リスタート:過去へ戻って孤高な女達を手駒にして現在の危機を打破する 作:霧江
雲一つない青空、全てを包み込むような強い日差し。
ミンミンと短い命を燃やして煩く鳴るセミの声。
アスファルトでは熱気が上がってきて陽炎ができている。
世界は夏の真っ只中だった。
気温にすると30℃を超え、普段の俺だったら絶対外出しないような気温だった。
しかし、今日はそれができなかった。
「うう、背中が熱い…焼けるようだ…」
俺は昨日の件で絵里ちゃんのお家に向かっている途中だった。
昨日は旅行帰りで疲れている人の家に訪問することは非常識だと説いていたのに、俺がその非常識な人になるとはな…
世の中は本当にわからないものである。
「蓮さんがちょっと嬉しそうだったのがせめてもの救いだったな。」
きっと旅行帰りで疲れているはずなのに、蓮さんの声は疲れを感じさせない明るい声だった。
どうやら蓮さんは娘に駄々を捏ねられたことが嬉しいみたいだ。
最近は本当に駄々を捏ねることが増えてきて、昔の絵里ちゃんの姿を取り戻してきたようで最高だとか。
その電話で駄々を捏ねる絵里ちゃんの可愛さを小一時間くらい自慢されたのである。
本当に蓮さんは娘煩悩な人だと改めて思った。
それから、俺は絵里ちゃんの家に到着した。
今ではすっかり見慣れた西之宮家だったけど、普段とは違う点が一点あった。
玄関の前に蓮さんと舞さんが出てきていたのである。
これまでに何回も西之宮家を訪れてきたけど、これは一度も見たことのない光景だった。
俺は状況をよく飲み込めなかったけど、一旦二人に挨拶をすることにした。
「蓮さん、舞さん、おはようございます。」
最初は二人とも俺に気づかずに何かを準備していたけど。
俺が何回か声をかけることで二人はやっと俺のことに気づいてくれた。
「瑛二くん!おはよう。気づいてやれなくてごめんね。今、ちょっと立て込んでいるの。」
「本当にすまない。どうしても手を離せない急用ができてしまった。」
お二人は本当に申し訳なさそうに俺に謝ってきた。
何でも先ほど蓮さんが普段からお世話になっている上司の人が事故に遭ったと連絡が来たとのこと。
その人は事情があって、今身寄りの人がないみたいで、蓮さんたちが手助けすると申し出たみたいだ。
ということは本当に非常事態みたいだけど…
「その、今日は日を改めた方がいいですか?」
流石にそんな状況だと今日は引き返した方がいいと思った俺は蓮さんにそう聞いた。
だが、意外なことに蓮さんは頭を横に振ってそれを否定した。
「いや、その必要はない。むしろ、瑛二くんには今日、絵里と一緒にいて欲しいんだ。」
つまり、それってどういうこと?
普段の蓮さんなら絶対に言わないだろうことを言われた俺は頭を傾げた。
だから、急用が出来たから出かけるという話ではなかったのか?
俺が状況を飲み込めずにいると蓮さんが詳細を説明してくれた。
「今日は色々と忙しくなりそうだから、絵里に気を使うことが出来ない。だから、絵里には家にいてもらうことにしたんだ。」
「え、そうなんですか?」
俺は少しばかり驚いた。
近くの山でのあの事件があってからのこと。
二人のうち一人は絶対絵里ちゃんを見守って、対処できるようにしていたのである。
そんな二人が今回は完全に絵里ちゃんから離れるという
驚かない方が可笑しいまである。
「そう。本当なら私も絵里も連れて行きたい。でも、今日は舞とも別行動をする予定があってね。そんな状況で絵里を連れていくことは出来ない。」
確かにそういう状況だと子供を連れていくことは大変そうだ。
絵里ちゃんは普段からしっかりとした子だし、一人で家の留守番をすることもできるだろう。
「それでも完全に一人は心配だからね。だから、瑛二くんには絵里と一緒に留守番をお願いしたい。その、君になら絵里を任せられる。」
蓮さんはそういって照れ臭そうに自身の頬を指で掻いた。
その信頼は中々嬉しいものである。
俺としても断る理由は全くなかった。
「そんなことなら、全然良いですよ!」
俺は蓮さんの頼み事を受け入れた。
俺としてもこれは都合の良い展開だったことは違いないからな。
それに西之宮家で絵里ちゃんと二人きりになれるチャンスなんて滅多にない。
因みに美鈴への連絡は舞さんが代わりにしてくれるとのことだった。
俺は蓮さんと舞さんを手を振って見送った。
ーーーーーーーーーーーーーーー
俺は二人に扉を開けてもらい、西之宮家に入城した。
室内は冷たいエアコンの風で涼しくなっている。
俺は夏の暑さでやられた体が回復することを感じた。
「生き返る…」
しばらく玄関先で涼をとって汗を乾かす。
俺としては恋人の絵里ちゃんに汗だくの姿を見せたくなかった。
岬なら喜ぶかもしれないが、絵里ちゃんについてはそれが未知数だからな。
「絵里ちゃん?」
大体汗が乾いだと思ったところで俺は絵里ちゃんのことを呼んでみた。
けれど、何か反応が返ってくることはなかった。
どうやら絵里ちゃんはいつものように部屋に居るらしい。
最近になってわかったことだけど、絵里ちゃんはかなりのインドア派だった。
