※この作品はR-18です。

リスタート:過去へ戻って孤高な女達を手駒にして現在の危機を打破する   作:霧江

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今週の木曜探偵団の活動は結局そのまま終わってしまった。

あの後、中村がダウンしたからである。

夏場なのに厚着をして数時間も歩いたのだ。

しっかりと休憩を取って水分補給をしたとしても、倒れることは当たり前なことだった。

俺はそのまま中村を家に送るしかなかった。

中村も自分の馬鹿な行動には懲りたみたいで、最後にはこう言っていた。

 

「夏にコートはマジで無理だった。でも俺は後悔なんてしてねぇ…あのコートにはそれだけの価値はあったぜ…」

 

いや、懲りて無いのかもしれない。

その後は中村の母親を交えて、中村と1時間に渡る口論をした。

中村の母親もコートは止めていたらしい。

結果、帽子はOKという条件で、何とか次回の活動にはコート禁止と言う条件を取り付けることに成功した。

ということがあったのが、昨日のことだった。

そして、その翌日である金曜日の朝に俺は携帯の音で目を覚ました。

 

「うう…誰だ?」

 

誰とは言ったけど、俺の連絡先を知っている人間はかなり限られている。

悲しいことに(?)美鈴、両親、絵里ちゃんに蓮さんの4人が全部だった。

美鈴はすぐ近くにいるから俺に連絡する必要がないから除外で、両親も最近は特に忙しいのか連絡が殆どない。

となると、後は絵里ちゃんか蓮さんだけど…

その二人も昨日の夜、ちょうど旅行から帰ってきたばかりだからね、

俺に連絡する理由は特にないんだよな…

俺はベッドから出てきて机の上に充電しておいた携帯を確認した。

 

『瑛二くん、起きてる?』

 

俺に連絡してきたのは絵里ちゃんだった。

普段のやり取りは蓮さんの目が届かない夜にしているから、こんなに早くから連絡がくることは珍しいことだった。

何かあったのかと一瞬思ったけど、絵里ちゃんの温度感からして、そこまで急ぎの用事では無さそうかなと思った。

 

『うん、起きてるよ。』

 

俺は簡単に絵里ちゃんに返信を返した。

すると、絵里ちゃんからもすぐにまた返信があった。

 

『瑛二くん、おはよう!別に大したことじゃないけど…』

 

絵里ちゃんは朝の挨拶をしてきた。

ふむ、大したことではない、か…

それにしては珍しく早朝からの連絡だけど…

 

『へえ、何かあったの?』

 

俺は絵里ちゃんに続きを促すために質問した。

 

『今、剛太が家の前に来ていて、ちょっと私に話があるって言ってきてるの。』

 

「はあ!?」

 

絵里ちゃんの用事は滅茶苦茶大したことのあることだった。

旅行帰りの翌日だというのに、宮崎は西之宮を訪れてたのである。

俺は全く思いもしなかった事態に驚いた。

だって、旅行帰りで疲れているはずの人間の家にそのまま突撃するとは思いもしなかったのである。

これは完全に想定外の事態だった。

俺は背筋が凍るような感触がして、眠気が一気に吹っ飛ぶ感覚を覚える。

だけど、心のどこかでは安堵感を感じていた。

 

「俺、ナイス。」

 

俺は絵里ちゃんと恋人関係になってから、絵里ちゃんに一つお願い事をしていた。

それがこれで、宮崎が絵里ちゃんに接触してきたら俺に教えて欲しいと頼み込んだ。

自分でもものすごく変なお願いをしたという自覚はあったため、最初は断られるかと思ったけど。

絵里ちゃんは俺の奇行を自分を独り占めしたいがための、可愛らしい嫉妬とでも思ったのか快諾してくれた。

その仕掛けが今になって発動したというわけだ。

 

『そうなんだ。因みに宮崎くんは何て言ってた?』

 

俺はなるべく平常を装って絵里ちゃんに質問した。

こんな早朝から、それもすぐ旅先から帰ってきたすぐ翌日に、絵里ちゃんのことを尋ねてきているのだ。

俺を出し抜こうという意図が丸見えだった。

どんなつもりかはわからないけど、きっとまともな用件ではないだろう。

 

『剛太、前回のことで謝りたいって言ってた。それでちょっと外で話がしたいって。』

 

外で話だと?

