リスタート:過去へ戻って孤高な女達を手駒にして現在の危機を打破する 作:霧江
※オリジナル日刊ランキング1位ありがとうございます。
何か急すぎて頭が固まった感じです。
狂乱の一日が過ぎて、俺は自室にて一人悩んでいた。
因みに二人はそれぞれの部屋で気絶している。
「ううむ…」
悩みの種は二つあった。
一つ目は西之宮絵里の攻略方法。
俺としては、絵里ちゃんの初恋相手になれたから直ぐに過去改変があると思ったけど、そんなことはなかった。
何もかもそう易々と、事が進んだりはしないみたいだ。
「それに前回の過去改変もほぼ2ヶ月という時間がかかっているからな」
これについては気長に、事を進めるしかない。
今回は3ヶ月以上が掛かるかも知れない。
それに過去改変は何もいい方向にだけ働いたりはしないのである。
それを俺は世界Cのことで学んでいる。
「これについては気長に事を進んでいくしか無いよな。しかし、一つ可笑しな点があったな。」
それは絵里ちゃんの性格だ。
俺の過去のイメージとしては絵里ちゃんは何時も物静かで宮埼の意見に従っていた印象があった。
しかし、今日見た絵里ちゃんはそんなことはなく、とても聡明で自身の意見をはっきりと述べていた。
弱々しく自身の意見を中々発しない西之宮さん。
凛々しくもはっきりと自身の意見を表明する絵里ちゃん。
「一体過去にどんなことがあったんだ?」
もう少し岬に過去の西之宮さんについて聞くべきだった。
これは失敗したなと俺は思った。
「それともう一つの問題…」
それよりも至急解決するべき問題がもう一つ。
それが二つ目の悩みの種である美鈴の責任問題だ。
「ううん…ちょっと考えなしに行動し過ぎた。」
俺は誰も聞けない懺悔の言葉を述べた。
今回のことで、俺は自分勝手な行動をし過ぎた。
最悪の場合は、両親の手によって上原家から離されることもあり得る。
「それだけはどんな手を使っても止めたい。」
先ほど俺は両親にメールを送った。
内容としては今回美鈴の言葉を聞かずに、勝手に山に行ってごめんなさいという内容。
俺は敢えて美鈴を庇う言葉は使わなかった。
それをすると逆に美鈴の印象が悪くなる恐れがある。
子供に庇われる大人というのは中々印象がよくないものである。
それが許されるのはもともと印象が良く無い人間か不良くらいだ。
「まあ、冗談はさておき」
だから、美鈴については、俺にしっかり山に行かないように指導をしていたことのみを伝えた。
他には今回の事件を事細かく書いて両親に送った。
最初に山に行った時に岬が罠に嵌って危ない目に遭いそうになったこととか。
美鈴に山に行くことを禁止はされたものの、その後も罠を壊したこととか、
それでも罠はずっと設置され続けていたからしばらくは山に通いつめるようになったこととかも全部書いて送った。
「これで少しでも美鈴の責任が軽くなればいいな。しかし、俺の監視まで含めて保護者責任と言われたらどうしようもないけど…」
そんなことは無いはず、と内心では思っているものの、俺は不安だった。
それもそうなのが、俺の両親がどう動くか俺も分からなかった。
大変恥ずかしいことではあるが、この時代の両親を知らなさ過ぎている。
両親がどんな考えで、どんな思いを持っているかが、物理的に離れているからまるで分かっていない。
「気怠げに勉強も中々しない俺をそのままにしていたことを思えば、そこまで過干渉の過保護という訳でもなさそうだけど」
今までの行動から考えて、いわゆる教育ママと無関心パパでも無さそうだけど、それ以上のことはよく分からなかった。
だから、これからのことが怖いのである。
最悪の事態には上原家を出ることになるかも知れない。
それだけはどうしても阻止したい。
「岬と美鈴と離れたくないし。」
それに予測できない過去改変が引き起こるかも知れない。
最悪の事態にはあの荻田亀太郎に俺が預けられるかも知れない。
