デビルサバイバー2/ハッカーズメモリー 作:ボルメテウスさん
警告音が夜空を切り裂いた。
スクランブル交差点に広がる廃墟の中、アスファルトを砕きながら出現した紫色の球体が、暗闇に浮かぶ死星のように禍々しく輝いていた。
「・・・あれが、ミザールなのか」
「そうだね、あと2体とは聞いたけど、これは骨が折れそうだ」
そうしながら、見つめた先には目的の敵であるミザールが居る訳なのだが、その大きさはおよそ目算にして300メートルくらいあるだろうか?
更にはそのミザールの周りを見れば大小様々な紫色の球体―――つまり、6体目のセプテントリオンのミザールが次々と増えていっていた。
「また増殖してる?!」
俺は思わず声を上げる。
「落ち着いて。奴らは単純だ。増殖パターンは二つだけ」
リンゴの声が耳元で冷たく響く。
「小型は一撃で倒せば分裂しない。中型以上だと……ほら」
彼女が指差す先で、中型ミザールが爆ぜるように四散する。
次の瞬間、無数の小型ミザールが雨霰と降り注ぎ、地面に触れると同時に成長を始めた。
「厄介だな……」
「だからこそ面白い。攻略法を考える時間は十分にある」
リンゴの口調には緊張感がない。まるで将棋の一手を探るように冷静だった。
俺たちは即座に戦闘態勢に入った。
リンゴの足元でアンティキティラの紋様が青白く光る。右足の紋様が高速で回転し、虚空から引き抜かれたのは細身の日本刀—アンティキティラを構える
「行くぞ!」
最初の標的は最も近くの大型ミザール。俺たちは左右から挟撃するように走り出す。
リンゴが刀を一閃させれば、太陽のような光条が空間を切り裂いた。金属的な轟音と共にミザールの表面が炸裂する。
しかし斬撃を受けた大塊は砕けず——むしろ内部から膨張して二つの塊となり、それぞれが新たな個体へと変異していく。
「やはり分割される……」
俺が唸ると同時に、反対側から跳躍したリンゴが叫んだ。
「でもね! こうやって……!」
彼女の右手が素早く振り下ろされた途端、刀身が鋭い刃から眩い光芒を放つ銃へと形状変化していた。
銃口が向かう先——二体に分裂したばかりのミザールの間隙へ集中射撃を浴びせかける。
紫水晶の断片が火花となって飛び散り、ついには原型を失った核が塵となって消えた。
「なるほど……同時破壊か!」
俺は即座に理解する。単独での破壊ならば分裂させるが、核となる本体ごと一挙に蒸発させてしまえば再生できないということだ。
「問題は数を減らしつつ増殖を防ぐ方法……」
考えつつも手を休めない。今度は三体ほど密集した小型ミザール群に突進し、ホムラの焔を纏わせた刀で薙ぎ払う。
焦熱の斬撃が通り過ぎた跡には何も残らない。予想通り分裂も起こらなかった。
「ホムラ! 力を借りるぞ!」
詠唱と共に契約印が煌めき、俺の掌を通じて灼熱のエネルギーが伝導する。
アンティキティラの刀身が深紅に染まり、妖しい脈動を始めた。
「準備できた?」
リンゴの問いかけに頷く暇もなく——背後に忍び寄っていた中型ミザールが溶解するような奇声を上げて触手を伸ばしてきた。
咄嗟に横跳びで回避すると同時に、リンゴと共に構える。アンティキティラの銃口が並び、二人揃った動きで照準を定める。
「せーので撃つよ」「了解!」
掛け声とほぼ同時——二丁の銃口から迸った赤光弾が宙を疾駆し、狙い過たずミザールの中心部へ命中した。
直感で理解した俺は間髪入れずに踏み込む。アンティキティラが再び剣形に戻った瞬間、刃に宿るホムラの焔がさらに激しさを増した。
「喰らえ!」
渾身の一撃を振り下ろした刹那——ミザール全体を覆うような凄まじい炎柱が噴き上がる。
大地が震える衝撃の中、核さえも灰燼に帰すのが見えた。
「一つ仕留めた! だがまだ半数以下……」
周囲を見渡すと新たに十数体もの小型ミザールが蠢いている。まさに蟻地獄のごとき増殖速度だった。
「時間をかけても増え続けるだけだ。決め技を使う時かもしれない」
リンゴの言葉に俺は息を呑む。確かに今のままでは消耗戦になる一方だ。
覚悟を決めて俺たちは走り出した。
まずは周辺の小型群を刀で薙ぎ払い道を作る。次いでリンゴが銃形態のアンティキティラで遠隔の大型群を牽制しながら接近経路を開拓した。
そして辿り着いたのは——中央区画。最初に出現した最大級のミザール本体の目前であった。
「こいつが親玉なら……全部焼き尽くしてやる!」
全力でチャクラを練り上げる。体内を巡る精気が刀身へ流れ込み、赫奕たる焔が龍蛇のごとく巻き上がった。
「今だ! 全ての力をここに!」
俺たちの咆哮と呼応するように、ホムラの霊圧が頂点に達した。
一歩踏み込んで踏み込んだ俺たちの全身全霊を込めた一刀が振り下ろされる——!
極限まで凝縮された業火が放たれた瞬間、世界が真っ白に染まった。
轟々と鳴り響く爆音とともにミザール群すべてを飲み込む大火球が膨張する。紫水晶の破片が溶けて流体と化し、地上を浸食しながら消えていった。
「……終わったのか?」
煙の立ち込めるなかようやく見えるようになった景色には、もうあの忌まわしい紫色はない。
ただ焦土だけが広がり、空へと上昇する黒煙だけが激戦の痕跡を物語っている。
リンゴがゆっくりと鞘にアンティキティラを収めながら笑みを浮かべた。
「ああ、これで六体目も終了だ。次は七体目——最後の敵に備えないとね」
静寂の中に微かに響くサイレンの音。瓦礫の陰から生き残りの市民たちの囁きが漏れてくる。
今日も東京は生き延びたのだ。
だが明日はどうなるかわからない。
それでも俺は、この右手の契約印を握りしめながら誓う。
どんな怪物が来ようと必ず討ち果たしてみせるか。
菅野史はヒロイン入りしますか?
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はい
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いいえ