リスタート:過去へ戻って孤高な女達を手駒にして現在の危機を打破する 作:霧江
撲殺戦隊ブレイカーの監督は月曜病にかかった社会人たちを癒すために、正規ドラマ枠を勝ち取って制作している。
月曜日夜17時から放送。そのため、子供には見せられなネタが盛りだくさん。美鈴はまだこれに気づいていない。
俺が美鈴を撃退し、知識を奪った(笑)その次の日のこと。
学校が終わって、俺は岬ちゃんと特撮を見ていた。
「行け!ピンク!」
岬ちゃんは画面の中で無双をしているピンクを応援している。
女の子にしてはかなりレアな趣味だけど、岬ちゃんは撲殺戦隊ブレイカーを本当に好いていた。
美鈴から聞いた話だと、前はそうでもなかったらしいけど、最近になってハマったらしい。
それだけピンクが彼女の琴線に触れたみたいだった。
「ギロチンキック!」
ギロチンキック、それはピンクの特技技で雑魚敵を真っ二つに切り裂くキック。
という感じで岬ちゃんはピンクを真似することが大好きである。
だから、俺としては岬ちゃんがピンクを真似て、正義の味方になることが夢だと思い込んでいた。
それで岬ちゃんが弁護士になったと思っていたのだけど、そんなことはなかった。
世界Cでの未来を考えると、岬ちゃんが弁護士になったきっかけは他にある。
これまでは特撮が弁護士になる未来と関係があると思っていたから、特撮について何もタッチしないようにしてきた。
だけど、これが弁護士になる未来とは全く関係がないというなら、特撮を利用することも有りだと思える。
うむ、特撮を利用する、か…どうすればいいんだ?
俺がしばらく思案に更けていると撲殺戦隊ブレイカーが終わった。
まだ結論は出てきていなかったけど、岬ちゃんによって俺は現実に引き戻された。
「ああ、楽しかった。エイちゃん、今日もピンクは凄かったね。」
「そうだね。ギロチンキックは相変わらず凄まじい威力だったよ。」
「だよね!本当にピンクは格好いいんだから!」
俺は同意を求めてくる岬ちゃんに相槌を打つ。
俺としても別に無理して相槌を打っているわけではない。
それだけ撲殺戦隊は面白い番組だった。
前にも言ったけど、撲殺戦隊ブレイカーはどちらかというと、子供向けというより大人向けの放送である。
俺の感性としても受け入れられる名作であった。
しかし、子供の岬ちゃんにとっては理解できない部分も多い。
岬ちゃんは華麗なアクションとCGに惚れ込んで撲殺戦隊を見ているけど、内容自体は殆ど理解ができてない。
今日の内容なんかもクスリの売人を捕まえる内容だったが、岬ちゃんはそれを理解できていない。
本当に撲殺戦隊は美鈴は何でこんな番組を岬ちゃんに見せているのか疑問に思えるらいには、大人向けだった。
「にしし、今日も面白かった。こうピカっとしてドカンとして爽快だったな。」
満足気に笑う岬ちゃんの感想はほぼオノマトペで構成されている。
本当にアクションとCGだけを見ている感じだ。
これは多分内容自体は理解してないな。
念のため俺は岬ちゃんに今日の番組の内容について聞いてみることにした。
「岬ちゃん、今日の悪党たちを見てどう思ったの?」
「ううん…そうだね。何か気分が良くなるクスリを売っている人たちでしょう?気分が良くなるって、いいことじゃないの?クスリを飲んでいた人たちも幸せそうだったし。あれ、何でこの人たちは怒られたんだろう?エイちゃんは知ってるの?」
やはり俺が予想した通り、岬ちゃんは内容をほぼ理解していなかった。
俺は簡単に内容を説明する。
「そうだね。あのクスリというのは、実際に気持ちよくはなるけど、物凄く健康に悪いんだよ。飲んだら頭が悪くなったりして、色々と良くないものだよ。岬ちゃんも気持ち良くなるクスリには気をつけてね。」
「へえ、そうなんだ。それは悪いクスリだね。じゃあ、やっぱりあの人たちは悪い人たちで合っているってことだよね?」
のほほんとした感じで聞いてくる岬ちゃん。
クスリのやばさをフィーリングでしか理解出来てないだろうなという感じだ。
まあ、子供には分からなくて当たり前だ。
今日の番組ではあくまでも副作用とかの描写はなく、気持ち良くなっている人たちだけを描写していた。
その情報だけで、クスリが悪いものと判断するにはまだ難しいのかもしれない。
「そうそう。悪い人たちだよ。だから、ピンクが真っ二つにしたんだよね。流石正義の味方だね。」
「まあ、ピンクは正義の味方だから!当たり前だよね!にしし」
まるで自分が褒められているかのごとく笑う岬ちゃん。
その姿は微笑ましいものだった。
岬ちゃんは本当に特撮が好きなんだなと思う.
