昨年転職したと話、その十か月後に退職した、私です。
貯蓄はそこそこあるからバイトをしながら、細々と生きております。
閑話休題。
そんなどうでもいい話は置いておいて、久しぶりの投稿です。
「お前、前に書いてた奴放置してるだろう」と仰る方もいるかもしれません。
言い訳をさせて頂くと、仕事にかまけて放置しすぎた結果、どんな感じの方向性に向かう気でいたのか忘れてしまって続きが書けそうにありません。
なので(?)、代わりにこちらを投稿します。
一応、ストックを幾つか溜めているので、暫くは投稿が続けられます。
無駄話はこれくらいにしたいと思います。
では、本編をどうぞ。
scene.1
そこは最果ての地、赤の領土。
かつて緑豊かだった大地は瘴気に蝕まれ、今やひび割れた大地と毒々しい沼地が広がるばかり。
空は常に鉛色に染まり、太陽の光さえも拒絶するように陰鬱な瘴気が渦巻いている。
風は絶望の叫びのように吹き荒れ、それは亡者の怨嗟の声のように鳴り響く。
その辺りに幾つも転がる骨は、かつてこの地を訪れてた勇士たちの成れの果てだ。
そんな土地に、魔王の居城はあった。
「―――以上となります。魔王様」
城の最奥、王の間にて。
玉座に腰掛ける魔王の足元に、跪く魔物が調べた内容を報告していた。
その魔物は人の形こそ取っているが肌は青白く、目は鮮血のように赤い。口元からは鋭く長い犬歯が顔を覗かせており、それが数いる魔物の中でも上位に名を関する存在――吸血鬼であることは明白であった。
彼は蝙蝠といった自らの配下を用い、魔王に必要な情報――勇者に関することを調べていた。
そんな彼が首を垂れる相手――魔王はその玉座に対し、随分と小柄な人物であった。衣装と室内の暗さも相まって分かりづらいが、性別が女であることは何となく分かる。
「……下がれ」
低く、短く魔王が告げる。
吸血鬼の男は立ち上がると恭しく一礼し、その場を辞する。
室内に一人きりになった彼女は静かに立ち上がると、静かに口を開いた。
「誰ぞ、いるか」
「御前に」
魔王の声に反応し、一つの影が姿を現す。
それは全長二メートルは優にある、全身を甲冑に身を包んだ巨漢の騎士。その鎧は無骨にも落ちず華美にも走らない絶妙なバランスを体現しており、その表面には小さいながら幾つもの傷が刻まれていた。そして甲冑の関節部といった隙間からは溢れ出る闇色の瘴気が、まるで羽衣のように纏わりついている。
魔王に仕える側近にして、魔王軍最強と称される悪魔の騎士。
彼の騎士は魔王の前に跪き、頭を垂れた状態で待機していた。
「よし……ついてこい」
「はっ」
魔王は玉座から立ち上がると、マントを翻して玉座の背後――隠し扉のような場所にひっそりと佇む黒曜石のように真っ黒な扉があった。その扉を開け放てば、上へと続く螺旋階段が姿を現す。
立ち上がった悪魔の騎士もカシャン、カシャンッと足音を響かせながら扉を潜り、彼女の後を追うように螺旋階段を上がっていく。
暫く上れば、目の前に扉が見えてくる。
その扉の奥は限られた者のみが立ち入れる、王の居室となっていた。
部屋の中央には豪華な装飾が施された大きな天蓋付きのベッドが陣取っており、それは魔王の地位の高さを象徴するようであった。室内には他に手の込んだ装飾が施された椅子や化粧台、更には幾つかある書棚には様々な書籍が収納されていた。
魔王は迷わずベッドへと歩を進め、そしてゆっくりと腰を下ろした。
「お前も聞いていたな?」
「はい。白の領土より勇者が陛下を討たんと旅立とうとしていると」
「そうだ。ただの人間程度なら千も万も連れてこようと問題ない。いや、雑兵程度なら我が魔王軍だけで事足りる。だが、アレだけは違う。大器晩成型のアイツの力は今はか弱くとも、必ずや私の喉元に届く」
「では、どのような対処を?」」
