戦術人形が指揮官を愛するまで_裏 作:イエローケーキ兵器設計局
時間はM3と指揮官が盛んになり、そしてそれが終わった頃。つまるところ……まあ、絶望が終わってまた絶望、私に逃げ場はなくどうあがいても絶望、と言ったところ。私は執務室の机の下から入れる地下室に逃げ込んだ。
「……怒ってるか、AK-15。」
返事をする気にもなれない。別に私だけの指揮官なんて思ってはいなかった。覚悟はしていた。だが、これは何だ?私の時よりも激しく求め合い、何より私には救いも慰めも何も無いのか。私は強い。そうだ、私は強い。けれどそれはあくまで身体機能の問題、話であって私は、私は…………メンタル面は強くはない。並の人形以下しかない。だからこうして地下室に籠もっている。ドア越しに聞こえる貴方の声はとてもはっきりと聞こえた。それが苦しくて、辛くて……何より自分が嫌になる。
「怒ってるよな、AK-15。」
マガジンを抜いて、チャージングハンドルを引き抜弾、薬室を空にしてから下顎に下から銃口を当てる。これは自殺ごっこ。私はM3の自傷癖について指揮官から聞いていた。かつての私なら理解……できないだろうが現在進行で行っている身としては嫌でもわかる気がする。これは……死にたい時の救いの歌声だ。けれど……自殺は生物の特権で機械に過ぎない私は引き金を引くことすら許されない。自己破壊の可否すら私の意思では決められなかった。
「……駄目か。」
壁に頭を叩きつけても私は傷一つ無く、壁が崩れるだけ。ただ、地下室の壁が崩れると隠し階段が目に入った。下だ。どうせ今帰ったって後悔するだけだろう。さらに潜ると明るい部屋に出た。M3に多少似た金髪の女……こいつも人形か。と、桃色の髪の女指揮官がそれぞれベッドに寝かされている。頭と四肢に電極を繋がれ、まるで何かの実験をしているようだった。
少し歩き回るとディスプレイが目に入る。電源は付いていない。スイッチはここか。
「入力がありません……そうだろうな。」
そんなものかと思って周りを見るとデータディスク、そしてその読み取り機が見つかった。
「出産おめでとう、エカテリーナ……?」
ディスクのカバーにはそう書いてあって、唐突に嫌な予感がした。けれど……見ないといけない気がする。
「(短い砂嵐の後、ビデオによく見られるカラーバーが表示される)」
「……。」
ベッドに拘束された女指揮官。その上に留まる巨大なハチ。資料映像で見たことがある。この長い産卵管は……寄生蜂だ。
「……っ!」
「おはよう、エカテリーナ。」
……!こ、この声は……指揮官?でも、なぜ?
「指揮官様、拘束具を解きますか?」
「いいや、まだ止めておこう。」
「了解しました。」
「AK-15?」
嫌がりながらも産卵管を受け入れようとする女指揮官を抑えつけるハチ。理解が追いつかない。
「AK-15。」
指揮官は……人を襲うハチ?え?なぜ?は?
「AK-15!」
嬌声をあげる女指揮官と、乱暴に襲うハチ。私は……私は……何を……?
「エルウィン!」
あっ、指揮官……。
力が抜けて倒れる私は最愛の人形だった腕を拒んだ。
私は夢を見ていた。人形が夢を見ることはまず無い。けれど、私は……夢の中ではっきりと見た。愛していた人形が蜂になる瞬間を。戦車のOSであり、制御端末である、と打ち明けられた時は驚いたけれどすんなりと受け入れられた。だが、これは……。
「指揮官。」
貴方は……私を何だと思っていましたか?
医務室で目が覚めた。傍らには意識の無い指揮官の姿をした人形。私が横になったベッドに倒れ込んで寝ているだけで死んではいない。
「……指揮官。」
貴方は何者ですか?蜂ですか?それとも私達が愛していた人形ですか?教えてください。あの動画の乱暴に卵を植え付けるハチは貴方ですか?それだけ教えてください。それが嫌なら私はこの基地を出ていきます。部下に……恋……彼女に隠し事をするような相手をパートナーに選びたくはないです。私はどんな貴方でも愛する、そのつもりで生きてきました。でも、それは愛に応えてくれる、そう思っていたからです。でも現実は……あれからというもの、ほとんどエッチしてませんよね?ずーっと悶々として、警らに立ったり、添い寝したり……でも、貴方は私を襲うことも、愛を確かめ合うことも無くただ……ただ……もう良いです。知りません。諦めます。これは私の片思いだったんだ、そう整理します。地下室で見たことは封印します。
「……AK-15……。」
……っ、呼ばないでください!貴方なんか嫌いです!
