※この作品はR-18です。

リスタート:過去へ戻って孤高な女達を手駒にして現在の危機を打破する   作:霧江

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明日の投稿は難しいかもです。
急に大量の仕事が入りました。

※金曜日も無理になりました!


表札

ここで家庭教師を得られたのは大分大きい。

最近、勉強の方は頭打ちになっていたのだ。

美鈴は過去の微かな記憶と常識で俺を教えていて、応用問題になると大分戸惑っていた。

え?最近の子供は難しい問題を解くわねと言っていたくらいだ。

岬に至ってはオノマトペだらけで勉強を教えてもらうことなんてできない。

だからと言って、独学にも限界があったのだ。

 

「絵里ちゃんは本当に説明が上手い。」

 

俺は感じたことをそのまま言った。

絵里ちゃんの説明はものすごく丁寧で、とても分かりやすかった。

俺が知らないところをしっかりと把握して、それを補うように説明してくれている。

 

「それほどでも、ないですよ?」

 

デレデレしながらも謙遜して見せる絵里ちゃん。

しかし、上がっていく口角は隠せていない。

絵里ちゃんからはお調子者の気配がする。

 

「絵里ちゃん、美人!天才!教え上手!」

 

俺は更に絵里ちゃんを煽てた。

 

「えへへへ」

 

絵里ちゃんはだらし無い笑みを浮かべて分かりやすくデレデレした。

未来の彼女の姿からしたら想像が出来ない姿だ。

未来の彼女はもっとこう落ち着いた感じがしたものである。

 

未来と言っても中学時代のことだから、たかが数年年しか経っていない。

一体その数年の間に彼女に何があったのだろうか?

本当に謎である。

それからのこと、俺たちは宿題を終わらせて、舞さんが用意してくれたおやつを食べながら雑談をしていた。

 

「絵里ちゃんの髪は本当に綺麗だよね。青色の目も宝石みたい。」

 

俺は絵里ちゃんの容姿を褒めた。

 

「そうですか?ありがとうございます!嬉しいです!同じ年の子にそんなことを言われることはないから、嬉しいですね。えへへ」

 

純粋に喜ぶ絵里ちゃん。

 

「そうなの?こんなに綺麗なのに。」

 

俺は嘘偽りない気持ちをそのまま伝えた。

まあ、子供は自分と違うものを排斥するからな。

容姿が日本人離れしている絵里ちゃんは、排斥の格好の的だったのだろう。

絵里ちゃんは褒められてなかったとだけ言ったけど、もっと大変な過去があったに違いない。

 

「牧田くんがあの時言ってくれたのが初めてでした。」

 

ああ、崖から落ちそうになった時のことか。

 

「大変だったね。でも、もう大丈夫だよ。」

 

俺は絵里ちゃんに近づいて慰めた。

 

「牧田くん…」

 

絵里ちゃんは感動しているみたいだった。

本当に辛かったのだろう。

 

「しかし、絵里ちゃんの髪は本当に綺麗だ。触っても良い?」

 

そこそこ絵里ちゃんと仲が良くなれたと感じた俺は大胆なお願いをした。

俺の言葉に少し驚いた顔をした絵里ちゃん。

そして、彼女は顔を赤く染めた。

 

「他の子なら嫌ですけど、牧田くんがそうしたいなら良いですよ。」

 

そう言って絵里ちゃんは自身の髪を俺の手に握らせてくれた。

俺は絵里ちゃんが痛みを感じないように、優しい手つきで髪の感触を楽しんだ。

絵里ちゃんもそんな俺の手つきが嫌ではないのか目を閉じていた。

まるで絹のような感触、手入れが良くほどこされている。

 

「本当に柔らかくて、気持ちいい感触、いつまでも触っていられそう。」

 

「私も牧田くんの手つき、優しくて好きです。」

 

しばらく、そうやって俺は絵里ちゃんの髪の毛の感触を楽しんだ。

それからも俺たちはお互いのことについて話し合った。

岬のこととか、学校でのこととか、いろんなことを話し合う。

その過程で絵里ちゃんは大分俺に心を開いてくれたみたいだ。

絵里ちゃんは自身が金髪な理由も教えてくれた。

 

