リスタート:過去へ戻って孤高な女達を手駒にして現在の危機を打破する 作:霧江
美鈴に恋人と認められたその翌日の朝。
俺は人気を感じて目がさめた。
早朝だったのでまだ周りは暗かったけど、美鈴は先に起きていた。
どうやら何か考え事をしていたらしく、美鈴は悩ましげに俺を眺めていた。
何だか嬉しいけど、心配事のせいで素直に喜べないという感じのそんな顔。
「美鈴、おはよう。」
「瑛二、おはよう。」
美鈴は俺に名前を呼ばれて、すぐに返事を返す。
一瞬嬉しそうな顔をしたけど、すぐに心配そうな顔に戻った。
感情がコロコロと変わる忙しい人である。
しかし、どうしたんだろう。
「美鈴、どうしたの?」
「せっかく瑛二と恋人になれたけど、もう別れるって悲しくて。」
美鈴はよく分からないことを言った。
別れる?どうして何だろう。
俺から別れることはないけど、美鈴に何か不満があるのか?
俺は気になったので素直に美鈴に聞くことにした。
「別れるって、何で?俺が嫌いになった?」
「いや、そんなことないわ。ただ、私が逮捕されたら瑛二くんと会えなくなるから。」
そこで俺はやっと昨日のことを思い出した。
別れるって物理的に会えないということだったのか。
つまり、
俺は美鈴が可愛くて可愛くてたまらなくなった。
俺としては美鈴が自身は捨てられないだろうという打算があったから、メールの送信ボタンを押したと思った。
しかし、美鈴はあのメールが本当に俺のお父さんに届いたと思っているのだ。
だとしたら、美鈴は本当に俺のためだけに、自身の意思で自分の全てを捨てたということだ。
そこには娘である岬の安寧も含まれていた。
美鈴は俺のためなら、岬さえも捨てる選択をした。
何と可愛い女なんだ。
「ああ、あのメールね。美鈴は酷いな。俺が美鈴を困らせる訳ないじゃん。」
「どういうこと?」
俺はあのメールの種明かしをした。
メールアドレスというのはいくらでも作れるものだ。
しかも、欲しい名前で表示させることなんて難しくもないことだ。
ただ、連絡先の名前を適当に登録するだけ。
今回の場合は適当に作った仮のメールアドレスを
つまり、俺の父にメールをしたりしたわけではない。
そもそも、俺は父をお父さんと呼んでいる。
連絡先もお父さんとして登録されているわけだ。
「瑛二、酷いわ。でも、よかった。瑛二と離れ離れにならなくて。」
美鈴は安堵のため息を吐いて、緊張が解けたのかふにゃふにゃとした顔になった。
「しかし、美鈴もひどいね。俺が美鈴を捨てるような人に見えてたってことでしょう?」
「瑛二、本気に見えてたからね。私怖かった。」
「それはごめんね。何でもするという美鈴の言葉が本気なのか、知りたかったの。許してくれる?」
俺は美鈴に素直に謝った。
美鈴はいいわよとすんなりと謝罪を受け入れた。
俺たちはお互いを見て笑い合った。
「だけど、美鈴は本当にひどいお母さんだね。僕のためなら、岬ちゃんの生活さえも滅茶苦茶に出来るなんて。
俺としてはそういうところが可愛いと思うけど、岬ちゃんは可愛いそうかもよ。」
俺は岬ちゃんを持ち出して美鈴を責めるようなことを言う。
しかし、美鈴は俺が好きという部分を聞いて、照れくさそうに笑った。
あの賢母だった上原さんは、すっかり俺の雌である美鈴になったんだな。
「ふふっ、それは言わないの。それに瑛二が岬ちゃんを不幸にはしないって信じているわ。」
「そうじゃないかも知れないよ。俺は本当に岬ちゃんの人生を手に入れるつもりだからね。」
「それでもだわ。瑛二は悪い子じゃないから。」
そう言って美鈴は微笑みを見せる。
どちらかと言うと俺に呪いをかけているかのようだったけど、別に良いかなと思った。
まあ、そうだな。
俺の保身のためとは言え、折角だし俺の女にした女は幸せにしたいな。
「わかった。」
俺は素直に頭を縦に振った。
そして、美鈴のほっぺに跡が残るようにキスをした。
美鈴はそんな俺のキスを何も言わず、笑いながら受け入れた。
