※この作品はR-18です。

リスタート:過去へ戻って孤高な女達を手駒にして現在の危機を打破する   作:霧江

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今日は何か筆が乗りまして、昨日の分と合わせて2話投稿になります。
前話に少し内容修正を入れました。
瑛二の部屋によく来ているのに気づかないのは流石におかしいと思ったので、
瑛二の部屋によく来ているという表現を無くしました


正座

荻田亀太郎、世界Aで俺の人生を滅茶苦茶した男。

世界Bでそのことを気づいてから、俺は彼に復讐をすることを誓った。

だけど、今になってその決心は揺らいでいた。

最初、直に彼の顔を見た時は怒りに震えていたけど、父との電話を終えた俺としてはそこまで怒りを感じていなかった。

 

「それはあくまでも世界Aでのこと。世界Dの俺は彼に何もされてない。世界BもCも同じだ。」

 

前までの俺だったら有無を言わさずに復讐に走っていたと思う。

しかし、いろんな世界の記憶を持っている俺としては、そこまで復讐にこだわることはないのではと思えた。

それだけ、俺は色んなことを経験しながら変化したのだ。

少なくとも世界Aでの出来事が自分のせいもあるということに気づけるくらいは成長した。

 

「世界Aでのことは確かに荻田亀太郎のせいでもあるけど、その後のことは俺に責任があったからね。」

 

その時、俺が塞ぎ込まずに両親に相談していたのなら全てが変わっていたかもしれない。

何も言わずに1人で塞ぎ込むと決めたのは荻田亀太郎のせいではない、俺のせいだった。

 

「それに復讐と言っても何をしていいかわからないし。血生臭い復讐とか、そんなものは全く望んでないんだよね。」

 

だから、俺は自分でも驚いたけど、あっさりと彼を許すことが出来た。

 

「だからと言って何もしないという訳でもないけど。せっかく、葵と2人でイチャイチャしてたのに、邪魔しやがって、それに葵を怖がらせたお礼もしないと」

 

他の世界でのことは許したけど、この世界でのことはまた別の話だ。

何より葵とのイチャイチャタイムを邪魔された俺はカンカンだった。

だから、俺は荻田亀太郎を少し懲らしめてやることにした。

懲らしめるとは言ったけど、別に彼を物理的に殴るとかそういうつもりはない。

ただ単に彼が正当な評価を受けられるように手伝うだけのつもりだ。

 

「先ほどの電話でお父さんは写真で報告を受けていると言っていたよね。」

 

我が父は毎回丁寧に掃除された写真が送られてくるとか言っていた。

俺は少しトリックについて考えてみた。

 

「ふうむ、どうしたらお父さんを騙せる?写真か…あ!そういうことか!」

 

少しばかり考えてみたところで、俺は写真トリックを解明した。

 

「実際どうかはわからないけど、多分、これで合ってる。」

 

まあトリックについては後に父に確認すればいいだけだ。

では、荻田亀太郎懲らしめ作戦と行きますか!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

俺は家の中に入る前に一旦庭へと向かった。

家の構造的にリビングで庭の様子が見れるので俺は窓から離れたところで立ち止まった。

幸い、酔っ払いの荻田亀太郎は俺に気づくことはないみたいだ。

 

「そんなに大音量でテレビをみながら、酒を飲んでいると気づくものも気づけないよね。」

 

確か父との電話によるとここも管理の対象とのことだったけど。

我が家の庭は以前の見る影もなく、雑草まみれになっていた。

5月まではうちの庭はガーデニングが趣味の母によって、そこそこいい感じの庭だったのに…

 

「これが管理している庭の様子だと?酷いな。」

 

俺は庭の惨状を何枚か写真で撮った。

これがうちの家だとわかるように、玄関に一回戻ってから庭へと向かうところを動画でも撮影した。

本当にひどいものである。

母が大事にしていたお花も全部枯れている。

 

「さてと、次は家の中か…」

 

俺は普通に鍵を開けて玄関口から入った。

どうせ、あの爺さんは気づかない。

庭で少しリビングを覗き込んだら、完全にテレビとお酒に夢中だった。

 

「うう、寒い…」

 

玄関を開けるとテレビの騒音と冷気が俺を迎えてくれた。

本当にうるさくて玄関の音なんて聞こえないだろう。

不幸中の幸いというか何というか。

 

