リスタート:過去へ戻って孤高な女達を手駒にして現在の危機を打破する 作:霧江
先週の金曜日、俺は絵里ちゃんの連絡先をゲットした。
以前までは必ず蓮さんを経由して連絡をしていたけど、これで絵里ちゃんとの直接連絡が可能になった。
まさか、男の子との直接連絡を防ぐために娘にスマホがあることを隠してくるとは夢にも思ってなかった。
絵里ちゃんが俺にスマホを見せてくれたあの瞬間まで、俺は本当に絵里ちゃんに携帯がないと思っていたのだ。
しかも、絵里ちゃんも俺が言うまで、俺にスマホがあることを知らなかったみたいだ。
「本当に蓮さんの執念が怖い。まあ、娘を守るための行動としては正しかったけど。」
俺は蓮さんの手際の良さに少し身震いした。
まあ、そもそもの俺の目的を考えたら蓮さんの行動は正しかったとしか言わざるを得ない。
蓮さんは親としていい仕事をしたのだ。
それに今まで蓮さんを経由して絵里ちゃんと話してきたことで、逆に良いこともあった。
「蓮さんの信頼を得られたのは大きい。少なくとも娘の頼みなら俺を家に泊めてくれるくらいは信頼してもらっているからね。これは宮崎にもないメリットだ。」
絵里ちゃんに聞いたところだと、宮崎も何回か絵里ちゃんの家に泊まろうとしたことがあったみたいだ。
その度、蓮さんは家も近いし親御さんも心配するということで宮崎を返したみたいだ。
建前上ではそう言っているけど、蓮さんの性格を考えたら普通に娘から異性を排斥したことが容易に想像できる。
「娘の命の恩人である俺にも3週間くらいの観察期間を置いているくらいだからね。本当に用心深いと言うか、娘煩悩な人だよね。まあ、そこも蓮さんの面白いところではあるけど。」
かっこいい顔をして、たまに見せる娘煩悩っぷりは見ていて面白いところがある。
俺としては蓮さんとも良い関係を築いていきたかった。
そういう点では先週の金曜日は転機だった。
「あの良く撮れた絵里ちゃんの写真を蓮さんに送ってから俺に対する態度が柔らかくなった気がする。」
絵里ちゃんの奇跡の一枚としか表現出来ないあの写真。
最近の蓮さんはそれを携帯の待ち受けにしているとのことで、仕事中にそれを見たら元気が出るみたいだ。
こういった雑談をしてくるくらいは俺と仲良くなった。
「と言っても、絵里ちゃんへの親バカな話題ばかりだから少し困るけど。」
閑話休題、こうして俺は絵里ちゃんの動向を逐一知ることが出来るようになった。
以前は蓮さん伝てで話を聞いたり、週に一回会って近況を話し合ったりするのが関の山だった。
それだと、宮崎が何か手を打ってきた時、俺が対応出来ない可能性があったのである。
「先々週が特にそうだったね.あの恋愛相談はやばかった。それに先週のあの発言。」
宮崎は命の恩について何かを言っていた。
あの狡猾な宮崎のことだ。
このまま俺にやられっぱなしであるはずがない。
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月曜日の夜、俺は絵里ちゃんからの電話を待っていた。
元々は通話の予定だったけど、昨日は荻田亀太郎の件で通話ができなかったから、今日にしてもらった。
時刻は夜の12時、子供が起きているには大分遅い時間だったけど、これは絵里ちゃんが指定した時刻だった。
12時ぴったりになって、俺のスマホにメッセンジャーアプリで通話が入ってきた。
俺は普通の通話を想像していたけど、メッセンジャーアプリからか…
これだと蓮さんに携帯料金でバレる心配はなさそうだ.
「もしもし、絵里ちゃん?」
「瑛二くん、私だよ。えへへ、平日の夜に瑛二くんの声が聞けるなんてすごく新鮮な気持ち。」
室内に嬉しそうな絵里ちゃんの声が鳴り響く。
もうすっかり夜中だということでボソボソとは喋っているけど、絵里ちゃんの声は元気いっぱいだった。
「俺も絵里ちゃんの声が聞けて嬉しいよ。」
「本当?これから毎日通話しないと!」
絵里ちゃんは俺の言葉にご機嫌になった。
俺としては望ましいことだ。
絵里ちゃんの好感度も稼げるし、宮崎の動向をすぐに知れる。
「それは良いね。一層、時間も早めて、毎日しちゃおうか?」
「私もそうしたいけど、早い時間帯だとお父さんたちにばれちゃうから難しいかも。」
「蓮さん?蓮さんにバレたらまずいことでもあるの?」
俺は何も知らないふりをして聞いてみた。
答えは聞かなくても何となくわかるけど。
「え?いや!何でもないよ!今の忘れて!」
絵里ちゃんは俺の予想とは違う返答をしてきた。
どう言うことだ?
