リスタート:過去へ戻って孤高な女達を手駒にして現在の危機を打破する 作:霧江
そうか、今日は何もないのか。
そもそもの話、広告を打ってないから当たり前なことではあるけど、それでも何かあるのかと思った。
何とも虚無な結末だった。
俺は自身の意欲が空振りした感覚に少しがっくりとなって、肩を落とした。
それに比べて、岬は俺とは裏腹に岬の方は相変わらずニコニコの上機嫌だった。
「英二、今日は仕事がないね♥️」
何だか上ずった声で俺に言ってくる岬。
「そうだね......」
俺そんな岬に生返事を返して、机に突っ伏した。
一体全体就業時間中は何をしたら良いんだ。
これから仕事終わるまでに、後、9時間も残っているけど......
9時間を呆然と机に座っていろと?
俺がそんなことを考えていると、岬から思いがけもしなかった提案が飛んできた。
「だから、今日は私といっぱいおまんこしよう?私、この1週間の間に物凄く我慢したかんだからね♥️」
艶っぽい声で俺のことを誘惑してくる岬。
確かにそれは魅力的な提案ではある。
だけど、俺としては、どうしてもその提案を受け入れることは出来なかった。
だって、今は仕事中なんだからな?
「岬、ちょっとタンマ」
俺はそんな思いを込めて、岬の行動にストップをかけた。
「待たないの♥️」
だけど、岬はとどまることを知らなかった。
岬はそのまま俺の隣まで近づいてきた。
そして、岬は俺の横に膝をついて座っては、俺の椅子を自分に向くように無理矢理回してきた。
何とも強引な!
「本当に待ってて!」
「いやなの♥️私、お母さんたちに遠慮して一週間も我慢してたんだから♥️」
ここ一週間の間は岬が妙に静かだなと思ったら、こういうことだったのか。
俺はそれでやっと岬の行動について納得をした。
しかし、気持ちとしては俺も岬のお願いに応えてあげたい。
でも、俺にはそれが出来ない理由があった。
そして、それは俺が必死に抵抗している理由にもつながるものだった。
「えいっ♥️」
くっ、岬のやつ思いの他に力が強い。
これ以上力をいれると岬を傷つける恐れがあるしな。
俺は適度な力加減で抵抗を続けたものの、俺の抵抗は空しい結果に終わった。
しばらくの格闘の末に、岬は俺のズボンを脱がすことに成功したのである。
「ふえ?」
そして、ズボンを下ろした岬は驚きの声をあげた。
それもそのはず、今の俺のちんぽは全く勃起しなかったのである。
基本的に性欲お化けである俺が、こんな状況で勃起しないとかだと普通に驚くよな。
俺は岬の反応に納得しながらも、苦笑いをするしかなかった。
「「......」」
両者の間に奇妙な沈黙が生まれる。
気持ちとしては俺も岬と直ぐにおっ始めたい気もある。
それでも駄目なものは駄目なもの。
今から勃起することは難しかった。
そして、これは俺のポリシーによるものだった。
世界Aの俺はというと、どうしようもない屑だった。
だが、そんな屑な俺でも、一つだけポリシーがある。
それは仕事中には仕事にだけ集中することだった。
本当に以外と思うかも知れない。
だけど、本当に世界Aの俺はそんなポリシーを持っていたのである。
その理由としては、本当に単純なもので、仕事を真面目にしなかった社会人初期に、仕事を完全に切られたことがあったからである。
その時は本当に色んな意味で死ぬかと思ったよな......。
金がないからご飯も食えないし、女も抱けない。
特に性欲に狂っている俺としては、女を抱けないと言う点が辛かった。
だから、俺は仕事に真面目になった。
本当に仕事をしている間は真面目な人間として振る舞った。
それこそ、仕事中には性欲も完全に抑制していたレベルだった。
だって、それをしないと逆に女を抱けないから。
俺は自分の性欲を満たすために必死にこの十数年を働いてきた。
そして、それを十数年以上繰り返して来た結果。
俺は仕事中にはそういう気分にならない身体になったのである。
「え、英二?」
今度は驚きを越えて、どこか恐れている感じの声の岬。
別にそこまで恐れる必要があるかなと思ったものの。
今までの俺のことを見てきた岬なら、これは異常事態だろう。
果たして岬はどんな風に反応してくるだろうか。
俺は息をのみながら岬の次の言葉を待つ。
「もしかして、EDなの......?」
「断じてそれでは無い!」
岬のとんでもない発言に俺は即反論した。
だけど、そんな俺の反論は混乱した岬には届いてなかったようである。
「た、大変なの!お、お母さんに電話しなくちゃ!」
そういって、岬は電話を取り出した。
「おい、岬!待て!落ち着けって!そうじゃないからな!」
俺は慌てふためく岬を必死に止めた。
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それからのこと。
必死に抗弁すること十数分、やっとのこと、俺は岬を落ち着かせることに成功した。
「本当にEDとかではないんだよ。ただ、今日はそういう気分にならないだけだよ。」
「そういう気分、ね。」
俺の言葉に怪訝そうな表情している岬。
どうやら、あんまり納得はしていないようだ。
まあ、そこは仕方ないとは思う。
おれ自身でもこれはゴリ押しとは思っているからな。
けど、本当に無理なものは無理である。
「そういう気分......」
どうやら岬は何か考え事を始めているようだ。
その隙にこのまま下半身すっぽんぽんのままだとあれだし、ズボンを穿き直さないとな。
そう思った俺は椅子から立ち上がってズボンを掴んだ。
「英二。」
そして、そのままズボンを履こうとしたところで、俺は急に岬に呼び止められた。
片足をあげたまま固まる俺。
そんな俺を岬は真剣な眼差しで見ている。
え、何?