だから、逆にこれが弁護士になる切っ掛けではないということが意外すぎるって感じ。
「皆ご飯できたわよ。」
ちょうどご飯の時間になり、美鈴が俺たちを呼んだ。
「「はい」」
俺たちは一言返事をしてダイニングに向かった。
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その翌日の放課後。
俺は岬ちゃんは部屋で戯れ合っていた。
最近は、撲殺戦隊がある月曜日以外は殆どこんな感じだ。
最初の一週間は岬ちゃんと録画した撲殺戦隊を見ていたけど、ここ一週間で全話見た。
それで別の遊びをすることになったというわけだ。
以前までは外で一緒に遊ぶことが多かったらしいけど、一緒に住むことになって、家で遊ぶことがメインになった。
岬ちゃんの家は広いから、外に遊びにいく理由は特にないかな。
それで今日はてゲームをすることにした。
ゲームは俺が持ってきたものである。
「エイちゃん惜しかったね。あと少しで一位になれそうだったのに!」
「そうだね。でも、仕方ないよ。オンライン対戦だと上手い人多いから。」
耳元から聞こえる岬ちゃんの声。
因みに岬ちゃんは俺にべったり引っ付いている。
どうやら、自身の体温で俺に汗をかかせるためらしい。
この季節はまだエアコンをつけるには早すぎる季節ということもあって、エアコンはつけてない。
体温だけでも十分に汗を流せるような季節だ。
岬ちゃんはやはりえっちな子だ。
しかし、今はまだいいけど、夏になると大変そうだ。
「にしし、エイちゃんの匂い好きぃ」
俺の後ろから抱きついて、首筋に顔を埋めている岬ちゃん。
岬ちゃん曰く、強い匂いも好きだけど、首筋は首筋で好きな匂いがするらしい。
当事者の俺としては良く分からないけど、とにかくそうだとのこと。
「ほら、岬ちゃんの番だよ。一回離れよ。俺、喉乾いたよ」
俺は後ろの岬ちゃんにコントローラーを渡しながら言った。
ゲーム的に二人同時に遊ぶことはできないから、交互に遊んでいる感じだ。
岬ちゃんはコントローラーを手に取ってから俺を解放してくれた。
何やかんやで岬ちゃんもゲームを楽しんでいる。
俺は用意されていたジュースを一口飲んだ。
水分補給は大事である。
「うん!今度こそ一位になるよ!」
「岬ちゃん、頑張れ!」
岬ちゃんは意欲を燃やしていた。
俺はそんな岬ちゃんを応援する。
しかし、岬ちゃんはいつまで経ってもゲームを開始する気配がなかった。
「どうしたの?」
「抱っこ!」
岬ちゃんは俺にも抱っこを要求してきた。
俺は仕方なく、岬ちゃんにバックハグをしてあげた。
岬ちゃんはご満悦になり、ゲームを開始した。
それから1時間くらい経ったあと。
「ふあああ、ゲームも飽きてきたねー」
「そうだね。エイちゃんは何か面白いこととか思いつかないの?」
俺たちはゲームに飽きていた。
俺は元々そこまでゲーム好きではないし、岬ちゃんもそこまで長くゲームをするタイプではなかったみたいだ。
他のゲームをしても良かったけど、俺としてはそこまで意欲がない。
岬ちゃんもゲームよりは何か活動的なものがしたい様子だった。
俺たちは困っていた。
それだけ暇ということは大変なことである。
どうしたものかと俺は悩んでいた。
「あ!」
一瞬のヒラメキ。
天啓が俺に降りてきた。
「エイちゃん、何か思いついたの?」
俺の声に反応して、岬ちゃんが質問してくる。
前日俺は特撮をどうにか利用する方法はないかと悩んでいた。
その解決法を俺は見出したのである。
しかも、これは岬ちゃんの調教にも役立つ!
