※この作品はR-18です。

リスタート:過去へ戻って孤高な女達を手駒にして現在の危機を打破する   作:霧江

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家庭教師

一週間前くらいのことだけど、俺は葵に絵里ちゃんのことを紹介すると約束したことがある。

もっと正確に言うと、葵に絵里ちゃんを家庭教師として紹介するという約束だった。

ということで、俺はさっそく絵里ちゃんに家庭教師の件について話してみた。

 

「いいよ!」

 

意外にもあっさりと承諾する絵里ちゃん。

そんなにあっさりだと逆にこっちが不安になる。

しかも、その過程で葵が俺の三番目の彼女と言うことも明かしていたから、余計に不安になった。

 

「本当に大丈夫なの?全然嫌だったら断ってくれてもいいからね。」

 

もちろん、断られたら俺は大分困る。

だけど、俺は絵里ちゃんの気持ちもしっかりと尊重したかったのである。

だから、再度確認したというわけだったが…

 

「うん!大丈夫だよ。だって、好きな人と一人だけ離れるとか、悲しいことだからね。」

 

「絵里ちゃん…」

 

絵里ちゃんは葵に結構感情移入をしているようだった。

まさか、絵里ちゃんがそんなことを考えていたなんて。

知らなかったといえば嘘になる。

それで俺は絵里ちゃんと毎日電話するようにしていたと言うわけだけど。

それでも絵里ちゃんは寂しさは紛れていなかったみたいだ。

 

「ごめんね。」

 

俺は絵里ちゃんを抱きしめて頭を撫でながら謝る。

だけど、絵里ちゃんはこの展開が本意ではなかったようだ。

 

「いや、謝らなくていいから!私そんなつもりじゃなかった。今の無し!」

 

絵里ちゃんは慌ててそんなことを言い出した。

絵里ちゃんとしてはしみじみとした空気を作りたくなかったみたいだ。

 

「はい!やり直し!」

 

絵里ちゃんはそう言って、一旦俺からはなれる。

 

「?」

 

俺はそんな絵里ちゃんの急なこうどうに頭を傾げた。

一体なんだと思っていたところ。

 

「瑛二くん、好き!」

 

絵里ちゃんはそのまま俺に抱きついてきた。

どうやら、俺と抱っこ自体はしたかったようである。

あまりにも強引すぎる話題転換だったので、俺は思わず笑ってしまった。

 

「ふふ、何それ。俺も絵里ちゃんのこと好きだよ。」

 

俺は笑いながら絵里ちゃんのことを抱き返した。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

それからは蓮さんも交えて家庭教師の件を相談した。

まあ、実際には家庭教師とかの話ではなくて、絵里ちゃんが俺の街に来れるように許可してくれという話だったけど。

やはり、蓮さんとしては親の目が届かない場所に絵里ちゃんを送るのは不安とのことだった。

しかし、最終的には許可してくれた。

説得の決め手になったのは絵里ちゃんに同性の友達ができるかもと話したことが大きかったと思う。

それが月曜日までの流れだった。

そして、今日は絵里ちゃんが俺たちの街にくることになったわけである。

 

「蓮さんが許してくれて、本当に良かったな。これぞ一石二鳥。」

 

絵里ちゃんが葵の家庭教師をすることで葵の学力が上がることはもちろんのこと。

絵里ちゃんがこちらに来ることで宮崎の接近を防ぐことも出来る。

良いこと尽くしだった。

 

「そろそろかな。」

 

そう思った俺はスマホを確認した。

時刻は12時55分、約束の時間は13時だから、あと5分だった。

因みに、時刻は昼ごはんを食べてから会おうということでこの時間にしている。

 

「瑛二くん、二日ぶり!もしかして待ってた?」

 

駅の出口で待っていた所を絵里ちゃんの元気な挨拶が聞こえてきた。

俺は声が聞こえた所の方に向く。

そこには空色のワンピースとツバの広い麦わら帽子をかぶっている金髪の女の子が俺に手を振っていた。

正しく童話に出てくる清楚な女の子という感じである。

可愛い。

 

「絵里ちゃん、二日ぶり。ううん、今来た所だった。」

 

俺は絵里ちゃんにデートの定番セリフを返した。

実際に今来たところだから嘘ではないしね。

それから俺たちは雑談をしながら、葵のお家に直行した。

絵里ちゃんとの待ち合わせは13時で、葵との約束時間は13時10分だからである。

 

「それで佐藤さんの家に直接行くの?」

 

「うん。ここから、5分くらいのところだよ。」

 