「しかし、逆に俺もすごいな。何で他の人が家に来ていたことを気づかなかったんだ?」

 

俺は自身の鈍感さに驚いた。

思えば、最近は家に来たらすぐに自分の部屋に向かっていたっけ。

リビングとかキッチンとかには用がないから行かなかった。

他に使っていた部屋は精々2階のトイレくらいかな。

 

「とういうことは俺の部屋以外の部屋がどんな状態か分からないということだな。」

 

俺はものすごく不安な予感がした。

そして、その足でまずはキッチンに向かった。

キッチンに行く途中リビングの扉を通り過ぎる必要がある。

俺は少し緊張しながら、リビングに近づく。

 

「くそう!どうしてそうなるんだよ!わしの金返せ!」

 

何やら荻田亀太郎が怒っている。

画面にはお馬さんが写っている。

多分競馬で負けたみたいだ。

興奮して、画面に向かって怒鳴りつけるおじいちゃんは本当に見るに耐えなかった。

でも、これは好都合だ。

俺はサッとリビングのところを通り過ぎてキッチンに向かった。

 

「うっ、おえ」

 

キッチンに入るや否や変な悪臭がしてきた。

それにキッチンも庭に負けじと惨状であった。

兎に角、ゴミが散らかっている。

ビールの缶とか、コンビニの弁当とか、カップ麺の容器があちこち散らばっている。

悪臭の原因はこれか…

 

「こんなの撮ってもうちの家とは信じてもらえなさそう。」

 

いや、信じたくないというのがもっと正しいか。

この調子だとリビングもすごいことになってそうだ。

兎に角、俺は庭と同じく写真を撮っていく。

シャッター音はテレビの音にうまく埋もれてくれた。

 

「次は…一階のトイレかな…いや、トイレは…やめとくか。」

 

キッチンでこれならトイレはもっとすごいことになっているに違いない。

そう思った俺はトイレとかの水回りは省略することにした。

 

「ああ、クソ!イライラするんじゃ!わしの金返せ!」

 

荻田亀太郎の声がリビングで聞こえてくる。

そして、何かを投げる音がした。

音からして、ビール缶を投げたみたいだ。

 

「やば!」

 

どんどんと足音を鳴らしながら、荻田亀太郎はこちらにきている。

俺は咄嗟にテーブルの下に隠れた。

安直すぎる位置選定だったから俺は不安だった。

別に殺されることはないと思うけど、それでもこの人とは顔を合わせたくなかった。

 

「くそったれが、ビール、ビール」

 

そう言って冷蔵庫に直行する荻田亀太郎。

彼はビールを取り出してそのままリビングへ戻って行った。

 

「ふう、一先ずは安心だ。2階にいく時も気をつけないと」

 

俺は気をつけて2階に上がる。

2階には俺と両親の部屋と倉庫があった。

少なくとも俺の部屋が綺麗なところを見ると2階はまだマシかなと予想していた。

しかし、俺のそんな淡い期待はあっさりと裏切られた。

 

「うわあ…」

 

俺の部屋と違って両親の部屋は滅茶苦茶に荒らされていたのだ。

収納という収納は全部開けっぱなしになっているのに加えて、ベッドの上はぐちゃぐちゃになっていた。

布団やシートも荒らされたままなのをみたら、どうやら荻田亀太郎はここで寝たりもするみたいだ。

何だか訳のわからないシミも幾つかできている。

周りの缶を見るとビールとかお酒みたいだ。

 

「全くもう何なんだ。あの爺さん。」

 

本当に常識知らずの化け物でしかない。

人んちの、夫婦の部屋で寝るとかどうかしている。

俺はまた写真を撮り始めた。

それから俺は倉庫の写真を撮って、下に降りるとテレビとは違う騒音が聞こえていた。

 

「くがががががが、こほっこほっ、くがががががが」

 

俺が上にいる間に荻田亀太郎は眠ってしまったみたいだ。

酷いイビキである。

 

「よくこんな煩いところで眠れるものだね。最後に顔写真でも撮ってやろうか。」

 

そう思い立った俺はリビングに向かう。

意外なことにリビングはそれなりに綺麗だった。

こんな化け物でも自分周りは整理するみたいだ。

そういえば、豚は意外と綺麗好きと言ってたけ…

 

「くがががっがっがが」

 