あんなことがあった後にか?

俺としてはその話というのが穏やかなものでは無さそうだという予感がした。

 

『そうなんだ。』

 

俺は何ともないような感じに見えるように返事した。

だが、俺の心の中だけは全く穏やかではなかった。

俺が今まで見てきた宮崎は未来でも過去でも変わらず、平気で人を傷つけられる人間だった。

そして、そんな奴がこの前言っていた命の恩という言葉。

一体何を考えているかまではわからないけど、兎に角碌でもないことなのは確かだった。

だから、俺は何としても絵里ちゃんが宮崎と二人きりになる状況を作りたくないと思った。

 

『今って話の途中なの?まさか行くと言ってないよね?』

 

まずは状況確認をしよう。

最悪の場合は既に絵里ちゃんが既に宮崎の提案を受け入れているかもしれない。

その時はすぐにでも絵里ちゃんのところに向かう必要がある。

俺が外出の準備をしようかと迷っているところに絵里ちゃんの返事があった。

 

『うん。まだ返事はしてない。返事とかする前に一旦瑛二くんに連絡した感じ。』

 

絵里ちゃんナイス!

俺は心の中で絵里ちゃんを褒め立てた。

本当に幸いなことにも絵里ちゃんはまだ宮崎の誘いに乗ってないみたいだ。

 

「よかった…」

 

俺は安堵のため息を漏らした。

どうやら、最悪の事態は免れたみたいだ。

でも、このままいても状況は変わらない。

今は宮崎のことを待たしているみたいだけど、いつまでもそのまま待たせていられるわけではない。

 

「何とかしないとな…ううむ…」

 

俺はすぐに結論を出した。

何もそこまで難しい問題でもなかった。

絵里ちゃんと宮崎が二人だけになることが問題なら、二人だけにしなければいい。

それだけのことだ。

 

『絵里ちゃん、急な話でごめん。一つお願いがあるんだ。』

 

そう思った俺は絵里ちゃんにメッセージを送った。

 

『お願い?』

 

『うん、宮崎くんの誘いを断って欲しい。』

 

『え、何で?』

 

絵里ちゃんは俺の言葉に戸惑っているみたいだった。

少しいざこざはあったのは事実だけど、宮崎は絵里ちゃんの目線からはまだ恩人であり、友人のままだった。

絵里ちゃんはそんな宮崎の誘いを何の理由もなく断るのは気が引けるみたいだった。

だけど、今は非常事態だ。

俺は少し強引な手段を取ることにした。

 

『彼氏のお願いということじゃダメ?』

 

彼氏特権ということを使ってみることにした。

果たして、どうなるか…

 

『え!?でも…』

 

くっ、これでもダメか。

絵里ちゃんはいまだに悩むような素振りを見せてきている。

やはり何も理由がないからか、かなり渋っている印象だ。

理由、理由か…

特に絵里ちゃんに言えるような、そんなちょどいい理由が思いつかなかった。

このままだと、絵里ちゃんが宮崎について言ってしまう…どうすれば…

あ、ああああ!

