リスタート:過去へ戻って孤高な女達を手駒にして現在の危機を打破する 作:霧江
確かに中村なら探偵の仕事に向いているだろう。
何せ、実質的にパツ菌の噂を源を調べ上げたのは中村一人だった。
そんな中村なら今回のことも問題なく調査することが可能だとは思う。
だけど、大人になった中村にそんなことをする時間があるのかが問題だった。
「中村にも中村の仕事があるだろうから...って、え?」
俺はそこまで言って、言葉を止めるしかなかった。
ある記憶が蘇ったからであった。
中村こと、太一はそもそも探偵の仕事をしていたのである。
俺の心配は杞憂だった。
「それだと、安心だけど......何で中村...、太一は探偵なんてしているんだ?」
俺はその理由が気になった。
探偵というものは結構珍しい職業だからな。
普通になろうとしてなれるようなものではない。
最初から進路をそこに決めていかないとなれないものだった。
俺は太一との記憶を振り返った
そして、すぐに太一が探偵になった原因を確定出来た。
「あ、俺が原因か。」
そう、俺が原因だったのである。
中村太一と俺は夏休み以降でも交流を続けた。
それでかなり親しくなっていた俺たちは、お互いを呼び捨てするくらいの仲にはなっていた。
そして、高校時代の頃、俺は太一に一つの相談を受けた。
それは進路に関するものだった。
太一はそれまでに自分の未来について、そこまで真剣に考えたことがなかったとのこと。
それで太一も最初は適当に就職するかで悩んでいたようだ。
だけど、それも中村的にはその進路はパッと来なかったみたいだ。
「はあ.....何もかも俺がそれをしている未来が想像出来ねえ...」
「そうか?お前なら、いざやるとしたら、意外と何でも出来ると思うけど?」
当時の俺は本当にそう思っていた。
俺が見た限り、太一は基本的に要領が良い方の人間だったのである。
そんな彼のことだから、俺としては何でもやってみたらという気持ちだった。
「そうだけど、どれも何というか、パッと来ねぇんだよ。俺がそれをするということが想像出来ねぇ。」
「気持ちの問題かよ。じゃあ、探偵とかはどうだ?お前ならぴったりと思うけど?それに好きだろう?探偵。」
「確かにな......探偵か......それはパッと来るかも。ありがとうな相棒。」
という感じで太一はその日を境に、探偵業に身を乗り出すことになった。
最初は他の事務所に入って、免許とかを取ったようだった。
そして、その後のこと。
大人になった俺はもう一度太一に相談を受けた。
今回もまた進路のことだった。
「なあ、俺、今回独立することになったんだ。」
「へえ、すごいじゃん。」
俺は素直に感心した。
それは太一が仕事をはじめて、6年目のことだったのである。
太一はその期間の間に探偵業に必要な資格とかノーハウを全部習得したようだった。
やはり、太一は探偵に才能があるなと俺は感心した。
「こういうこと言うのはちょっとあれだけど、相棒頼む!俺に金を貸してくれ!」
いつになく、真剣な太一の態度。
まあ、金の話しだから仕方のないこともある。
太一は俺に頭を下げてきた。
俺は太一を探偵業に駆り出させた張本人ということもあったし、そもそも金には困らなかったこともあり。
俺は中村に投資金を貸した。
こうやって中村探偵事務所が開業したのである。
そして、中村探偵事務所は今年で開業9年目を向かえる大手探偵事務所になった。
「人生って本当に何が役に立つか分からないな。」
まさか、夏休みの探偵ごっこが未来の俺にとっても役に立つとは思わなかった。
あのお調子者の中村こと、太一との縁がこんな結果をもたらすとは。
本当に不思議な感覚がした。
でも、一方ではちょっと残念な気持ちもした。
あの中村との付き合いが記憶の中のものでしかないということが、残念でならなかった。
まあ、それは岬たちとの関係でも言えることだけど。
「まあ、無い物ねだりは良くないか。」
これは本来はあるはずのない機会をもらった代償とでも考えておくとしよう。
それにこれからも皆と思い出を積んでいけば良いだけだ。
まあ、それはさておくとして。
「中村......じゃなくて、太一ならすぐに結果を出してくれるだろうな。あいつは凄腕だからね。」
ということで、俺は中村に俺の担当検事の調査を依頼することにした。
俺はその日の夕方に岬を通じて、中村に俺を担当している検事の調査を依頼した。
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それから数日の間、俺は留置所のなかで代わり映えのない日常を送った。
岬と面会をしたり、葵に性処理を受けたりした。
それ以外の時間は本当にやることがなくて困ったけど、それでも時間は止まることなく進んだ。
そして、太一に依頼を出した2日後のこと。
俺は太一に結果報告を受けた。
そして、その報告書には驚愕すべき事実が乗っていた。
「これは本当なのか?」
俺はそういうしかなかった。
それもそのはず、俺が受け取った報告書の中には、俺の担当検事である三坂真は子供を誘拐されて脅迫を受けていると書かれていた。
そして、その脅迫によって、三坂検事は俺の勾留を主張することを余儀なくされていると書かれていたのである。
「うん、私も中身を見たけど、これは本当みたい。」
俺の質問に岬は頷いた。
岬からしても、この内容はかなり信頼に足る結果とのことだった。
「何でそう思う?」
俺は岬に質問した。
岬がこれだけ確信を得ているということなら、何か証拠を見せられているはず。
「中村くんに音声ファイルをもらっているの。はい、これ。」
そういった岬は俺に紙に書かれた会話録を見せてくれた。
ちなみに原本の録音も存在はしているものの、今回はそれを持ち込めなかったとのことだった。
俺はガラス越しに岬が見せてくれる紙を確認する。
そこにはこんな会話内容が書かれていた。
「息子は大丈夫なんだろうな?」
「ああ、お前の働きのお陰でまだ無事だよ。」
「息子の声を聞かせろ。」
「はいはい、ゆうじくん、お父さんだよ」
「お父さん!」
「ゆうじ!無事か?」
「はい、サービスはここまで。息子が無事なのは分かっただろう?」
「くっ、クソ。」
「では、引き続きよろしくお願いしますよ。」
「待て、これ以上は私も勾留をし続けることは難しい。制度的に最大の期限が定まっているんだ!」
「それをお前がなんとかするんだよ。息子のことを思うのならね。」
「くっ...!」
それはドラマとかに出てきそうな台詞の羅列だった。
俺はその内容を見て固まるしかなかった。
まさか、俺の担当検事の息子が誘拐されているとは......