「はい、チーズ。」

 

俺は気持ちよさそうに寝ている荻田亀太郎の写真を撮った。

家から出てきた俺は父に写真を送った。

メールを送ってから1分もしないうちに電話がかかってくる。

 

「瑛二…これは…?」

 

「うん…俺も信じたくないけど、うちの現状かな。」

 

「そんな…バカな…そんな…そんな…え?、そんな…」

 

父はあまりの出来事に言葉を失った。

そんなしか言わなくなった父。

仕方ないことである。

 

「でも、写真が…じゃあ、あの写真は何だったんだ…一週間前だって、掃除された写真が来ていたぞ。」

 

現実逃避する父の姿に俺はネタバラシをすることにした。

 

「あのお父さん?スマホの写真って、写真の情報をみたら撮った時間が出るよ。知ってた?」

 

俺の言葉を聞いた父はしばらく無言のままになった。

つまり、こういうことだった。

これは父がスマホに詳しくなくて出来たトリックだった。

荻田亀太郎は仕事を開始する日に同じ場所の写真を何枚も撮ることで、複数枚の綺麗に掃除された部屋の写真を用意した。

多分だけど、小物の位置を少し変えるとかで、写真の説得力を増したんだと思う。

そして、その写真を使いまわすことで父に掃除をしていると思わせたのだ。

 

「くっ、送ってもらった写真の日付が全部一緒だ。か、可奈に殺される…」

 

父は写真の情報を確認して、やっと自身が騙されていたことを自覚したみたいだ。

これでバレるところを見ると荻田亀太郎もそこまでスマホに詳しくはなさそう。

二人の無知が作り出した奇跡の状況である。

どちらかというと我が父が更に無知だった気もするけど。

 

「さっき、送った写真は見てもらえるとわかると思うけど、今日の写真なんだ。」

 

「ぐぬぬぬ…」

 

もはや怒りで言葉を失った父はそこで電話を切った。

そこから10分もたたないうちに家の前にパトカーがきた。

どうやら、父が通報したみたいだ。

そうやって荻田亀太郎は連行されていった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

あとで聞いた話によると父は母にこっ酷く怒られた。

それで普通の企業に依頼して家の掃除を任せることになったみたいだ。

俺はというと、もちろん、俺も説教された。

荻田亀太郎という危険人物に近づいたことで、父と母と美鈴にそれぞれ3回も説教された。

美鈴については今ちょうど説教途中だった。

 

「うう、ごめんなさい。もう許して…」

 

まともな大人モードでどんどん俺を攻めてくる美鈴に、許しをこうも全く聞き入れてくれない。

岬はそんな俺を遠目に見ている。

気のせいか岬も怒っているようだった。

それでやっと俺は自分が本当に危ないことをしたのかとここでやっと自覚した。

大人の意識を持っていたとしても、今の俺は子供だということだ。

 

「だから、そういう時は…」

 

美鈴が口を開こうとしたその時だった。

 

「速報です。本日午後に紫石仁容疑者が逮捕されました。紫石容疑者は今朝、通報により逮捕されまして、その後の調査で複数件の空き巣や強盗、詐欺事件に関連したことが明かされました。そして、紫石容疑者は荻田亀太郎という仮名を使って、今回の事件も…」

 

説教前にみんなで見ていたテレビで急にそんなことが聞こえきた。

…俺は開いた口を閉じられなかった。

まさか、あの荻田亀太郎が…

 

「瑛二…?」

 

綺麗な笑顔で俺の名前を呼ぶ美鈴。

やばい、これ本気で怒っている。

美鈴のピリピリとした怒りが俺の肌をチクチクと刺してきた。

俺は一体どうなってしまうんだ?

その時、俺のズボンからピリリリと音が鳴り始めた。

 

「ふふふ、電話ね。出て良いわよ。」

 

俺はオドオドしながら、電話の発信人を見た。

名前欄がお母さんとなっている。

ううう、どうしよう出たくない…

しかし、出ないわけにはいかないんだろうな。

美鈴が無言で俺を見つめてきた。

俺は仕方なく電話に出た。

 

「もしもし?お母さん?」

 

「瑛二、正座。」

 

有無を言わさず、俺に正座をするようにいう母。

 

「あっ、はい。」

 

俺は全てを諦めて正座をした。




これで荻田亀太郎の話は終わりです。
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