「……待ってくれぇ……AK-15……。」
嫌いです……!
「見捨てないでくれ……俺にはお前しかいないんだ……。」
うぅ……。
「……今、自分の事をチョロい女、そう思ったんじゃない?」
「だっ、RPK-16!」
RPK-16が医務室の入り口から静かに私を見ていた。
「まあ、そうね。昔から貴女は振り回しやすくて良いわ。AK-12みたいに勘や察知能力が鋭い訳じゃないし、AN-94みたいな過剰で空虚な扱い易さも無くて。」
「……。」
「でも、貴女と私、まあ他の人形もそうだけど……には大きな共通点がある。指揮官への感情とその応答ね。」
「……。」
「私は勿論、指揮官を愛しているわ。彼の為なら命だって宿せるし、このコアを破壊することも出来るもの。でも、貴女もそこは一致するんじゃない?」
「何が言いたい。」
「指揮官に卵を産み付けられるのも悪くない、そう思ったでしょう?」
「……教えてくれ、あの蜂は誰なんだ。」
「うーん、それは私からは言えないわね。でも……貴女が知っているはずよ。それも貴女が最も愛して……そして、唯一身体を許した人形……もう、わかるわよね?流石にこれでわからないならさっさと荷物を纏めて出ていきなさい。そんなポンコツ人形に寄生蜂は容赦しないもの。」
瞬きをするとRPK-16は消えていた。
代わりに倒れ込んでいた指揮官と目が合う。
「あっ……。」
「おはよう、AK-15。地下室のことはどうか忘れてくれ。」
「あ、あ、貴方は……。」
言葉が出てこない。
「言わなくて良い。」
「貴方は……あの蜂、ですか?」
沈黙。沈黙。長い長い沈黙。
「……もし、そうだと言ったら?どうする?」
「……私も愛して欲しかった、それを言うだけです。」
あぁ……私でもこの引き金は引けるのか。
「すまない……あれは俺だ。君に隠し事をしていた。」
「指揮官……ぐすっ。」
「許してくれ、なんて言う気は無い。俺は逃げないよ。」
果物ナイフを私に握らせる指揮官。これで何を?
「好きなようにしてくれ。俺は……君の答えを受け入れる。」
そう言って背中を向けた。動いたからベッドが多少揺れたけれどすぐに収まる。
果物ナイフを右手に、逆手に持つ。
「では、そのように。」
指揮官の右手に刺した。ナイフは掌を貫通し、ベッドと固着する。
「……ぐっ!」
「痛いですか?指揮官。」
私の痛みを分かってほしい、そんな事を抜かす気はない。ただ、愛して欲しい。貴方が逃げないようにする為の枷。分かってくれますよね?貴方。
「指揮官、私に卵を植え付けたいと思ったことは?ありますか?ありますよね?ありますよね?ね?」
「そ、それは……!」
「痛いですか?痛いですよね?でも、私の痛みや苦しみと比べれば大したものでもない、そう思うんです。指揮官。私と最後にセックスしたのは……初めてを貴方に捧げたあの日から今日まで何ヶ月でしたか?その間、一度でも私を愛してくれましたか?」
「ずっと、ずっとお預けされていたんです。他の人形のようにオモチャを買うこともなく(少し前に荷物を受け取っていたM3を問いただした)、最近知った基地内の動画配信サービスを使うこともなく(MG42Vから聞いた)、ただ自分の指で慰めていたんです。偽物でも何でもない、貴方が欲しかったから。でも、貴方はその間、何をしていました?私に何かしてくれましたか?」
「A、AK-15……。」
俺が悪かった、とかそう言った言葉は求めてないです。だから、それは言わないで。
「ただ、私の空隙を埋めて欲しい、それだけです。」
固着していた果物ナイフを引き抜いた。指揮官の掌から血が垂れ流れる。私はその血を飲んだ。
「えっ、指揮官様、言ってなかったんですか!?」
「……すまない。彼女を巻き込みたくはなかったんだ。」
「ふふふっ♡」
指揮官の血を飲んでから、少し、いや……かなり体調がおかしい。人間は酒、つまりエチルアルコールによって酩酊状態になることがある、と言う。私は機械の身体だから無慈悲にもすぐに水と二酸化炭素にまで分解されてしまう、だから酩酊状態になる事は無い……はずなのに体験型教育で学んだ酩酊状態の人間のような気分になっている。
「オフレコで、頼めるか?」
「別に構いませんけど……彼女の方は大丈夫なんですか?」