「決まっているだろう? お前には、勇者パーティに入ってもらう」
「それは……自分の手で始末せよ、ということでしょうか?」
「違う。お前には密偵として勇者一行の動向を探り、それを定期的に私へ報告するんだ。そして成長したアイツを、私の前に辿り着けるように陰から導くんだ」
魔王の言葉に、悪魔の騎士も思わず口を閉ざす。
敵が成長しきる前に排除するならいざ知らず、成長を待ってから相手をするというのは理解できなかった。魔物の中には小細工を好まず、正々堂々と戦うことこそ戦士の誉れと考える者も少なくはない。確かに仮にも騎士である彼もまた略や策略なら兎も角、真正面から切り結ぶ方が楽しいと感じてはいる。しかし、魔王はどちらかと言えば面倒毎は避ける質。
だからこそ、魔王の真意が彼には分からなかった。
「クックク、不思議か? 私が勇者を野放しにすることが?」
「……恐れながら、自分には理解できませぬ」
「単純な話だ。勇者であっても心は人間だ。道中、我が魔王軍に昼夜を問わず襲われ、肉体的にも精神的にも疲弊することだろう。そして人間の嫌な部分も多く見ることとなり、魔王城へと到着した頃には心も荒んでいるはずだ。そこで私がこちら側へと誘えば、奴はきっと乗る」
「……つまり、陛下は勇者の力を取り込もうと?」
「そうさ。古の時代より魔王と勇者は必ず対となって誕生する。時期がずれる時もあるらしいが、片方が世界に現れれば、必ずもう片方も世に現れるようになっている。そして魔王は世界を破滅に導き、勇者はそれを討たんと旅に出る。それがこの世界の理……はっ、馬鹿馬鹿しい。定められた宿命など意味がないことを私が証明するのさ」
「自分は陛下の剣、貴方がそう望むのなら、その通りに」
「さて……仕事の話は終わりだ。脱げ」
情緒もへったくれもない発言である。
だが魔王に対して拒否権など行使できるわけもなく、気分屋な彼女がこうして要求してくることはよくあることなので、悪魔の騎士も特に抵抗することもなく甲冑を外していく。
本来、彼のような「動く鎧」系統の魔物には中身はない。元々は未練を残して死んだ戦士の魂が闇に落ちた結果、鎧に憑りついて動かしているだけに過ぎない。だから普通なら甲冑を外したところで、そこには何も入っていないはずだった。
だが、彼だけは違った。
本来なら集めても形を成すことの出来ない魔力が一カ所に集い、凝縮された魔力は肉眼でも確認できるほどに形成していき、やがて一つの肉体を再現する。それは彫刻のように均等の取れた美しい肉体、正に戦士の理想形という肉体美がそこにはあった。ただ、やはり魔物だけあって頭部――首から上は黒い靄のような闇に包まれていた。これにより素顔を窺い知ることは出来ないが、もし誰かが頭に触れようとしても靄が揺らぐだけで何にも触れることは出来ない。
どうして彼だけが、こんな芸当が出来るのかは誰も知らない。本人にもどうして出来るのかは分からず、そして頭部を作ることの出来ない理由も分からなかった。もしかしたら生前が影響しているのかもしれないが、それも記憶が欠落しているために分からず仕舞い。
因みに、頭がないのに何処から声を発して意思疎通を行っているのか定かではないが、対象の脳内に直接声を送っている訳ではなかった。きちんと彼の言葉は振動として空気を震わせ、鼓膜に音として伝わっている。
「お前の素顔は、どんな顔をしているんだろうな……」
「……それを仰るのなら、陛下のご尊顔も自分は知りませぬ」
魔王の素顔を見た者は誰一人としていない。
女性であることや獣人であることは知っているが、彼女がどのような素顔をしているのかは誰も知らない。彼のように存在しないのではなく、顔を隠す狐の半面マスクにより、その素顔が隠されているからだ。
