デビルサバイバー2/ハッカーズメモリー 作:ボルメテウスさん
「……やっと来たか」
夕暮れ、朽ち果てたテレビ塔の頂から、涙滴を逆さまにしたような黒い塊が滑り落ちてくる。ベネトナシュだ。
その姿は他と比較すれば異常に小さい。だが皮膚の下で蠢く何かが嫌悪感を呼び起こす。生物的でありながら無機質な歪み―まるで造り主の狂気そのもの。
『みんな聞こえる? 警戒して―』
俺のスマホからフミの声が乱れ飛ぶ。いつもは澄み通る通信がノイズ塗れだ。
彼女の足音が焦燥を刻む。
「まずい! 召喚が―できない!」
悲鳴に近い報告が続々と舞い込む。シーケンス中断。コード認証拒否。画面が砂嵐に変わる。
「リンゴ! これは!」
「わかってる。ヤツのフィールド内だ。悪魔召喚アプリそのものが阻害されてる」
胸がひやりとした。
彼らは今、丸腰同然だ。しかもヤツのもう一つの固有能力―人間不可侵。直接殴ろうが蹴ろうが弾かれるだけのオブジェクトに成り下がる。
「唯一可能性があるとしたら……」
リンゴが俺の腕を掴む。普段は温かな手なのに今は鋼鉄みたいに冷たい。
「私たちの融合体だけ。アナタの魔力と私の電子演算式の結合だけが境界を破れる」
心臓が早鐘を打った。責任の重みで吐き気がする。だが逃げ場はない。
「……どうやって攻める?」
リンゴは空中に指で円を描く。デジタル情報が網目状に浮かぶ。俺たちの位置と周囲の人々、避難経路、そして―
「ホムラだ。あれを最大出力で叩き込む」
彼女の瞳孔が拡張する。
「ただし条件がある。アイツを一箇所に集めないとダメージが分散する」
「だったら!今っこの時!」
足元に散らばる瓦礫が震え始める。地鳴りとともにベネトナシュが見える。
「リンゴ! 早く!」
「急かさないで。位置調整が……今!」
視界一杯に光の環が広がる。リンゴのプログラムが都市機能の残骸を利用して仕掛けていた罠だ。信号機の赤灯が鼓動する。地下配管から湧き出る排水が渦巻く。
「それじゃ! 行くよ!」
彼女が叫ぶなり空間が捩れる。
「ホムラ! 最後の大仕事だ! 出番だぞ!!」
契約印が焼ける。血管中に火の粉が迸る。
俺は駆けた。走る。跳ぶ。
アンティキティラが燃え盛る剣へ変わる。
空気が悲鳴をあげる。大気摩擦で肌が炙られる。
「燃え尽きろぉぉぉ!!!」
袈裟懸けに振り抜いた刹那―黄金の焔が十字に閃いた。地面が溶岩の沼と化す。空が煮え立つ。
爆音が耳朶を貫く。
視界が朱一色に染まる。
「……勝ったのか……?」
呆然と膝をつく俺の肩をリンゴが抱く。汗と煤で汚れた頬に微笑みを貼り付けて。
「あぁ、けれど」
未だにボラリスの選定が近づく事に。
菅野史はヒロイン入りしますか?
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はい
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いいえ