飲みながら、今日のことを反芻した。
会馬さんとの子作り。あの熱い夜の記憶が、胸に鮮やかに蘇る。彼女の柔らかな肌、知性と情熱を秘めた瞳、子作りへの真剣な決意。その魅力は、俺の心を強く揺さぶった。
もし彼女が望むなら、俺は結婚してもいい――そう思った瞬間、彼女の穏やかだがきっぱりとした拒絶が脳裏をよぎる。
会馬さんは、夫を必要としていない。俺を父親候補として見ていないというより、どの男性に対しても「父親」という役割を求めていないのだ。彼女は高い壁を築き、最初から父親不在の子育てを選んでいる。それが、彼女の優しさであり、信念なのだと、俺は受け止めた。
リビングのドアが開き、琴葉が部屋に入ってきた。彼女はソファの反対側に腰を下ろし、缶ジュースをプシュッと開けた。
「琴葉、ちょっと話したいことがある。」
俺はビールを置き、切り出した。
「ん? なに?」
琴葉はジュースを一口飲み、気軽に目を向けた。
「会馬さんのこと。彼女と子作りしたんだ。全部話していいか?」
俺は正直に、包み隠さず伝えた。会馬さんの信念、俺の好意、彼女の拒絶まで。
愛想を尽かされるかと覚悟したが、琴葉は肩をすくめ、まるで天気の話題でもするように軽く笑った。
「ふーん、それは大変ね。」
「驚かないのか?」
俺は思わず身を乗り出し、尋ねた。
「別に? その会馬さんって人、静人のこと好きでもなんでもないんでしょ? ただ子供を産みたいだけなら、怒る理由ないよ。」
琴葉は缶をテーブルに置き、さらりと答えた。
「そうか……でも、いいのか? 俺が他の女性と子作りしても。」
俺は慎重に、彼女の瞳を探った。
「何が?」
琴葉は首をかしげ、いたずらっぽく笑った。
「いや、ほら……俺がまた他の人と、そういうことをしても……。」
言葉を濁すと、彼女はフッと鼻で笑った。
「全然いいよ。私たち、夫婦でもないし、結婚するつもりもないでしょ?」
琴葉の声は軽やかで、まるで当たり前の事実を告げるようだった。
胸がチクリと痛んだ。彼女の言葉は正しい。でも、どこか寂しさが込み上げる。
「そうか……。」
俺は小さく呟き、ビールを一口飲んだ。
「で、次もその人と子作りするの?」
琴葉が缶を手に、軽い調子で尋ねた。
「ああ、そのつもりだ。」
俺は静かに頷いた。
「ふーん、いいんじゃない? どんどん社会貢献して、子作り頑張んなよ。」
琴葉は笑いながら言い放ち、ジュースをグイッと飲み干した。
「本当にいいのか?」
俺はもう一度、彼女の表情を確かめた。
「うん、いいよ。今日は生理でできないけどさ、今度するときはちゃんと可愛がってよね。」
琴葉はウィンクし、ソファから立ち上がった。
「わかった。約束するよ。」
俺は苦笑し、彼女の背中を見送った。
部屋に静けさが戻り、俺はビールを握りしめた。琴葉の自由さと、会馬さんの信念が、頭の中で交錯する。俺はこの道でいいのか――答えはまだ、見つからない。
翌日、俺は再び会馬さんとホテルのロビーで待ち合わせた。夕暮れの光がガラス窓を染め、街の喧騒が遠く響く。
「待ってたわ、山口くん。」
会馬さんが柔らかな笑みを浮かべ、俺を迎えた。彫りの深い美貌と、知性を湛えた瞳が、薄暗いロビーでひときわ輝く。
「今日もよろしくお願いします。」
俺は軽く頭を下げ、彼女の後ろを追った。心臓がわずかに速まる。
ホテルに着き、部屋のドアを閉めると、静かな緊張が空気を満たした。俺たちは互いの服を脱ぎ、素肌を晒してベッドに滑り込んだ。シーツの冷たさが肌に触れ、すぐに彼女の温もりに溶ける。
「じゃあ、始めましょう。」
会馬さんが囁き、俺の頬にそっと手を添えた。彼女の唇が近づき、熱いキスが始まる。
舌が絡み合い、甘い吐息が口内に広がる。濃厚なディープキスは、まるで互いの魂を求め合うよう。彼女の柔らかな唇が俺を飲み込み、時間が溶けていく。
会馬さんの手が俺の身体を滑り、硬く張り詰めた部分をそっと握った。巧みな指使いに、快感が背筋を駆け上がる。
「んっ……気持ちいい……。」
俺は思わず声を漏らし、彼女の瞳を見つめた。
「ふふ、いい子ね。」
会馬さんが悪戯っぽく微笑み、俺の首にキスを落とした。
