リスタート:過去へ戻って孤高な女達を手駒にして現在の危機を打破する 作:霧江
ネットがない時さえも人の口だけで、どんどん広まる。
本当に化け物じみてますよね?
目的地に移動しながら俺はパツ菌について聞いた。
男の子が言うにはパツ菌に感染すると金髪になって、ボッチになるとのこと。
最終的には家族と姿形が違うように変貌して、家族にさえ見捨てられるようになるという怪談じみた話だった。
本当に、本当に酷い話である。
まるで絵里ちゃんの全てを嘲笑うかのような内容に俺の中の炎はさらに猛烈に燃え盛った。
「ここだ。」
男の子の案内で俺は公園から少し離れた空き地に着いた。
そこには六人の男の子たちが一緒に遊んでいた。
「それで?たかしは誰だ?」
「あっちの赤服の。」
彼が指さしたところには赤服を着た子がいた。
何というか俺のイメージとはかなり違う。
たかしはかなりヒョロヒョロな感じだった。
「本当か?」
「本当だって、あいつに聞いてみれば?」
ぶっきらぼうに答える男の子。
どうやら、嘘はついてないみたいだ。
俺はたかしに近づいた。
「お前がたかしだな?」
「えっ、そうだけど…」
急に声をかけられてたかしは少しおどおどした感じで答える。
たかしは俺の背格好を確認して、少し怯えたような顔をした。
まさか、背が伸びたことがこんなところで役に立つとは…
世の中、何が役に立つか分からないな。
「てめえがこいつにパツ菌のことを吹き込んだらしいな。」
俺は心の中が穏やかではないこともあり、少し乱暴な口調でたかしを問い詰めた。
「ぱ、パツ菌…?そういえばそうだったけ…」
俺が怒っていることを察知しておどおどと答えるたかし。
たかしの態度を見たところ、こいつは主導者ではないみたいだ。
だから、俺はたかしにパツ菌のことを吹き込んだ奴を聞き出すために、顔を顰めて詰め寄った。
「で?お前は誰にそのことを聞いたんだ?」
「里中くん!里中くんだ!」
たかしは俺に怯えて、あっさりと情報を吐き出した。
里中?また新たな人物の名前が出てきた。
「そいつはどこにいる?」
俺の問いにたかしは指で横の方を指した。
そして、その指の先には黒服を着た男の子がいた。
俺はそれでやっとたかしに詰め寄ることをやめた。
たかしは安堵のため息を吐いた。
「おい、お前!」
俺は次に里中に近づいた。
「ああん?何だよ!」
里中はたかしとは違って息のいいガキって感じだった。
だからと言って、このまま引き下がるわけもない。
俺は変わらない強めの態度で里中に詰め寄った。
「たかしとやらによれば、てめぇが絵里ちゃんのことをパツ菌って吹き込んだらしいな。」
「はあ?それがどうした!それにパツ菌と最初に言ったのは俺じゃねえよ!」
またか…
「じゃあ、お前は誰に聞いたんだよ!」
「何で俺が言わねえといけねんだ!そもそもお前誰だよ!」
里中はそう言って、俺を押し除けようとした。
そこまで早くもなかったので、俺はそんな里中の手首を無意識的に掴んだ。
「離せよ!」
さらに激昂する里中。
俺がどうしたものかと悩んでいたところ、急に横槍が入った。
「おめえ、落ち着け。そこまでにしておけよ。」
そう言って、男の子は俺たちを仲裁してきた。
しかし、俺はこのままで引き下がるつもりはなかった。
「里中、お前も落ち着け。」
「でも、あいつ、たかしのこと怖がらせた!」
何か態度が悪いと思ったら、そういうことか。
まさか、友達のために怒っていたとは…
そんな奴がパツ菌とか言っているから、本当に子供の価値観は分からない。
俺は大人しく男の子の言葉に従って、里中の手首を離した。
「そうか、たかしを怖がらせたのは俺が悪かった。」
俺は素直に里中に謝った。
俺としても悪いところは確かにあったと思う。
里中はそんな俺の態度に少し戸惑っていた。
「でも、お前がたかしを心配しているように、俺も絵里ちゃんのことを心配していた。だから、俺は怒ったんだ。」
俺は自分が怒っている理由を里中に説明した。
それを聞いた里中は少しばつの悪そうな顔をした。