娘が好きすぎて男の子と直接通話することを禁止しているとかではないのか?
「わかった。」
俺は絵里ちゃんの反応が気になったけど、敢えて深掘りはやめた。
と言うことで、俺は話題を変えることにした。
というか、本題に入るというのが正しいか。
「昨日はごめんね。ちょっと色々あり過ぎて、連絡ができなかった。実は昨日俺の家に変な人がいて、それでその人のことをお父さんに話をしたんだ。そしたら、俺のお父さんがその人のこと通報して、後になってわかったけど、その人すごく危ない人だったみたい。」
俺は普通に雑談話を始めた。
話題としては昨日電話できなかった理由と荻田亀太郎のことを出した。
もちろん、写真の件は伏せた。
写真のことを言うと温厚な絵里ちゃんでも怒りそうだったからである。
「そんなことがあったの?それでそれで?」
「何とあの人その日の夕方、ニュースにも出てた。」
「え、本当に?それ私もみたかも、確か強盗とかしてた人のことだよね?瑛二くんは大丈夫だった?」
あれ見てたのか…
絵里ちゃんは見てないと勝手に勘違いしていた。
ものすごく心配そうに聞いてくる絵里ちゃんの声に、俺は写真撮影のことを言わなくてよかったと胸を撫で下ろした。
「う、うん、俺は外でお父さんに電話してただけだから、大丈夫だったよ。」
俺は咄嗟に嘘をついて、絵里ちゃんを安心させた。
「本当によかった。」
目には見えないけど、目に見えて安心する絵里ちゃん。
それから俺たちは荻田亀太郎のことで少し談笑した。
「俺はこんな感じだったかな。それで絵里ちゃんはどうだったの?」
「私?私は瑛二くんみたいに驚くようなことは全くなかった。ただ、いつも通り剛太と話したり、写真撮ったり、勉強したりだったかな。」
よし、宮崎の話題が来た。
俺はなるべくなんともない振りをして絵里ちゃんに質問する。
「へえ、そうなんだ。ところで、宮崎とはどんなこと話したの?」
「剛太と?別にいつものことかな。食事の話とか、後は瑛二くんのこととか?」
「!!」
俺のこと、か。
やはり宮崎も俺の動向を気にしていたのか。
こんなにも彼の日常をぐちゃぐちゃにしたのに気にしないのが無理か。
「へえ、俺の話ってどんな話をしたの?」
「一緒に遊んだこととか?後は…一緒に写真撮って遊んだこと?」
別に何か特別なことはなさそうだ。
しかし、あの宮崎のことだから、何か情報を掴めたかもしれない。
俺はさらに深掘りすることにした。
「そうなんだ。詳しくはどんな話だった?」
だが、それが絵里ちゃんにはお気に召さないみたいだった。
「む、瑛二くん、私のことより、剛太のことばかり聞き過ぎてない?」
プンスカと少し怒った感じの絵里ちゃん。
俺は少ししくじったと後悔した。
「ごめん、確かにそうだね。俺の話をしたというから気になっちゃった。」
絵里ちゃんに俺は素直に謝った。
「本当に!どうしても!聞きたいの?」
「まあ、聞けたら良いなって感じかな。」
言葉のところどころを強調して俺の意思を聞いてくる絵里ちゃん。
何だ…この前振りは…少し不安になる。
だけど、俺はどうしても気にならないとは言えなかった。
「そんなに知りたいの?じゃあ、代わりに瑛二くんの今の写真撮って送って!」
絵里ちゃんは分かり易く自分の欲望を満たそうとしてきた。
俺はそんな太々しい絵里ちゃんの態度に少し呆れて固まった。
「……」
「…瑛二くん?」
しばらく、俺が何も喋らずにいると、絵里ちゃんは不安そうな声で俺の機嫌を確認してくる。
オドオドした態度の絵里ちゃん。
「もしかして、怒った?」
絵里ちゃんは恐る恐る俺の機嫌を伺ってきた。
…これ以上絵里ちゃんを待たせても変な空気になるだけだ。
空気を入れ替えるついでに俺は少し絵里ちゃんを揶揄ってやることにした。
「怒ってはないよ。でも、今写真はちょっと無理。だめー。」
「何で?」
絵里ちゃんは不思議そうに聞いてきた。
まあ、基本的に絵里ちゃんの写真に関する頼みには全部答えてきたからね。
急に駄目と言われて驚いたのだろう。
「言ってなかったと思うけど、俺って家では裸で寝るんだよね。だから、駄目。」
