リスタート:過去へ戻って孤高な女達を手駒にして現在の危機を打破する 作:霧江
来週って急すぎるよ…
宮崎との全面戦争を宣言したものの、俺は日常は激変…することはなかった。
昼は岬と葵、夜は美鈴と絵里ちゃんと言った感じでかなり忙しい。
だから、何時までも宮崎にだけ時間を使うのはかなり難しかった。
俺が実際に宮崎に使える時間というと週に2日くらい。
それも間接的なもので、実質的には絵里ちゃんと時間を過ごす事になる。
そんな状況で宮崎にばかり構うって言うことは無理だった。
だからといって、宮崎を完全に放置することもまた無理な話であった。
「む、どうするべきなんだ?」
俺はいつも通り美鈴とのラブラブセックス後に、部屋で一人で宮崎をどうにかする方法について考えていた。
「一番良い方法は蓮さんに宮崎のことを危険なやつだと知ってもらうことだけどな。」
実に言うと行動方針自体はもう決まっている。
結論は最初から出ているようなものだった。
蓮さんに宮崎を排除してもらえば、全ては解決する。
「しかし、どうやって?」
俺は自問して見たけど、答えは出なかった。
前に何回か蓮さんに宮崎についてを聞く機会があった。
宮崎はかなりイメージ管理がしっかりしているようで、その度、蓮さんは宮崎が良い子だと答えていたのである。
「それも仕方ないっちゃ仕方ないけど…」
蓮さんにとって宮崎は娘の初めての友達だ。
娘を孤独から救った恩人。
それが蓮さんにとっての宮崎だった。
「その認識をどうにか覆すことが出来ればな…」
宮崎を絵里ちゃんから離れさせることは出来るだろう。
言葉では簡単だけど、実際にはそれが一番難しい。
どうやって、宮崎を娘の恩人から、娘に近づけると危ない危険人物に認識を変えられる?
俺が思案した所で結論は出なかった。
「はあ、だとしたら、今の俺に出来ることは一つか。」
宮崎が嫌がることをするしかない。
宮崎としてはガスライティングのために絵里ちゃんが孤立していることが望ましい。
ガスライティングというものはそう言ったものであった。
人と孤立させて、世間の常識とは違う常識を植え付ける。
つまり、絵里ちゃんの友達を増やすことは宮崎の邪魔になる。
「絵里ちゃんに友達を増やすには…」
しばらく、考えた後に俺は結論を出した。
絵里ちゃんはとても美人で、誰しも近づきたくなるような容姿をしている。
パツ菌の噂さえなくすことが出来れば、絵里ちゃんは人気者になるはずだ。
「そのためには…木曜探偵団の活動を頑張るしかないな。」
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木曜探偵団。
これは俺が適当に決めた名前だった。
しかし、面白半分で中村にこの名称のことを言うと、いたく気に入ったみたいだった。
何やら、英語じゃなくて漢字だけで名称を決めたのが、響きが格好いいとか。
そういう経緯もあって、俺たちの活動の名前は木曜探偵団が正式名称になった。
「そのおかげで本当に木曜日まで待つ事になるなんて…」
中村を会うために駅から出て、何時ぞやの公園に向かいながら俺は溜息を吐いた。
元々の計画として、俺は一刻も早く宮崎に反撃をしたいという気持ちから、中村に今回は火曜日とか水曜日に会わないと提案した。
しかし、中村からはおめえ、俺たちゃ木曜探偵団だからな?と言う理由で断られた。
俺は少し自分の命名を後悔した。
「あいつ、妙なところで拘りがあるんだよな。」
ここ一週間の間で何回か通話したことでわかった。
中村はそう言った拘りからくる格好良さを重視していた。
これはちょっと時期が早い厨二病というやつかもしれないと俺は思った。
「まあ、面白いからいいけど。」
ちょっと、未来でこのことを使って、中村を揶揄ってみることも面白いかもしれない。
俺がそんなくだらないことを考えながら、道を歩いていると公園に到着した。
「よう!パートナー!」
また、俺の呼び名が変わっている。
言い方からして、今回は刑事物の映画を見たのかもしれない。
中村の両親は映画をみることが趣味で、中村の家にはいつでも映画が見れる環境が揃っていた。
中村はよく映画を見て、それに影響されていたのである。
「中村くん、おはよう。何?今回は刑事物の映画でも見た?」
俺は中村に普通に挨拶した。
「おう、今回はアメリカの刑事物だった。お前もどうだ?DVD貸すぜ!」
やはりか、そういう映画だとパートナーとかよく言うからね。
因みに初めて会った時の中村は任侠映画を見ていたとのことだった。
「うん、俺はいいかな。うちにはDVDプレーヤーなんかないし」
「そりゃもったいねえな。今度、ウチこいよ。一緒に映画見ようぜ。」
「それ良いかも。今度遊びに行く。それでどうだった?」
俺が中村にそう聞くと、中村は手帳を取り出してきた。
その手帳の前には探偵手帳と手書きで書かれている。
中村は本当に形から入るタイプだなと俺は改めて思った。
「結果は上々だったよ、パートナー。」
中村はそう言って、手帳をパラパラとめくった。
そして、何枚か紙をめくって中村は内容を読み上げる。
…というか前の数枚は何か適当なことが書かれているだけだな。
現に今捲られて俺に見えているページには牛乳2パック、醤油、胡椒、ジャガイモ、豚肉と書かれている。
これお使いのメモじゃん…
「前回、ミツバちゃんが言ってた佐野さんのことについて、特定出来た。それに、前回は三好さんが言っていたもう一人の子メイちゃんについても特定が済んでいる。」
お粗末な手帳の内容に比べて、中村の調査内容はしっかりした物だった。
前回、俺たちはミツバちゃんがいう佐野という人が分からず、調査を否応なく止めるしかなかった。
しかし、それを中村は一週間という時間だけで特定して見せたのである。
俺は開いた口が閉じられなくなった。
「え、マジで?」
俺はそういうしかなかった。
今回の俺は佐野さんの特定は諦めて、初めて見る子にパツ菌のことを聞いて調査を続けるつもりだった。
それを特定したと言われると驚くしかない。
「おうよ。佐野さんはちょっと違う学校の子でね。少しここから歩かないといけない。メイちゃんはうちの学校の子だから、すぐこの近くだね。どう?メイちゃんから会いに行くか?」
軽い感じで自分が調査した内容を報告する中村。
こいつってゴッコじゃなくて、本当に探偵の才能があるのではないか?
