リスタート:過去へ戻って孤高な女達を手駒にして現在の危機を打破する 作:霧江
俺たちは調査の結果、仲田さんの下の名前を調べることに成功した。
その子の名前は仲田康平とのことで、パツ菌の噂は彼が幼児園の時に広めたものらしい。
そこまでは何とか調べが付いたんだけど、彼の行方に関しては完全に五里霧中。
中村が言う通り、消えたという証言以外は何の手がかりも得られなかった。
それからは自分なりに色々と可能性について考えて見たけど、謎の解明には至らなかった。
そして、その悩みは美鈴との夜の営みにまで影響を及ぼした。
「えーちゃん?何か悩み事でもあるの?」
行為が終わった後、二人でイチャイチャしてた時のこと、
美鈴は急にそんなことを言ってきた。
俺としては何ともない振りをしているつもりだったけど。
どうやら、美鈴には俺の悩み事なんてお見通しだったらしい。
「う、バレちゃった?ごめんね。ちょっと考え事をしてて…」
俺は美鈴に謝った。
美鈴は自分といる時は自分を優先してほしいというタイプだからね。
そこが可愛いところではあるけども…
「へえ、そう?因みにどんなことを考えていたの?」
これは…何とも意外な反応だ。
これまでの美鈴は、二人でいる時に俺が他のことを考えていると拗ねたような感じだったのに。
これは一体?
「だって、そんな時の瑛二は決まって、他の娘のことを考えていたでしょう?今日は本当に悩んでいるなあって。」
確かにそうだった気もする。
今回は真剣な悩みだから、良しと言うことか…
って。
「え?どうしてわかったの?」
俺は何も言ってない。
もしかして考えていたことが口に出たとかの可能性も考えたけど、そんなことはなかったと思うんだよな。
「ふふふ、それくらいはえーちゃんの顔を見るだけで分かるわ。」
美鈴は慌てている俺を見て、悪戯に成功した子供のように笑いながら種明かしをしてきた。
顔を見れば分かる、か。
何だか長年一緒にいる夫婦にでもなった気分だな…
この感覚悪くないかも。
「じゃあ、今の俺は何を考えていると思う?」
俺はそう言って美鈴のことをじっと見つめる。
美鈴はしばらく俺の顔を眺めてから口を開いた。
「ううん…この顔は…そうだね。瑛二は私と悩みを共有したいでしょう?」
「正解!」
美鈴はあっさりと俺の考えを当ててきた。
消えた仲田くんの謎について、今朝からずっと考えてみたけど、俺の頭では解答が見つからなかった。
これはどうも俺の頭には負えない問題らしい。
そこで俺は美鈴の手を借りることにしたのである。
美鈴は俺よりも賢いからね。
何か俺が思い付かなかった可能性を見つけられるかも知れない。
そう思った俺は美鈴に今朝あったことを説明した。
「へえ、不思議な話もあるものだわ…急に子供が消えるなんて…」
「でしょう?美鈴ならこの謎のことを解ける?」
「ううん…」
俺の言葉に美鈴は思案顔になった。
目を閉じてじっくりと何かを考えている美鈴。
俺はそんな美鈴の顔を見つめながら、美鈴が口を開くのを待つ。
待つ時間は美鈴の綺麗な顔を見ていたから、そこまで苦にはならなかった。
美鈴が口を開いたのは10分後くらいだった。
「えーちゃん、その、仲田くん?が消えた理由については、何も思い浮かばなかったわ。」
「そうだよね…」
俺より頭の良い美鈴でも消えた仲田くんの謎については分からなかったらしい。
美鈴なら何か結論を出してくれると思ったけどな。
少し残念だと思ったその時だった。
「でも、その子の行方については、分かる方法があるわ。」
「え!?本当に!?」
俺は美鈴の言葉に驚いた。
そんなことが本当に出来るというのか?
一体どうやって?