人間なら正体不明の輩に対して素顔に興味を抱いたり、不信感を募らせるかもしれないが、魔物にとって何よりも大切なことは純粋な強さのみ。圧倒的な強者であることが魔王に求められ、それ以外のことは些末にすぎない。
「ハッ、私の素顔は安くはないからな……ほら、今度は私を脱がせ」
魔王はマントを脱ぎつつ、ゆっくりと立ち上がる。
悪魔の騎士が彼女の両肩へと手を伸ばし、そのまま肩紐を滑らせるようにXラインの黒いドレスを脱がせる。スルスルとドレスを下ろしてゆけば、新雪のように真っ白い柔肌が露になる。ドレスを完全に脱ぎ去れば、彼女の身体を守るのは細やかな刺繍の施された黒い下着だけとなる。
魔王であることを除けば、そこには美術品のように美しい女がいた。
「ほら、いつものように横になれ」
言われるがまま、悪魔の騎士はベッドの上に仰向けで転がる。
魔王もまたベッドの上に昇ると、恥じらう様子もなく無造作に半立ち状態の肉棒に触れる。
「どうだ、魔王様直々に扱いてもらう感覚は」
「はい……身に余る光栄です」
悪魔の騎士の言葉に、魔王はクツクツと喉を鳴らす。
彼女はその白魚のような細指が肉棒を包み込むように握ると、ゆっくりと上下へと扱く。それに合わせて魔王は舌を伸ばすと、悪魔の騎士の乳首をチロチロと舐める。もたらされる快楽に、柔らかさを残していた肉棒は徐々に固くなり、正に剛槍と呼ぶに相応しい状態となる。
先端部分を手の平で捏ねるように刺激を与えて行けば、亀頭からは我慢汁が滲みだしてくる。
「こんなに固くして、気持ちいいのか」
「陛下のお手は柔らかく、そして冷たく心地好いです」
「では、そろそろ楽しむとするか」
魔王は一度手を止めると、下着を脱ぎ捨てる。
それから悪魔の騎士の上に跨ると彼の肉棒を手に取り、その先端を己の秘所に宛がう。
「んっ…」
ぬぷっ、と淫靡な水音を立てながら、悪魔の騎士の剛槍が魔王の膣内へと呑み込まれていく。
膣内は熱くうねり、肉壁はまるで蛇のように肉棒に絡みついてくる。
「うっ…」
「ははっ、簡単に果てるなよ」
呻く彼に対し、魔王は挑発的な笑みを浮かべる。
彼女は悪魔の騎士の鍛えられた腹筋に手をつくと、ゆっくりと腰を上下に動かし始める。
まだ行為に及ぶには十分に濡れていた訳ではなかったので、その動きは決してスムーズなものとは言い難かった。最も、彼の肉棒は人間と比べてもサイズが一回りは大きいので、慣れるまでは少しならす必要があった。
「んんっ、はぁ……相変わらず、大きいな」
「そう、でしょうか」
「はっ、これなら、あっ、勇者一行の女もイチコロだろうな。あんっ、どうだ、試してみるか?」
「じ、自分は……陛下一筋です」
「……ハッ、冗談だ」
魔王はそう言うと、腰の動きを激しくする。
彼女の膣から愛液が溢れ出し、ぎこちなかった動きもスムーズになり始める。
パンパンッと腰が上下する度に、結合部からはジュプジュプッと淫猥な水音が鳴り響く。更には柔らかな乳房も揺れ、その先端は魔王の腰の動きに合わせてブルンブルンと揺れている。
「んっ、ぁ……はぁ」
「くっ……陛下っ」
「ほら、んっ……こっちも、触れ」
魔王は悪魔の騎士の手を取ると、自らの乳房へと導く。
言われた通り、その柔らかな乳房を揉みしだき、時には固く勃起した乳首を摘まめば、膣肉がキュッと締まるのを感じた。彼女の口から漏れだす熱い吐息に、彼の興奮も高まっていく。
「陛下ッ!」
「あぁんっ…」
受け身だった彼が、攻めへと転じる。
両手で乳房を揉みしだきながら、下から魔王の動きに合わせて腰を突き上げる。ドチュドチュッと激しく子宮口を亀頭がノックし、魔王の背筋が仰け反る。しかし逃すまいと、悪魔の騎士は彼女の腰を掴むと更に激しく突き入れる。
「ぐっ……陛下、限界です!」
「んぁ、いいぞ。あっ、中で出せ」
「ぐっ!」
「んん~~ッッッ!」
最奥まで差し込むと同時に、二人は絶頂する。