「うん、撲殺戦隊ごっこしよう。」
「それいいね!やろうやろう!」
岬ちゃんはノリノリで答えた。
自分が好きなものと、体を動けるごっこ遊びが合わさっているからか、意欲に満ちていた。
「じゃあ、あたしはピンク!」
予想通り、ピンクを先に選んでくる岬ちゃん。
「いいよ。じゃあ、俺は怪人だね。」
「エイちゃんいいの?エイちゃんも撲殺戦隊をしたくないの?」
俺の言葉に、岬ちゃんは申し訳なさそうに言った。
子供としては当たり前な反応だけど、俺としては違う。
むしろ、これでいいんだ。
俺は怪人がしたいから撲殺戦隊ごっこを提案したのだ。
そうすることで全てが解決する。
「本当にいいの?怪人は悪い人だよ?」
「いいの。だって、怪人がないと面白くないし。そもそも遊びにもならないと思うよ。」
俺の言葉に岬ちゃんは大いに感動していた。
そんな!あたしのために怪人をしてくれるなんて…という感じだった。
「わかった。でも、エイちゃんが撲殺戦隊役をしたいときはいつでも言って!あたし、代わってあげるから!」
「そのときはいうよ。じゃあ、始めようっか。1話からだから…俺は怪人ダストシュートね。」
「うん!」
岬ちゃんは元気に答える。
俺はそんな岬ちゃんの期待に答えるために、怪人を演じ始めた。
「俺はダストシュート、全世界の海をゴミまみれにするもの!さあ、いくぞ!ダストシュート!全世界の海亀のくびにプラスチックごみを巻きつけてやる!」
俺のノリノリな演技に岬ちゃんは大喜びだった。
「エイちゃん、すごい!似てるよ!今度はあたしの番。そこまでだわ!このブレイカーピンクがきたからには、あなたの悪行は許さない!」
岬ちゃんはキャッキャと喜声を上げながら、同じくピンクの真似をした。
しかも声真似までしている。
普通に似ているから俺も拍手をした。
さすが、マニアだけはある。
「何だと!この俺様を邪魔するのか!喰らえ。プラスチックビーム!」
俺は腕を胸の前に交差させて、ビームを撃つ仕草をする。
岬ちゃんは咄嗟に体を動かしてそれを避けた。
それからも俺たちはお互い攻撃するやりとりをした。
「中々やるな!俺様のプラスチックビームが効かないとは!」
「こんなもの効かないわ!行くよ皆!」
岬ちゃんはそう言って、格好いいポスをとった。
どうやら、撲殺戦隊の仲間と一緒に戦っていたという設定らしい。
「スパー撲殺斬!」
そう言って岬ちゃんは見えない何かを振り下ろした。
それを見て俺も大袈裟に切られたふりをする。
「おのれ!この俺様になんということを!!!!うわあああああ!」
そう叫びながら俺は倒れた。
やばい、これは普通に楽しい。
何かやばいものに目覚めた気がする。
「すごいすごい!エイちゃんも本当に似ているよ!」
岬ちゃんは大はしゃぎで俺を褒めてきた。
「岬ちゃんも声真似うまかったよ。本当のピンクかと思った。」
俺もそんな岬ちゃんを褒めた。
こうやって、俺たちの日課に特撮ごっこが加わった。
よくよく考えれば特撮の放送日は日曜日でした。
本編では間違えて月曜日を本番日と設定していました。
前書きの設定はその穴埋めになります。