俺は彼女の豊満な胸に唇を寄せ、柔らかな曲線に舌を這わせた。硬く尖った乳首を口に含み、軽く吸うと、彼女の身体が小さく震えた。
「あん……そこ……。」
会馬さんが甘く喘ぎ、火照った頬をシーツに押し当てた。
俺の手は彼女の腰を滑り、濃密な陰毛に覆われた秘部へと辿り着いた。熱く濡れたそこに舌を這わせ、愛液を丁寧に味わう。彼女の甘い香りが鼻腔をくすぐり、俺の理性を溶かしていく。
「ああ! ダメっ……そこ、感じすぎる……!」
会馬さんが身体を仰け反らせ、切なげな声を響かせた。
俺は指を滑らせ、彼女の敏感な部分を優しく刺激した。Gスポットをそっと探り当てると、彼女の喘ぎが一層高まる。
「あっ! んんっ……!」
会馬さんがシーツを握りしめ、快楽に身を委ねた。
「ああ……イクっ……!」
彼女の身体が震え、熱い波が彼女を包んだ。
「俺も……もう限界です。」
俺は息を乱し、彼女の瞳を見つめた。
会馬さんが微笑み、俺を導くように身体を開いた。正常位でそっと挿入すると、熱く濡れた彼女の奥が俺を強く締め付けた。亀頭が子宮口に触れる瞬間、電流のような快感が走る。
「ああ……入ってくる……。」
会馬さんが甘く吐息を漏らし、俺の背中に手を回した。
俺はリズムを刻み、深く突き入れる。彼女の豊満な胸が揺れ、淫靡な曲線が俺の目を奪う。互いの肌が密着し、汗と熱が絡み合う。
「ああ! いい……気持ちいい……!」
会馬さんの声が部屋に響き、俺の動きに合わせて身体が揺れる。
キスを重ね、舌を求め合う。濃厚なディープキスが、俺たちの情熱をさらに煽った。彼女の胸を両手で包み、柔らかな感触に溺れる。
俺はさらに激しく腰を動かし、彼女の奥を責め立てた。快楽の波が押し寄せ、ついに限界が訪れる。
「ああ! 出てる……!」
会馬さんが喘ぎ、強い締め付けとともに絶頂を迎えた。
俺も同時に熱い迸りを彼女の奥に解き放った。子作りの決意が、脈打つ衝動となって彼女に注ぎ込まれる。
「はぁ……はぁ……。」
俺たちは息を乱し、汗ばんだ身体を寄せ合った。
ゆっくりと引き抜くと、彼女の秘部から白い滴がシーツに零れた。会馬さんは俺の胸に顔を寄せ、静かに微笑んだ。
俺たちはそのまましばらく抱き合っていた。
1ヶ月経って、会馬さんと子作りが終了となった。
「今日でおしまいね。」
「そうですか、お疲れ様でした。」
「うん、ありがとうね。山口くんのおかげで良い経験をさせてもらったわ。」
ホテルの部屋を出て、俺たちは夕暮れの街を歩いた。駅に向かう道すがら、沈む夕陽がビルの隙間をオレンジに染める。風が冷たく、俺の胸に微かなざわめきを残した。
「これから、会馬さんはどうするんですか?」
俺は足を止め、彼女の横顔を見ながら尋ねた。
会馬さんがふっと微笑み、髪を耳にかけながら答えた。
「妊娠してたらいいけど、してなかったら……まあ、いつも通りよ。」
「え? 他の男性に子作りをお願いしないんですか?」
俺は思わず身を乗り出し、驚いて尋ねた。
彼女は軽く笑い、知性を湛えた瞳を細めた。
「まだ、協力してくれる人を見つけてないの。みんな、ただのセックス目当てでね。お断りしてるわ。」
会馬さんは肩をすくめ、穏やかに続けた。
「今回は実験の意味もあったから、私が自分でやってみただけよ。」
「そうなんですか……。」
俺は胸を撫で下ろし、ほっと息をついた。彼女の言葉に、なぜか安堵が広がる。
会馬さんが俺を振り返り、柔らかな声で言った。
「まあ、山口くんはしばらくお休みね。また、妊娠を希望する女性がいたら連絡するわ。」
「わかりました。」
俺は小さく頷き、彼女の笑顔に目を奪われた。彫りの深い美貌と、信念を秘めた瞳が、夕陽に映えて輝く。
駅のホームに着き、電車の到着を待つ間、俺たちは言葉少なに並んだ。改札の向こうで人々が忙しなく行き交い、遠くで電車の音が響く。
「じゃあ、またね、山口くん。」
会馬さんが手を振って微笑み、ホームの反対側へ歩いていく。彼女の背中が夕暮れに溶け、俺の胸に静かな余韻を残した。
電車が滑り込み、俺は一人、車内に乗り込んだ。窓の外を流れる街の灯りを眺めながら、会馬さんの言葉を反芻する。彼女の信念、子作りへの真剣さ、そして俺の役割――。その全てが、複雑な思いとともに心に沈んだ。