※この作品はR-18です。

リスタート:過去へ戻って孤高な女達を手駒にして現在の危機を打破する   作:霧江

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家

岬とのカーセックスが終わってからのこと。

俺たちは軽く身だしなみを整えてから、そのまま家に帰ることになった。

世界Eの俺の家は留置所からは比較的に遠い場所に位置しているらしく、岬はガンガンと車を走らせている。

俺はと言うと、そんな岬の横で呆然と窓を通じて外の景色を眺めている途中だった。

 

「家、か......」

 

大人の俺としては中々言い慣れない響きの単語だったのである。

世界Aでの俺は兎に角、家賃が安いワンルームで住んでいた。

そして、その部屋はどちらかというと、家というよりは拠点に近いところだったと思っている。

なぜなら、俺にとってそこは本当に寝るだけの場所だっからである。

心置くような物もないし、俺を待ってくれている人もいない場所。

しかし、そうだった俺にちゃんとした家のみならず、家族も出来たとか。

本当に不思議な感覚にならない方が変な状況だった。

 

「急にどうしたの?」

 

岬はそんな俺の呟きが気になったのか、前を向いたまま俺に質問してきた。

俺としては内心で考え事をしているつもりだったけど、思わず心の声が漏れてしまったらしい。

 

「何でもないよ。ただ2週間ぶりの帰宅だなと思っただけ。」

 

「そうだね。最初の予想よりもずっと長かったね。すぐに釈放されるかと思ったのに、まさかあんなことが起きるとは、私も夢にも思わなかったの」

 

「まあね。あれは誰も予想できないよ。」

 

俺は岬に相槌を打った。

実際にあの誘拐事件は、予測出来るような類いのものではなかったと思っている。

普通なら、検事の子供を、それも金ではなくて、被疑者の勾留期間を伸ばすためだけに誘拐はしないだろうからね。

 

「中々変な事件だったね。検事の子供を誘拐して要求することが、英二の勾留って。」

 

「そうだね。確かに可笑しい事件だった。」

 

今回の事件はそうとしか言えなかった。

いくらその被疑者に恨みがあったとしても、検事の子供を拐うことはかなりリスキーな行動だ。

そんなことをするくらいなら、俺に直接被害を被らせることがもっと簡単だったのだろうに......

しかし、宮崎はそれを選択しなかった。

俺が見た宮崎はそんな周りくどいことより、直接被害を与えにくるような人間だったのにね。

何か理由でもあったのかな?

 

「ちなみに犯人はどんな人だったの?」

 

俺は宮崎についてさらに詳しい情報を求めた。

今のところ、俺は世界Eの宮崎のことは全く情報がない状態。

実質的に言うと、完全に知らない人間と言っても過言ではない。

 

「どんな人?それが今回は葵ちゃんの管轄外の場所で逮捕されて、私もニュース以上の情報はしらないの。」

 

ふむ、そうなのか。

宮崎も葵の管轄署で逮捕されていたなら、ベストだったのにな。

やはり、そこまで上手い話はないみたいだ。

そこは逆に俺が葵の管轄している場所で逮捕されたことがもっとラッキーだったとも言える。

そのおかげで色々と便宜を図ってもらえたからね。

 

「そのニュースでは何て?」

 

「名前は覚えてないけど、確か、変な名前の半グレ組織の幹部だった。」

 

半グレ組織か。

検事だった奴がそこまで堕ちるとは、宮崎も堕ちるまで墜ちた感じだ。

でも、奴にはお似合いだとも思った。

あいつは検事よりは、絶対に犯罪者に似合う性格だったから。

 

「犯行動機とかは出てた?」

 

「そこはまだ調査中だって言ってて、分からなかったの。」

 

まあ、宮崎は本当に昨日の今日で逮捕されたばかりだ。

そこまで情報がないのは仕方がないことではある。

しかし、半グレなのか。

完全に勝手な印象でしかないけど、半グレ組織は何かとお金を目的に動くことが多いんだよね。

ということは、俺への怨念はさておき、今回もお金目的で動いた可能性がある。

そうだとしたら、検事の子供を拉致して、俺の勾留期間を伸ばすことで金を得られたってことかな?

それらの行為のどこにお金になる要素があるのだ?

 

「はああああむ」

 

そこまで考えたところで、俺は思わずあくびを洩らした。

まあ、留置所生活はお世辞でも楽とは言えなかったから、疲労がたまっていたのだろう。

それに先ほど岬とセックスしたばかりだし。

その上で色々と考え事をしたから、眠くなるのは仕方がないことかも。

だけど、岬に運転をしてもらってる身としては、寝るのはあれなんだよな......

俺は眠気を覚ますために、姿勢を正そうとした。

 

「英二、疲れたでしょう?寝てても良いよ。」

 

何気なくそう提案してくる岬。

やはり、顔が良い人は何を言っても様になるな。

まあ、口許についた縮れ毛が台無しだけど、俺はあえてそれを言わなかった。

 

「いや、運転してもらってるのに、そんな......」

 

「本当に大丈夫なの。英二は留置所から出てきたばかりだから、疲れたのは仕方ないし、それにこの後お母さんと絵里ちゃんの相手もしないといけないよ?」

 

むっ、それを言われたら弱いな。

あの二人の相手か......