そのことを考えて俺は不安に打ち震えながら眠りについた。
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次の日のこと。
俺の悩みはすっかり解決した。
夜の間に父からメールが来ていた。
どうやら、美鈴と蓮さんとも夜の間に連絡を済ませていたらしい。
やはり普段の美鈴は良識のある大人である。
「よかった。」
俺は安堵のため息を吐いた。
俺が上原家を離れることはなさそうだった。
メールの内容はこうだった。
まずは俺が美鈴の言葉を聞かなかったことに対する説教。
そして、罠について大人に知らせなかったことに対する説教が書かれていた。
「確かに大人に知らせた方が良かったのかな。今度からは気をつけよう。」
俺はその内容を見て少し反省した。
一応、俺としては絵里ちゃんに警告をして大事にしないつもりだったけど、結果は大事になった。
しかも、それで自身の命までも危険にさらしている。
結果的には俺の計画通りにはなったものの、やはり反省点は多いと思う事件であった。
「お父さん感激し過ぎ。」
それと絵里ちゃんを救ったことに対する賛辞が書かれていた。
まさかこんなにも俺が変わるとは思わなかったとのことで、感動で感動で仕方がないとのことだった。
俺たちがいないところでもちゃんと育ってくれてありがとうとメールは締め括られている。
メールを全部読んだ俺は顔が赤くなっていることに気づいた。
「何だか恥ずかしいな。」
しかし、悪い気持ちではない。
俺はメールを閉じて学校に行く準備をした。
「今日も頑張ろうと。」
学校の準備を終わらせて下に降りると誰もいなかった。
まあ、仕方ないと言えば仕方がない。
「美鈴?」
俺が美鈴の名前を呼んでも何も反応はなかった。
昨日のセックスが大分体に響いたみたいだ。
俺は念の為、美鈴の部屋に入った。
「美鈴、大丈夫?」
「うう…もう朝なの?」
唸り声を上げながら起き上がる美鈴。
今起きたみたいだ。
まだ体がしんどい感じには見えていたけど、体調は問題なさそうだ。
俺は安心して美鈴に抱きつこうとした。
「ダメ」
美鈴は俺を拒絶した。
え?昨日やり過ぎた?
俺はショックで立ち尽くしていた。
「いや、そんなことじゃないわ。」
美鈴は慌てて自分の行動を説明した。
昨日洗えずに寝ているから、身体中が汚いとのこと。
自身の匂いが移っちゃうと学校に行けないから断ったとのことだ。
「うう…俺が嫌いになったかと思った。」
「そんなわけないでしょう?ご飯は…簡素なものになりそうだけど、大丈夫?」
「うん、美鈴のご飯は何でも美味しいからいいよ。」
そうやって俺たちはまた下に降りてきた。
俺が美鈴の部屋に行っている間に岬も下に降りてきていた。
「にしし、全身から英二の匂いがする!」
何だかご満悦で喜んでいる岬。
岬の匂いフェチはどんどんひどくなっていた。
自身の体の匂いに染みついた渇いた精液の匂いを嗅ぎながら岬は言った。
「すんすん、これは仕方ないわ。岬は今日お休みね。流石にこの状態で学校に行くわけには行かないわ。」
そう言っている美鈴の体も俺の精液でまみれている。
美鈴は学校に電話をかけた。
一応、風邪ということにして休ませるみたいだ。
「だから、今日は一人での登校になるけど、瑛二大丈夫?」
美鈴は俺に聞いてくる。
「うん、大丈夫。」
俺は答えた。
別に精神が子供でもないから問題はない。
それに全部俺の行動が原因だから不満も言えないしな。
そうやって俺は一人で登校することになった。
「うむ、中々新鮮な気持ちだ。」
俺は一人呟いた。
過去に戻ってから一人で学校にいた事がない。
最近はもっぱら岬と一緒にいたから、一人で学校というのは変な気持ちがした。
「牧田くん、岬ちゃんは?」
「風邪でお休みだって。」
何時も岬ちゃんと一緒にいる俺はクラスメイトに何回も同じ質問をされた。
岬は美人に勉強も上手いし性格もいい。
