デビルサバイバー2/ハッカーズメモリー 作:ボルメテウスさん
メグレズの最期の抵抗を打ち砕いた後、俺たちは名古屋地区のビルの屋上にいた。眼下には、棘の雨から救われた街並みが広がっている。安堵と疲労が身体を重くしていた。
「……なんとかなったか」
「ギリギリだったけどね。まぁ、私と君なら当然さ」
リンゴは銃身から放熱するアンティキティラを手慣れた様子で分解しながら、いつもの調子で言った。その横顔は煤で汚れていたが、どこか晴れやかだ。
フミから連絡が入ったのは、それからしばらくしてからだった。
「やぁ、お疲れ様。今回も見事だったね」
スピーカーから聞こえるフミの声は、少し興奮しているようだった。
「残るセプテントリオンはあと3体。これまでのペースを考えると、決して楽観視はできないよ」
3体。その言葉が重く響く。一体倒すだけでも命がけだった。それが残り3体。
「これまでのセプテントリオンの能力は、それぞれ異なる性質を持っていた」
フミの言葉に頷く。ドゥベの爆発。メラクの氷と爆弾。フェクダの電撃と分離。そしてメグレズの三体同時出現と再生能力。
「次に出てくるやつがどんな能力を持ってるかは、さっぱり見当がつかないな……」
俺は空を見上げた。先程までの戦いの痕跡はもうどこにもない。
「でも」
リンゴが俺の横に立ち、夜明け前の薄明かりに照らされた街を見つめた。
「これだけは言えるよ。これまでのセプテントリオンの能力はまるで分からない。こちらの予測を遙かに超える」
その言葉に、俺も同意する。次のセプテントリオンがどんな能力を持っているか、誰にも予測できない。
「だからこそ、次に契約すべき悪魔は決まってると思うんだ」
リンゴの言葉が俺の思考を中断した。その口調には確信が宿っている。
「防御と回復に特化した悪魔だ」
リンゴは真剣な眼差しで俺を見た。
「これまで私たちは、攻撃力のある悪魔を中心に契約してきた。それも確かに必要だけど、これからの相手はより強力になる。攻撃を防ぎつつ、仲間を回復する能力が必要になるはずだよ」
俺は今までの戦いを思い返す。甘露寺の斬撃。アナスタシアの氷。眼鬼の幻覚。確かに攻撃的な能力に偏っている。リンゴの言う通りだ。
「防御と回復か……確かにこれまで手薄だったな」
「そう。これから契約する悪魔は、私たちの盾になってくれる存在が必要だよ」
リンゴはスマートフォンを取り出し、契約可能な悪魔リストをスクロールし始めた。
「候補はいくつかあるけど……」
画面を指で操作するリンゴの横顔は真剣そのもの。やがて指が止まった。
「この子だね」
画面を俺に向ける。
そこに表示されていたのは、凛とした佇まいの女性の姿だった。
白い騎士の甲冑を身にまとい、手には旗を持っている。その名は——
『ジャンヌ・ダルク』
フランスの英雄。聖女。神の啓示を受け、祖国を救った乙女。
「ジャンヌ・ダルク……?」
「そう、このジャンヌ・ダルクの能力ならば、防御方面では心強いと思うよ」
「・・・けど、ジャンヌ・ダルクって、悪魔なのか?」
「さぁね、以外と英雄も悪魔とされている場合があるからね、まぁそこは後々分かってくると思うよ」
「それにしても防御系悪魔ねぇ・・・・・・」
俺は思わず腕を組んだ。これまで俺が契約してきた悪魔たち——甘露寺蜜璃の華麗な剣技やアナスタシアの冷徹な氷結能力は、どちらかといえば攻撃面に特化している。眼鬼のような補助的な役割を担う悪魔もいるが、防御に特化した存在となると未知の領域だ。
「確かに今のパーティ構成だと、相手の攻撃を防ぐ手段が乏しいのは事実だ」
甘露寺の剣技は敵を切り裂くことに長けているし、アナスタシアの氷は敵の動きを封じることができる。だが、もし敵が強力な範囲攻撃や貫通攻撃を仕掛けてきた場合、今のままだと耐えられない可能性が高い。
「それに回復もできるのか?」
「ジャンヌ・ダルクの能力は多彩だよ。防御はもちろんのこと、味方の防御力を高めたり、傷を癒したりすることもできる。いわば戦場での盾であり癒し手でもある存在だね」
リンゴはスマートフォンを操作し続けながら説明する。画面上に表示されるジャンヌの詳細情報を見ると、確かにその能力は防御と回復に特化しているようだった。
「なるほど。次のセプテントリオンがどんな攻撃をしてくるかわからない以上、防御と回復の備えは必須かもしれないな」
俺は深く頷いた。
「確かに。防御・回復ができる悪魔なら次のセプテントリオンとも戦えるかもな」
そうして、俺はジャンヌ・ダルクの写真を見つめる。
「どうだい? 契約を申し出てみる価値はあると思うんだけど」
リンゴの問いかけに、俺は少し考えてから頷いた。
菅野史はヒロイン入りしますか?
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はい
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いいえ