「かくせいいでん?というものらしいです。私のお祖父さんのお父さんがフランスの方みたいで、その方が金髪だったみたいです。」

 

「そうなんだ。」

 

それで両親の誰とも身体的特徴が似てなかったんだな。

まあ、絵里ちゃんが悲しみそうだから言わないけど。

 

「そう言えばさ、絵里ちゃんって宮埼くんと仲良いの?」

 

俺は絵里ちゃんに宮埼との間柄について聞いた。

 

「剛太ですか?そうですね。剛太は私の幼馴染です。」

 

急に宮埼について聞かれて、絵里ちゃんはきょとんとした顔をしていたけど普通に答えてくれた。

幼馴染か、呼び捨てにしているし、結構親しい間柄みたいだ。

 

「へえ、長い付き合いってことだね。」

 

幼馴染な上に自分を助けてくれた人間か。

この世界ではそれが叶わなかったけど、中々フィクションじみている話だ。

まるで恋愛小説やドラマとかで出てきそうな話である。

恋に落ちてしまっても驚きはない。

 

「そうですね。剛太は私にとって初めての友達でした。私が一人でいたところを見て話しかけてくれたんです。」

 

その話を聞いていたら俺さえも、実は宮埼はいい奴なんじゃないかという感覚がしてきた。

一人でいる女の子に手を差し伸べる男の子。

中々素晴らしい美談である。

 

「いい話だね。」

 

未来の情報が無ければ俺さえも彼に好感を持っていたかもしれない。

 

「さっき、俺が初めて絵里ちゃんの髪を褒めたと言ったよね。宮埼は絵里ちゃんの髪を褒めたりはしなかったの?」

 

「そうですね。褒めてきたことはなかった、と思います。」

 

俺の言葉に答える絵里ちゃん。

これは好都合だ。

俺は更にその話題を掘り下げた。

 

「本当に?数年も一緒にいたんでしょう?本当に絵里ちゃんが好きなら、髪のことは絶対に褒めてくれると思うけどな。こんなに綺麗だし。」

 

俺は髪の毛を褒めることと絵里ちゃんに対する好感を一緒にして語った。

俺の言葉に絵里ちゃんは目を閉じて思案顔になった。

おそらく過去を振り返っているのだろう。

絵里ちゃんはしばらく目を閉じたままにしていた。

 

「なかった、です…」

 

再び目を開いた絵里ちゃんはそう言った。

本当に一回も絵里ちゃんを褒めたことがないとは…

何気に絵里ちゃん本人もショックを受けているらしかった。

 

「そうなんだ。でも、大丈夫だよ。俺が宮埼の分も合わせていっぱい褒めてあげるから。」

 

俺は絵里ちゃんの頭を優しく撫でた。

俺は宮埼がしなかったことをやってあげるとアピールする。

それでやっと絵里の顔に笑顔が戻った。

 

「ふふ。ありがとうございます。今は剛太のことより、私たちの話をしましょう。」

 

俺は絵里ちゃんの言葉に従うことにした。

それから、俺は西之宮家で夕飯を食べた。

 

「これ美味しいですね。」

 

「ふふ、ありがとう、沢山あるからいっぱい食べてね。」

 

舞さんは笑顔で言った。

 

「ところで蓮さんはまだですか?」

 

俺を招待したのは蓮さんなのに、まだ蓮さんの顔を見ていない。

食事中になって聞くのも変だけど、俺は気になって仕方がなかった。

 

「お父さん平日には家にほぼいないです!」

 

俺の疑問に絵里ちゃんが代わりに答えた。

俺を招待したのに、平日にはほぼいないのか…

あの人、本当に娘を慰めるだけのために俺を呼んだのか。

俺は少し蓮さんに引いた。

まあ、ちゃんと持てなしてもらっているから不満がないけど。

 

「へえ、どんな仕事をされているの?」

 

俺は気になって質問してみた。

蓮さんの印象からして、普通の会社員という感じでははなさそうだったのだ。

 