「確か、その子ってクラス分けの紙には名前が載ってたよね?」
美鈴は改めてそんなことを聞いてきた。
「うん。皆んなそれだけは確かだったって。」
仲田くんの行方は不明だったけど、それだけは確かだと皆んな口をそろって言ってたからね。
多分、これだけは間違いない事実なのだろう。
俺は美鈴の言葉の続きを待った。
「じゃあ、先生に聞いてみれば良いわ。」
「先生に?」
余りにも簡単すぎるその方法に俺は美鈴の言葉を聞き返した。
「えーちゃん、知ってた?実は学校側って入学した学生の資料を保管する義務があるわ。何年かまでは忘れたけど、少なくともその仲田くんという子の資料は残っているはず。」
「へえ、そうなんだ。」
俺は美鈴の言葉を聞いて、頭の中にその知識が浮かんできた。
今までは仲田くんが消えた謎についてばかり気にして、先生に聞くという発想が出なかったから、思い浮かべなかったけど。
確かに、俺もどこかで学校は学生の情報を一定期間保管していると聞いた覚えがある。
それがどの世界だったかは忘れたけど、確かにそうだったはず。
「そう、入学式の段階でその子の名前があったなら、学校側は記録としてその子の情報を持っている可能性が高いわ。」
美鈴はそう言い切った。
そういえば、俺たちの活動は子供たちのことが中心で先生とか、大人にはその手が回っていなかった。
確かにこれだと仲田くんの所在を特定することができるかも知れない。
「もう、お悩みの方は大丈夫かしら?」
「うん、美鈴のおかげだよ。」
美鈴がいなかったら、俺は消えた仲田くんの謎ばかりを気にして空回りしていただろう。
俺ってば、本当に視野が狭いんだよな…
常々思うよ…
「本んとうに美鈴が居てくれて助かったよ。」
俺はお礼の気持ちを込めて美鈴の頭を撫で撫でした。
美鈴はそんな俺の反応に嬉しそうにして、俺の胸に顔を埋めてこう言った。
「えーちゃんの役に立てて良かったわ。」
本当に美鈴は可愛いんだから。
ーーーーーーーーーーー
その翌日である金曜日の朝のこと、俺は絵里ちゃんと中村の学校の前にいた。
普段だったら絵里ちゃんの家に向かうところだったけど。
昨日の美鈴の話を聞いてから、俺はいてもたってもいられなくなっていたのである。
それで、絵里ちゃんには後日に埋め合わせすることを約束して、今日は学校に来た訳だ。
果たして、何をさせられるかは少し不安だ。
でも、最近は俺もすっかり絵里ちゃんの特殊プレイにハマっているからな…
何だかんだ言って、絵里ちゃんのプレイはどれも気持ちいいんだよな。
閑話休題。
「よう、相棒、昨日ぶりだぜ。」
学校の前に中村が姿を現した。
因みに昨日ダサいと言われたからか、今回は帽子は無しだった。
「うん。昨日ぶり。」
俺は軽く中村に挨拶を返す。
詳細内容については朝の段階でしっかり説明している。
だから、説明などは不要だった。
だからか、そこからはそのまま学校に入る流れになった。
「急な呼び出しに応えてくれてありがとう。」
俺は中村の後ろについて行きながら言った。
元々は一人で来ることも考えたけど。
俺はここの学生じゃないから、俺一人でここに来るという選択肢はなかった。
だからと言って、パツ菌について調査するのに絵里ちゃんを連れて来るのもなし。
と言うことで、俺は中村に泣きついた訳である。
「良いってことよ。俺もこの謎が気になってたしな。」
中村は俺のお礼を軽く流した。
「しかし、金曜日に相棒に会うとか、何だか不思議な気持ちだぜ。」
確かに俺たちは木曜日にしか顔を合わせない。
だけど、それは全部お前の意思だったからな。
俺は何回も木曜日以外にも会おうって言っていたのである。
「そうか?木曜日以外にも通話はしていただろう?」
「直接会うのはまた違う感じなんだよ。分かるだろう?」
「分かんねえよ。」
俺たちは馬鹿話をしながら校庭を通って、学校の建物に入る。
建物の中はかなり立派なつくりであった。
「私立だとこんな感じなんだ。」
「相棒んところは違うのか?」
中村は少し気になったのか、俺の学校について質問してきた。
「うちは公立で、設立して結構古いからね。」
確か開校して30年は過ぎているはず。
詳しくは覚えてないけど。
「そうなんだ。俺としては学校は全部こうだと思ってたぜ。あ、そっちじゃない。こっち。」
俺は左手に回ったけど、中村は右の方を示した。
職員室は正門から入って直ぐに右手にあった。
まあ、職員室も学校によって違うのは当たり前だよな…
だけど、他の学校の職員室か…
俺は職員室の扉の前で少し固まった。
「どうしたんだ?」
そんな俺を中村は不思議そうに見つめている。
「いや、なんか職員室って緊張しない?」
「え、何で?」
中村は俺の言葉に、本気で分からないと言った感じで尋ねてきた。
この感覚知らないの?
これは普通の感覚だと思うけどな。
「別に悪いこともしてないだろう?」
「それはそうだけど…」
いや?俺はここの学生じゃないけど、来ているから悪いことをしているかも?