俺は美鈴と絵里ちゃんのことを思い出して身震いした。

確かに美鈴と絵里ちゃんのことを考えると体力の温存は必要なのかもな。

弱2週間の間、欲求を解消出来てない二人を想像するだけで、怖かったのである。

それって完全に腹を空かした猛獣のようなものだから。

 

「分かった。では、お言葉に甘えるってことで。」

 

「うん、おやすみ。」

 

俺は岬の言葉通り、座席を倒してから静かに目を閉じた。

岬の車は高そうな車なだけあって、シートも最高に気持ちがよかった。

これなら楽に眠れそうだ。

はあ、色々と不安だな......

これからは今までと完全に違う人生が待っていると考えると、不安で不安で仕方がない。

果たして、録でもない人生を送ってきた俺が、ちゃんと世界Eの俺の人生を送ることが可能だろうか?

分からないとしか言えなかった。

そんなことを考えているうちに俺の意識はいつしか闇の中に消えた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「英二、起きて!」

 

俺は岬の声と揺さぶりによって覚醒した。

 

「ううう......ここは?」

 

「もう家に着いたの。」

 

なんと既に家に到着していたらしい。

周辺を見渡すと、見慣れているようで、見慣れない景色が近くに広がっている。

ここが家、か......

記憶を振り返って情報としては知っていたけど、なんだかしっくり来ない。

 

「はああむ」

 

俺はあくびをしてから時計を確認する。

時計を見ると、眠る前から大体30分くらいの時間が立っていた。

結構深めに眠ったから1時間以上立ったのかと思ったけど、そんなことはなかったようである。

俺は頭がくらくらする感覚を感じながら身を起こした。

 

「私は駐車してから上がるから、英二は先に上がってて!」

 

岬はそう言って、俺を家の前に下ろした。

俺は岬に言われた通り、車から降りて閑静な住宅街に降り立つ。

そして、俺は自分の家とやらを見上げる。

だが、それはあまりうまく行かなかった。

俺の家はかなり高いフェンスが設置されて、外では何も見えないような構造になってて、何も分からなかったのである。

まあ、俺たちの家族の事情を鑑みるとそれは仕方のないことだけど。

 

「まあ、ここにいても仕方ないよな。入るか。」

 

俺は家に入るために厳重な感じの外門に近づいた。

この外門は記憶によると指紋認証で開く形式だった

俺は認証端末に指を置いて、扉を開いた。

扉を開くとそこでやっと家の全貌が明らかになった。

 

「おおお......」

 

俺は思わず嘆声を漏らすしかなかった。

そこには過去の上原低に並ぶか、それ以上の豪邸があったのである。

広々とした敷地もさながら、屋敷も素晴らしいものだった。

ここが自分の家だなんて信じられない気持ちだ。

 

「また不安になってきた。」

 

そのせいか、俺の中の不安な気持ちがさらに強まった。

俺なんかが本当にこんなものを享受しても大丈夫なのか?

そんな疑問が頭の中を過ってしまう。

 

「はあああ......」

 

俺は中々自分の家に入れずにぼんやりと庭先を眺めた。

専門の庭師を雇用して管理をしている庭園は凄く立派な感じだった。

あまりにも立派な庭に、俺はまるでどこにも自分の居場所がいない感覚がして、少し萎縮してしまった。

 

「立派なところだな。本当に。」

 

俺には似合わないくらい立派な場所だ。

その事実を自覚してからは、不安たちが形を持って俺を苛み始めた。

俺って弁護士だったよな、弁護士ってちゃんと出来るのかなとか。

美鈴も大分良い年齢だよねとか、今の美鈴はどんな感じだろうとか。

皆に失望されない自分でいられるだろうかとか。

様々な心配事が俺の中でその存在感を強くした。

そして、それらに押し潰されそうになっていたその時。

 

「何してるの?」

 

急に後ろから岬から声を掛けられた。

俺がうじうじしている間に岬は駐車を終わらせたみたいだ。

俺は岬の姿を見て、やっと現実に戻ってくることが出来た。

いかんいかん、岬の前で格好悪いところを見せるとこだった。

 

「いや、一緒に入ろうかと思って、待ってた。」

 

実はそんなことはない。

だけど、岬の前では弱い自分でいたくなかった俺は、精一杯の強がりを見せた。

自分でも、中々良い言い訳が思い付いたと思う。

 

「そう?先に上がってて貰っても全然よかったのに。」

 

それが怖くて出来なかった、と言う言葉を俺は心の奥に噛み締めた。

 

「何となく、そうしたかっただけだよ。」

 

俺はそう言って、岬のことを見つめる。

俺の最愛の恋人である岬。

岬を見ているだけで、俺は心の奥から謎の勇気が沸いてくることを感じた。

俺のためではなく、岬のためなら、これからもなんとか頑張れるそう思った。

何もかもが変わった状況の中。

それだけは過去も今も変わらない気持ちだった。

 

「ありがとう。じゃあ、一緒に入ろうか?」

 

「うん。」

 

だけど、あと一歩だけ後押しがほしい。

そう思った俺は岬に質問した。

 

「手握って良い?」

 

「いきなり?今日の英二は本当に変なの。でも、良いよ。」

 

岬はそう言って笑って、自身の手を俺にさしのべる。

俺は岬の手を握りしめた。

すると、不思議なことに先ほどまでの不安が消えたかのような気持ちになった。

といっても、物凄く不安なことは変わりないけど。

それでも、岬と一緒なら大丈夫かもしれない。

そう思わせるだけの説得力が岬にはあった。

どの世界でも俺のことを救ってくれた岬だから。

俺は岬とともに自身の家の中へと踏み込んだ

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