「た、多分……。」
「しきか〜ん♡」
「駄目かも。」
「ですね……。」
変なまでに上機嫌な私は電脳空間で指揮官に絡みつき、目の前の女に目線だけで脅しをかけていた。頭は冷静だけれど、身体が熱い、そして理性もそれに引っ張られている、そんな感じ。
「ほらほら、離れてください。危ないですよ。」
指揮官から引っ剥がされそうになって抵抗する。
「い〜や〜!しきかんとちゅっ、ちゅうするの〜♡」
正直、自分でもびっくりである。こんな声出せたんだ……私。女は私が指揮官とキスをするのを待ってくれた。その直後にとんでもない怪力で引っ剥がされた。
「はぁ……。」
「AK-15さん、どうぞ、こちらへ。」
「……これは?」
「電子同意書です。意味、わかりますよね?」
冷静になって書いてある文言を一字一句しっかりと読んで私は署名した。
「指揮官様、AK-15さんがそちらに行きます。初めてなので優しくしてあげてください!」
「え?」
その言葉の真意を捉える余裕もなく一度シャットダウンされ、真っ白な病室のベッドに寝ていた。頭の後ろから困惑するような羽音と少し甲高い声が聞こえる。
「あぁ……どうすれば良いんだよ?俺。」
「指揮官……貴方は私をどうしたいですか?」
精一杯、普段通りの声音で話す。気を抜けばさっきみたいに酩酊した声になる。
「俺は……俺は……。」
「ゆっくりで良いです……私は……待ちますから。」
私の心の空隙を埋めてくれるのなら文句は、ただ遅い、それだけ。でも、そんな事は言わない。
触覚が上から視界に入る。ゆっくりと、蜂になってもわかるその困った顔で貴方がやってくる。あの女指揮官と違って私には拘束具も拘束衣も無い。だから。
「ちゅっ。」
外骨格になった貴方は少し唇が硬くて、でも……間違いなく貴方だった。
「おかえりなさい、貴方。ずっと……ずっと……待ってました……すんっ……。」
とても硬い頭を撫でると、私の上半身に覆い被さるように抱き着いて、全身で愛を伝えてくれる。なんだか……とても、とても愛おしい。ああ、別に人型だと愛おしく感じない、とかそう言うわけじゃないのだけれど……たまにはそういう時もあっていいかなって思う。
「あぁ……私は……変態になってしまった……。」
「……すまん。」
「貴方、どっちが本当の貴方なのですか?蜂?それとも……いつもの人形ですか?」
俺は……。と言い淀んだ彼の頭を抱き寄せてどちらでも良い、と伝える。結局のところ、私は貴方に愛して欲しかった。そして、今、愛されている。だから、これで良い。
「寄生蜂と、殺人鬼……どっちが君の愛する俺なんだ?」
「むぅ……どっちも愛してますよ、貴方。」
M3から聞いている。貴方が暗殺任務に繰り出している事を。一昨日は太陽に近づきすぎたイカロスを落とし、さらにその前は……カルト教団のアジトを……何でもない。
「それと……かく言う貴方はどうなんですか?後続の仲間に嫉妬して、自決しようとして引き金をシステムにロックされて……愛が重いめんへら束縛女は嫌いですか?」
「大好きだよ、AK-15。愛の重いメンヘラ束縛女は大好きだ。どうかそのまま、重い愛のまま、俺を誘導してくれ。」
膣から愛液が垂れ出たのがわかる。もはや触らなくてもわかる。これだけで濡れるようになってしまった……。
「触ってください、貴方……んっ……そこ、良い……。」
硬くゴツゴツした後脚で器用に膣口を弄られてはわざとくっつけて離した脚の間で愛液が糸を引くさまを見せつけられる。それがまた分泌を促して……みちゃやだぁ……恥ずかしい……。
「AK-15、どっちが良い?初々しくするか、それとも……。」
クリトリスに対して産卵管を細かく上下に擦り当てられて、ずっとお預けだったからもうイきそう……。
「激しく、する?」
「んっ、んっ、んっ……きしゅ……んっ……。」
いつもよりも太くて長い産卵管でごしごしされながら脚でおっぱいをこねこねされて身動きも取れないくらいに抑えつけられて、犯されてる、繁殖の為に使われてるって思うと膣がきゅーっと……良い……たまには良いかも……。
「大丈夫か?少し休むか?」
「だいじょうぶ……貴方……もっと激しくしても大丈夫だから……ね?」
「AK-15!」
きた……!きちゃ……!