俺がそうやってウジウジしているうちに、中村は見かねたのかそのまま職員室のドアを開いた。
「失礼します!」
しかも、そのまま大声で失礼しますを言いやがった。
こいつ度胸ありすぎだろう。
俺は信じられないという意味を目線に込めて中村を睨みつけた。
ああ、もう先生たち全部こっちを見ているよ。
「お、中村くんか!どうしたんだ?」
奥の方に座っていた男の先生が中村を見て反応した。
それを見た他の先生たちは直ぐに自分の席へと目を戻す。
夏休みなのに、皆んな忙しいんですね…
「竹原先生!今日はちょっとこいつが用事があってですね。聞きたいことがあります。」
何と言うか、しっかりとした対応だな。
大人にはこんな感じなのか…
やはり、中村って何げに育ちがいいって感じがする。
「その子は…誰?」
竹原先生は俺の顔を不思議そうに見ていた。
まあ、知らない学生が自分に用事があると言ったら当然だよね。
俺は竹原先生に軽く自己紹介をした。
「えっと、俺は牧田瑛二と言います。この学校の生徒ではありません。」
「へえ、違う学校の学生なんだね。それで用事と言うのは?」
「はい、ちょっと聞きたいことがあります。」
そこから俺は竹原先生に軽く事情を話した。
絵里ちゃんのことと現状、仲田を探している理由についても話した。
俺はこの学校の学生ではないと言うこともあって、所々で中村がそれは本当だったと証言してくれた。
多分、これがなかったら、普通に追い出されていたと思う。
そして、最終的に話を終えると、竹原先生は悔しそうな顔をしていた。
「まさか…ウチの学校でそんなことがあったなんて…知らなかった。俺としたことが…そんなことも気づけないなんて。くっ、悔しい。」
やはり、絵里ちゃんのことは知らなかったみたいだ。
子供の社会はものすごく閉鎖的だからな…
それに絵里ちゃん本人もこれについて気づいてなくてのほほんとしていたからな。
ある意味仕方ないとは言える。
しかし、この先生はいい人そうだな。
ここまで自分のことのようにしてくれるとは…
「あ、でも、このことは公言化しないで欲しいです。もう皆んな反省しているし。それに何より、公言したらまた絵里ちゃんがイジメられる可能性もありますから。」
俺は念の為に先生に注意した。
絵里ちゃんのことは、今がちょうどいいバランスだった。
もしかして、ここで大人の介入があればさらに悪化する可能性があったのである。
「…わかった。悔しいけど、そんな状況だとしたら、そうするしかないみたいだな。言いつけたということになったら大変になることが目に見えている。」
幸いにも竹原先生は俺の言葉を受け入れてくれた。
熱血っぽい見た目の人なのに頭も大分回るみたいだ。
俺としては長々と説得が必要かと思ったけど、これだと話が早くて助かる。
「それで先に聞きたいことがあるって言ったけど、どんなことが聞きたい?」
「そのことですが、仲田くんって知ってますか?」
俺は早速本題に入った。
「仲田くん?」
竹原先生は仲田という名前を聞いて少し思案顔になった。
何か心当たりでもあるのだろうかと思い、俺はそのまま説明を続けた。
「はい、一年生で消えた学生みたいです。クラス分けには名前があったけど、いざ入学したら、急に消えたみたいで。実はその子が絵里ちゃんの噂を広めたみたいで…」
「あ!あの仲田くんか!」
俺の言葉に竹原先生は何かを思い出したみたいに大声をあげた。
「知っているんですか!?」
「知っているも何も、その仲田くんの担任が俺だった。」
そんな偶然があるとはな。
これはラッキーだ。
俺は竹原先生に仲田くんのことを聞いた。
「仲田くんはどうして消えたんですか?」
「消えた?いや、仲田くんは普通に転校しただけだよ。」
これはどういうことだ?
中村が言うには転校はないって言ってたけど?
