※この作品はR-18です。

リスタート:過去へ戻って孤高な女達を手駒にして現在の危機を打破する   作:霧江

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愛情欠乏

「!?」

 

俺は美鈴の唐突なキスに驚いた。

一瞬、そのまま美鈴のキスを受け入れそうになったけど、俺は何とか理性を取り戻した。

こんなに人集りがある場所で俺とキスをするとなると、誰かに見られたら美鈴の人生は本当に終わりだ。

美鈴もそんなことは分かっているはずなのに、それでも美鈴はキスを止める気配がなかった。

 

「ちゅりゅる、ちゅるっちゅりゅ」

 

それどころか、俺と目を合わせた美鈴のキスはどんどん激しさを増して、仕舞いには舌まで入れてきている。

俺は周りの目を気にして、必死に美鈴から離れようとした。

だけど、それは叶わなかかった。

 

「くっ…!」

 

美鈴が俺の首に腕を回して、俺が離れられないようにガッチリホールドしてきたのである。

俺はこれ以上の抵抗は無駄だと悟った。

俺は諦めて目を閉じて美鈴の舌を受け入れた。

花火の振動が収まるまでに俺たちはキスを続けた。

幸いにも花火を前にして、周りの人間を観察する奇特な人はいなかったみたいだ。

俺たちのキスは周りの人たちにバレていなかった。

 

「美鈴、今回は本当にやばかったよ。分かってる?」

 

俺は少し美鈴のことを少し責めるような目で見た。

いくら何でも今回の行動は軽率だ。

 

「ごめんなさい。でも、どうしても我慢できなかったわ。」

 

申し訳なさそうに俺に謝ってくる美鈴。

そう言っている美鈴の目からは意外にも淫欲は全く感じられなかった。

俺はテッキリこれが何時もの破滅願望からくる鼓動だと思っていたのに、そうではなかったみたいだ。

美鈴の目にはしっかりと理性の光が見えていたのである。

 

「どうしてこんなことをしたの?」

 

「それは…瑛二と思い出を作りたかったから。」

 

美鈴の態度はまるで大人に怒られた子供のようだった。

俺は不覚にもそんな美鈴が少し可愛いと思ってしまった。

しかし、思い出か…

そんなことを言われたら怒れそうにない。

確かに先ほどのキスはすごくロマンティクだったし…

俺としても一生忘れられない思い出にはなったからね。

でも、これだけは言っておかないと。

 

「むう、わかった。でも、今度からはちゃんと先に言って欲しいな。それだと俺も周りにバレないように、美鈴と思い出作りが出来るように協力するからね。」

 

「分かったわ。」

 

美鈴はそんな俺の注意に素直にこくりと頭を縦に振った。

 

「でも、誰にもバレなくて本当に良かった。俺、美鈴と離れ離れになんてなりたくない…」

 

俺は胸を撫で下ろしながら言った。

今回は本当に運が良かったとしか言えない。

 

「!!」

 

俺の言葉を聞いた美鈴は顔を赤く染めた。

そして、そのまま俺の腕を引っ張ってどこかへ向かいはじめる。

人波を掻き分けて、ズカズカとした歩きでどこかへと向かう美鈴。

美鈴の足取りは何の躊躇いもなさそうだったけど、別に目的地があるというわけではなさそうだった。

どちらかというと、人がいない場所に向かっているようだった。

俺はそんな美鈴の後ろを黙々とついて行く。

少し歩いた先に俺たちは何もない場所にたどり着いた。

人は全くいないけど、穴場とは到底言えないような場所。

四方が塞がっていて、花火を見るにはとても適していない場所だった。

そこでやっと足を止めた美鈴は周りを見渡して、誰もいないことを確認した。

 

「私、瑛二に話たいことがあるわ!」

 

「う、うん。」

 

改まった感じで俺の肩を掴んで、話を始める美鈴。

俺はそんな美鈴の態度に少しだけ戸惑った。

 

「瑛二、あなたに会ったここ数ヶ月、私は本当に幸せだったわ。」

 

だった?何で過去形だろう?