そう言って、俺は絵里ちゃんを連れて歩きだした。

別に勉強会の場所は今は空き家になっている俺の家を使っても良かったけど。

今回はあくまでも葵の勉学が目的だと言うこともあり、今回は葵の家を勉強場所で決めた。

保護者の居ない家だと何時も最後はあれになっちゃうからね。

5分くらい閑静な住宅街を歩いて、俺たちは葵の家に到着した。

 

「こんにちは!俺、牧田と言います。葵と勉強するため来ました。葵はいますか?」

 

インターホンを押して挨拶をする。

しばらくしてから、インターホンの向こうで見知らぬ女性の声がした。

 

「牧田くん?ああ、ちょっと待ってて。」

 

ドタドタと足音が聞こえたかと思えば、すぐに扉が開いた。

出てきたのは葵とよく似た女性だった。

 

「ああ、あなたが牧田くんなのね。何時も娘がお世話になってるって聞いてたよ。私は佐藤小夜、葵の母親です。」

 

「初めまして。こちらこそ、何時も葵に世話になってます。こちらは俺たちに勉強を教えてくれる絵里ちゃんです。」

 

俺は挨拶を返す序でに絵里ちゃんのことを紹介した。

 

「は、初めまして!わ、わたし、西之宮絵里といいます!」

 

絵里ちゃんは少し緊張しているようで、言葉に詰まっているようだった。

しかも、声も少し大きい声になっている。

そういえば、人の家にきたのはこれが初めてになるのか?

これは俺が配慮が足りなかったのかも知れない。

 

「あら、可愛いらしいお嬢ちゃんなのね。よろしく。」

 

佐藤さんはそんな絵里ちゃんのことを見て、優しく微笑みかけた。

それで絵里ちゃんも少しは緊張が解けたみたいだ。

少しホッとしているみたいである。

良かった。

 

「ほら、上がって。葵は部屋にいるよ。」

 

俺たちはそのまま葵の部屋に案内された。

葵の部屋も案の定2階に位置していた。

階段を登って、葵の部屋の前に立った時、絵里ちゃんは俺を見てきた。

 

「少し緊張するかも…」

 

それはある意味当たり前である。

絵里ちゃんにとって葵は会った事も話したこともない人。

そんな人の部屋に最初から上がるというのはかなり緊張するだろうな。

 

「そうだね。俺も葵の家は初めてだから緊張する。」

 

「そうなの?」

 

俺は絵里ちゃんの緊張をほぐすために俺も緊張していることをアピールした。

絵里ちゃんはそんな俺を意外そうな顔で見てきた。

 

「そうだよ。俺も同じだから大丈夫!」

 

俺は絵里ちゃんのことを元気付ける。

何が大丈夫かは俺自身でもわからないけど、絵里ちゃんは俺の言葉を聞いて勇気を得たみたいだ。

絵里ちゃんが勇気を得たところで俺は葵の部屋にノックをした。

 

「葵、俺だ。入っていいか?」

 

「瑛二か、今開ける。」

 

そう言って、葵は部屋の扉を開いてくれた。

そして、俺は葵の姿に驚きを禁じ得なかった。

 

「!!」

 

部屋の中から姿を見せた葵は珍しく少女趣味の服装にスカートを履いていたのである。

何というか、普段の姿も良いけど、これはこれで凄く良い。

 

「どうだ?気に入ったか?」

 

葵は俺に見せつけるようにぐるっと一回りして、自分の服装を見せてくれた。

 

「うん、滅茶苦茶可愛いよ。」

 

俺は思わず葵のことを褒めてしまった。

 

「うっ❤️そうか❤️」

 

俺に褒められて葵は少しばかり発情し始めた。

やばい、このままじゃ勉強にならない。

そう思った俺は空気を入れ替えるために、葵に絵里ちゃんのことを紹介した。

 

「あ、こちらが今日勉強を教えてくれる絵里ちゃんだ。」

 

そこで葵はハッとなって自己紹介をした。

 

「ああ、すまない。僕は佐藤葵だ。今日は宜しく頼むよ。」

 

「わ、わたしは西之宮絵里って言います。宜しくお願いします。」

 

葵の急な自己紹介に、絵里ちゃんはおどおどした感じで自己紹介を返した。

今日2回目の自己紹介ということもあってか、言葉に詰まる回数が減っている。

何というか成長が早いな。

 

「…?」

 

俺はしばらく二人が話せるように黙っていたけど、特に二人は何も言わずにお互いを見つめ合っているだけだった。

そうだよな、岬が可笑しいだけで、普通は自分の彼氏の別の彼女さんと話す事なんて無いんだよな

 

「「…」」

 

このまま居ても埒があかない。

そう思った俺は二人に助け舟を出すことにした。

 

「じゃあ、勉強始めようか。」

 

「「うん」」

 