「ほら、こいつもこう言っているからよ。里中、減るもんじゃないだろう?言ってやったら?」
再び、男の子が仲裁に入る。
それでやっと里中は口を開いた。
「まあ、そうだな…。俺はあそこにいる尾鼻に聞いた。でも、今回は普通に話しろよ。」
そう言って、里中は近くにいる黄色の服を着た子を指さした。
また、友達のことを心配して俺に通告する里中。
里中は普通にいい奴みたいだ。
「わかった。」
俺は頷いて、尾鼻という子に近づいた。
尾鼻くんも話を聞いていたから、話が早かった。
「僕は三田村くんに聞きました。」
「三田村?」
「はい、こいつです。」
そう言って尾鼻は隣に立っている黒服の子を指さした。
「俺ぇ!?あ!そういえばそうだったかも。でも、俺も相澤に聞いただけで…」
「え?そうだね。でも、俺はたいきに聞いたよ。」
次々とお互いを指目したかと思えば、最終的にたいきという子に注目が集まった。
しかし、そのたいきも違うみたいだった。
「おれ、違うもん!おれは愛香ちゃんに聞いたから!」
「愛香?」
また初めて聞く名前が出てきた。
状況がどんどん複雑化していく。
多分、この調子だと今日で噂の元を特定することは難しそうだ。
「その愛香ちゃんという子はどこにいるんだ?」
「愛香ちゃん?知らない。」
たいきは即答した。
たいきの言葉によるとクラスが分かれてからは疎遠になって分からないとのこと。
これで手がかりはなしかと思ったその時だった。
「俺、知ってるかも。愛香ちゃんってC組の愛香ちゃんだろう?」
俺をここに案内してきた男の子がそう言い出した。
「うん。多分、その愛香ちゃんだ。」
たいきは頷いた。
「本当か?」
俺は男の子に聞いた。
こいつがどこのクラスかは分からないけど、C組とか言った時点で多分違うクラスだと直感したからだ。
だが、男の子は依然と自身の意見を変えなかった。
「おう、あの子なら俺の幼馴染とよく連んでいるからな。今頃だと学校の近くの公園にいるはずだ。」
まさかの知人の知人だったとは、よくもこんな偶然がある物だな。
しかし、俺は先ほどこいつに無礼を働いている。
そんな状況だから、こいつが俺を案内してくれるかなんて未知数だ。
だけど、この機会を見逃す訳にはいかない。
「先程はごめん。こんなこと言うのは図々しいとは思うけど。俺を愛香ちゃんに会わせてください。」
俺はダメ元で男の子に謝りながらお願いした。
もちろん、謝罪は本気の謝罪だった。
自分でも図々しいすぎるお願いとわかっていたから、どうせ断られるんだろうなと思ったその時だった。
「まあ、いいよ。案内してあげるわ。」
驚くほどあっさりと男の子は承諾してくれた。
俺が驚いた。
「本当にいいの?」
「何が?愛香ちゃんのとこに行きたいんじゃなかった?何なら俺一人で行ってもいいけど?」
「いや、俺もいく。」
そうやって俺は彼に着いていくと伝えた。
しかし、空き地を発つ前に俺は六人の男の子にも謝った。
「急に迫ってきて、一方的に怒ってごめん。」
「いや、いいよ。十分理解できるし、俺だって友達にそんなことをされたら怒ってた。それにこっちも悪かったからな。こちらもごめん。」
里中が代表して俺の謝罪を受け入れてくれた。
やはり、こいつは悪い奴じゃなかったんだな。
本当に悪いことをしたと思っている。
でも、これだけは言っておかないと。
「いや、それは絵里ちゃんに直接言ってくれ。俺はお前に謝られるようなことはされてないからな。」
「そうだな。わかった。そうするよ。」
里中はそういった。
多分、里中は約束を守るんだろうな。
そう言った安心感が俺にはあった。
「もう、行くから。」
律儀にに俺たちが話終わることを待ってくれていた男の子が言った。
「わかった。今行く。」
俺は彼の後ろに続いた。
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それからも俺と名も知らない男の子は愛香ちゃんのところに向かった。
幸い愛香ちゃんに会うことは出来たけど、結果は香ばしくなかった。