岬はクラスの人気者だった。
だからなのか、クラスのみんなは岬を気にして俺に質問してきた。
「岬ちゃん大丈夫?」
「軽い風邪みたいだから問題無いんだって。」
心配そうに聞いてくるクラスメイト。
俺は美鈴と予め決めておいた嘘をクラスメイトに言う。
本当に今日はこのことを何回言ったかわからない。
岬が人気者で俺は鼻が高いよ。
それからも事件は無く授業は終わって、昼休みの時間になった。
「何その目?反抗でもする気?」
「気持ち悪い。そんな目で見ないでくれる?」
こんなことが聞こえてきた。
何やら数人で一人を囲って何か言っている様子。
普段は岬と時間を送るから分からなかった。
しかし、驚くことにうちの学級にもいじめがあったみたいだ。
被害者の子は何も言わずにただただ怒りに満ちた目をしているだけだった。
それでも子供たちの行動は止まらない。
「うっ…」
それを見て俺が先に唸り声を上げた。
フラッシュバックする世界Dの記憶。
クラスで孤立した時のことが頭の中で蘇った。
決して愉快な記憶ではない。
直接経験もしてないのに、すでにトラウマになるくらいの記憶で今にもこれを忘れたいくらいだ。
だが、俺が一生この記憶を忘れられない理由があった。
「岬…」
そう、岬のおかげだ。
孤立している俺を庇ってクラスに一人で立ち向かう岬の背中。
岬の尽力があって、俺の孤立はやっと止まった。
そうやって俺は救われたのだ。
だが、目の前の子にはそれをしてくれる人がいない。
「そこまでにして。」
そう思った瞬間、俺はその子の前にいた。
本当にダサい感じのセリフだなと自嘲する。
「何なの?あんたには関係ないでしょう?」
「そうだよ、あっちいけよ。」
「岬ちゃんの腰巾着のくせに!」
怒り出すいじめっ子たち。
「今辞めないと先生に言うよ。」
俺は断的にそう告げた。
他には何も言っていない。
俺としては何も言うべき言葉が見つからなかった。
ただ単に彼らを真剣な眼差しで睨んでいた。
「ちっ、つまんないの」
「何なのこいつ?」
「岬ちゃんの腰巾着!」
しばらくして、いじめっ子たちは不満そうな表情でどこかへ行ってしまった。
これは俺がまたいじめられるかもしれないな。
だけど、怖くはなかった。
俺には岬がいる。
「どうして?どうして、僕を助けてくれたの?」
いじめられていた子は俺に聞いてきた。
確か、この子は佐藤葵さん。
男の子みたいな僕っ子で、健康な茶色の肌で短髪だけど、確かこの子は女の子だった。
恐らく女の子よりもクラスの男子ともっと仲が良かったのがいじめの原因だと思われる。
本当に子供の世界は難しい。
「俺が憧れている人ならそうしていたはずだから。」
俺は岬の背中を思い浮かべながら言った。
そう、岬なら俺じゃなくても普通にそうしていただろう。
岬は本当に正義の味方で格好いいからな。
「でも、牧田くんがいじめの標的になるかもしれないよ?」
佐藤さんは俺をみて心配そうに言った。
だけど、大丈夫。
「その時は、俺のヒーローが俺を助けてくれるからな。」
俺は岬の顔を思い浮かべながら言った。
「ヒーロー…」
「だから、そのヒーローには恥ずかしくない人間になりたいんだ。」
そう言って俺は自身の席に戻った。
それからも俺は佐藤さんを見守った。
幸いにもその日のうちにいじめっ子たちが、佐藤さんをいじめることはなかった。
「佐藤さん、一緒に帰ろう?」
「え、僕と?なんで?」
俺は帰り道も佐藤さんを誘った。
学校の外でも油断はできない。
ちょうど佐藤さんと俺の家は方向が一緒だった。
俺は佐藤さんを家に送ってから上原家に戻った。
家に帰って俺は早速岬に抱きついた。
「にしし、嬉しい!どうしたの瑛二?」
「いや、本当に岬は最高だなと思って。」
「何それ!にしし」
岬は満更でもなさそうに笑っていた。
佐藤葵さんはヒロインではありません。
いじめ本当にダメ。
私にも岬みたいな子がいたらよかったのに。