リスタート:過去へ戻って孤高な女達を手駒にして現在の危機を打破する 作:霧江
絵里ちゃんの尋問が終わってからのこと。
「はあああああ......」
俺は盛大に溜め息を吐いていた。
そして、その理由は、残念ながら絵里ちゃんの尋問の結果があまり良くなかったからであった。
別に絵里ちゃんが情報を出し渋ったりとかはしていない。
むしろ、絵里ちゃんはおちんぽ欲しさに洗いざらい全てのことを話してくれている。
だけど、尋問の結果が良くなかった原因は、以外にも検察そのものに存在していた。
「まさか、こんなことが有り得るなんて......」
俺は思ってもいなかった事態に唖然となっていた。
驚くことに検察も暫定黒幕の情報を全くつかめていなかったのである。
現在、検察が掴んでいる情報はと言うと、神殺隊へ依頼をしている何者かあるということくらい。
それ以外は俺とほぼ同じような情報しなかい状態だったと言っても過言ではなかった。
「それにしても、本当にとんでもねえな。」
どうやら俺は暫定黒幕の底力を見誤ったようだ。
まさか、本気になった検察と警察が相手でも正体不明のままでいられるとは驚きだ。
しかも、絵里ちゃんの話によると、今回は検察警察の行政のみならず、司法側も全面的に捜査へ手を貸していたと聞く。
それはもはや国家そのものの力と言っても良いくらいのものだった。
「だけど......」
暫定黒幕は見事にその国家の手から逃れている。
それは本当にとんでもないことだった。
黒幕とは言え、所詮は国家というシステムの中の存在のはずなのにな......
「もしかして、国家以上の力を持つ組織とかだったりするのか?」
俺の頭の中にそんなフィクション染みた可能性が過ったけど、俺は直ぐにその可能性を否定することが出来た。
そして、その理由は明確だった。
「そんな組織があったとして、俺なんかのことを狙うメリットが全くないからな......」
自分で言うのはあれだけど、俺はそこまで価値のある男ではない。
確かに世界Dの俺は以前と比べると、小金持ちで、弁護士ではあるものの。
結局は何の力もない一般市民にすぎなない。
そんな俺のことをを謎の悪の組織Aが狙う意味は全くない。
俺のような男は世間規模で見ると、いくらでも存在している。
「いや、いくらでもいるから俺のことを狙ったのか?」
その可能性はないとも言えない。
しかし、今回はその可能性はなしで考えても良さそうだ。
何故なら。
「そんな存在が俺のことを狙っていたとしたら、今回のように釈放なんて出来やしなかっただろうからな。」
すると、少なくとも俺は狙われていないと言うことか?
では、暫定黒幕は何を狙ったというのだろうか。
分からない、全く分からなかった。
それについても、黒幕の実態をつかめていない今は何も情報がない。
これ以上は考えるだけで無駄になりそうだった。
閑話休題。
「だからと言って、収穫が全くなかった訳ではないけどな。」
絵里ちゃんの尋問から一つだけ収穫がった。
それは暫定黒幕の手口に関する情報だった。
暫定黒幕は神殺隊と取引する際に徹底として、アナログな手段を使っていたとのことだった。
絵里ちゃんの話によると、暫定黒幕は仕事の依頼も手紙で行っていたし、報酬の支払いも現金でしていたらしい。
そして、それらを人を使って、荷物の運搬によってしていたとのことだった。
しかも、その荷物運搬にはランダムな人を使っていたようである。
ちなみにここで言うランダムな人というのは、言葉通りに本当にランダムな人のようだった。
神殺隊のボスの証言によると、運搬人は毎回違う人が来ていたと証言している。
検察と警察もそれのせいで一向に黒幕への調査が進んでいないらしい。
葵と絵里ちゃんの連続勤務はそれが原因とのことだった。
「そんな手段だと、しらみ潰しで対応するしかなくなるよな......」
そして、それは俺には出来そうにないことだった。
これはいよいよ俺としては全く打つ手がない状態になってきたな。
あくまでも俺としては、な。
だから、俺は自分で動くことを他の人に頼ることにした。
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その他の人というのは当然俺の親友こと、中村太一のことだった。
今回の三坂検事のことで、太一の実力を思い知らされた俺としては、太一以外にこの件を任せられる人はいないと思ったのである。
というわけで、俺は太一に電話して頼みたいことがあるから、今日会わないかと提案した。