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それからもお互いに話をしていたら、あっという間に時間がすぎた。
いつの間にか朝ごはんの時間になり、美鈴と俺はキッチンに向かうことにした。
どうも手が凝ったものを作るには時間が足りない、そんな曖昧な時間帯。
美鈴は仕方なく、簡単なものを作ることにしたみたいだった。
キッチンに向かうとそこには岬ちゃんがいた。
「お母さん、エイちゃん、おはよう!」
元気に挨拶をしてくる岬ちゃん。
美鈴と俺はは岬ちゃんに挨拶を返した。
「「岬ちゃん、おはよう。」」
「え、お母さん今起きたの?珍しいね。普段は私より早く起きているのに。」
岬ちゃんは驚いたかのように言った。
まあ、朝のピロートークに時間が掛かっただけで、寝てなかったけどな。
俺は美鈴のフォローをすることにする。
「まあ、美鈴も人だからたまには朝が遅れることだってあるよ。」
「そうそう、そうなの。今日は寝過ごしちゃったわ。ごめんね、岬。」
俺のフォロに美鈴は便乗した。
しかし、美鈴は気づいてない。
俺が美鈴を呼び捨てで呼んだことを気づかずに流した。
岬ちゃんは驚いた顔で俺を見る。
「エイちゃん。今お母さんのこと何て言った?」
「!?」
ここでやっと美鈴は可笑しな点に気づいたらしい。
美鈴は慌てて、俺に何か訴えるかのような目線を送ってきた。
だけど、俺はその視線を無視して言った。
「美鈴って呼んだけど。」
「え?それって可笑しくない?」
岬ちゃんは戸惑っているようだった。
美鈴は何とかこの場を納めようとしたけれど、俺は目配せをしてそれを制した。
「岬ちゃん、美鈴がいいって言ったの。」
「お母さん本当なの?」
俺の言葉を聞いた岬ちゃんは衝撃を受けているらしかった。
岬ちゃんは美鈴に目線を向けた。
何かに縋るかのような、そんな子犬のような目線だった。
「ええ、本当だわ。私が美鈴って呼んで欲しいと頼んだの。」
しかし、岬ちゃんのそんな期待にもかかわらず、美鈴は俺の言葉を肯定した。
岬ちゃんはいよいよ何が何だか分からないようになったみたいだった。
「えっ?何で?一体何が起きたの?」
親しかった幼馴染が最愛の母の名前を呼び捨てにする。
そして、その母親はそれを許したと言っている。
岬ちゃんじゃなくてもこの状況は混乱の極みだった。
実際に美鈴も今の状況を飲み込めずにいるみたいだった。
俺は一端この状況をまとめることにした。
まあ、俺が起こした修羅場でだけどな。
「美鈴、食事の準備をするんじゃなかったの?岬ちゃんも学校に行く準備しないと。」
「ああ、そうね。岬、お母さんご飯の準備をするわ。もう時間がないから、ごめんね。」
「う、うん。わかった。」
美鈴は俺の言葉に便乗して、岬ちゃんを急かした。
それに仕方なく渋々と答える岬ちゃん。
岬ちゃんはいい子であったがために、その言葉に逆らえなかった。
渋々と準備を進める岬ちゃんの隣で、俺も学校の準備をした。
しばらくして、俺たちは学校にいく準備が終えた。
準備といっても教科書と宿題を入れているかチェックをするくらいだったので、そこまで時間はかからない。
岬ちゃんもすぐに準備を終えていて、俺に先ほどのことを質問してきた。
「昨日の夜に何かあったの?」
「うん、美鈴と少し話しただけ。そしたら仲良くなって、呼び捨ても許してもらった。」
俺は嘘は言わずに岬ちゃんにそう伝えた。
最大限何もなかったように言った。
実際に、話セックスはしたし、仲良く(恋人)もなった、結果呼び捨ても許されている。
嘘は言っていない。
「そうなの。何か本当に変な感じ。お母さんが許していると言うから、何か言うつもりはないけど、兎に角、変。」
そんな俺の言葉に岬ちゃんは不便な感情を隠さずに吐き出す。
岬ちゃんは混乱して、自分の感情の正体を気づかずにいた。
俺はそんな岬ちゃんを慰めるように頭を抱きしめて、背中を摩ってやる。
そして、岬ちゃんに慰めの言葉をかけた。
「岬ちゃんごめんね。俺が美鈴を呼び捨てにして、驚かせちゃったね。多分、
俺は岬ちゃんの感情の正体に心当たりがあった.