「お父さんは検事です!」

 

絵里ちゃんはドヤ顔で言った。

 

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食事が終わってみると時間は6時半になっていた。

 

「もっと一緒にいたいです。」

 

俺の腕に引っ付いてそんなことを言う絵里ちゃん。

 

「うん…今日はちょっと無理だよ。また今度絶対に!遊びにくるから!」

 

可愛らしいおねだりに少し心が揺れたけど俺はそれを断った。

いくら娘の命の恩人だとしても、男の子が女の子の家に泊まることは憚れる。

それに娘煩悩の連さんもいい目では見てこないだろうと思った。

 

「ほら、絵里、牧田くんが困るでしょう?」

 

娘を宥める舞さん。

絵里ちゃんはイヤイヤしながらも俺の腕を離してくれた。

俺としてはいい傾向である。

しかし、それを利用するのは今日じゃないんだ。

 

「一人で大丈夫?私が送ってあげる。」

 

舞さんは俺に配慮してくれて、そんな申し出を出してくれる。

 

「いえ、大丈夫です。電車だと10分くらいの距離ですから。」

 

しかし、俺はそれも拒否した.

この後やることを考えたら、舞さんがついてくることは都合が良くなかった。

 

「そうなんだ、でも、ちゃんとすぐに家に帰るのよ。夜は危ないから。」

 

俺の言葉に舞さんは渋々ながら引きさがってくれた。

 

「来週絶対にまた来るよ。」

 

「うう…約束ですよ!」

 

「もちろん!」

 

俺は絵里ちゃんと指切りをした。

当たり前だけど、西之宮家を出た俺がすぐに駅に向かうことはなかった。

 

「今が最後のタイミングだ。いや、もう遅いかもしれない。それでも試す価値はある。」

 

本当に今回が最後のチャンスだ。

この時を逃したら、もう二度と真実には辿り着けないかもしれない。

俺は西之宮家から更に町の奥へ進んだ。

そう、俺は山の付近に向かっている。

 

「この前のことで罠を作った犯人はこの付近に住んでいる可能性が高いことがわかった。そして、山に作られた罠は他のところで調達されたこともわかっている。」

 

もちろん、山の中で材料を調達することもできるだろう。

しかし、あの罠に使われたくらいの大量の草になると、木が生い茂っている山の中では調達が難しい。

木々のせいでそこまで大量の草は生えないだろうから。

ということは草の調達先は山と町の境界にある草むらということだ。

こういった場所は常に草が茂っているから、抜いたとしてもそこまで目立たないだろうから。

 

「だとしたら、ここの付近で草を採集したということになる。」

 

既に一週間という時間が過ぎているから、痕跡が残っているかはわからないけど、そこはやらなきゃ損だ。

俺は山と町の境界を歩きながらしばらく罠を設置した犯人の痕跡を探ってみた。

 

「ふうむ、やはりこの一週間で草が育っているのか?」

 

最近は暖かいから無理もない話だ。

そうやって10分弱を歩いて周りを探していた。

 

「!!」

 

俺は異様に草が短いところを見つけ出した。

何かで引きちぎられて、途中で切れている草が大量にあった。

犯人はここで採集をしたに違いない。

 

「くう、もう7時になりそうだ。」

 

しかし、時間がもうない。

もっと暗くなる前に帰らないと。

ちっ、これだから子供の体は不便だ。

俺はスマホで周辺を撮影した。

 

「これは運が良かった。」

 

何かで引きちぎられた草の痕を何枚も何枚も写真に残した。

そして、その位置がどこかわかるように、町方向にも写真を激写する。

 

「これが証拠になりうるかはわからないけどな。ついでに近くの家の写真も取っとこう。」

 

俺は一番近くの家に行って表札が見えるように写真を撮ろうとした。

完全に不審者の行動だから、なるべく早くとって逃げるつもりだった。

しかし、俺はそうすることができなかった。

 

「…宮崎」

 

家の表札には宮崎という苗字が書かれていた。




宮埼が西之宮夫婦に信頼されていた理由は娘の初めての友達だからでした。
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