膣内は激しく肉棒を締め上げ、亀頭からは大量の精液が吐き出される。それは決壊したダムの奔流の如く子宮へと流し込まれ、それに彼女の身体がビクビクッと痙攣する。肉体は絶頂の余韻に震えながら、膣壁は一滴残らず搾り取るかのようにギュギュッと肉棒に絡みつく。
やがて長い射精も終わると、魔王は彼の身体の上に倒れ込む。
「いいか……必ず、戻ってこい。死ぬことは許さない」
「……はい。自分の命は、陛下の為に」
「……なら、いい」
魔王は絶頂の余韻から覚めやらぬ中、それでもそれだけ言うと、ゆっくりと瞼を閉じる。
そして程なく聞こえてきた寝息に、悪魔の騎士は優しく彼女の頭を撫ぜた。
◆
白の領土、コーンフィールド王国
数日前から城下町では、ある話で持ち切りとなっていた。
曰く、魔王を討伐せんと勇者一行が旅立つらしく、そのメンバーを探していると。
それにより我こそはと腕に自信のある者たちが集まり、城下町はまるでお祭りのような賑わいを見せていた。ある者は討伐報酬に目が眩み、ある者は勇者一行という名声を求めて、ある者は魔王を恐れないその姿勢に憧れて。
そして、ここにも一人、勇者一行に仲間入りを考える男がいた。
「クックク、もうすぐだ……もうすぐ、僕の名声が手に入る」
男は隣国に当たるヴァイツェン公国よりやってきた冒険者であった。
冒険者としてのランクは黒鉄級、実力としては決して高いとは言えないが、この北方大陸では十分と言えるだろう。このまま青銅級にまで上り詰めれば、それなりの地位と名声を得ることが出来た。
だが、そんな細やかな夢で満足できなかった。
平時ならそれで我慢できたかもしれないが、魔王討伐の旅は成し遂げれば一獲千金は間違いなかった。加えて名声も鰻登りとなり、場合によっては爵位を得ることだって夢ではないだろう。
故に、男は己が欲求の為に魔王討伐に名乗りを上げた。
「しかも勇者様が女とは……ついてる」
あわよくば、勇者を手籠めにすれば次代の王も夢ではない。
そんな風に邪な考えに胸を躍らせていると。
「ねぇ、そこのお兄さん」
「誰だ?」
振り返れば、物陰に一人の女が立っていた。
そこに居たのは妖艶な、最低限の場所しか隠していない下着のような恰好の女。
大きく突き出した乳房と殆ど丸出しの臀部、雄の本能を刺激するような煽情的な身体つきをしていた。当然ながら顔立ちもよく、彼がいたヴァイツェンの田舎の村にるような芋臭い女とは段違いであった。
これが王都の女かと、思わず生唾を呑みこむ。
「な、何だい。お嬢さん」
「わたし、悪い男に騙されてしまったの」
そう言いながら、女は男の身体へとしな垂れかかる。同時に胸元で女性の豊満な胸がむにゅんと柔らかく潰れ、それだけで身体がビクッと震える。距離が近付いたためか、嗅いだことのない甘い香りが鼻腔を擽る。
「そ、それは酷い男もいたもんだ」
「だから、今とっても困っていまして……宿をとるお金も残っていないの」
「へ、へぇ……」
「良かったら、助けて下さらない? もちろん、タダとは言わないわ」
女は男の耳元へと、唇を寄せて囁く。
そうしながら、女の手が男の胸元を服の上から撫でる。
「今晩、貴方の女として最高の夢を見せて、ア・ゲ・ル」
「~~っ!!」
反射的に、男は頭を前後に振っていた。
この時、もし男に少しでも理性が残っていたのなら、壁に映った女の影の変化に気付けたかもしれなかった。しかし、魅了されて鈍った思考では、頭が働いていたとしても見落としていたことだろう。
そして男は城下町の喧騒から逃れるように路地裏へと導かれていった。
そうしてある程度進んだところで、女が立ち止まった。
「ここなら誰にも見られないわ」
「おいおい、ベッドの上まで我慢できないのか?」
「お馬鹿さん。少しでも危機感があれば、助かったものを」
「へ?」