こんなもの予想なんて出来るはずもない。
しかも、その犯人は話の流れからして、俺の勾留を望んでいるようだ。
本当に何が何だか......
「この犯人は何で俺の勾留を要求しているんだ?」
通常なら金とかを要求すると思うけど。
こんなことを要求しているとなると、誘拐犯は俺のことを知っているのだろうか?
俺のことを知っている犯罪者か......?
もしかして、弁護依頼関連なのか。
それとも......?
「それに関してはまだ分からないの。英二、誰かに恨まれるようなことでもした?」
「心当たりがなくはないな。」
俺は岬の問いにそう答えた。
まあ、俺のことをここまで恨む人間は一人しかない。
それはもちろん、宮崎の奴だった。
「多分、宮崎かな。」
「宮崎?誰それ?」
岬はその名前をはじめて聞いたという反応を返した。
「知らないの?」
「知らないよ?」
世界Dでは宮崎のことを知っていたからてっきり知っているものだと勘違いした。
そういえば、岬に宮崎のことを言った覚えはないな。
それに宮崎が俺のことを線路に突き飛ばしたときも、俺が敢えて宮崎の名前は言ってなかったということを先ほど思い出した。
俺としては宮崎との関係はそれで終わりだと思っていたからな......
でも、それは勘違いだったようだ。
「知らなければいいよ。別に覚える必要のない名前だし。」
「そう?分かった。」
岬はそれ以上、宮崎のことを追求してこなかった。
閑話休題、それで俺たちは次の行動方針を決めることにした。
このままいても、状況的には改善がされる見込みがなかった。
息子の命が掛かっている限り、三坂検事は自分のキャリアをかけてでも起訴してくるだろう。
となると、裁判になってしまうのだが......
日本の刑事裁判というものは有罪率が99.9%で有名だ。
つまり、裁判になってしまうと俺も有罪判決される可能性がなくはない。
だから、裁判だけはなんとしても避けたい。
ということは、ここで新しい行動をする必要があるということだ。
俺はしばらくどうするべきか悩んだ。
「それで次の行動だけど、岬、これ通報しよう。」
俺が出した結論はそれだった。
岬がいうに、中村の証拠に違法性はない。
つまり、この証拠を持って通報することは問題にならないということだ。
たぶん、三坂検事の息子を誘拐した犯人もこのような形で通報されることは予想できないだろう。
油断したところを警察が行って、全部捉えて俺も三坂検事も全部Win-Win...というシナリオだった。
「それはちょっと出来ないの。」
しかし、岬から帰ってきた言葉は断りだった。
「なんで!?」
俺は慌てて岬に問いただした。
この状況でもっとも良い方法はそれしかない。
だけど、何で岬はその方法を断ったのだろうか?
俺は岬の反応に、自分の考えに何か見逃しでもあったのかと少し不安になった。
岬の方が弁護士としてはもっと優秀だったから、そんな岬に否定されたら不安になることも仕方がない。
だけど、岬の出来ないというのはそういう意味ではなかった。
「だって、もう通報したもん。」
「ああ、そういう......」
とのことだった。
それから、数日後のこと。
俺は留置所を出ることになった。
俺の勾留を主張していた三坂検事が勾留を取り下げたのである。
やはり、三坂検事の息子は誘拐されていたとのこと。
三坂検事の息子を誘拐した犯人は調査開始3日で逮捕された。
そして、その犯人は案の定、宮崎だった。
ちょっと、これ以上留置所の話が長引くと、話の流れが雑になると思ったので、留置所編は今回で終わりにしました。
ps:先週から繁忙期に入ってまして、来週までは投稿が難しいそうです。