「何?」
「この前のことだけど、夢で私とは違う私を見ていたとか言ってたよね?」
「うん。そういう話、してたな。」
俺はあまりにも唐突な岬の言葉に困惑しつつも、その問いを頷きで返した。
確かそれは俺が釈放された当日、岬とのカーセックスをした日のことだったと思う。
俺は岬に世界Aの上原弁護士と岬を重ねて見ていたということを告白した。
その時は岬の性癖を満足させたということで、うやむやになったけど、まさか、今さら怒ったりするのか?
俺はそのことを危惧して身構えたものの、岬の態度は依然として、飄々としたものだった。
「それで、その夢の中の私はどんな感じだったの?」
「夢の中の岬?」
「うん、そのことについてもっと詳しく教えて欲しいの。夢の中の私はどんな感じで、どんな性格をして、どんな話し方をしていたのか、全部を。」
俺はそのことを聞いて、岬の意図を悟った。
岬は俺のことを興奮させるために、世界Aの自分を演じるつもりなのだ。
それは確かにそれは興奮する展開ではあると思う。
だけど、今は興奮よりも、恥ずかしい気持ちが先立った。
俺としては、その時さらっと流したつもりだけど。
どうやら、俺の中に世界Aの上原弁護士に対して並々ならぬ感情があることを、岬に悟らせてしまったようだ。
本当に俺と言う男は駄目人間だな......
「岬、別に本当に大丈夫だよ。俺のためにそんなことまでしなくても...」
俺は岬のことを制止した。
それだとちょっとあまりにも惨すぎると思ったからである。
俺のために無理をして貰うとしたって、そこには限度というものがある。
今回のことは、俺が考えるからに、その限度を越えているような気がした。
「別に英二は遠慮しなくてもいいの。これは私がおまんこしたいだけだからやっているだけだし......、それに.....それだと私も最高に気持ちいいセックスが出来そうだから。」
だが、そんな岬からの返答は俺の予想を遥かに越えるものだった。
「え?今、何て?」
これは聞き間違いに違いないと思った俺は岬に聞き返す。
岬の言うそれとは、俺が考えたあれであっているのか?
「だから、私を見て英二が他の女のことを投影することが興奮すると言っているの!今まではそんなことなかったから!英二、何時もは私とのセックスで私だけを考えてくれていたのに、前回はそうじゃなかったから、私、めちゃくちゃ興奮した!」
ええ......?
顔を赤くしてとんでもないことを告白する岬。
そもそも、岬にとってこの行為は無理でもなんでもなくて、性癖にドハマりするものだったらしい。
そういえば、確かにこの前もそんなことをいっていたな。
「それで夢の中の自分を演技するって......」
普通ならそこは別れ話が飛んできても可笑しくないというのに。
その話は岬にとってはただのオカズにすぎないものだったらしい。
俺はあきれた目で岬のことをじっと見つめた。
「そこが一番肝心なところなの!最高に惨めで、最高に気持ち良くなれそうだから!」
さいですか......。
岬から出てきた言葉は、俺としては全く理解出来ないものだった。
文章としては成立しているけど、全く理解が追い付かない。
やはり、俺の恋人は頭が可笑しいのかも知れない。
「そこまで言うのなら......」
俺は仕方なく岬に俺が覚えている上原弁護士のことをなるべく詳細に教えた。
実は俺も少しだけ期待はしていたのである。
あの、孤高で、俺の手の届かなかった高嶺の花だった上原弁護士を岬とはいえ、抱けるということに興奮したからである。
やはり、俺という男は最低なものだ。
そして、岬は俺の上原弁護士に関する情報を一言一句逃さずにそれらをメモした。
そのまま、そのメモを見つめて真剣な眼差しになる岬。
どうやら、頭の中にその情報を入力しているらしい。
「......」
俺はそんな岬のことを無言で眺めた。
正直に言うと、俺としては、そこまで期待はしていない。
だって、岬は演技が下手だからな。
俺は過去で岬がしていた演技のことを思い浮かべる。
子供の岬の演技は本当に酷いものだったよな。
何と言うか、棒読みにぎこちない感じで、兎に角酷いとしか言えなかった。
だから、俺は期待なんて全くせずに、楽な気持ちで岬のことを眺めていたけれども。
そこで俺の予想とは違うことが目の前で起きた。
急に岬の雰囲気が変わったのである。
「え?」
俺は驚きの声をあげた。
そして、次の瞬間に、岬の顔から俺へに対する親愛とか愛情の感情が消えて、急に無表情になった。
すると、そこには気だるそうでありながらも、どこか凛々しい雰囲気の女性の姿が現れた。
俺はそんな岬から目を全く話せなかった。
そんな俺を見た岬は不機嫌そうに眉をしかめた。
「......なに見てるわけ?このクソヒモが。」
そういって、俺のことを罵倒する岬の姿は、あの世界Aの上原弁護士の降臨そのものだった。