外出するよりかは自身の部屋でゆっくりしているほうが大好きらしい。
「失礼します。」
俺は誰にともなく、何となく失礼しますを言って西之宮家に上がり込んだ。
そして、その足ですぐに絵里ちゃんの部屋に向かった。
階段を上がって絵里ちゃんの部屋の前で足を立ち止める。
その時だった。
「瑛二くん!」
急に絵里ちゃんの部屋の扉が開いたかと思えば、絵里ちゃんが俺にボディーアタックを仕掛けてきた。
予想だにしなかっった展開に俺は一瞬驚いたけど、絵里ちゃんが怪我をしないようにしっかりと受け止める。
「うわ、びっくりした。絵里ちゃん、久しぶりだね。」
「瑛二くん、久しぶり!」
絵里ちゃんは俺の胸から顔を離さないでそのまま明るく挨拶を返してきた。
まるでマーキングでもするように頭をグリグリと俺の胸に擦り付けてくる絵里ちゃん。
俺はそんな絵里ちゃんの頭を撫で撫でした。
「えへへ、久しぶりに嗅ぐ瑛二くんの匂い落ち着く。」
絵里ちゃんはご満悦な顔で俺の匂いを堪能している。
先ほどまで汗をかいていた俺としては、嫌な匂いがしないか心配になったけど、絵里ちゃんの反応からするとそんなことはなさそうだ。
しばらくしてから、絵里ちゃんは満足した顔で俺のことを解放してくれた。
「それで先まで何してたの?」
「日向ぼっこ!」
絵里ちゃんの日課のあれか…
夏場はどうしているのかと思えば、部屋でやっていたんだな。
確かにエアコンの聞いた部屋でする日向ぼっこは最高だからね。
「瑛二くんも一緒にする?」
「え、でも…」
絵里ちゃんの提案に俺は少し戸惑った。
部屋の中で日差しが当たっている場所なんて、絵里ちゃんのベッドしかなかったからである。
つまり、これはベッドへのお誘いということなのか?
俺が混乱している間に絵里ちゃんは俺の手を引いてきた。
「ほら、こっちに横になって。」
絵里ちゃんはそう言って、俺をベッドに押し込むようにしてきた。
俺は仕方なく絵里ちゃんの言う通り、絵里ちゃんのベッドで横になった。
ふんわりとした感触に女の子の甘い香り。
これが絵里ちゃんが普段寝ているベッドか…
昼から絵里ちゃんとこんなことをするなんて、何と言うか背徳感が凄い。
普段なら蓮さんたちの監視でこんなことできるはずもないのに…
「よいしょ」
絵里ちゃんはそう言って俺の横に引っ付くように横になった。
そして、絵里ちゃんは俺の手を握ってきた。
「!」
急に手を握られて驚いたけど、このままやられっぱなしにはいられない。
俺はそのまま絵里ちゃんの指を絡めて恋人繋ぎにしてやった。
「ふえっ!?」
今度は絵里ちゃんが驚いたような声を上げる。
まさか単なる手繋ぎを恋人繋ぎで返されるとは思ってなかったらしい。
横目でみた絵里ちゃんの顔は少し赤みを帯びていた。
俺はそんな絵里ちゃんにイタズラっぽく笑って見せた。
それから俺たちはしばらく肩を寄せ合って、日向ぼっこを楽しんだ。
エアコンの冷たい風で冷やされた体に絵里ちゃんの体温と日差しで気持ちいいくらいポカポカしてくる。
いつしか、俺たちはお互い抱き合っていた。
「えへへ、瑛二くんとこうしていると、私幸せ。」
「俺も最高に幸せだよ。」
「本当?」
「本当。」
ドクンドクンとお互いの脈動が伝わる。
俺たちはお互いの顔を見つめていた。
まるで吸い込まれそうになる感覚の中で、俺たちは誰からということもなく、自然な形でお互いキスし合っていた。
「「ちゅう」」
暖かい唇と唇が触れ合う感覚がして、俺は胸の奥でくすぐったさを感じた。
何と言うかもう少しでも長くこの感覚を感じていたい。
そう思った俺は絵里ちゃんを優しく抱きしめた。
絵里ちゃんも俺と同じ気持ちのようで、俺に答えるように絵里ちゃんも俺の首に手を回してきた。
それからはどんどん俺たちの行為はエスカレートして行った。
「ちゅう❤️ちゅりゅうう❤️」
お互い舌を絡ませてキスを続ける。
俺たちは息継ぎもままならないまま、キスに夢中になった。
どんどん朦朧としていく意識の中で、限界を迎えた俺たちはそこでやっとキスをやめた、
しかし、それでも絵里ちゃんは満足していないようだった。
「今の凄かった❤️」
蕩けた顔になっている絵里ちゃん。
とてもいやらしい表情をしている。
絵里ちゃんはすっかり出来上がっているみたいだ。
「瑛二くん❤️」
絵里ちゃんは急に俺のことを呼んできた。
普段の絵里ちゃんからは考えられないよなとても艶っぽい声だ。
これが俺だけ聞ける声だと思うとものすごく興奮してくる。
「私、一つお願いがあるの❤️」
どうやら昨日の朝のお願いを使いたいみたいだ。
やっとその時が来たのか…
完全に欲望に満ちた目で俺をみてくる絵里ちゃん。
まるで猛獣のような目つきである。
果たしてどういうお願いをするのだろうか。
「うん。どんとこい。」
強がりでこうは答えたけど、俺は少しばかり身構えた。
ううう、少し怖い。
「私ね❤️瑛二くんのこと、噛みたいの❤️」
「え?」
これはどう言うこと?
俺は絵里ちゃんの突飛すぎる発言に頭を傾げるしかなかった。
最近、忙しすぎる…
寒くなったので、熱々の夏話を用意いたしました。
これでも読んで身を温めてください。