それは多分俺に母親を取られたくないという純粋な気持ちなのだろう。
子供として当たり前に持つ気持ちだ。
だけど、この感情によって岬ちゃんが俺を忌避するようになることが火を見るより明らかだった。
だから、俺は岬ちゃんのその気持ちに違う名前をつけた。
美鈴に俺を取られたくないと言う気持ちと。
二つは真逆の性質を持っていたけど、未熟で自分の感情を知らない岬ちゃんにはこの手が通じる。
「うん。そうなのかな?そうなのかも。ふぅん…」
岬ちゃんは混乱していてまだ考えが纏まっていないようだったが、
俺は岬ちゃんを慰めながら、繰り返して母への嫉妬が自然な気持ちであることを説いた。
「でも、何だかお母さんには悪い気がする。あたしって悪い子なのかな?」
「そんなことないよ。俺だって、仲良かった子が他の子と仲良くなって、嫉妬したことあるんだ。」
「そうなの?」
「そうそう自然なことだって。でも、そんなに俺を好きと思ってくれていたとは、俺嬉しいな。
ぎゅっとしちゃう。」
そう言って俺は岬ちゃんの頭をギュッと抱きしめる。
岬ちゃんはそこでやっとモヤモヤとした感情の整理がついたようだった。
「にしし、ありがとう。エイちゃん、私を慰めてくれて。」
笑いながらお礼を言ってくる岬ちゃん。
岬ちゃんは完全に俺の言葉を信じ込んでいた。
これで俺が美鈴とイチャイチャしても、岬ちゃんの敵意が俺に向けられることはないだろう。
俺にはな…
しかし、美鈴には悪いことをしたとは思っている。
岬に嫌われたら相当ショックを受けるだろうな。
でも、岬ちゃんを先に裏切ったのは美鈴なんだ
美鈴は快楽と引き換えに、俺に岬ちゃんの人生を岬ちゃんの了承を得ず、勝手に渡してきた。
俺はそれを受け取ったまでだ。
だから、俺が悪いとはいえ、美鈴にも少し我慢してもらう必要がある。
傷心が酷い時は俺が慰めてやればいい。
「すんすん、エイちゃんの臭い落ち着く。」
「本当に岬ちゃんは俺の臭いが好きなんだね。」
俺がとんでもない計画を立てている一方で、岬ちゃんは俺の臭いを嗅いで落ち着いていた。
悩みが解決されて、能天気に臭いを嗅ぐ岬ちゃん。
そんなのほんほんとした空間に急に亀裂が入る。
「皆、ご飯できたわよ。」
キッチンの方から美鈴の声が聞こえてきた。
岬ちゃんは少し不満そうだった。
頬を膨らませた岬ちゃん。
「ブウ、もっと臭い嗅ぎたかったのに。」
「後で嗅がせてあげるから。」
「本当?約束したからね!」
「わかったよ。」
俺たちは食事に向かった。
因みに朝食は簡単なフレンチトーストだった。
日常変に入る。