急な連絡だったにも関わらず、太一は快く快諾してくれた。
それで俺は市街地の喫茶店に来ている訳だけど...。
喫茶の前についてから、ふと俺はある問題に気付いた。
「俺って太一の顔を見分けることが出来るのか?」
世界Dへ到達してからのこと。
俺は大人になった葵のことを一目で見分けられなかった。
恋人である葵の顔をである。
ということは、太一に関しても顔を見分けられない可能性があった。
「いくらなんでも、親友の顔を知らない親友とか、怪しすぎるよな......」
しかも、太一は職業柄で観察眼に長けているからな。
俺が自分の顔を見分けられないことに直ぐ気付く恐れがある。
「ちょっと、不安だな。」
もし、それを追及されたら、何を言ったら良いんだろうか。
分からない。
でも、このままいても何も始まらない。
それにそろそろ約束の時間が迫っているからな。
これ以上待たせる訳にも行かない。
俺は覚悟を決めて喫茶の扉を開いた。
そして、その瞬間に俺の心配は全くの無意味なものになった。
「うわ......マジかこいつ。」
結論から言うと、俺は直ぐに太一のことを見分けることが出来た。
そして、それは太一の顔を見てから、見分けられたからではない。
むしろ、太一の顔は激変していて、多分顔だけでは見分けられなかったと思う。
では、俺がどうやって太一のことを見分けられたかと言うと、それは服装が原因だった。
「よ、英二、久しぶり。」
「太一、久しぶり。お前その服装どうしたんだ......」
俺は太一の服装を見て呆れ返った。
太一はいつぞやのインバネスコートに鹿撃ち帽を被っていたのである。
そう、世界で一番有名な探偵の格好だった。
しかも、大人になって資金力が出来たなのか、中々高級そうなものだった。
子供の頃はさておき、この年齢でもそれで行くのかよ......お前も確かに30代だったはずだけどな......
「どうだ?これ、格好いいだろう?」
太一はそんな俺の呆れ顔はものともせずに、自分の格好を俺に誇らしげに見せ付けてくる。
確かに格好良くはある。
太一は顔とかも渋い感じのイケメンだから、なおさらお似合いではある。
でも、何と言うか。
「......」
この歳でだよ?と言う言葉しか出てこない。
32歳にもなって、これはきついと言うか、本道に何と言ったらいいんだ?
俺は太一に何か一言言いそうになったが、必死に罵倒の言葉を喉の奥まで押し込んだ。
太一がまるで少年のようなキラキラした目で俺のことを見て来たからである。
その目を見た俺は何となく太一に、厳しい言葉を掛ける気持ちを失った。
「そうだね。よく似合っているよ。」
俺はそれ以上太一の格好を指摘することを諦めた。
そして、太一が望んでいるだろう言葉を掛けてやる。
んまあ、実際に似合ってはいるからな。
「あんがとうよ。ほら、座れよ。」
「じゃあ、失礼する。」
俺は太一に言われるがまま、大人しく向かいの席へ座る。
そして、そのまま俺たちは色々と話を始めた。
「今回はありがとうな。本当に助かったよ。」
手始めに俺は三坂検事の件を持ち出して、太一にお礼の挨拶をした。
色々と話したいことがあったけど、まずはこれだな。
本当に太一がいなかったら、最悪の事態は裁判まで行っていたかもしれない。
それは日本の刑事裁判の有罪率を考えるとゾッとする未来だった。
「いいよ、別に、普通に仕事だったから。」
俺のそんな感謝の言葉に、太一は照れ臭そうに自信の頬を掻きながら答えた。
30代のおっさんにしては、少し女々しい行動ではあったものの。
何と言うか、それは中々絵になる光景だった。
やはり、イケメンは何をしても様になる。
俺がそんなことを考えていると、そのタイミングで店員さんが飲み物を持ってきた。
「お待たせいたしました。こちらご注文のブラックコーヒーになります。」
「ありがとう。ほら、お前も何か頼めよ。」
太一は自分のコーヒーをもらいながら、俺にも注文することを進めてきた。
ブラックコーヒーの良い香りが回りに漂い始める。
いい匂いだ。
「じゃあ、俺もブラックコーヒーで」
俺はその匂いに釣られて太一と同じコーヒーを頼んだ。
「かしこまりました。」
店員さんは俺の注文を受けると、そのまま厨房の方へと向かった。
そして、また二人だけになってから、俺は話を再開しようとした。
気持ちとしては直ぐに本題に入ろうとしたけど、また店員さんが来るだろうから、それは後にすることにした。
一応、検察の機密とかに関連する話だから、なるべく人には聞かせたくなかったのである。
今はそれよりも......