「え、先生、皆んな口を揃えて仲田くんが消えたって言ってたんですよ?」
中村もその点が気になったのか急に話に割って入ってきた。
「仲田くんは一応こちらに入学はしてたけど、学期始めに急に仲田くんのお父さんが転勤になって、学期始めに転校が決まっただけだよ。俺も珍しかったから、今も覚えている。」
そんなこともあるんだ。
ここ私学で入試もあったはずなのに…
「でも、誰も転校になったって皆んな聞いてないって言ってましたよ?」
中村は引き下がらずに続けてこういった。
「仲田くんの所は結構忙しかったみたいで、学校に一回も出て来れなかったんだよね。それで、そもそも顔合わせをしていない子が転学しますと言うのも可笑しいかと思って、通知しなかっただけだったよ。何か混乱させてごめんな?」
何と言うか現実はそんな不思議な話でもなかったか。
そんなこともあるんだなって感じである。
中村は真相を知って、何とも言えないような顔になっている。
俺はそんな中村を置いておいて本題に入ることにした。
「えっと、それでですけどその仲田くんが、ここの学生だったなら、住所とかが残っていると思うんですけど、仲田くんの現在の住所を教えて欲しいです。」
「済まないけど、それは出来ない。」
これでダメか…
先ほどまではいい感触だったのに。
断っている竹原先生もいい表情はしていない。
これは多分他に理由があると見えた。
俺は竹原先生にその理由について聞いてみた。
「どうしてですか?俺が部外者だからですか?」
「それもあるっちゃあるけど、それより、最近は何かと個人情報に煩くてね。勝手に俺が仲田くんの住所を教えることは出来ないんだよ。」
個人情報か…真っ当な理由である。
まさか、この時代でもそんなものがあるとは。
これは思わぬ障害だった。
しかし、このまま引き下がるわけには…
「その個人情報っていうのは本人の同意があれば、いいですよね?」
「そうだな…それだといけると思うよ。」
竹原先生は大体俺が言いたいことが理解出来ているみたいだった。
やはり、この人は頭の回転が早いみたいだ。
だけど、これは俺が直接言うことに意味がある。
「竹原先生、本当にすみません。でも、お願いです。仲田さんに住所の公開をしてもいいと言う許可を取ってください。」
俺はそう言って、竹原先生に向けて頭を下げる。
竹原先生はしばらく何かを考える素振りを見せた。
そして、決心したような顔になった。
「わかった。俺から仲田さんには連絡を取ってみるよ。」
「本当ですか?ありがとうございます!」
俺は竹原先生に感謝の挨拶をした。
「でも、一つだけ確認していいか?今の所、牧田くんの目的は全部達成しているように見える。牧田くんは仲田に会って何をするつもりなんだ?」
「それは…」
俺は竹原先生の質問に言葉が詰まる。
俺は仲田くんに会って一体何をしようとしているのだろうか?
自身の奥深くに自問してみる。
最初は本当に絵里ちゃんのために、動きたいという気持ちからの行動だった。
それは今も多分変わっていない。
しかし、その時と状況だけはかなり変わっている。
既に絵里ちゃんの孤立は解かれていて、これ以上活動するような意味もない状態なのは確かだ。
それなのに、俺は何で加害者である仲田くんを会おうとしているんだ?
俺はしばらく考えた末に結論を出した。
「仲田くんと普通にお話をしようと思います。俺は絵里ちゃんのために行動を引き起こしました。だから、絵里ちゃんのために、何で仲田くんがそんな噂を広めたかを確認します。それ以外は、別に俺は彼を咎めるつもりも、彼を裁こうとする意思も有りません。ただ、仲田くんとお話しをして、仲田くんの行動が良くないことだったと伝えるつもりです。」
これが俺の嘘偽りない感情だった。
少なくとも絵里ちゃんのようなことが二度とないように、仲田くんのことを説得するつもりだ。
もちろん、その説得の後は絵里ちゃんへの謝罪もしっかりともらう。
「そうか…ふむ…」
俺の言葉を聞いた竹原先生は何かを思案していた。
しばらくした後に先生は口を開いた。
「うん、牧田君なら問題なさそうだな。」
どうやら、俺の回答は竹原先生のメガネに適ったらしい。
竹原先生は頭を縦に振りながら言った。
「はい、お願いします!」
「でも、仲田さんって中々連絡が付かない人だったからね。ちょっと時間がかかるかもしれない。」
「もちろん、承知の上です!気長に待ってます。」
それから、俺は竹原先生と連絡先を交換して別れた。
ちょっと早いけど、仲田くんが消えた謎を公開しました。
実際にこんなことがあり得るかは分からないですが、転校自体は空きがあればどのタイミングでも可能みたいですね。
※瑛二くんが先生に聞くと言う簡単な手段を思い浮かべなかったことが不自然という指摘がございまして、一部加筆修正いたしました。
基本的に瑛二はどの世界でも交友関係が狭くて、視野が狭いという弱点があります。そして、今回もその弱点を描写したつもりでした。
しかし、私の書き方が微妙でそのことが伝わらなかったので、修正したという感じになります。
それと何時も誤字報告して頂だき誠にありがとうございます。
本当に甘えてばかりで申し訳ないと思っております。
何とか自分でも誤字を減らせるように尽力致します。