男の影が襲い掛かった。
足元から伸びた影は瞬く間に男の身体へと巻き付いていき、身動きを封じる。加えて声を出させないために口元まで覆われてしまった為、目元以外が真黒く覆われてしまう。あまりの速さに声を上げることも出来ず、男はシュンッと影の中へと呑み込まれていった。
男が最期に目にしたのは、バイバイと手を振る角を生やした女の姿だった。
「~~~~~~ッ!!!」
直後、辺りにベキベキッと何かが折れる音が響く。
グチャ、ブチッという非常に不快で恐ろしい想像を駆り立てる音が続き、不意に止む。
少しして男が消えた影の中から腕が突き出し、更には顔、身体と続いて何かが這い出てくる。
「……ふぅ」
それは、先ほど呑み込まれた男だった。
ただ、それは頭だけ――首から下は全く別人、鍛え抜かれた彫刻のように均等の取れた美しい肉体の持ち主だった。首筋には別人を証明するかのように傷跡が首に現れていたが、それも直ぐに薄れて行って微かに線のようなものを残すのみとなった。
そんな男の前に立つ女の姿は先ほどまでとは違い、頭部からは一対の角が突き出し、背中からは悪魔を思わせる羽と尻尾がそれぞれ生えていた。服装も露出が高いことに変わりはないが、より煽情的で悪魔らしいものに変わっていた。
女の正体は人間ではなく魔物、それも上位種に当たる悪魔であった。
「その肉体の記憶は如何ですか、デュラハン様」
「……少し違和感があるが、問題はない」
その正体は僧侶の首を奪った、悪魔の騎士である。
彼は他人の首を仮初の肉体と接続することで人間のフリが出来るのだ。触れられても少し体温が低いぐらいにしか思われないが、傷を負っても血は流れないので完璧に誤魔化せる訳ではない。無論、普通の「動く鎧」系統の魔物にこんな芸当は出来ない。
そして彼は他人から奪った首から記憶を覗くことが出来る。
「少し邪な考えの持ち主だったようだな」
「デュラハン様、お召し物を」
悪魔の女は真新しい衣服をデュラハンへと差し出した。
全裸だったデュラハンはシャツとブレーを着てから、真新しい法衣をその上から袖を通す。怪しまれない為にか布地は麻を使っているのか硬いが、これが只の衣服ではないことは身に纏った彼にはよくわかった。
「こういった服も悪くはないな……偽装の魔法か」
「ご明察です。それを着ていれば『鑑定』の魔法を受けても正体に気付かれることはなく、よほど強力な正体を見破る魔道具でもない限りは気付かれる恐れはないかと」
「そんなものを使われれば、そもそも首が取れる」
「それとこちらを」
そう言って彼女が差し出したのは、古ぼけた指輪と黒色の認識証だった。
受け取って付けてみるが、これといった変化が現れた様子はない。
「この指輪は……」
「脱力の指輪です。そのままでは普通に殴っただけで、人間は耐えられませんから。それでも十分の一ぐらいにまでしか抑えられないので、くれぐれも力加減をお忘れなきように」
「手を抜くのも大変だな」
「認識票はギルドの職員を魅了して架空の人間として登録させたものです。デュラハン様の実力を考えれば黄金級でも足りませんが、潜入するには目立つのは悪手ですので」
「確かにな。どれどれ?」
認識票を見れば、「牧氏あのく」の名と「職業:僧侶」と記されていた。
因みに彼女が利用した職員だが、取り調べを受けても面倒なので始末済みである。
「まきし、あのく……成る程、皮肉の効いた名前だ」
「そう言った単純な方が案外気付かれないものですわ」
「でかした、褒めて遣わす。妖魔軍団長・癒月ちょこ」
「お褒めに与り光栄です。魔王軍司令官様」
デュラハンの言葉に、ちょこは恭しく首を垂れる。
もしこの場面に人間が愛惜していたのなら、目を見開いて愕然としていたことだろう。何故なら王城や主要都市、更には辺境の街であっても規模の差はあれ、魔物が近付いてこないよう守護結界が展開されているからだ。