それどころか更なる混迷を呼び込んできた。
「あたしは三好さんに聞いたから…よくわかんない。」
「いや、わたしも妃ちゃんから聞いたけど…ねえ?妃ちゃん。」
「え、そうだっけ?それって結構前だよね?確かその時、私はミツバちゃんに聞いて、三好ちゃんに言ったから。え?ミツバちゃん?多分、今ならピアノのレッスンだと思うけど…」
と言う感じでまた他のところにたらい回しされた。
その結果、俺たちは町のあちこちを行き来することになった。
本当に町の全ての子供に声を掛けることになりそうだと思えるくらい、噂は複雑に絡みに絡まっていた。
「人の噂って七十五日までって言ってなかった?」
「さあ?俺がそのパツ菌について、聞いたのは少なくとも七十五日より前というのは確実だけどな。」
絵里ちゃんの噂はそんなことを完全に無視していた。
もはや、パツ菌は都市伝説と言っても過言ではなかった。
空が夕方の色に染まった頃になって、俺は一旦調査を打ち切ることにした。
「もうこんな時間、今日はもう無理だな。」
「だね。俺も門限の時間が近い。そろそろ行かないとお母さんに怒られちまう。」
俺の言葉に調子よく相槌を打つ男の子。
今日だけで四十人を超える子供に会ったけど、噂の源は見つからなかった。
収穫自体はなかったけど、だけど、これには確かな意味はあった。
今日、俺があった四十人の子には普通にいい子がたくさんあったのだ。
結果、半数以上が絵里ちゃんに謝ることを約束してくれた。
これだけでも今日の活動には意味があった。
「その…今日は手伝ってくれてありがとう。」
俺は男の子に感謝の挨拶をした。
最悪の出会いにも関わらず、彼は何も言わずに俺に協力してくれた。
本当にいくら感謝しても足りないくらいだった。
「おめえ、急にどうした?」
唐突な俺の感謝に男の子は怪訝そうな顔で俺を見てきた。
まあ、出会いが出会いだからね。
彼の中では俺は怒りん坊というイメージが定着しているのかもしれない。
「いや、お前がいなかったら、調査自体が出来なかったからな。」
本当にそうだった。
途中で、たいきの時のように疎遠になったりして、手がかりが途切れたことが多々あった。
しかし、その度にこいつの人脈で何とか調査を続けることができていたのである。
それに大体こいつの知り合いということで、衝突しそうになる度、仲裁までしてもらった。
偶然会っただけの奴だったけど、今日一番の収穫はこいつに会ったことかもしれない。
「別に?こう言ったらおめえは怒るかも知らんけど。楽しかったからいいよ。」
楽しかった?
ただ単に俺に振り回されていただけなのに、楽しいとか。
よく分からない奴だ。
「そんなことで恩人に怒らないよ。で、楽しいって何が?」
「恩人って、おめえ、大袈裟だな。まあ、噂の源を確認したりするとか、俺は考えたこともなかったから、やってみると何か探偵にでもなった気がして、結構楽しかった。」
そういうことか。
確かにそれだと楽しめるかもな。
俺は彼の言葉に一人納得した。
「ところで、おめえ、これ続ける気か?」
「うん、出来るところまではやってみるつもりだよ。絵里ちゃんのためにもね。」
俺の言葉に彼は何かを考える素振りをみせた。
「じゃあ、その時は俺をよべ。おめえとの探偵ごっこ結構楽しかったからよ。」
そう言って彼は何かを頭に書いて、その紙を渡してきた。
紙を広げて見たら携帯番号が書かれていた。
「こっちはごっこでしているわけではないけどな。でも、わかった。必ず呼ぶ。これからよろしく。」
俺は彼に手を差し伸べた。
彼はその手を少しじっと見てから、俺の手を握った。
「少し遅れたけど、自己紹介しとくわ。俺は中村太一だ。これからよろしく。」
「俺は牧田瑛二。またここにくることがあれば、連絡するよ。」
「じゃあ、またな。牧田。」
中村と俺はそのまま別れた。
俺には中村という新しい友人ができた。
瑛二は初めて男の友達をゲットしました。
念のために言っておきます。
ホモ的な展開はありません。
プロット変更をしてもこれだけはかわりません。