俺がそう訝しんでいる間にも美鈴の言葉は続いた。

 

「最初は私は瑛二のことを愛していると思ってた。」

 

また、過去形。

俺は美鈴が何を言い出すか不安になった。

でも、先の流れからして急に別れ話を告げられることはないだろうと腹を括った俺はドキドキしながら、美鈴の言葉の続きを待った。

 

「でも、それって本当の恋心じゃないんだなって。最近、悟ったの。」

 

「!?」

 

美鈴の口から出た言葉ははかなり衝撃的なものだった。

あの流れから俺に対する心は、本当の恋心ではないと宣言されるとは…

流石の俺でもこれには傷つくしかなかった。

俺は本気で美鈴のことが好きになっていたから、尚更だった。

そんな俺の心情は顔にも現れていたみたいだ。

 

「瑛二、違うの!そういうことじゃないから!誤解しないで。ほら、ヨシヨシ、大丈夫だから。」

 

美鈴は慌てて、俺を慰めるため抱き抱えて優しく頭を撫でてくれた。

その手つきには俺に対する変わらない愛情が籠っている。

俺はそれを確認してやっと自身の心を落ち着かせることに成功した。

 

「今までの私はとんでもなく無知だったわ。家族に流されて、自分の人生を家族に言われるがまま送ってきたの。それこそ、大学とかもそうだったし、結婚相手さえも家族に決められた。だから、私、今まで色んなことを知らずに生きてきたの。身を焦がす情欲も、燃え盛るような嫉妬も、そして、本当の恋心とかも…何もかも知らなかったわ。」

 

美鈴は今までの自身の人生を振り返りながらそういった。

 

「でも!瑛二は私が知らなかったことを全部教えてくれたんだよ!」

 

「美鈴…」

 

美鈴は俺に向かって熱弁した。

俺は美鈴の言葉に込められた熱量に気圧された。

何という熱い気持ちなんだ…

 

「思えば、私、瑛二にちゃんと告白なんてしてなかったわね。だから、ここで改めてちゃんと言います。」

 

確かに美鈴との関係の始まり、はベッドから始まったなし崩し的なものだった。

美鈴はそういう現状を良くないと思っているみたいだ。

美鈴は一瞬緊張したあように深呼吸をした。

そして、すぐに何かを決心したような顔になった。

 

「私、上原美鈴はは、あなたのことを愛しています!その、生まれて初めて、本当に人のことを好きになりました!」

 

美鈴の言葉と共に遠くから花火が打ち上げられた。

美鈴の純粋な恋心が現実の振動と化して、俺の身を揺さぶってくるような感覚がした。

 

「うっ…」

 

あまりにも実直で純粋な告白に俺は言葉に詰まった。

普段の肉欲に塗れた感じの好きではなくて、本気が籠った好きの言葉に俺は胸がドキドキし始めた。

これまで何回か告白を受けて来たけど、やはり、これは慣れそうにない。

嬉しい、本当に嬉しい。

 

「瑛二、私はあなたが好きなの。あなたと一緒に生きて、一緒に時間を過ごしたいと思ったの。」

 

俺が何も言えずにいると、美鈴は俺の目を真っ直ぐ見て訴えてきた。

くぅう、顔が本当に熱い。

それに嬉し過ぎて、何だか変な気持ちになる。

この何とも言えない嬉しさをどう表現したら…!

 

「だから、だから!私と付き合ってください。」

 

美鈴はそう言って、俺に頭を下げてきた。

何という甘酸っぱい感じの告白なんだ。

これは胸焼けしそうなくらいにドキドキする。

 

「美鈴頭上げていいよ。」

 

俺の言葉に美鈴は下げていた頭を上げた。

俺の答えはとうの昔に決まっている。

 

「もちろんだよ。俺も、俺も大好きだよ。美鈴!本当に幸せにするから!」

 

本当に幸せにしてみせるから。

俺はそう自分に言い聞かせるように言った。

絶対に美鈴を幸せにしてみせる。

俺は心の中でそう決意した。

 

「うん!」

 