「ちょっと待て。」
俺は太一の奇行を止めることにした。
「うむ?どうしたんだ?」
不思議そうに俺のことを見てくる太一。
どうしたんじゃないがな。
「お前ブラック頼んどいて、それはないだろう。」
俺は太一の行動に突っ込みをいれた。
何と、太一は一口も飲まずに、ブラックコーヒーに砂糖とミルクをいれようとしていたのである。
しかも、角砂糖に至っては、6個くらいいれている始末。
それならブラックを頼む必要なんて全くないだろうに。
「別にいいだろう?俺、ブラック飲めないし。」
俺の制止に太一は不満そうな声を上げる。
それにしても、ブラック飲めないのか......
じゃあ、何で頼んだんだよ......
「じゃあ、最初からミルクコーヒーを頼めよ。ブラックをミルクコーヒーへ錬成するより、それが手間もかからないんだからな。」
俺は心底太一に呆れて、突っ込みをした。
「はああ、分かってないな。」
すると、太一は逆に俺に謎の持論を展開してきた。
「俺みたいな顔をした人は、それを求められてんだ。皆そんな顔しているから、どうせブラックとかのむんだろう?という空気があるって。だから、俺はその幻想をぶち壊さないように、行動しているって訳。これは言わば、サンタクロースの存在を信じている子供の夢を守っているようなものだ。」
「いや、違うと思うけど?それとそんなに砂糖いれたら、糖尿になるよ?俺たちもそういうお年頃なんだからさ。」
30という歳はそういうものだからな。
色々と体が故障してくる時期である。
少なくとも、世界Aの俺はそうだった。
「ははっ、それは心配ないね。普段から頭も体も使っているし、それにこの間の健康診断は完全にOKだったからな。」
さいですか.....
太一は俺の言葉を何ともないように笑い飛ばした。
そういえば、こいつは職業柄動くことが多いのか。
それだと納得ではあるけど......
それにしてもブラックコーヒーを頼んでそれは無いわ......
「はい、お待たせいたしました。こちらご注文のブラックコーヒーになります。」
そんな風に俺たちが馬鹿話をしている内に再び店員さんが来た。
店員さんは俺たちの話を邪魔しないようになのか、コーヒーを置いてから、一礼して直ぐに席を去った。
これは出来る店員さんである。
太一はそんな店員さんの後ろ姿を確認してから、話を再開した。
「それで、今回はどうしたんだよ?」
先ほどの話はなかったように格好つけて本題に入る太一。
「......」
俺は色々と言いたいことがあったけど、何とかぐっと堪えた。
そして、俺も話の本題に入ることにした。
本題に入る前に、俺は太一に絵里ちゃんに聞いた話を一通り説明した。
「その話、聞いたことある。」
俺の話を一通り聞いてからのこと、太一は思ってもいなかった反応を返して来たのである。
そんなことがあるはずがないのに、だ。
お盆の間は食中毒で寝込んでました。
皆様も夏場の食べ物には気を付けてください......