 

「別に理由にこだわる必要もないか!」

 

人間が行動を引き起こすのには理由もその動機になったりもする。

でも、理由なんかよりももっと確実な動機が存在している。

それは補償だった。

 

『絵里ちゃんが宮崎くんの誘いを断ったら、絵里ちゃんがしたいことを、一つだけ何でもしてあげる。』

 

だから、俺は絵里ちゃんに補償を与えることにした。

咄嗟の思いつきにしては中々いい案だったと自分でも思った。

だけど、一つだけ想定外なことがあった。

 

「やべえ、何でもって書いちゃった。」

 

何でもという言葉に込められた可能性は無限だ。

何でもは本当に何でもということだ。

並の人間だったらこれでもよかっただろう。

しかし、今回の相手はムッツリドスケベ変態の絵里ちゃんが相手だ。

その何でもは本当にとんでもないことに変貌する可能性だってある。

初体験で俺を逆レイプして、ハメ撮りまでして見せたあの絵里ちゃんのことだ。

俺を野外露出させて写真撮影とかも全然あり得る。

俺は内心で冷や汗をかいた。

 

「あ、取り消し機能があった!早くしないと…!」

 

未来では当然のようにあった機能を俺は思い浮かべることに成功した。

この間、わずかで5秒。

俺は急いでメッセージの取り消しを試みた。

しかし、メッセンジャーのアプリでいくら取り消しを探しても出てこなかった。

何と過去には取り消し機能が存在していなかったのである!

 

「これは別の意味でやばいかもしれない。」

 

俺はごめん、さっきの嘘とメッセージを急いで送ろうとした。

だが、残念なことに時すでに遅しだった。

 

『本当に?』

 

絵里ちゃんからの即答が帰ってきたのである。

それも食い気味でだった。

 

『うん。』

 

自暴自棄になって俺はそう返信した。

今更後戻りは出来ない。

ここでさっきの嘘なんて言ったら、絵里ちゃんが宮崎と出かけるかもしれない.

ここからの主導権は絵里ちゃんにある。

 

『本当にどんなことでもしていいの?』

 

え、一体何をする気なの?

少しどころか、大分怖くなってきたんだけど…

まさか本当に俺の野外露出写真を撮りたいとかはないよな?

 

『うん。俺に出来ることなら、何でもいいよ。』

 

俺は恐れ恐れしながら返答した。

 

『わかった。剛太に言ってくる!』

 

こうして、宮崎の計画を俺はまた一つ潰した。

その後のこと、俺は電話で絵里ちゃんといつ二人で会うかについて話し合いをした。

絵里ちゃんは今週の土曜日を希望したけど、今週は旅行帰りということで流石に行くのが気が引けると伝えた。

絵里ちゃんは少しばかり不服そうだった。

俺とは一週間どころか二週間も会えなことが嫌だとのこと。

中々可愛らしい主張だったけど、俺も蓮さんたちに迷惑をかけることはしたくなかった。

 

「どうしてもダメなの?」

 

「そうだね。絵里ちゃんもそうだけど、多分、旅行から帰ってきたばかりだから、蓮さんたちもかなり疲れていると思う。そんな状態で行くのは俺でも憚れるよ。だから、来週にしよう?」

 

俺は絵里ちゃんのことを何とか宥めようとした。

だけど、絵里ちゃんの意思は変わらなかった。

どうしても今週に俺を見たいみたいだ。

嬉しいちゃ嬉しいけど…

 

「お父さんが大丈夫と言ったら?」

 

「それでもちょっと気が引けるというか…」

 

うん?何だか変な流れになったぞ?

 

「じゃあ、お父さんがお願いするとしたら?」

 

「そこまでになったら、俺も負担は感じないかも。」

 

口ではそう言ったけど、目茶苦茶負担を感じると思う。

それって今から絵里ちゃんっが駄々を捏ねると言うことでしょう?

蓮さん、ごめんなさい。

俺は旅行帰りで疲れているはずの蓮さんに心の奥で謝罪した。

 

「瑛二くん、申し訳ないけど、今週の土曜日に遊びに来てもらえるかい?」

 

案の定、その日のうちに蓮さんから連絡があった。




私の子供時代の経験として、友達に自分より他の子と遊ぶと言われたことがあります。
別に異性の友達でもなかったのに、目茶苦茶ショックでしたね。
何だろうな。あの裏切れた感覚。
そういう経緯もあって、今回の宮崎くんには少し同情をしました。
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