※この作品はR-18です。

リスタート:過去へ戻って孤高な女達を手駒にして現在の危機を打破する   作:霧江

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金髪の子

「え、どうして...それを...?」

 

仲田くんは本気で驚いた顔をして俺のことを見てきた。

まるで心の内を見透かされたみたいな反応をしている仲田くん。

これは答えを聞かなくても正解が分かる。

やはり、パツ菌の噂を流したのは、仲田くんの話に出てきたその金髪の子で間違いないようだった。

 

「何で、そのことが分かったの?」

 

俺が一人納得していると、今度は仲田くんが俺に質問してきた。

別にこれは隠すようなことでもないかと思った俺は、仲田くんに俺がどうしてその結論に到達したかを軽く説明することにした。

 

「まあ、仲田くんの話を聞いた感じ、その金髪の子はパツ菌の噂を流そうとしていたからね。だから、そもそも噂の発生源がその子ではないかと思っただけだよ。」

 

「そうか...」

 

俺の言葉を聞いた仲田くんは急にしゅんとなった。

仲田くんは何かで自信をなくしているようだった。

今の話のどこに自信を失くすような要素があったのだろうか?

俺がそんなことを考えていると、仲田くんはそのまま黙り込んで何かを考え始めた。

 

「...」

 

「...」

 

それからしばらくの間、沈黙は続いた。

うむ、どんな悩みかは分からないけど、結構時間が掛かるな...

考え事を邪魔するようで申し訳ないが、時間は限られている。

このままでは何時まで経っても話しが進まないかも。

そう思った俺は話題を切り替えることにした。

 

「ところでさ、仲田くんは金髪の子の名前を覚えているの?」

 

「僕、覚えてない...」

 

覚えてない、か...

まあ、それも無理もないことである。

事件からはすでに数年という時間が経過している。

数年という事件は何かを忘れるには十分な時間だった。

その上、当時の仲田くんと金髪の子は仲もよくなかったみたいだから尚更である。

 

「ご、ごめん...」

 

仲田くんは急に申し訳なさそうな顔で俺に謝ってきた。

まるで名前を思い出せなかったことに罪悪感を感じている様子だった。

俺はそれを見て、この子は本当に自分の罪を認めているんだなと感じた。

まあ、仲田くんは金髪の子に騙されていただけで、悪意があって絵里ちゃんを貶めたわけではないからな。

 

「いや、大丈夫だよ。俺もダメ元で聞いただけだった。」

 

だから、俺は仲田くんのことを慰めようとした。

もちろん、仲田くんが金髪の子の名前を知っていれば、それがベストだった訳だけど。

だけど、これまでにあれだけ用意周到さを見せた金髪の子のことである。

彼が仲田くんにパツ菌の話をしたのも、裏の意図があってのものだろう。

そして、この場合の裏の意図というのは自分の匿名性を守ること。

つまり、金髪の子はわざと仲田くんを噂を流す役割として選択したということになる。

 

「ダメ元...」

 

俺は慰めのつもりだったが、仲田くんは俺の発言で更に落ち込んだ。

ダメ元という単語が、そもそも自分に期待なんかしていなかったと聞こえたみたいだ。

これはしくったな...

俺は単語選定に失敗したらしい。

 

「ごめん、誤解させちゃって。別に仲田くんに期待してなかったという話ではなかった。」

 

俺は素直に仲田くんに謝罪した。

仲田くんはそんな俺を見て、何やら驚いた表情をした。

 

「...」

 

「...」

 

それからはまた沈黙が続いた。

今度はかなり複雑そうな表情をしている仲田くん。

またもや何かを考えているようである。

俺はこれ以上無理矢理話を進めるよりは、仲田くんがしっかり考えをまとめるまでに放置しといた方が良いと判断した。

だから、今度は敢えてそのまま仲田くんを見守った。

仲田くんが復活して来たのはそれから10分後のことだった。

 

「ごめんなさい。」

 

仲田くんは開口一口目に俺に謝ってきた。

 

「急にどうしたの?」

 

俺としては本当にその謝罪の意味が分からなかった。

絵里ちゃんならいざ知らず、俺は仲田くんに謝罪を受けるようなことはされてないのである。

 

「いや、悪いのは僕なのに、牧田くんに謝らせてしまったから。」

 

ふむ、そうも考えられるのか?

でも、一つだけ訂正したいところがある。

 

「俺は仲田くんが悪いとは思ってないよ。」

 

「え?どうして?」

 

仲田くんは意外そうな顔で俺を見てきた。

確かに仲田くんは絵里ちゃんに対してひどいことをした。

それこそ、謝ってほしいくらいのことではある。

だけど、罪があるかどうかで話をすると、俺としては仲田くんには罪がないと思っている。

 

「だって、仲田くんも被害者だから。」

 

「僕が被害者?」

 

仲田くんは不思議そうな顔で俺を見てきた。

俺からしたら、仲田くんもガスライティングの被害者だった。

一般の常識とは異なる知識を植え付けられて、それを数年もの時間の間、恐れながら生きてきている。

仕舞いにはその知識の齟齬が原因で、家族である父親に自分のことを否定までされている。

俺だって家族に否定されたことがあるから分かるけど、それは物凄く辛いことだ。

だから、俺に取って仲田くんは被害者なのである。

 

「牧田くん...」

 

俺の言葉を聞いた仲田くんは目をうるうるとさせた。

仲田くんは数年振りに会った自身の理解者に感動しているようだった。

 