「完璧じゃん。中村、お前最強かよ。」
「HAHAHA、そんなに煽てても飴しか出ねぇよ!ほれ。」
中村は洋画風に笑って、懐から飴を取り出して俺に渡してきた。
それから2時間弱、俺たちはパツ菌について調査を続けた。
しかし、予想通りというか、結果は芳しくなかった。
パツ菌の噂の源というのは特定できなかったのである。
昼の12時になり、俺たちはそこで昼休憩を取るために、コンビニに向かった。
「まさか、佐野さんから、また、元の所に戻ってくるとはな。俺はてっきり向こうの学校での調査になると思ってた。」
「佐野さんはうちの学校からの転校生だからな。となると、パツ菌の噂は、やはりうちの学校が発生源なのか?」
「その可能性が高そうだね。ここまで来たからには周りの子にもパツ菌を知らないか聞いてみた方が良さそうだ。」
そう言いながら、俺たちはコンビニで商品を選んだ。
俺は麦茶とおにぎり、中村は惣菜パンに牛乳。
因みに会計は俺のカード(美鈴が渡してくれたクレジットカード)でした。
「奢ってくれてあんがとう、いただきます!」
「お前は俺を手伝ってくれているからな。これくらいは奢るよ。」
嬉しそうにパンを頬張っている中村。
俺も中村を横目におにぎりを頬張る。
しかし、中村は本当にすごい。
調査能力もそうだけど、人との親和性がすごいとしか言えなかった。
今日、初めてみた人間から共感を得ては情報まで引き出している。
こいつは本当に意外な才能を持っていた。
「俺の顔に何か付いてんのか?」
「いや、お前ってすごいなと思って。」
俺は今回本気でこいつの調査能力に感心した。
こいつとなら本当に絵里ちゃんの噂を流した奴を特定出来そうだ。
俺の言葉が本気だと感じたのか中村はまた照れくさそうに笑って、俺に飴を差し出してきた。
「何だよ。俺を褒めたって飴しか出ねぇぜ?」
中村はそう言って、また胸ポケットから飴を取り出した。
今度は桜味の飴だった。
こいつ、一体何個飴を持っているんだ?
「それはもう良いかな。」
俺は中村の飴を受け取ることを謹んで断った。
そこからも俺たちは更なる調査を進めた。
先ほど言った通り遠くまで来たと言うことで、絵里ちゃんの隣の学校の生徒を中心にしたけど。
結果は良くなかった。
「ふうむ、結果は半々と言った感じだぜ。」
「そうだね。向こうでは道行く子供が全てが知っているというレベルだったけど、ここはそうでもなかったね。知っている人たちも、殆ど佐野さん伝で聞いているし。」
幸いか不幸かは分からないけど、パツ菌について知っている人は中村の言う通り半々といった感じだった。
それも佐野さんが話したものが、広まった感じだからな。
となると、噂の発生源は絵里ちゃんの学校の人間と見なしても良さそうだ。
「そろそろ、帰ろうか?ここでの調査は意味がなさそうだからな。」
俺はここで隣町での調査を切り上げる事にした。
一応、念のための確認でここまできたけど。
俺の本来の目的である絵里ちゃんの友達を増やすことを考えると、隣町の調査はほぼ意味がなかった。
「俺は別にいいぜ。俺もこれ以上の調査は意味がないと思ってた。でも、この調査には確かに意味があった。ここが噂の発生源ではないとわかったからな。」
ちっ、少し格好いいと思っちゃった。
何だか負けたような気持ちになった俺は中村に質問した。
「それも何かの洋画のまね?」
「いや、これは俺の言葉だ。」
それこそ映画に出てきそうな台詞だな。
「しかし、ここでの噂は佐野さんが広めた噂が殆ど。あの人怪談が好きとは言え、こんなにも広めてくれちゃって。本当にとんでもねえ。それに妙に佐野さん。顔が広いから時間だけ食っちまったぜ。」
中村呆れたような表情で佐野さんのことを語った。
中村も俺と同じで、今日佐野さんは初めて会ったはずなのに、いつの間にか趣味も把握していた。
「趣味なんていつ聞き出したんだ?」
俺は気になって、中村に聞いた。
「ああ?聞いてねえよ。お前見てなかったのか?佐野さん、怪談の本持ってただろう?それも3冊も。」
持ってたっけ?
そもそも、本なんて持っている事にも気づいてないけどな。
「知らなかった。」
「何だよ。お前も俺のパートナーなら、これくらいはして貰わないと困るぜ。」
中村はまた呆れたような顔をした。
しかし、今日、こいつには驚かされるばかりだな。
こんなにも有能な奴と偶然会えるなんて、あの日の俺は本当に運が良かった。
「中村」
「何だ?」
「今後ともよろしく頼むよ。」
「急にどうした?変なやつめ。」
本当に末長くよろしく。