二人は一言もなく、その助け舟に乗りかかってきた。

そうやって俺たちの不安な勉強会は幕を開けた。

それから、俺たちは普通に勉強会を始めた。

葵は真剣に問題を解いて、わからないものを絵里ちゃんに質問する。

絵里ちゃんはそんな葵の質問に真剣に対応してくれた。

ちょっと最初は危うい空気感だったけど、勉強会自体は問題なく進んだ。

 

「ちょっとトイレ行ってくる。」

 

俺は途中でトイレのために席を外した。

気まずい空気を纏っている二人をそのまま置いていくのは申し訳なかったけど、仕方がなかった。

我慢の限界だった。

ちょっと二人に挟まったことで、緊張して飲み物を飲み過ぎてしまったのである。

 

「本当はちょっとトイレに行ってくるつもりだったけど…」

 

そして、俺はすぐに帰ろうとしたけど、トイレの前で小夜さんに掴まれた。

用件は娘を助けてくれてありがとうを言いたかったとのこと。

葵ってば、そんなことまで話していたとは…

 

「そんなに感謝されるとはな…」

 

先ほどは絵里ちゃんが居て話せなかったけど、是非とも感謝の気持ちを伝えたかったとのこと。

それで時間にして20分くらい、小夜さんと話をしたというわけで。

その感謝の気持ちの表れだとして、いっぱいおやつをもらってきたのである。

俺はそれを溢さないようにと、ゆっくりとゆっくりと階段を上がっていく。

俺が扉の前についた時、話し声が聞こえてきた。

 

「こんなこと君には何の得もないのに…どうしてこの話を受け入れてくれたんだ?」

 

これは葵の声か…

俺が居ない間に真剣な会話が始まっていたようだ。

仲が最悪に拗れる可能性もあるかも知れないけど、これはきっと必要なものに違いない。

俺が知っている二人はとても良いこだった。

だから、俺は二人を信じて、少し外で待っていることにした。

 

「あなたが困っていたから。」

 

「僕が困るだと?」

 

絵里ちゃんの返答に葵は不思議そうに聞き返した。

確かに困るだけでは助けるという理由にはならないよな。

 

「もしかして、これを機に僕と瑛二を離れさせるつもりか?」

 

「…」

 

俺は葵の言葉に少し胸をキュッと締められるような感覚がした。

まだ、葵の中で人間不信が残っている。

これは後にいっぱい褒めて、いっぱい慰めてやらないと。

 

「そんなことしないよ。」

 

少し冷たい感じで言う葵だったけど、絵里ちゃんは臆せずにそれを否定した。

何時もおどおどな絵里ちゃんなのに、今は中々逞しい感じだ。

 

「ほう、それはどうしてだ?」

 

「きっと、瑛二くんならそうしていたはずだから。」

 

「!?」

 

俺は急に自身の名前を呼ばれてビクッとなる。

そこで急に俺の名前が出てくるとは…

これはどう言うことだ?

 

「瑛二くんは見ず知らずの私を救ってくれた。何の見返りも望まずに手を差し伸べてくれた。」

 

絵里ちゃんはそのまま続けてこう言った。

 

「だから、私も決めたよ。瑛二くんに恥ずかしい彼女にならないために、困っている人を助けようと。」

 

絵里ちゃんが滅茶苦茶格好いいことを言っている。

中々恥ずかしい話である。

俺だって岬に影響されてしたことだったけどね。

 

「そうか…君も…瑛二に…」

 

葵は何やら納得したように呟いている。

どうやら、絵里ちゃんにシンパシーを感じているみたいだ。

 

「あなたも瑛二くんのこと好きでしょう?」

 

「ああ、好きだよ。」

 

葵は絵里ちゃんの問いに即答した。

気のせいかは分からないけど、先ほどよりは大分温かみのある声になっている。

 

「私も好き!世界で一番好き!」

 

「僕もだ。瑛二のことは世界で一番好きだ。」

 

葵は絵里ちゃんに負けじと宣言する。

俺は自身の顔に火が付く感覚を覚えた。

 

「私も同じ!あなたの気持ちは十分にわかっているつもりだよ。一人だけ離れているとか寂しいもん。だからね、一緒に頑張ろう?瑛二くんと一緒の中学入るんでしょう?」

 

「西之宮さん…」

 

葵は感激したような声をあげていた。

 

「絵里で良いよ。」

 

「絵里ちゃん…僕も葵で良い。その…これから宜しく頼む。」

 

「こちらこそ、宜しく!」

 

それからのこと、俺はしばらく待ってから部屋にはいった。

先ほどのことを聞いていたなんて教えたくなかったからである。

部屋に入ると葵はすっかり警戒心を解いていた。

今回は何とかめでたしめでたしで終われたみたいだ。

やはり、二人を信じて良かったと俺は思った。

 

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