「...でも、僕は僕が悪いと思ってるよ。牧田くんの話を聞いて、僕が本当にバカだったって分かっちゃったから。こんなにも簡単に騙されて...」

 

簡単にか。

仲田くんが自信を失くしていた理由はこれが原因だったか。

これは訂正が必要そうだ。

当時の仲田くんは幼稚園児で、世間の常識が足りない状態だった。

俺だって、誰だって、園児の頃にそんなことをされていたら、仲田くんと同じことになっていただろう。

 

「それは仕方がないことだと思う。俺だって、幼稚園の時に仲田くんと同じことを経験したら、同じことになったと思うよ。」

 

「本当に?」

 

「うん。幼いということはそういうことだからね。誰だって未熟な時はそんなものだ。別に君だけが悪い訳ではない。本当に悪いのは君を利用した金髪の子だ。」

 

俺は必死に仲田くんを慰めた。

自身でも何でこんなことをしているか思えるくらいは頑張った。

そして、話ながら俺が何でこんなに必死になっていたのか気付いた。

仲田くんは過去の、世界Aの俺に似ていたのである。

荻田亀太郎こと、紫石仁に未来を壊された過去のこと。

俺は紫石仁に壊された未来を自身のせいにばかりしていた。

 

それこそ、親にも何も言わずに自分を攻め続けた。

その結果、俺の家族はバラバラになり、俺は碌でもない人間になっていたのである。

俺はその経験から自責の怖さというものをよく知っていた。

自責は本当に人を駄目にする。

だから、目の前の少年にはそれを止めてほしかった。

つまり、俺が本当に慰めたかったのは仲田くんではない。

俺自身だった。

 

俺はそのためにもそんな仲田くんの心の悲鳴を全て聞くことにした。

それから色々な話をした結果分かったことがある。

やはり、仲田くんは仲田くんでかなり大変なことになっていたらしい。

仲田くんは変な知識のせいで、学校で変な子にされて孤立していたみたいだ。

それに今回は父親とも喧嘩をしたらしい。

本当に辛い話だった。

俺は結構時間をかけてそんな仲田くんのことを鼓舞し続けた。

それでやっと仲田くんは笑顔を見せてくれた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

その後のこと、俺は仲田くんに今までの話をもう一度言ってくれるようにお願いした。

そして、その証言を余すことなく録音した。

これでここでのことは全ては終わりかと思ったその時。

仲田くんからもう一つの申し出があった。

 

「僕、絵里ちゃんに謝りたい。だから、それも録音してほしい。」

 

とのことだった。

俺は仲田くんの謝罪の言葉も一緒に録音した。

俺はそれを絵里ちゃんに伝えることを約束した。

そして、仲田家での用事が終わったのは昼の13時頃。

俺はまたもや電車に乗ることになった。

幸いにも、帰りは道を覚えていることもあり、行きよりは時間が掛かってなかった。

それで俺が家に帰って来たのは14時半くらいだった。

俺は自室に籠って金髪の子とやらについて考えていた。

 

「金髪の子か...」

 

今のところ、俺が知っているのはそれだけのこと。

通常は金髪の子という曖昧な情報だけで人を探すことは至難の技だった。

だけど、今回は通常の場合ではない。

だから、身元の特定は物凄く簡単だった。

俺は金髪の子という奴を特定するために、すぐに次の行動を開始した。

 

「絵里ちゃんに電話..っと」

 

俺は携帯を取り出して、絵里ちゃんに電話を掛けた。

他のところならいざ知らず、絵里ちゃんの回りという意味では、金髪の人ってそんなにあるものではない。

何せ、パツ菌の噂が流行って、誰も金髪に染めようとか思ってなかったのである

そんな状況の中で、一人でも金髪に染めていた奴がいたのなら、絵里ちゃんがそれを覚えていないはずはない。

何せ、自分ではない金髪の子というものは、絵里ちゃんにとって、物凄く珍しい存在だからである。

それが俺が予想している奴でも、そうではなかったとしても、名前は必ず覚えているはずである。

 

「もしもし?英二くん!」

 

しばらく、コールが鳴った後に絵里ちゃんは電話に出てくれた。

絵里ちゃんは電話の相手が俺だと知り、嬉しそうに俺を呼んできた。

絵里ちゃんはやはり可愛い。

俺は仲田くんの件で荒んでいた心が癒されることを感じた。

今日は本当に色々とありすぎてつかれてしまっている。

出来ることならこのまま、絵里ちゃんとイチャイチャをしたいくらいには疲れを感じた。

だけど、やることはやらないと。

 

「絵里ちゃん、今朝は一緒に行けなくてごめんね。ところで、一つだけ聞きたいことがあるよ。」

 

俺は一旦今朝のことを謝ってから、すぐに本題に入った。

 

「聞きたいこと?」

 

「うん、今まで絵里ちゃんの回りで金髪に染めた人ってあったの?」

 

俺はその言葉を発してからドキドキしながら、絵里ちゃんの発言を待った。

 

「あったよ、一人だけ。」

 

やはり!

俺が予想した通り、絵里ちゃんはちゃんとその人のことを覚えていたみたいだ。

 

「名前も覚えてる?」

 

「名前?覚えてる。英二くんも知っている人だよ?」

 

俺が知っている絵里ちゃんの知り合い。

それだと一人しかないな。

金髪の子は俺の予想通りの人物のようだ。

 

「剛太が幼稚園の時に髪を染めてた...って、懐かしい!」

 

それは案の定、宮崎だった。

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