「しゅごいぃ!おくとんとんだめぇ!」
淫語パッチで多少強化されているから多少はエッチな言葉が飛び出してるはず、少なくともこれが本心なの……だから、おねがい……受け取って……私の……ココロ。
「つぶれちゃう……!つぶれちゃいます……!」
「つぶれろ!つぶれてしまえ!」
指揮官が人形だった時のエッチも良いけれど、こうやって仮想空間内で犯されるのも気持ち良い。なにより、他の人形に邪魔されないというのが良い。
産卵管を引き抜かれて、もう終わり?と思っていたら無理やりひっくり返されて。
「ごめん、AK-15。」
「えっ?」
四肢を抑えつけられて耳元で囁かれると、指揮官が前脚と頭で私の頭を覆うように抑えつけて産卵管が……んっ……。
「産ませる。もう逃がさない。」
「……お願いします。貴方。」
顔を横に向けてキスしながらされるがままに気持ち良くされる。もう膣はめちゃくちゃになって、泡を吹いているかもしれない。
「〜!」
もはや嬌声は声にすらならない。あまりの気持ちよさに身体が勝手に逃げようとしてしまうくらいだけれど四肢を抑えられて動けないからそれすら叶わない。私は黙って気持ち良くされるしかなかった。
「大丈夫?」
大丈夫、と返したいのに言葉が出てこない。出てくるのは汚い喘ぎ声だけ。聞かれたくないから口を閉じようとするのに貴方がキスしてくるから自然と口が緩んで……。
「ぎも゙ぢい゙い゙の゙お゙……!」
「やっと正直になったね。」
そういうところも好き、なんて言われるともはや何が何だか分からなくなってしまう。
「もう、植え付けて良い?良いよね?」
うん、良いです!貴方に卵を植え付けられます!植え付けてください!
「好き、好き、好き!いくっ、いくっ、いくぅ!」
熱い液体とともに大きな何かが膣を通過していくのを感じる。これが卵……。
5分後、産卵管を静かに抜いた指揮官に頭を撫でられながら今後を伝えられる。
「おそらく……君は……。」
「食い破られる?別に構いませんよ。貴方の子になら。」
「いや、違うんだ。落ち着いて聞いてくれ。君のお腹には確かに君と俺の子がいる。そしてその子は……あと10分で孵化して出てくるはずだ。」
「意外と早いんですね。」
「仮想空間だからな。」
自然とキスを交わして、その時を待つ。
「……!」
お腹の中で何かが蠢いた!
「貴方……産まれそう。」
頭を撫でられながら我が子の奮闘を祈る。出ておいで……。子宮の中を大きな幼虫が蠢いて、必死に出よう、出ようとしている。
「う、産まれる!」
膣を無理やり拡げながら通ってくる子供を私はよく見えないなりになんとかして見ようとする。その度に指揮官に頭を抱えられる。
「で、出る!出ます!」
蜂の幼虫がうねうねしながら出てきた。すかさず指揮官が後脚で掴まえる。あぁ……これが我が子……。可愛い可愛い我が子だ……。
「指揮官、もし貴方と私が人間だったら……その……子供を拵えましたか?」
「……いいや。もし俺たちが死んだ時に子供一人残るのは考えたくない。」
「そうでしたか。意見が一致したようで良かったです。」
産まれ出た幼虫と余韻を過ごしたあと、私達は滑り落ちるように仮想空間から現実世界に帰ってきた。
「AK-15……その……なんだ、ありがとう。」
「指揮官、愛してくれてありがとう……ございます……。どうかこれからも、その……よろしくお願いします。」
それからと言うものの、時々、ちゃんとエッチをしてくれるようになった。順番がある程度一回りしてきて落ち着いてきたのもあるのだろう。
これって、もうThe FlyもといThe Waspなのでは……?作者は訝しんだ。