美鈴も俺の言葉に満面の笑みになった。

まるで、初恋が叶った乙女のように笑う美鈴。

その笑顔はいつもより少しだけ輝いて見えた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

花火大会が終わってからも俺たちはその場を離れなかった。

二人で何をすることもなく、ただ単にお互いに黙って身を寄せ合って座っていた。

周りはすっかり暗くなっていた。

 

「花火終わったね。」

 

「うん、そうだね。」

 

俺の言葉に美鈴は相槌をして来た。

美鈴は花火が終わったことなんて全く気にならないという様子だった。

 

「もう、俺たちも帰る?」

 

「ううん、もう少しだけこうしていて欲しいわ。」

 

そう言って美鈴は俺を自身に抱き寄せた。

俺は美鈴のなすがままに美鈴に体重を預けた。

ドクンドクンと美鈴の心臓の音が俺の耳を擽る。

美鈴もいま物凄くドキドキしているみたいだ。

俺たちはしばらくそうやって沈黙を保った。

そんな中で先に沈黙を破ったのは美鈴だった。

 

「今になって考えてみると、私って本当に愛情欠乏だったわ。」

 

美鈴は自嘲するように言った。

夜な夜な一人でオナニーを続けていた美鈴。

美鈴にとって快楽というものは自身の虚しさを紛らす都合の良いものだった。

だから、美鈴は快楽に縋った。

快楽で愛情を求めていた自身を騙し続けていた。

 

「あの時の私は、人との付き合う方法も知らなかったし、だからと言って、がむしゃらに行動を引き起こす勇気もなかったわ。今まで通りに人に良い顔をしてばかりで、本気で誰かと向き合おうなんてしなかったもん。」

 

美鈴の賢母良妻という評判はその結果生まれた虚像だったとのこと。

俺としてはそんなことはないと思ったけど、美鈴はそうかんじていたらしい。

本当の美鈴はもっと臆病で、不器用だった。

 

「多分、私はあのまま一生同じことをしていたと思うわ。誰とも心を交わすこともなく、一人で生き続けていた。」

 

そんなことはないと思うけどな。

岬もいたし。

でも、俺が役に立ったみたいで良かった。

 

「その日、私の人生を壊してくれて、私の壁を壊してくれてありがとう。」

 

「どういたしまして?」

 

人生を壊してくれてありがとうなんて言葉にどういたしましてと返すのは、中々変な話だった。

だが、美鈴は本当に俺がした行為全てに感謝しているみたいだった。

脅迫しては、土下座までさせたというのに、本当にとんでもない奥様である。

本当に美鈴はバカで愛らしい女だ。

 

「そろそろ帰ろうかな。」

 

「え、もう少しだけこうしていましょう?」

 

美鈴が駄々を捏ねてくる。

でも、流石にこれ以上は、なあ?

祭りの熱気が冷めて、夜が完全に周りを飲み込んでいる。

 

「それ、もう五回目だから。」

 

「ふふ、でも、瑛二は私のお願いなら聞いてくれるでしょう?」

 

まあ、そうだけど。

体調の問題もあるから、今日はこれくらいにしてもらう。

美鈴は今下着も履いてないし、汗も掻いている。

このままだと風邪にひくかもしれない。

 

「ほら、風邪ひくよ?イチャイチャは家に帰ってから!」

 

「分かったわ。残念だけど、仕方ないわね。」

 

そう思った俺は立ち上がって美鈴をたたせた。

美鈴もこれ以上は抵抗しなかった。

そして、ふとお互いに目が合う。

 

「その、これからも末長くよろしくお願いします。」

 

「こちらこそよろしくお願いします。」

 

俺たちはお互いを見つめ合って、頭を下げ合った。

こうして、俺は美鈴の本当の彼氏になれた。




仕事が忙しかったことと、美鈴のセリフ回しに悩まされて投稿が遅れました。
なんかもっとこれが良いんじゃないか、これの方がいいかもということで、何回も書いて修正を繰り返し。
その結果、青春の甘酸っぱい感じのセリフで頭の中が一杯になって浄化されるような感覚を味わいました。
その結果元々はエロシーンありのシーンだったのが、こんな感じになりました。
何だか申し訳ないです。
この話で美鈴の愛情欠乏が解消されました。
妖婦美鈴は完全消滅。
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