そんな人類の安全圏と呼ぶべき場所に、平然と魔王軍の幹部が二人も居るのだ。
誰だって現実を受け入れられないだろう。
「さて、コイツの記憶では勇者が来るのは明日か。なら適当に時間を潰すか」
「デュラハン様」
「何だ?」
「その前に、褒美を頂けないでしょうか」
確かに、言われてみればそうだったと思い出す。
仮にも魔王軍において軍団を統率する三人の団長の一人である彼女を、今回のような小間使いのように使ったのだから、褒美の一つも与えなければ軍司令でもある彼の名が廃る。
「ふむ。何を所望する?」
「では情けを、接吻を頂けないでしょうか」
「接吻」
思わず、デュラハンは固まる。
彼とて接吻の意味ぐらいは知っているが、いつもなら一晩の相手を申し込まれることが多かったので少し意外ではあった。デュラハンとしても、彼女のように良い女を抱けるのだから役得ではあるのだが。
「ダメ、ですか?」
「……いや、問題ない」
上目使いに見詰められ、デュラハンは頷く。
ちょこは彼の前に立つと顔を上げて目を閉じ、デュラハンは彼女の頬に手を添えるとゆっくりと唇を重ねた。
「んっ……」
時間にして、ほんの数秒程度のキスだった。
デュラハンは唇に伝わる柔らかくも、張りのある感触にある種の感動を覚える。
行為としては互いの唇を合わせるだけだが、久しぶりの接吻はこんなにも甘美だったろうかと思わずにはいられなかった。
「……ちゅ」
唇が離れれば、彼女は蕩けるような笑みを浮かべ、その頬は上気したように赤く染まっていた。そっと互いにくっついていた身体を離せば、ちょこは嬉しそうに微笑む。
「きゃ~~~っ! デュラハン様のファーストキッス、頂いちゃった♪」
「随分と嬉しそうだな」
「そりゃ、もう! これだけで魔王様に自慢できるわ」
「自慢って……たかがキスだろう? そもそも、この肉体はあくまで仮初ものだぞ?」
「でも、キス自体は魔物になってから初めてでしょ?」
デュラハンはちょこともセックスをしたことは幾度もある。
しかし、頭部のない彼では求められても接吻をすることは出来なかった。そう言った意味でちょことのキスは彼にとって、初めの物と言われればその通りではあった。
「……まぁ、いい。それより俺が不在の間、陛下のことは頼んだぞ」
「畏まりました。ご武運を」
恭しく頭を下げ、ちょこは羽を羽ばたかせて夜の空に消えていく。
一人残されたデュラハンは、路地の奥へと姿を消した。
◆デュラハン‐悪魔の騎士 ハザード:Ⅳ
年齢:不明 性別:男性 身長:178㎝(鎧時:220㎝) 適正:剣、魔法(青)
装備:魔剣、暗黒の鎧、覇者の盾
体力:30450 魔力:13050 総合戦闘力:43500
魔王軍の全権を任せられている司令官。
魔王からの信頼が最も厚く、戦闘力も魔王に次いで高い。
突然変異で誕生した動く鎧だが、誕生した経緯は不明だが、魔王への忠誠心は高い。
主人公はヒーロー側の立場ではなく、ヴィラン側からの刺客でした。
見た目とかは、型月に登場する鎧の狂戦士をイメージして頂けると良いかもしれません。
という訳で、如何だったでしょうか?
冒頭や末尾にこうして世界観や簡易的な人物紹介を挟もうかと考えています。
ではクリック? クラック! また今度。
冒頭における説明について。
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今の状態でよい。
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別の頁でまとめる(随時更新)
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そもそも不要。