「は、裸!?」
絵里ちゃんは面白いくらい反応してきた。
やはり、絵里ちゃんは揶揄い甲斐がある。
「本当に今裸なの!?」
絵里ちゃんは再度俺に確認してきた。
俺は親切に答えてあげることにした。
「そうだよ。俺、家だと夜はパンツも脱いでいるからね。」
「瑛二くんが…裸で…おちんちん出して私と話を…うっ❤️」
一人の世界に入り、とんでもないことを口にする絵里ちゃんだった。
やはり、絵里ちゃんはムッツリドスケベである。
「あの!瑛二くん!お願いお願い!今の写真撮って!」
「ええ、恥ずかしいから嫌だよ。」
俺は普通に断った。
しかし、絵里ちゃんはそう易々とは引き下がらなかった。
「本当にお願い!一生のお願いだから。」
一生のお願いと来たか。
一体どんな一生のお願いなんだ…
「それでも、それは無理かな。」
「どうしても無理なの?」
どれだけ、俺の裸が見たいの…
俺の裸にそんな需要があったとは驚きだ。
俺は構わないけど、この通話で普通に送ったら俺だけやばいやつである。
俺は一つ予防線を張ることにした。
「うん…それじゃ、文章で俺がその写真を撮らないといけない理由を送って。それだと少し考えてみる。」
「本当!?」
大喜びする絵里ちゃんはすぐに通話を切った。
その間に俺は絵里ちゃんに一言メッセージを送った。
『絵里ちゃん、何で俺は裸の写真を取らないといけないの?』
絵里ちゃんは少し時間がすぎて自分が考えた理由を送ってきた。
『私の写真作品のためだよ。作品だからね!ほら、美術とかでは裸を強調したりするよね。その、皆していることだから、大丈夫。』
文章からも必死さが伝わってくる。
とんでもない屁理屈だった。
『でも、周りの大人は人に裸を見せちゃダメって言ったよ。絵里ちゃんが俺の先生でも恥ずかしいのは恥ずかしい。』
俺は絵里ちゃんに純真な少年を真似た文章を送った。
絵里ちゃんは俺を純真な少年だと考えているから、そこに齟齬は感じないはず。
俺自身は違和感がすごいけど、そこは我慢だ。
『大丈夫、全部、美術のためだから、恥ずかしがることはないよ!私のこと信じて!』
まるで絵里ちゃんが純真な子供を騙す大人みたいに見える。
これだと写真をバレても絵里ちゃんのせいに出来るだろう。
俺は自身の写真を撮って、絵里ちゃんにメッセージと共に送った。
『絵里ちゃんのこと信じるから…』
と言っても、写真は白いインナーシャツを着てから撮ったものだけど。
写真を送ってから、少しして絵里ちゃんからの電話がきた。
「うう、瑛二くんの嘘つき!私期待していたのに…!」
少し涙まじりの声で言う絵里ちゃん。
どれだけ期待していたんだ…
「流石に恥ずかしいかったし、それに蓮さんにバレたら、絵里ちゃんにもう会えなくなるかも知らないと思ったからね…、ごめんね。」
「瑛二くん…!確かにお父さんならそうかもね。私が軽率だった!」
俺の言葉を聞いて、絵里ちゃんは感銘を受けたみたいだ。
自身と離れたくないと言われたようなものである。
それで、絵里ちゃんは今夜は納得してもらった。
「もうこんな時間だね。今日はこれくらいにしよう。」
時計を見たら時刻は夜の12時30分だった。
俺は一旦ここで通話を切り上げることにした。
「うん!わかった!明日はどうするの?」
「ううん…俺はもっと絵里ちゃんと話したいな。絵里ちゃんが良ければ明日も通話する?」
「する!」
絵里ちゃんはまだ元気そうな声で答えた。
夜這いの件でわかっていたけど、絵里ちゃんはかなり夜型の人間みたいだ。
多分、普段から絵里ちゃんの夜は長いのだろう。
オナニーとかで。
そこで俺はそんな絵里ちゃんに一つサービスすることにした。
「実はあの写真下は何も着ずに撮ったんだよね。鏡とかに何か映ってたら恥ずかしいな。ごめん、絵里ちゃん。やっぱり写真消しといて。」
「ええ!!」
俺はそのことを言って電話を切った。
最後の反応からして、今日も絵里ちゃんの夜は長くなりそうだ。
本当に絵里ちゃんは揶揄い甲斐があって面白い。
因みに絵里ちゃんの宮崎との会話は本当に雑談だった。
絵里っちゃんと電話編。